【登場人物】
睦海少尉(新提督)
アケコンなら負けなかったと言い張る負けず嫌い
香取先生(先生)
数多のワルどもを更生させてきたアツい熱血教師魂を持つ教育者の鑑
鹿島先生(普通にイケメンが好き)
三蔵一行なら普通に三蔵が好き
前回までのあらすじ…
このままでは終わらんぞぉー…終わらんぞぉー…らんぞぉー…
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拝啓、姉さん
試用期間とは言え提督として着任し早2週間が経ちました
兵学校での教訓を活かし日々是勉強の日々です、配属先にいる艦娘達は皆これまで数々の任務をこなしてきた経験と豊富な知識があり、本当に頼りになる艦娘達です…
「はぁ…」
ここに来て早2週間、着任前は毎日がワルのオリンピック状態と聞いていたけど、意外にもそこまで荒れている様子はなく、少し拍子抜けだなと感じているのも事実…
しかしッ!!
問題がまるでないワケじゃない、むしろ問題があまりに難し過ぎて手が出せないのが現状である
「陸海少尉、コーヒーをどうぞ」
「ん、あぁ、ありがとう…」
秘書艦(仮)のネームプレートを付けた五月雨はこだわりの豆と器具で淹れたコーヒーをボクの机に置いた…
正直なところ、五月雨の淹れてくれるコーヒーは普通にマズく、好き好んで飲みたくはないのだが勧められると断り辛い…
コレを毎日飲んでいたらノイローゼになりそうな気がする
「あ、そうそう、陸海少尉、今日は香取先生がお時間がとれれば教育棟に顔を出して頂けますかって言ってましたよ」
「教育棟…?」
教育棟、駆逐艦以下の艦娘には所謂、義務教育のようなものを受けるのが必須らしく、出撃や遠征、訓練などの合間に学業の時間がある
たしか教員免許を持っている練習巡洋艦が教鞭を執ってるとかなんとか聞いたな…
「…わかった、行こう」
「行くんですか」
「いや、行くけど……え?なに?何か問題でもあるの?」
「いえ、特にないですけど…」
■■■
皆さんこんにちは、練習巡洋艦、鹿島です♪
新しい年が明けてすぐ、突然メガネ……じゃない、提督が左遷されて(明石さんも)もう二週間も経ちました
正直、最初は戸惑いもありましたがすぐに新しい提督が着任し、基地は大きな混乱もなく不気味な程に通常営業です…
………不気味なほどに
「鹿島、テストの採点は終わった?」
「え?あ、あぁ、うん、今やってる」
今、採点しているのは冬休み明けに実施した冬期実力テスト、ウチの子達は基本バカばかりだけど、学業は学業でキチンと手を抜かないでやる!と言うのが基本方針らしく、メガネ……前の提督と香取姉ぇは教育に関してはわりとうるさかった
「え〜……なになに、2つの軍が戦争をしています、開戦当初A軍は20万、B軍は5万です、1日目の戦いが終わりA軍は19万になりB軍は4万5千です、以降もA軍は1日1万、B軍は1日5千づつ減っていきます、1週間後に勝っているのはどちらの軍でしょう、か…」
算数の問題かぁ〜…ってか香取姉ぇの作った問題なんだけど例えが物騒だなコレ、リンゴの数とかじゃダメだったのだろうか…まぁいいや、え〜……
清霜の答え『たぶんB』
リベッチオの答え『たぶんB』
たぶん、たぶんかぁ〜……たぶんで答え決めちゃダメなんじゃないかな〜…ってか計算してないよね、この子達、知ってたけど
狭霧の答え『A軍(A軍130000 B軍15000)』
天霧の答え『しらす』
狭霧ちゃんはまともで良かった、だよね!狭霧ちゃんはまともだよね、先生知ってたよ!って………腹筋の方!腹筋の方!!しらすってナニ!?しらすって!?ってか真面目に解いてないでしょこの子、なんか答案の隅に変なラクガキしてるし…
陽炎の答え『るああぁぁぁぁぁぁ!!!!飛 ● 隊 行くぞォォォォォ!!』
不知火の答え『う、うぉー!なんだあの隊は!スゲー勢いだ!と、止まらねぇぇ!!』
バカかッッッ!!!コイツら毎度毎度いい加減にしろよッ!!飛●隊来ちゃったよ!勝手に五千人将投入するなよ!
「………はぁ」
相変わらず頭痛いわ、いや、ホント…
「鹿島、紅茶淹れるけど飲む?」
「え?あー……うん、飲む」
香取姉ぇの方はもうとっくに採点終わってるらしく、机の上も綺麗なモノだ、ってか、香取姉ぇの机の上が綺麗じゃない状態なんか見たことがないケド…
「あ、香取姉ぇ、私ミルクティーがいいなぁ〜」
「鹿島、公私は分けなさい、公私は、業務時間内は香取姉ぇじゃないでしょ…」
「はいはい、そーですねー」
「ハイは1回、はぁ…まったくこの娘は……」
相変わらず香取姉ぇはカタいなぁ〜……メガ……じゃない、前の提督が左遷されたと言うのに香取姉ぇは何も変わらない
………そう、何も変わっていないのだ
前の提督に対して実の妹である私がドン引きするほど異常に高い好感を持っていたこの姉がだ…
正直、この姉なら前の提督が左遷されるならば共に行くのが当然とばかりに付いて行って不思議ではないし、最悪、前の提督を左遷させた中央に乗り込み、文字通り、壊滅させるんじゃあないかって恐怖すらあった…(その場合、私は中央襲撃の超A級犯罪艦の妹として扱われるのでそれだけはカンベンして欲しいけど)
そんな姉が…………普通なのだ
これが表面的だとしてもあまりにも不気味すぎる…
正直、そろそろ香取姉ぇがナニを考えているのか聞いてみたい
「ね、ねぇ、香取姉ぇ…」
「ハァ……香取先生でしょう?」
「あ、あぁ、うん、そうだね、うん…」
ミルクティーをテーブルに置きつつ香取姉ぇは溜め息を吐き、自分も椅子に座った…
…聞くべきか?いや、聞いていいのだろうか?
本当に?
………香取姉ぇのコトだ、もしかしたらもう中央絶滅作戦の準備を整えているのかもしれない、もし聞いてしまったら私も超A級犯罪艦の仲間入りになるかもしれないリスクがあるッッ!!
いや、ひょっとすると…もう既に中央の偉い人を何人か惨殺しているのかもしれない…ッ!?
普通なら、いやいやアハハそんなワケないないとジョークで済ませられそうな話が、この姉に限っては絶対にないッ!!
香取姉ぇならやるし、できるのだ…
こ、怖い!!怖い怖い怖い怖い怖い!や、やっぱり聞くのやめようかな…
いや、でも……聞いておきたい気持ちもある!そう、たった1人の実の姉のコトだ、妹の私が心配してナニが悪いか!そうだ!ナニも悪くない!
「鹿島?どうしたの?」
怖い!!でも、カミサマ!私にもっと強い勇気を与えてください!よぉーし聞くぞぉー!よぉーし!スゥーハァースゥーハァー…!落ち着いた、よぉーし!
「か、香取姉ぇ…ちょっと聞いていいかな?」
「香取先生、公私を分けなさい」
「妹として聞きたいの!」
思わずテーブルをダァン!してしまった私を香取姉ぇはちょっと面喰らったように目を丸くし、ハァ…と溜め息を吐いた
「ま、今は休憩中として………なにかしら?」
「え?あ、いや……香取姉ぇ、この前、提督が左遷されたコトなんだけど…」
「………………左遷?」ジロッ!
「ヒイッ!?」
こ!怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い!!やっぱ聞かなきゃ良かった!!香取姉ぇに睨まれ…………あ、これ絶対漏らした、ちょっと漏らした
「鹿島、アナタ…」
香取姉ぇは紅茶を一口啜ると口元をおさえてクスクスとおかしそうに笑った
「提督が本当に僻地に左遷をされたと本気で思っているの?」
「え………え?」
香取姉ぇはだからアナタはダメなのよと言いたげに笑った
「え?いや、だって……」
「鹿島ったら……提督は私達が考えているようなコトは全てお見通しよ」
「そ、そうなの…?」
「提督は私達程度の愚か者では想像すらできない智略と鬼謀を持つ御方、この一連の行動にも提督には何かお考えがあると考えるのが当然よ」
その提督のお考えに対し、何を狼狽える必要があるのかしら?と言ってにこやかに微笑みを浮かべる香取姉ぇの顔に迷いはまるでない…
………いや、香取姉ぇ
たぶんあのメガネ、マジで左遷されただけなんじゃ…
「鹿島」
「は、ハヒッ!!」
ダメだ、言えるワケがない…ッ!!間違ってもそれを口に出すべきではない、今、香取姉ぇは私の顔を見て考えているコトを察したんだ……ダ、ダメだ!震えが止まらない
「私達はただ、いつものように変わらずにしていればいいの、わかった?」ニコッ
「は…はぃ、わかった、わかってるよ香取姉ぇ…」ガタガタ…
「あ、そうそう、そう言えば今日、陸海少尉さんがいらっしゃるそうよ」
「陸海…?あぁ、あのなんか小さい提督…」
メガネに代わってやって来た新提督、顔はわりとイケメンの部類に入るけどいかんせん身長が低く、どうにも子供っぽいよね…
私としては普通にイケメンが好きなので、なんかちょっとショタっぽいのはややストライクゾーンから外れている
もう4〜5年したら抱いてやってもいいかな(上から目線)
「失礼のないようにね」
「はいはい、わかってまーす」
「ハイは1回」
次回
VS ハッキリ言って自信作です