「トロールたちはやはり居ないようだ。」
「ほんとほんとー。」
「いい場所が空いた。」
森に6つの光が見えた。正確には2対の光が3つが荒野を覗いていた。
「でもーなんでーあいつらが居なくなったんだろうねー。」
「そんなことどうでもいい。大事なのは先にあの土地をほかの奴らにとられない事。」
背の高い方が疑問を投げかけたが背の低い方がその疑問をばっさりと切り捨てた。
大事なのは現状ですぐに動くことであると。
背の高い方はキャットマン。猫の姿をした人型の亜人である。
キャットマンは敏捷性に優れ、物音を立てずに相手に近づき、その鋭い爪で相手を掻っ切る戦いを得意としている種族である。また夜目が効き闇夜もまるで日中と変わりなく動くことができる。
背の低い方はラビットマン。兎を人型にした亜人だ。
聴覚に優れ、気配察知を得意とする。爪や牙はないがその強靭な四肢から放たれる一撃はたやすく岩を砕く。
「オルビットの言うとおりだ。俺たちがあの土地を支配することのほうが先決だ。」
ラビットマンのオルビットに同意したのは最後の一つ、先の2匹より大きく、横幅もある。
鋭い牙を覗かせたその姿はワーウルフだった。鋼のような肉体で相手を追い詰め、鋭い牙で相手の喉笛を食いちぎる戦いを得意としている。また同族との連携も得意とし、複数で獲物を追い詰めることも珍しくない。そしてその真価は満月の夜にこそ最大限まで発揮できる。
本来この3種族は決して友好的な種族ではなかったが森の中でエルフ達が力を付けていくにつれ徐々に追い詰められエルフに対抗するため3者が手を結んだという経緯がある。
そしてかつてトロールが支配してた地域に他の種族がいないことを仲間から報告を受け、各種族の族長が他の2種族に出し抜かれないように3種族で様子を確認しにきたのである。
「じゃあー今からでもー仲間を率いてー攻めますかー。」
「それがいい。だけど得意な森を離れるのはちょっと不安。」
「別に平地が苦手ってわけじゃねーだろ?」
「まあそうだけど。」
「ならクリュヒャーの言うとおり、仲間を呼んで攻めるぞ。」
そういうと3匹はそれぞれの仲間を引き連れるため、森に消えていった。
◆◇◆
「同盟を組めるとはやりおるの。」
「いや、今回の会談に勝ち負けがあるとすれば完全に俺の負けだ。」
「あちらさんは初めから同盟を組む気でいたと?」
「おそらくは。こちらに同盟を組む価値があるかどうか見定めに来たみたいだからな。」
相手はプレイヤーを知っていた。それがユグドラシルを知らなくとも、別の場所からやってきたこの世界では強い力と変わったアイテムを持つ存在
がいるという知識を持っていた。
そして彼らはトロールとの戦いの情報から検討を付けプレイヤーかそれと同等の存在であれば同盟を組むつもりだったのだろう。
違っていればこちらを制圧出来るだけのなにかを持っていたとも考えられる。おそらくそれは嫉妬マスクと同じようにプレイヤーから下賜されたというアイテムや装備品である公算が高い。
「ドラームゥ殿と二人だけになったときなにがあったのじゃ?」
「大したことじゃない。彼は俺の同郷の者に恩があり、それを教えてくれただけだ。個人の出生に纏わる話なのでソレを知る俺と彼以外に退出してもらっただけだ。」
嘘ではない言葉で濁すがこれで納得してほしいと思った。
「それよりも急いでやるべきことが増えたな。」
「ふむ、送るべき使者の件じゃな。」
「相手の村に常駐する者を置かなければならない。しかし文字の読み書きができるのがグルム殿だけであり、あなたをこの村を離れてもらうわけにはいかない。」
「つまり短期間で儂に文字を教育させろというわけじゃな。」
文字は文化の基礎であり、文字がなくては種族の発展は途中で停滞してしまう。
幸いにも亜人間で使われている文字は共通のものであり、グルムが言うには人間が発明したものだという。
「まずは使者に一対一で短期間で叩き込んで欲しい。使者として送り出したら
「一対一のほうはまだええが、村人全員に教える必要はあるのかの?」
識字率が低いと文字の重要性が理解できないのだろう。
「簡単な活用方法で言ってしまえば村人に連絡すべきことがあれば立て札や観覧用の手紙などで通達すればいい。今後村が発展すれば以前のように村の広場に全員を集めて毎回説明をするというのは難しくなるからな。」
「それもそうじゃの。じゃが大丈夫かの。
「それは族長命令とでも言っておけばいい。それに毎日朝から晩までやらせるつもりはない。毎日1,2時間ほど学んだら外で戦闘訓練をしてもらおう。それを午前と午後の2回に分けて行うことで村の仕事と教育を交代でやってもらうことにする。文字を習得した者から望む仕事を専門的に就けるように取り計らうという飴もつけておこう。」
「それなら皆やる気を出すじゃろう。」
「では使者の専任と教育は任せた。できれば今からやってほしい。」
そういうと勲司は進呈品を選ぶためその場を離れるとグルムは
「やれやれ。隠居しても落ち着けるのはしばらく先じゃな。」
そんなボヤきをこぼした。