【登場人物】
提督(悪)
邪悪のパワーを尊ぶ生まれながらのワル、しかしそんな悪の化身にも悲しい過去が…
表島大佐(意外と普通)
どちらかと言えば一般的で普通な海軍将校、殴り合いは専門の人に任せる
二勝二敗で迎えた特別斡旋演習最終戦、両陣営の指揮官同士が今、最後の決着をつけるべく戦いのリングへと上がる!!
「行くぞォ!!」
「フン、ティトク強度96万パワーと言ったところか……下等め!」
リング中央でガッツリと組み合う男達!まずは腕試しにと恒例の審判のロックアップを仕掛けた提督は表島大佐の実力を測り…
「この俺に触れることすら烏滸がましいわーッ!喰らえ!ロイヤ●デモンローズ!」
「なにっ!?こ、この薔薇はーッ!!」
提督の撒き散らした毒薔薇をマトモに浴びた表島大佐はコレはヤバいと直感したのか、すぐさま提督との距離を取る!
「フッ……大佐程度のボウヤでは俺の魔宮薔薇の陣を突破するなど到底不可能、まだ実力差が理解出来ないワケではあるまい?」
「大佐程度って……アンタ中佐だろ?」
「フッ、あえて、中佐の地位にとどまっているのだよ」
それは、一度は大佐の地位まで上ったものの、その後、なんやかんやあって上がったり下がったりを繰り返し続けた男が言い放つ精一杯の強がりだが…
だが、その辺の細かい事情を知らない表島大佐からすればあまりにも不気味な回答であった…
「…つまり、自分が中佐の地位に居座るコトで大佐に上がる実力相応ではない者を選別しようと言うコトか?」
「え?……………その通りだ!」
「クッ!なんて傲慢な…!」
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「初春様、提督、アレは間違いなくそこまで考えてない顔ですね」
「その顔じゃな」
「おそらくはその場のノリや勢いに乗ってしまった感がバリバリです、アレはそーゆー顔でしたね、はい」
「なんじゃ?お主、アレであやつを意外と良く見ておるんじゃのぉ?」
「ハイ、私と提督はフェルマータなんで」
「ふぇ?ふぇる……?なんじゃって?」
外来語には些か疎い初春様が頭を捻る中、リングではリング中央に陣取った提督が必殺のピラ●アンローズで牽制しつつ飛び込みへの迎撃カウンターの必勝パターンを組み上げていた…
「あー!汚い!さすが提督!汚い!弾速の速い飛び道具と無敵対空、ここはしっかりと必勝パターンを組み立ててきました、どうでしょう?初春様」
「ふむ、所謂、黄金ぱたーんと言うヤツじゃな」
「飛び道具でチマチマ削り、不用意に飛び込んだ相手に手痛い迎撃、まさに理想的な戦法ではありますが、しかしこの提督、チマチマ削り相手の体力が少ないとみるや派手な大技で勝負を決めたがる傾向があります、格ゲーで鈴谷さんのやたらと八稚女で勝負を決めたがるおバカな傾向にそこら辺似てますが、そこのトコどうでしょう初春様」
「ある意味、似た者同士なんじゃろ」
「なるほど〜…ある意味、一種の同族嫌悪的なモノなんでしょう、あ、ここで表島大佐動きました!ピラ●アンローズはあえて受け、正面から突進力のある攻めで攻めるつもりです!」
ーーー
痛い!地味に痛い………が、要はただ薔薇を投げつけてくるだけだ、冷静に考えればそこまで痛くはない、ってか、あの薔薇、どこから取り出してるんだ?まさか四次元ポ●ットでも持ってるって言うのか?
「ピラ●アンローズ!ピラ●アンローズ!ピラ●アンローズ!ピラ●アンローズ!」
「って!!ウゼェ!なんっーウザさだ!」
発生から弾速の速い技を連発して俺が距離を詰めるのをイヤがる辺り、実は近距離は苦手とかそんな感じだろう、なら勝機はある!とにかく距離を詰めて…
「ピラ●アンローズ!」
「痛ッ!だが…!」
入った!俺の距離だ…ッ!!
「俺の距離?違うねッ!ようこそ俺様の距離へ!」
「なっ!?」
地味に痛い刺さる薔薇の弾幕をくぐり抜けてようやく入り込んだ相手の懐、ここから反撃開始だと思った矢先にメガネのメガネが不敵に光り、逆に、体勢低く俺に突っ込んできたメガネは低空から上方向に向かってヘッドバットをブチ込んできたッ!?
「グハァ!!」
「ガハハハハ!!かかったな!」
まるでサッカーボールをヘディングするように何度もヘッドバットを打ち込まれ、天高く空中まで運ばれ、さらに空中で複雑な型で固められるッ!!
「グアアア!!こ、これはー…ッ!」
「ガハハハハ!喰らえ!海軍三大奥義が一つ!」
や、やられた!!ナニが近距離は苦手だ…!コイツ、あえてあの薔薇で俺を寄せつけないようにし、近付かれるのをイヤがるようにしていたのはブラフ!本命はバリバリのパワーファイトだった!!
「う、動けない!」
「死ねッ!パワー全開!真・テイトクリベンジャー!!」
ま、マズい!この技はマズい!このまま落下してリングに叩きつけられたらマジで死ぬ!!
どうにか!どうにかしなければッ!っーかどうしろってんだ!?そもそも海軍三大奥義ってなんだ!?なんだよその奥義!どこで教えてくれるんだよ!俺習ってない!!
強烈な加速で落下を開始したテイトクリベンジャー?この、炸裂すれば必殺必死確実ぅ!の技から抜けだせず、もはやこれまでかと諦めかけた………
その時だったッッッ!!!
『トアーッ!』
ドガッ!!!
突如として現れた黒い影が落下するテイトクリベンジャーの邪魔をするかの如く中佐に飛び蹴りを入れるッ!
「ナニぃ!?グオッ!!」
突然の乱入に対処できなかったのか、完璧にキマっていたロックが外れ、間一髪、俺は空中で必殺のテイトクリベンジャーから脱出できた…
しかし一体誰が…?
辛くもテイトクリベンジャーから脱出し、リングに転がる俺の前に居たのは…
「グゥゥゥゥム!よくも私のジャマをしてくれたな、キサマ!いったい何者だ!」
『センパ……いえ、この男は私の獲物!こんなところで私以外に倒されては私が困るのでね!』
…………剣道の面みたいなのを被った謎の女だった
いや、謎の女と言うには少々自己主張の強すぎるパイオツ!コイツは…
「提督同士の神聖な決闘を邪魔するとは………名を名乗れぃ!!」
『え?名前ですか…?名前………え~、ハマ……あ!そーだ!HKで!」
H(ハマ)K(カゼ)な、うん…ハマ・カゼだよな、うん、決してH(HENTAI)のカメンじゃないよな!
「フッ…HKか、見たところそこらの小娘のようだが、よかろう!私にたてつく者は女子供でも容赦はせぬ!」
『望むところ!!さぁセンパ……いえ、立ってくださいHKグレート、2人で一緒に、そう!2人で一緒に!2人の共同作業でアイツを倒しましょう!2人で!』
何故やたらと“2人”を強調するんだコイツは…あと、HKグレートってなんだよ、なんで俺がグレートの方なんだよ…
「チッ……だが、やるしかないな!」
『その意気です!センパイ!』
「行くぞォ!俺達の力を見せてやる!!」
後に、この戦いは海軍特別斡旋演習史に残る名勝負となり、その日、この会場に集まった多くの人々に血と汗と、そして正義と友情の尊さを刻み、忘れられない記憶として残されることになった……
◆◆◆◆◆
…………後日
「ぅぅぅ……身体が、身体中が痛い」
「はいはい、バカなんですか?」
「うるさいな、バカとかゆーな」
あの地獄のような基地で行われた特別演習から戻った俺は未だ抜けきれないダメージに苦しんでいた…
最後の戦い、俺とハマカ……いや、謎のマスクマン、HKのタッグはあのクソメガネ相手に2対1のハズなのにかなりの苦戦を強いられはしたが、最終的に2人のタッグ技で見事ヤツを倒した…
しかし試合結果は普通に俺達の反則負け、そりゃそうだ、いきなりバカが1人乱入してきた上に急造タッグで挑んだんだ、そりゃ普通にダメだろう
まぁ、勝負に勝って試合に負けたと言うヤツだ…
「しかし噂以上にヤバい相手だったな」
「そうですね、白露姉さんと時雨姉さんも未だあの試合を悪夢に見るらしいです」
「ふ~ん」
春雨はまるで他人事のように言っているが、まぁ、他人事か……っーか、よく考えたらウチで唯一、誰の助けもなく純粋に白星挙げたのコイツだけなんだよなぁ~…
「ま………演習は当分コリゴリだな」
「そうですか、まぁ…そうですね」
◇◇◇◇◇
「フーッ~………」
「ここは禁煙ですよ、外行って吸ってください、外」
「へいへい、ったく…怪我人にカテぇコト言うんじゃないよこの子は」
特別演習も終わり、いつもの執務室…
喫煙所まで行くのがダリぃなと考えた俺は執務室の窓を開き、新鮮なケムリを吸って吐いてをしていると秘書艦サミー子がグチグチ文句タレてきた
「ナニが怪我人ですか、大して痛めてないでしょう?」
「痛めたよ、オマエ、俺をサイボーグかナニかと勘違いしちょりゃせんか?」
まぁ、サイボーグでも痛いのは痛いのだろう、たぶん
「ちなみに提督、なんで最後は手を抜いたんですか?」
「抜いてないよ、全力全開だったよ」
「へぇ…」
「なんだそのツラは?卿は私を侮辱しているのか?」
「してませんよ」
「ったく…」
こやつめ、相変わらず勘の……いや癇に障るな、コイツのこーゆートコがムカつくのんだよ
次回から通常営業、です