逆襲のオーク ~オーバーロード~   作:脳筋プレイ

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2章
勢力


部族名を決めてから2週間が経過した。

旧オーク村から資材を全て運び終え、村の拡張工事も一息つくことができた。

 

そこで次に考えたのが周辺の情報収集である。

グルムの情報から周辺の種族と関係を整理することにした。

 

「北にはアベリオン丘陵が広がっておりダークドワーフの縄張りとなっている。西は旧オーク村があり、さらにそこより西には聖王国と呼ばれる国がある。東は元々ゴブリンとオーガ、さらに東にトロール、そこからさらに東に人間のエリアになっているが離れすぎているため国名を知らない。南には牛頭人(ミノタウロス)の支配地があり、更に南のエイヴァーシャー大森林に住むダークエルフやエルフと一触即発の状態が続いている。といったところだったな。」

 

グルムの知識はトロールに追われる前であり、隣接地域以外は他種族から得た情報が多い。そのためどのように情勢が変化しているのか調べる必要を感じた。

 

「そうじゃ、ダークドワーフとはほとんど接触がないため敵対関係にあるわけでもないが決して友好的ではない。下手をすれあそれこそちょっとしたことで敵対関係になるやもしれん。」

「攻撃するわけではないが、ダークドワーフはどれくらい強いんだ?」

「種族としての強さは俺らよりやや劣る。じゃがそれは正面からぶつかった場合じゃの。」

「武具の質の違い……ということか?」

 

ドワーフといえば背丈が低く、豊かなカイゼル髭を生やし、大酒飲みで豪快。技術も冶金術に優れほとんどのものが金属製の武具を作れる種族というのがユグドラシルでの設定だった。

 

「その通りじゃ。奴らは丘陵で採取できる金属を加工し、優秀な武具を多く持っておる。優秀なダークドワーフなら魔法武器や防具も作ることができるみたいじゃ。」

「それは……厄介だな。」

 

魔法が付与されば武具は一定以上の質が保証された金属でなければ付与ができない。

たとえ魔法が付与されてないなくても並の武具と比べても優秀な性能があり、それに魔法を付与することで高い効果が期待できる。(当然値が張るが)

 

「さらに言ってしまえば奴らは正面からの戦いはせん。」

「どういうことだ?」

 

ドワーフが魔法や弓矢が得意と聞いたことがない。自慢の力で相手を叩き潰す戦い方がドワーフの基本的な戦いかただったはずだ。

 

「奴らは丘陵で金属を採掘しておると言ったじゃろ。採掘速度が異常なんじゃ。恐らくどこをどう掘ればいいか勘でわかるんじゃよ。」

「ああ、なるほど。つまり離れ場所から地下を掘り敵陣の真下まで掘ると。」

「そうじゃ、元々やつらの住処は丘陵で攻めづらい。攻めあぐねている間に掘り進み。」

「夜間兵が集まって休んでるところを、ズドン、と。」

「それ自体防げても進軍路が落とし穴だらけになっており、掘って埋めたわけではなく地面の下から地表を薄くしているので見た目ではほとんどわからんのじゃ。」

「装備により戦力の質はダークドワーフの方が上、地の利と自分たちの特性を最大限に活かした戦術。少なくともいま事を構える相手ではないな。」

「そうじゃ。幸い奴らは平地には興味はない。鉱石が多く取れる山脈や丘陵を好む上、好戦的ではないからの。こちらから手を出さねばおとなしくしておるじゃろ。」

 

グルムの言うとおりではあるが、優秀と言われる武具を保持し、採掘や土建が得意なら是非欲しい戦力であると勲司は考えた。

 

「では南の牛頭人(ミノタウロス)は?」

「そいつらは意外と話のできる奴らじゃな。」

 

意外である。

牛頭人(ミノタウロス)といえば大抵モンスター扱いされており(オークもだが)野蛮で好戦的(オークもだが)で話のできる種族とは思えなかった。

 

「おそらく俺等に似た性質なんじゃろうな。」

「納得しました。」

「ん?そうか?」

 

シンパシーのようなものを感じたのだろうと無理やり納得したがどうやら違うようだ。

 

グルムが言うには昔、遠い東の地にある牛頭人(ミノタウロス)の国からきた一部らであり、国自体は健在のようだが戦争中に相手の戦略で切り離されここまで逃げ延びてきたらしい。

最初はオーク達も自分たちの南に根を張った新しい種族に警戒したみたいだが向こうから使者がやってきて協定を結んだとのことだ。

話を聞く限りでは文化的にはオークとそれほど変わらないようだが考え方がオーク以上に洗練されている印象を受けた。

協定は簡単な情報交換とお互いの村に不干渉でいようという内容だった。

お互い窮地の際協力や手助けはしないが攻めもしない。つまりは不可侵条約のようなものだったのだろうと推察できる。

 

 

「じゃが我らがトロールに追われたことによりその約束もすでに無効になったじゃろう。一度滅んだようなもんじゃからな。向こうはすでにオークが滅んだと実際思っておるかもしれん。」

「では……。」

「攻めてきてもおかしくはないじゃろ。だが先ほど話したように決して話の通じない連中ではない。それに向こうも南の大森林勢力が長年睨み合っておるからの。下手に動けんじゃろ。」

「楽観視はできないが、必要以上に警戒する必要もないと。」

「そうじゃ。」

「では改めてこちらから使者を送る手は?向こうに使者という概念があるのはわかっているため再度約束を結び手もありでは。」

「そうじゃの。このまま放置するよりはマシじゃろ。向こうも無駄に敵は増やしたくはないじゃろうし。」

「ではあとで使者を決めましょう。この村で文字の読み書きできるものは?」

「儂だけじゃ。」

 

規模こそ小さいもののこれは立派な外交だ。ならば決まり事を書面に認める必要がでてくる。

 

「前回はどうしたんだ?」

「向こうがすでに書面を作っておったからの。幸い共通文字じゃったから儂が読んで周りに聞かせ、儂が署名した。」

「ほかに文字の読み書きできる者がいないのはなぜ?」

「必要ないじゃろ?基本は敵は打ち倒し、屈服させるものじゃ。」

 

前言撤回。牛頭人(ミノタウロス)よりオークのほうが野蛮で好戦的だった。

牛頭人(ミノタウロス)の理性的な接触がなければきっとこの一族は滅んでいたかもしれない。

 

牛頭人(ミノタウロス)もこうするのは珍しいとは言っておったがの。偉大な王の教えに従っただけだとも言っておったの。」

「偉大な王?」

「やつらが言うには牛頭人(ミノタウロス)の国を治めておった偉大な王とのことじゃ。文字を教え、階級を作り、文化を与えてもらったと言っておったの。」

 

牛頭人(ミノタウロス)の中にも改革ができる賢いものが生まれるのかと感心した。

 

「ではグルム殿と護衛を連れて近日中に牛頭人(ミノタウロス)の村に行ってもらおう。」

「了解じゃ。任せておけ。」

 

勲司はオーク村の教育を実施する必要があると心のメモに書き留めておいた。

 

「次に西の聖王国はどんな国なんだ?」

「人間が多くいる国としかわかっておらんの。エルフたちのように人間に近い亜人を除き、基本的には我ら亜人を敵と認識しておる。近づくだけで攻撃されるためどんな国かほとんどわからんのじゃ。」

 

人間がいる。

その言葉に興味を強く引かれた。

 

(どうにかして接触できないだろうか。)

 

人間が多いのであればプレイヤーかプレイヤーの情報が得られるかもしれない。

勲司もこの数日間でプレイヤーが持つ力やアイテムがこの世界においてどれだけ強力な存在かすでに理解していた。

そしてその力が世界に置いて異常であるならプレイヤーの数も極めて少ないのではないか。そんな考えに至った。

もしかしたら自分以外には誰も居ないのかもしれない。そんな孤独感に苛まれるのはごめんだ。

ならば僅かでも可能性があるのならば情報を集め、他のプレイヤーの足跡を見つけたい。

 

「こことの接触は避けるべきじゃな。」

 

そんな思いとは裏腹にグルムは勲司にとって非情な進言をした。

 

「そうじゃろ?ここから距離がある上、こちらから近づかなければこちらに被害はないのじゃ。人間は基本的に亜人にとっては餌でしかないが、強さにはムラがありすぎて未知数なのじゃ。眠っている鼠を起こしたら実は竜だったなどというリスクは背負うべきではあるまい。」

 

現在村の周囲が不安定であるならばその判断は間違っていない。

理性と感情が相反していた。

 

「そうだな。グルム殿の言うとおりだ。」

 

感情ではなく理性でそう決断した。

 

「では聖王国はそれでいいだろう。最後にここより東はどうだろうか。」

「元々ゴブリンとオーガが住んでいたとろこをトロールによって支配されいまでは我らによって空白地帯となっておる。じゃがこのままでは他の種族が流れ込んでくるのも時間の問題じゃろう。」

「トロールは人間に追われてきたと言っていたな。」

「うむ、さきほど申したように人間の強さにはムラがある。恐らく強い人間に追われたのじゃろう。追われる原因は定かではないが大方トロールが人間を襲った報復ではないかの。」

 

強い人間がいる国。

ここにもプレイヤーの手がかりがあるのかもしれないと考えた。

 

「その人間の国はなんという国でしょうか。」

「たしかスレイン法国とか言っておったの。牛頭人(ミノタウロス)達はそこを抜けてここまでやってきたようじゃ。彼らは人間の言葉をある程度理解できるため恐らく間違ってないじゃろう。」

 

これもまた聞いたことない国だった。

 

「しかしよく牛頭人(ミノタウロス)はそこを抜けてこれたと当時は感心したもんじゃ。」

「道程が厳しかったりするのか?」

「いいや、そうではない。法国は人間が作った人間による国家じゃ。人間の繁栄のために他の種族はすべて敵であるという考えなんじゃ。」

 

とんでもない過激派組織である。

 

「唯一人間以外いる種族が人間に近いエルフじゃが、やつらも奴隷であって決してまともな扱いをうけておらぬ。」

「トロールが追われた原因はそこにもありそうだな。」

「まあ、間違ってないじゃろう。周辺としては大体こんなところじゃな。」

 

一番大きな存在はやはり人間が居る、人間の国であるスレイン法国と聖王国なのは間違いない。

問題はどちらも亜人を敵対視しており接触が難しく、情報も入ってきにくいことである。

ノエミを派遣することも考えたが周辺が不安定な状況でノエミを遠くにやるのは得策ではない。

結局のところ、保留という結論に至ったのだ。

 

「では牛頭人(ミノタウロス)の村に使者を送るとするか。できればダークドワーフにも送りたいがそれはまた後日話して決めよう。」

「そうじゃの。では準備にかかるとするかの。」

 

話し合いも終わろうかというところでノエミがやってきた。

 

「勲司様。お耳に入れておきたいことがございます。」

「どうした?」

「はい、少数ではありますが数人の亜人がこちらに向かっております。」

「種族は?」

「それが……。」

 

ノエミからの報告を受けている中、見張りの一人が報告に飛び込んできた。

 

「族長!急報です!」

「どうした騒がしい。いまこちらでも報告を受けている。」

「それが、牛頭人(ミノタウロス)の一団がこちらに向かってきております。」

 

それはノエミが発見した亜人と同じ者たちであった。

 

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