逆襲のオーク ~オーバーロード~   作:脳筋プレイ

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1章
プロローグ


高く青い空の下、サバンナが広がる大地の一点に周辺には不釣り合いな建築物があった。

白い石で作りの家であり、見たところ基礎など考えておらず、ただ積んだだけのような家。

さしずめ大理石でできた家であろうか、大きさはマンションの1室ぐらいの大きさであり、その中に影が一つだけ見えた。

 

その影は人型だが人にしては大きく、2mほどの大きさで身体も分厚い筋肉で覆われていた。

皮膚は緑色をしており、口は凶暴と思わせる牙が下から上に向かって生えている。豚鼻に尖った耳のためビジュアルはお世辞にもかっこいいとは言えないが見ようによっては愛嬌がある風貌をしている。

俗に言われるオークと言われる亜人である。

 

「あー疲れたー。」

 

オークが誰も居ないためそんな独り言を呟くと家の入り口から返事が返ってくる。

 

「動いてもおらず、本を読んでいるだけなのに大層なお言葉ですね。勲司様。」

 

口調は丁寧だがきつい発言である。しかしそこには感情が篭っていないため表面上のものだけだとわかる。そんな言葉を返したのは頭にはフリルのカチューシャ、黒と白の丈の長いエプロンドレスを着用したエルフだった。

 

勲司呼ばれた男はストレッチをするように身体を伸ばしながら答える。

 

「いやいや、頭を使うとカロリーを消費するんだよ。それに目だって疲れる。」

「疲労無効と食事不要のマジックアイテムを装備している御方がそのようなことを仰らないでください。私なんて神経を張り巡らせて外回りをしてきたばかりですよ。」

「そうだったな。ご苦労。それでノエミよ、成果はどうだ?」

「はい、ご報告いたします。周辺約3キロはサバンナが広がり所々が深い谷底があります。生物に関しては知的生命体は発見、接触ができませんでした。馬のような中型の動物を発見しましたが知能は低く接触をしようとしたら逃げられました。狩りますか?」

「いや、まだ狩らなくていい。何があるかわからんから無用な殺生は避けろ。」

「畏まりました。」

 

彼ら二人は先日、この世界に飛ばされた【Yggdrasil(ユグドラシル)】の『プレイヤー』と『NPC』である。

彼らが今いる建造物もユグドラシルのシステムの一部である「ハウジング」機能によってプレイヤーの勲司が作製した家であり、それに伴い従者を一人作ることができる。その時に作製した従者がメイド服を来た女エルフのノエミだ。

 

勲司が所属していたクランはクラン名「宿り木」といい、凡百とある中小クランの一つである。特にPvPをやるわけでもなく所謂狩り系のまったりクランと言われるのに分類される。

そのためホームなんてものは持っておらず、集まる人もゲームを自分のペースで楽しみたいという人ばかりであり、自然と社会人のみで構成されるようになった。

大人な性格な人たちばかりなのに、クランハントでは平気で無茶をしたり、狩り中にチャットが盛り上がりヒールを忘れてタンクを死なせてしまうなど日常茶飯事であった。

偶然出たレアアイテムをどうするか処遇に困っていたらPvPのガチギルドに全滅させられ奪われたのも今となってはいい思い出である。

 

しかしそういった所謂まったり系クランの宿命であろうか、最全盛期をすぎると24人いたクランメンバーも一人、また一人と少しずつ人が減っていきいつしか一桁になってしまった。

理由のほとんどがリアルが忙しくなったり、結婚したなどが挙げられるため誰もが一切不平不満を言わず半数が何も言わずフェードアウトする中、引退宣言をした人には明るく見送っていた。

 

そしてクランメンバーが勲司とあと残り一人になったとき、勲司もリアルが忙しくなり無言でフェードアウトしてしまったのである。リアルが落ち着いたらすぐ戻るという気持ちもあったが、最後の一人にしてしまうことを宣言するのが言い出せなかったのもある。

勲司自身も多くのメンバーを明るく祝福し送り出したが内心ではやはり不満があったのだ。

なぜあんなに楽しい時間を一緒に過ごしたのに捨てれるのか。まだまだ一緒に遊びたいのになぜ?と……

 

勲司自身辞めていく人の理由なんて頭ではしっかり理解している。が、感情が理解を拒むためなんとも言えない気持ちに囚われ続けてしまったのである。

そしてそんな想いがあったからこそ何も告げずフェードアウトするという行為をとってしまった。

 

そして勲司が最後のログインをして2年後、ユグドラシルサービス終了の知らせを偶然にも巡回していたネットニュースのサイトで見つけた。

引退してしまったがいままでで一番楽しかった日々を思い出し、もしかしたら同じように最終日に記念でログインするかもしれないという淡い期待を込め、ユグドラシル最終日に仕事から帰ってきた彼は23時を回っていたがすぐさまログインをしたのである。

2年経ってもあれだけハマりこんだゲームの操作は身体が覚えており、自然とコンソール立ち上げクランメンバーのログイン履歴を確認する。

 

しかし誰もログインをしていなかった。

 

最後にログインをしたメンバーを確認すると最後の一人にしてしまったメンバー(最終的にクラマス)タスカ兄ィの日付が、恐らく勲司が最後のログインしたであろう月の約1ヶ月後を記していた。

 

勲司は寂しさと罪悪感を感じながらどうしようかと思いふける。

もしかしたら残り1時間で誰かログインするかもしれないという微かな希望を抱き、サービス終了でサーバーが止まるまで待つことにした。

 

クランの拠点となるホームがないためPOPする場所は人それぞれ違うがクランリストですぐにわかるため、そのまま自宅で待機することにした。

改めて家を見回してみるといくつかの思い出が蘇ってくる。

ハウジングシステム実装と同時に精力的に取り組み、ロールプレイ寄りを好む勲司は「オークと言ったら無骨な造りじゃないと」と良い石でできた風通しのよい家をデザインした。

大理石を意識して色は白であり、食器類も木の器、ベッドは石を切り出しものに簡素なシーツをかけただけある。

調理場も石に穴を空けただけのような竈とボコボコの鉄の鍋が置いてある程度だ。

 

そして一人作れる従者は女エルフにした。

こんな簡素な家なのに見目麗しいエルフがメイド服で隷属させれるとか最高だよね。という少し倒錯した嗜好は今思い出すと少し、いやかなり恥ずかしい。

唯一の救いは勲司自身にキャラデザインのセンスが皆無だったため他のプレイヤーが公開しているプリセットを使わせてもらったためデザインに自分の性癖が完全には反映されていない点であろうか。(それでも一番好みなプリセットを選んだ)

上下関係ははっきりしてるのに敢えて辛辣な言葉や毒を容赦なく主人に吐くという設定を加えるところがより彼の趣味の悪さが伺える。

 

そんな家を全クランメンバーに自慢したが多くのメンバーは乾いた笑いをしていたことに勲司は気づいていなかった。

そんな彼にとって自慢のホームで目を瞑り、思い出に浸りながらサービス終了間際になったとき、ワールド全体に発言できるメッセージがお祭り騒ぎになっていた。

おそらく、都市部に多くの人が集まり、労い、別れの言葉を告げているのだろう。

 

そして0:00を迎えたと同時にメッセージは静かになった。

しかしネットから覚醒する感覚がやってこないことを不思議に感じ目を開けるとそこは日付変更前と変わらないゲーム内の我が家だった。

 

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