逆襲のオーク ~オーバーロード~   作:脳筋プレイ

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会談

村の入口までたどり着いた牛頭人(ミノタウロス)の一団は門兵に会談に来たので通して欲しいと告げた。

それを聞いた勲司は会談の席まで通すように通達をした。

案内はハガンにまかせ、簡易的な会談の席を作るようノエミに指示を出した。

 

「こちらから出向く手間が省けたの。」

「考えようによっては先手を打たれたとも言える。もしこれが宣戦布告であれば確実こちらの準備が整う前に攻められていただろうな。」

 

相手は会談と言っていた。つまり聞く耳を持ってくれているわけだ。

こちらは取り返したばかりのため戦力が疲弊していると思われ、宣戦布告されるようなこと避けなければならない。

しかしうまくいけば過去のように不可侵条約を結べるかもしれない。

これはピンチではなくチャンスであると勲司は考えた。

 

「グルム殿、ここから牛頭人(ミノタウロス)の村までそれほど遠くないのだろ?」

「通常であれば2日で着く。恐らくトロールとの戦も準備していただろうから斥候もこのあたりに放っていたはずじゃ。」

「ならばすぐにトロールが敗走したという情報が入ったはずだ。にも関わらずなぜ2週間も待ったのか。色々考えられるがそこが今回の会談のポイントになる気がする。」

「勲司様。会談で使用するお部屋の準備が整いました。」

「早いな。ありがとうノエミ。」

「もったいなきお言葉でございます。」

 

ノエミが準備してくれた部屋までグルムと供に移動することにした。

 

会談を行う予定の部屋はそれなりの人数が入れる広さの部屋になっており、床に敷き座を敷き、そこに座って行えるようになっていた。

先に座りグルムと供に使者の到着を待った。

 

しばらく待っているとハガンの声が聞こえてきた。

急な来客で準備が必要だと考えてくれたのだろう、村への到着の報せからここまでそれなりの時間があった。

 

「使者殿をお連れしました。」

「通してくれ。」

 

扉が開き入ってきたのはハガンと10人の牛頭人(ミノタウロス)達。

牛頭人(ミノタウロス)の先頭に居た者は他の牛頭人(ミノタウロス)より綺羅びやかな鼻輪をつけ、身に纏う服装も片方の肩から布を下げたトーガを彷彿さる衣装を着てきた。

その姿を見たグルムは口を開き驚いた顔を見せた。

全員が入室を終え、整列すると先頭にいた牛頭人(ミノタウロス)が挨拶を始める。

 

 

「お初にお目にかかる、オークの族長殿。私は牛頭人(ミノタウロス)族代表、ドラームゥ・マルランケと申す。」

「こちらこそ、私はオークのヤドリギ族族長、勲司・ヤドリギと申します。どうぞお座りください。」

 

座るように勧めるとドラームゥのみが敷き座に座り、他の者は立ったままを維持していた。

彼らはあくまで護衛でありこの会談で口を出すつもりないのだと見て取れた。

 

「久しぶりじゃのドラームゥ殿。まさか族長であるそなたが使者としてやってくるとは……。少し迂闊すぎやせんかの。」

 

その言葉に今度は勲司が驚いた。

元は不可侵条約を結んでいたとはいえ友好的な関係ではない。にも関わらず使者として村のトップが直接足を運んだのだ。こちらから送る予定のだった使者も自分ではなくグルムが行く予定だったのはそのためだ。

 

「お久しぶりです。グルム殿。前に会ったのはたしか最初の条約を結んだときでしたな。」

「そうじゃな。あの時のそなたは族長から命を受け、村の代表としてやってきたはずじゃったな。そしてのちに族長になったと聞いたのう。」

「仰るとおり、私はあのあと族長に就任いたした。そして今回は使者としだけではなく、一族の族長としても参った。」

「私達が貴方達と再び不可侵条約を結ぶに値するかどうか見定めにきた……ということでしょうか。」

「いや、敵対するか否かを見定めるためだ。」

 

直後ハガンとグルムの空気が張り詰めた。

ハガンに至っては腰の剣の柄に手をかけようとまでしたため勲司は手でそれを制した。

 

「よい、ハガン。……場合によってはこの場で宣戦布告をされるということですか……。なかなか肝が座ってる御方のようですね。」

「感謝いたす。だがそれをするかどうかはまず話を聞いてから決断したいと考えている。」

「……どんな話でしょうか。」

「前回の戦、この地をトロールから奪い返したという戦の話をお聞かせ願おう。トロールがこちらを狙っていた可能性が高かったため我らも斥候をこの地に放っておったが斥候の報告だけではにわかに信じられないような話がいくつかあったため、当事者の口からそれを聞かせていただきたい。」

「構いませんが何から話したらいいものか……。その斥候はどういった報告をしていたのですか?」

 

迂闊にこちらから必要以上の情報を流すことは避けるべきであり、相手がどれだけの情報を掴んでいるか確かめなければならない。

 

「我々が報告通りかどうか確かめたい点はいくつかある。50人足らずのオーク()()でトロールに勝ったというのは本当か?」

「そうとも言えますし違うともいえます。戦闘を行ったのはオークだけですが」

 

そこでノエミのほうに目配せをし

 

「彼女は戦闘こそしていないものの私の従者のため補佐させました。なので徹頭徹尾オークのみというわけではありません。」

 

ドラームゥはふむと頷き納得すると次の質問をした。

 

「では指揮をしたのはクンジ族長で相違ないか?」

「その通りです。その功を村の皆に認められ、未熟ながら族長として村の指揮を執っています。」

「その際無傷で勝利したと聞いたが。」

「確かに幸運にも死者は出ませんでしたが、負傷した者は居ませんが無傷というわけではありません。」

 

あくまで謙虚に、そして嘘は()()()()

 

「魔法を使わずにトロールを倒したと聞いたが。」

「言え、魔法は使っています。ただそれがどんな魔法かはこちらの機密情報のためお答えすることはできません。」

「では最後に質問をしたいが……。」

 

護衛たちにドラームゥは目配せし

 

「お前たち、そして失礼ながらグルム殿とハガン殿、そこの従者のエルフ、クンジ族長と二人っきりにさせてもらえないだろうか。」

「「なっ!」」

 

宣戦布告するかもしれないと言ってる相手が村のトップと二人っきりにさせろと要求してきた。これには驚かないほうが無理である。

 

「そのようなことできるわけないだろ。血迷ったか!」

 

再度、剣の柄に手を掛けようとしたため勲司は慌てて静止した。

 

「構いませんよ。グルム殿、ハガン、護衛の方たちと一緒に外で待っていてくれ。」

「なにを!」

「ハガンよ、ここは族長に従おう。きっと我らには及びもつかない考えがあってのことじゃ。」

「かしこ…まりました……。だがドラームゥ殿!武器は預からせてもらうぞ!」

「構わん。危害を加えるつもりもないし、そもそも加えれるとは思えん。」

「なに?」

「早く持っていけ。私はクンジ族長とのみ話をするのだ。」

 

ハガンは苦虫を噛み潰したよう顔をしドラームゥの戦斧を奪い取った。

 

「ノエミよ。すまないがお前も()()()()()くれ。」

「畏まりました。」

 

全員が外に出るのを待ち、静けさを感じ取れた。

 

「クンジ族長。無理を言ってすまなかった。」

「構いません。話を進めたいのと、貴方一人が武器を持っていてもどうということはありませんから。」

「ふふふ……そのようだな。」

 

そういうと手のひらを広げてこちらに見せた。手のひらは汗でびっしょりと濡れていた。

 

「この部屋に入ってから汗が止まらん。暑さからではない。緊張と恐怖からくる汗だ。できればいますぐにでもこの場から護衛と置いてでも逃げ出したいくらいだ。」

「逃げてもいいんですよ。追ったりはしません。」

「わかってて言わないでもらいたい。長たるものが自分を慕ってくれる仲間を置いて逃げれるものか。仮にできたとしても私はもう長としての資格を失ったことになる。」

「それもそうですね。」

 

勲司がフフフッと失笑するとドラームゥは質問を続けたいと言い出した。

 

「すでに負けを受け入れてしまったオーク達を生き返らせたのはクンジ族長だな。」

「確かに私はみなさんに闘うように促しました。しかし元から皆心のなかに闘争心を抱えてたのを後押ししただけです。」

「いや、違うな。彼らはすでに死んでいたのだ。闘う気力を無くし、取り返す気概もなくし、逃げ延びた先で誇るものもなく、種族としてすでに死んでいたのだ。かつての我らもそうだったからな。偉大な王の教えがなければこの地でやり直すことはできなかっただろう。」

「グルムからも聞いていますがその()()()()とはどういった方なのでしょうか。」

 

グルうから説明をきいたとき気になっていたことをぶつけてみた。

 

「あの御方は我らに多くのものを授けてくださった。アイテムや物資というのもあるがそれ以上に我らに文化と与えてくださった。」

「文化を?」

「そうだ、我らは王が我等の地の王として戴く前は寝て動いて殺して食う。それだけの生活だった。いわば言葉を話す野生の獣だった。隣国を攻めては人間や他の亜人を捕らえ食うのが一番の喜びだったのだ。」

「そのような状況だったのか。」

「しかし、王がやってきたとき、我らを野生の獣から知性ある魔獣に変えた。階級を作り、群を軍にし、教養と言葉、食べ物の作り方を教えた。そして我らは国を作り王を王として奉ることにしたのだ。」

「階級とはどのようなものなのですか?」

「それまで我々と他種族の関係は牛頭人(|牛頭人《ミノタウロス)》かそれ以外の食料でしかなかった。だがあの御方はとても慈悲深くすべての生物が食料にされることを是としなかった。故に食料の作り方を教えると同時に牛頭人(|牛頭人《ミノタウロス)》内にそれぞれ地域を治める者、闘う者、守る者、攻める者と分け、他の種族を奴隷とし食することを許さなかった。我らは人間というごちそうを失ったが利用価値を知った。そして言葉を文字を国民全員に義務付け、戦争で功あるものには王自らが報奨を与えることで奮起させた。」

 

それは統治者としてはまるで当たり前のようなことだった。

しかし彼が言ったように野生の獣と変わらぬ生活をしていたものには劇的な変化どこの話ではなく革命と言っても過言ではなかった。

 

「我らの一族は国境沿いだったため闘う機会も多く王からの覚えもよく下賜される機会も多かった。私も王にお会いしたことがあるがその時の感想は今でも覚えてる。」

「どんな感想だったんですか。」

「恐ろしい、だ。底知れぬ力と存在感に出会った瞬間頭を地に付けひれ伏していたよ。事実王は他のどの者よりも強かった。王は斧を一振りすれば竜巻を引き起こし、大地に突き立てれば地割れを起こしたほどだ。」

 

確かにそれは誇張された伝説でなければまさに規格外の存在といえるだろう。

 

「そして今、クンジ族長を前にしたとき王を前にしたときと同じ感想を抱いたよ。これでも族長ゆえにひれ伏すまではいかなかったが。それでは最後の質問をさせてもらおう。今の話をした上での質問だ。」

 

まるでドラームゥは覚悟を決めたかのようだ。

 

「クンジ族長。貴方は()()()()()()?」

 

勲司は心臓が跳ね上がる気持ちだった。

 

「いや、私は東の地にあった既に滅んだオークの部族の者で。」

「そうか。ならばこれは知らないということだな。」

 

そう言うとドラームゥは懐からアイテムを取り出した。

それを見たクンジは驚きのあまり立ち上がってしまった。

 

それはなんの効果もないアイテムであった。

それは泣いているような、怒っているような形容しがたい表情が装飾過多なぐらい掘られたマスクだった。

 

「嫉妬マスク……。」

 

それはユグドラシルプレイヤーの半数以上が入手したであろうアイテム。

 

「これは国境沿いで最もいろんな種族が往来する我が領地にと王から下賜されたアイテムだ。これを知る者が居ればそれは王と同じかそれ以上の存在であると。そしてこれを持つ者はたとえ異形種だろうと王の同志である。そう仰っていた。」

 

たしかにこれを入手できるものは同志である。

2月14日には嫉妬マスクを所持するものはそれを装備して装備していないものを狩るという祭りが行われたほどだ。

勲司は懐に手を居れ、見えないようにインベントリに手を入れる引き抜くとドラームゥが持つマスクと同じ物を取り出した。

 

「やはり……そうだったか……。」

 

ドラームゥは喜びを抑えるようにして声をひねり出した。

 

「貴方の王はいまも国に?」

「いや、ある日突然お隠れになられた。比喩でもなんでもなく言葉通りな。」

「消えた…と?」

「その存在はな。だが偉大なる王の教えは我々にしっかりと受け継がれている。」

「名は?」

「名は不思議なことに誰も知らぬ。みな王としか呼ばなかった。そして王といえば今も昔もその御方のみを指す。だが人間の国ではこう呼ばれていた。」

 

すると忌々しそうにその名を告げた。

 

「『口だけの賢者』と。」

 

どういった意図でその名で呼ばれたのか勲司は理解できなかった。

 

「王は非常に賢き御方でもあった。おそらく自分たちが賢いと思っている人間が自分たちより賢い王に嫉妬して付けた名だろう。」

 

すでに居ない口だけの賢者と呼ばれた男は間違いなくプレイヤーだった。

しかしその存在はすでに居ない。

元の世界に帰ったのか死んだのかすらわからない。

だが勲司は自分一人ではなかったことに喜びを感じていた。

 

「このマスクと同じ物を持つ族長よ、頼みがある。」

「なんでしょうか。」

「我らと同盟を結んでほしい。敵対するかもしれないという失礼は詫びさせていただきたい。」

「不可侵条約ではなくて同盟と?」

「そうだ、お互いが窮地に立った時片方が片方の援軍として協力する。そういった関係だ。」

 

よくて不可侵条約と考えていた勲司からすればこれは非常に魅力的な提案だった。

 

「いいでしょう。同志の国民と我が国民が共に繁栄するために同盟を受け入れましょう。」

「感謝の言葉も無い。」

 

そういうと外で待機させていた護衛とハガンとグルムを中へ呼び戻し同盟締結の旨を伝えた。

そして牛頭人(ミノタウロス)との同盟締結記念の祝賀会を催され、翌日にはドラームゥ達は村へと帰還したのだった。

 

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