【登場人物】
陸海少尉(童●)
若き凡才、新聞沙汰になってから同期からいらん連絡が増えたり着拒されたり…
五月雨(秘書艦仮)
いちいち言葉のふしぶしに鋭利なカミソリが含まれ気味のカミソリ秘書艦
「身分の違いを教えてやろう、この場にいる者、全てに」
いやがらせ演習五連戦の最終戦、ヨコスカ、マイヅル、クレ、サセボのトップエースと名高い歴戦の提督になすすべくもなく完全試合も含む四連敗を喫し、迎えた最終第五戦、兵学校で同期だった因縁の相手を前に、これまでの戦術を全て捨て、新たな戦術眼に目覚めた陸海少尉
昼戦をほぼ完封でシャットアウトし、迎えた夜戦ではここまで温存していたであろう秘密兵器の力を遺憾無く発揮して第五戦の勝利を収めた…
某月、海軍スポーツより抜粋…
ーーー
「ムツミ・マジック、キレッキレの采配ハマる」
「もうヤメて……いや、ホントヤメて」
先日行われた演習五連戦から早三日、海軍御用達エキサイトスポーツ紙を眺めつつズゾゾォォとパックの野菜ジュースをストローで啜っていた五月雨は特に興味もなさげにその紙面をデスクに置いた
「陸海少尉の今後の動向が注目されてますよ」
「今後、ねぇ…」
演習最終戦、実質、この秘書艦がチームの指揮を執って勝利を収めたワケだけど、対外的には僕が指揮をしたコトになっており、海スポなどで大きな扱いを受けている…
僕は提督と言っても研修中みたいな身だし、ここでの研修期間ももうじき終わりになる
「とりあえず中央から偉い人が来るみたいですし、そこで進退とかなんとかなんらかのお話がありそうですね」
「言い方ァ!」
ナニが進退だよ、まるで僕がなんかやらかしたみたいじゃないか…
いや、まぁ、たしかに僕の今後に関しての話はあると思うんだけど、考えられる未来はだいたい3つ……
①このままここで正式な提督に就任
②別の基地で正式な提督に就任
③クビ、現実は非情である
僕がマルをつけたいのは普通に②だが、僕に決定権はないし、それに……
「どうしました?」
「いや……別に」
①の選択肢もないワケではないけど、正直、この髪長秘書艦を始めとし、この基地に巣食う艦娘達を上手くやっていける自信はない…
「………まぁ、なるようにしかならないか」
「提督(仮)、コーヒー飲みますか?」
「遠慮しておく」
◆◆◆
「あーもしもし?ワシワシ、ワシだよワシ、あーそうそう、ワシ」
海軍中央司令部、梶輪大将の執務室…
先日の公開演習の件で聞きたいコトがあると呼び出されたヨコスカ所属の川奈大佐とその秘書艦叢雲…
「ヒトを呼び出しといて電話してるとかないわー」
「叢雲」
「ハイハイ、口が悪くてスイマセンね」
川奈大佐の秘書艦である叢雲は誰が見ても心のこもっていない反省の弁を述べたもののこの場に居る誰もが気にしていなかった
「あースマンスマン、で?なんのハナシだったか?」
「いや、呼び出しといて用件忘れるとかないでしょ…」
「ま、軽いジョークじゃ、小粋なテイトクジョーク」
「…」イラァ…
「叢雲」
「…わかってるわよ」
イラっときたものの、とりあえず自分の提督に軽く諫められた叢雲はテーブルに出された麦茶を飲んで気分を落ち着かせようと思ったが出されていた麦茶は微妙にヌルかったのでちょっと微妙な気分になった…
「で、川奈、オマエ的にはどうだ?陸海は…」
「狂犬の血脈ですね」
「そうか〜」
梶輪大将はそうかそうかと頭を掻き、ま、しゃーなしだのとタバコに火を点けた
「陸海少尉はこのまま続投ですか?」
「フーッ〜…いや、そうはならんじゃろ」
さすがに荷が重いと付け加え、紫煙を吐き出した梶輪大将だったが、叢雲から露骨にイヤな顔をされて無言で大将の背後にある窓を全開にされた
「ま、陸海はどっかテキトーなトコで裸一貫、大提督に俺はなる!とガンバってもらうわいガハハハ!」
「ガハハハじゃないわよこの駄オヤジ、悪質な新人潰しか!」
「新人潰しとは人聞きが悪い、オイ川奈、オマエの秘書口悪すぎくないか?なぁオイ」
「…若干口が悪いのは認めますが」
「ヒドくない!?」
ただ、それを含めて俺の秘書艦は彼女しかいませんから…とナチュラルに一言付け加えられるのがイケメン提督…
「梶輪大将」
「なんだ?」
「陸海少尉を動かすとなると、あの基地には今度は正式な責任者が?」
「フーッ〜…オマエ行くか?執務室にエアコンついとるぞ」
「お断りします、過度なエアコン苦手なので」
「カッカッカ、小粋なテイトクジョークってやつだ、カッカッカ!」
「…それで?誰が行くんですか?」
「ま、そこは今、鋭意調整中ってヤツだな」
「調整中ですか」
次回、健全鎮守府最終回