小さな村があった。
そこに住む者もまた人のようであって人ではない。
身体は人だが首から上が人の
彼らの国は大国であり、同じ大国であるビーストマンの国と日夜戦争に明け暮れていた。
元々彼らが住む土地は
しかしビーストマン達の攻勢により、国と分断されてしまう。
彼らはそのまま滅ぼされるぐらいならと、大事な物だけを持って逃げた。
竜王国を抜け、法国を進み、彼らは僅かな数で逃げたのだ。
形はどうあれ一度国を捨てた身である彼らは祖国に戻ることはできず、遠く離れた土地に根を張り少ない同族での生活が始まった。
不運にも国から孤立した彼らは幸運にも隣人に恵まれた。
群雄割拠の亜人紛争地帯の
元々思考回路が似ていたことや
口約束だけであり人の社会のように書面や担保といったものは存在しない。
しかしそこにはお互いが信じる義があった。
片方は自分たちの神と祖霊に恥じぬため。
もう一方は自分たちを導いてくれた偉大な王の教えを守るため。
そしてその協定は長年崩れることはなく、お互いがそれなりに繁栄したと思われた時、協定は破られた。
意味を成さなくなったと言ったほうが正しいのか、一方が巨大な存在に喰われたのだ。
話では西に逃げたとも聞いたが確かめたわけではない。
その巨大な存在は
隣人が喰われた今、次は自分たちではないか。
また逃げたほうがいいのではないか。そんな考えがよぎった。
しかし望まず祖国を捨ててしまった彼らにとって新しいその村は小さいながら彼らにとって間違いなくそこは
偉大な王によって国とはどういうものか教えられてきた。
その教えを元に自分たちで一から作った国を今度は自ら望んで捨てることはできなかった。
今度こそは国と供に……。そんな思いを胸に彼らは戦いに向けて準備をしていた。
そしてある日……。
「急報!急報です!」
「とうとう、トロール達が攻めてきたか。」
「いえ違います!」
「ではどうした。」
「そのトロール達が……敗走しました。」
「なんだと!」
それもそのはず、その地に住んでいたオークは全滅、噂では西に逃げたとも聞いたが我らも彼らと同じくトロールを1匹足りとも倒せる術をもっていない。
そしてその地の北にはアベリオン丘陵があり、ダークドワーフが住むというが彼らは自らせめて出ることはまずない。
東は元々トロールの支配地であるがそこより更に東は人間の国だ。
「もしや人間が攻め滅ぼしたのか。」
彼らが知る人間は以前までは食料となる存在でしかなかった。
しかし偉大な王の教えとここに辿り着くまでに自分たちを遥かに凌ぐ個体が生まれる存在であるということを知った。
「いえ、それが……オーク達が攻めた模様です。」
信じられない報告であった。虚偽ではないかとすら疑った。しかし西へ逃げたのならばさらに西に聖王国なる国が存在する。そこの力を借りたのならばありえない話ではない。
「どれだけの規模で打ち勝ったのだ?」
「正確な数はわかりませんが50人も居なかったようです。」
「マジックキャスターやオーク以外の強力な種族は居なかったか?」
「いえ、居なかったようです。見事に緑一色であり全員近接で直接攻撃を行うか矢を打っているだけでした。しかも……オーク側に被害はでなかったと報告があがってきています。」
ありえない。
そんな言葉しか思い浮かばなかった。
「ただひとつ、オーク全員を指揮する者が居たという情報が入っています。それもとても統率された指揮だったと。」
以前は一方的に喰われ滅ぼされる寸前までいったにも関わらず再びオークのみで打ち勝った。
しかも知能が低いオークに指揮する者がおり、被害は0。
だがここに至って一つの可能性に思い至った。
「もしそうならば……確かめねばなるまい。」