リターン・オブ・不幸回
【登場人物】
扶桑(3)
苦痛を与えぬ有情の航空戦艦
山城(3)
デキた妹、姉様以外は便所に吐かれたタンカスと思っている
提督(33)
空気が読めるバットガイ
「…見て山城、なんと宝くじが当たったのよ」
「さすがです、姉様」
「…当たりくじなんて初めて見たからどうしたらいいのかしら?」
「たしか、まずは最寄りの宝くじ売り場に持って行くと聞いた事があります」
「…そう、山城は物知りね」
どうすれば浜風ちゃんをレ●プできるのか?
このアツい議題を徹底討論しようと俺は五月雨と共に近所のファミレスに行く為に歩いていたら、前方から不幸感の漂う戦艦がやって来た
「…あら?提督とサミ……サミドラさん、こんにちは」
「よぉ」
「五月雨です、こんにちは、どこかへお出かけですか?」
「…えぇ、近所の宝くじ売り場へ」
「なんと姉様が宝くじを当てたのよ」
へぇ…当たったんだ、どうせ300円だとは思うが、姉様からは幸福の波動が漂い、妹はまるで自分の事の様に誇らしげに胸を張っていた、っーか乳デケぇなコイツ
「ふ~ん、おめでとさん」
「…フフ、ありがとうございます」
「宝くじを当てた姉様に頭が高いわ、糞人間」
「なんでテメーに糞人間呼ばわりされにゃいかんのだ、舐めてんのか?」
「…そうよ山城、糞人間なんて言ったら提督が傷ついてリストカットしてしまうかもしれないわ」
いや、そこまでメンタル弱くないです、姉様
「申し訳ありません姉様」
「…いいのよ、提督、どうか山城の非礼をお許し下さい」
そう言いながら姉様はその場に両膝をついて座り深々と頭を下げようとする
「いやいやいや!いいから!そんなに気にしてないから!立って!ほら!服が汚れるから!」
「…なんて慈悲深い、まるで菩薩のような方ね、山城」
菩薩はアンタだよ!妹の方は三面怒りのアシ●ラマンみてーな顔でこっち睨んでるよ!
「ところで、提督とサミダ……サミダロさんはどちらかへお出かけですか?」
「まぁな」
「五月雨です、近所のファミレスですけど」
「…ふぁみれす?」
「ファミリーレストランの略称です、姉様」
「…そう、山城は物知りね、私はてっきりふぁみこんの仲間か何かかと…」
「ファミコンをご存じとは…さすが、姉様は博識です」
「…そうかしら?フフ…」
姉様の無知を逆手に取り、逆に博識と誉めるとは…
いつ如何なる時も姉様をアゲる事を忘れない妹の鑑だな
「…そうだ山城、私達もこの宝くじをお金に換えて今日はふぁみれすで食事にしましょう」
「なんと!?」
「…フフ、この当たりくじの幸運をアナタにも分けるのは当然の事でしょう?」
「なんと………なんと慈悲深いッ!姉様こそ天より舞い降りしエンジェルッ!」
「…遠慮なんかしたらダメよ?好きなものを食べていいのよ?」
…たぶん300円なんだけどな、アレ
どうしよう、すげぇ言い辛い、しかしなぁ~
「五月雨」
「ムリです、私にもムリです」
…仕方がない、姉様の笑顔を曇らせるのはあまりにも忍びないな
「あの…扶桑さん?」
「…はい?」
「実はその宝くじ、宝くじ売り場に持って行かなくてもお店で直接使えるんです」
「…まぁ、そうなのですか?」
「ですので、ボクらと一緒に行きませんか?ファミレス」
「…私は構いませんが、どう?山し…?」
「山城クゥーン!!ちょっとあっちで話しよーかァー!」
俺は山城の肩に手を回してズルズルと引きずり姉様から十分な距離をとった
「ちょ!イカクセー手で触んな!殺すぞ!」
「待て待て待て、まずは俺の話を聞け、姉様のあの当たりくじ、たぶん当たってるって言っても300円だ」
「さ…300円ッ!?」
「10枚買えば1枚は当たるんだよ、残念賞みたいなもんだ」
「ざ…残念賞ッ!?」
「いいか?見たところ姉様はアレが何等なのかすらわかってない、このまま宝くじ売り場に行って300円渡されたらどうなる?」
「姉様のコトだからきっとその場でリストをカットを…」ガタガタ
「だからだ、とりあえず一緒にファミレス行って支払いん時に俺が姉様からくじを預かり、俺が現金で払う」
そうすれば姉様は宝くじで払えたのだと納得する、痛いのは俺の財布だけで誰も傷つかない最善の手
「なるほど…底辺にしてはナイスな手ね」
「だろ?だから協力しろ」
「姉様の為だしね、わかったわ、今は協力してあげる」
「…提督、山城?どうしたの?」
「なんでもないっすよー!ちょっと山城クンが国語の問題ワカんないってコトだったんでー」
「えぇ、もう解決しました、姉様」
「…そう、フフ…山城ったら提督と肩を組んで、とても仲が良いのね」
「え?えぇ…私、提督をリスペクトしてますから」
「あ、あぁ、俺は山城みたいな優秀な部下が居て嬉しくて涙が止まらないな」
「…フフ」
結局この日、ファミレスで4万ぐらい払った