逆襲のオーク ~オーバーロード~   作:脳筋プレイ

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出会い

翌日、偵察中のノエミから『伝言(メッセージ)』が入った。

 

「勲司様、いまよろしいでしょうか。」

「どうした?緊急事態か?」

「はい、おそらくですが昨日発見したトロールとゴブリンの集団が勲司様のホームを発見したようです。いまそちらの近づいておりあと1kmほどの距離まで来ております。」

「そうか、見つかってしまったか。」

「はい。おそらく障害物がほとんどない平地でこれほどまで白い建物は嫌でも目立ちます、視力のいい者なら遠くからでもすぐ見つけれるのは当然かと。」

「ちょっと待て。お前はそのことに気づいていたのか?」

「もちろんです。周辺の状況と少し離れた場所から見ればまぬけなトロールでもわかります。わからないのは家からまったく出ようとしない引きこもりのオークぐらいではないでしょうか。」

 

ノエミは勲司が家から出ずに引き篭もっていた理由を十分理解している癖に、まるで人を社会不適合者のように淡々と言い放つ。

 

「……気づいていたなら進言してくれてもよかったんじゃないのか。普段から俺に遠慮無くいろいろと言ってくれるぐらいだから、進言するのに気が引けたわけではあるまい。」

「いえ聞かれませんでしたので。」

 

まるで近頃の若者の模範解答をするノエミに勲司は頭を抱えた。

 

「それに聡明な勲司様ならすでに気づいており、私ごときが考えも及ばぬ策を考えているため敢えてなにもそこに関して命じていなかったのだと考えに至りました。」

「……次からこういった気づいたことがあれば進言してくれ……。」

「畏まりました。それでどうなさいますか?今はターゲットの背後をとっていますが処理いたしますか?」

「見つかったのならちょうどいい。俺が直接少し話をして攻撃をしてくるようなら撃退をしようと思う。レベルの強さがユグドラシルと同じかそれ以下なら虫を踏み潰すより簡単に処理できるだろう。念のためノエミは相手が同格以上だった場合に備えて援護に入れるようにしてくれ。」

「畏まりました。」

「それと全滅をさせるつもりはない。力の差を見せつけて奴らが逃げ出した段階でゴブリンとトロールを1体ずつ捕獲し、他は敢えて逃がす。やつらの拠点を教えてもらおうじゃないか。」

「畏まりました。では私は逃げた者を追跡すればよろしいのですね。」

「そうだ。現在では『刻印(マーク)』の有効範囲がわからないからな。確実に奴らの拠点を押させておきたいから刻印(マーク)が消えない距離を保ちつつ追跡しろ。ただし無茶はするな。確実に生きて帰れ。」

「……畏まりました。」

「よし、それでは彼らを出迎えようじゃないか。」

 

これから起こるであろう初めての戦いに勲司は心を踊らせた。

 

家から出た勲司はすぐに200mほど先に居るその集団を見つけた。

トロール3体、ゴブリン8体と数は偵察にしては多い。

偵察して情報を持ち帰るためではなく可能ならそのまま制圧できるようにするためかもしれない。

勲司の姿を確認したトロールとゴブリンもすぐに武器を構え緊張した状態で近づいてくる。

しかし一人しか居ないこと気づき緊張の気配が緩んだが感じ取れた。

 

(まずは会話からだ。)

 

「やあやあ、君たち。今日もいい天気だね。」

 

トロールは戦闘態勢に入ったにも関わらず話かけてくる勲司にわずかながら戸惑い、会話に応じてしまった。

 

「オークがなぜこんなところに居る。」

 

おそらくこの集団のリーダー格とおぼしきトロールがこちらの言葉を無視して質問を投げかけてくる。

 

(さて、どう答えたものか)

 

「こんなところ?ここはオークが居てはいけない場所なのかな?」

「いいや構わないぞ。ただお前たちはもっと東に逃げたただろ。食われるために残ったのか。」

 

とリーダー格のトロールがガハハハハと下品な笑い声を上げるとそれに釣られて他のトロールも同じ笑い声を上げた。

 

「いやいや、そんなことはないさ。ただ他所から来た身でね。まだここに居を構えて5日しか経ってないからこの辺りの部族間の力関係を知らないんだ。許してくれ。」

「ああ許すとも。ただし俺たちの食料としてな。前に食ったオークは歯ごたえがある肉でうまかった。お前はあれより食える肉が少なくて硬そうだがそれはそれで美味そうだな。」

「なるほど。食った……か……。」

 

オークを食った。勲司はこの言葉に得も言えぬ怒りが瞬時に湧き上がった。

 

「そうだ。この前食ったばぎゃン!」

 

次の言葉を言い切る前にトロールの頭が首まで吹き飛んでいた。

正確には頭上から振り下ろすように叩き潰され首までひしゃげていたのである。

やったのはもちろん勲司だ。

さっきまで手になにも持っていなかったが振りかぶる直前にインベントリから長さが1メートル弱の棒を取り出し先端には装飾過多な魔法用の杖とも取れそうな形状の、面が広いメイスを取り出しており、それをトロールの頭に叩きつけたのである。

 

「グオオオオオオオオオオオオオオオオ!」

 

と残りのトロールが雄叫びを上げ襲いかかってきた。ゴブリンは一瞬の出来事とその一瞬でトロールの頭が潰されたという現実で戦っていい相手か判断ができず遅れて動き出す。

沸々と湧き上がる怒りと戦いへの喜びをぶつけるかのように勲司は片手でメイスを横になぎ払い、トロールの腰を吹き飛ばす。

棍棒を振り下ろしてきた最後のトロールの攻撃を避け威力を見たがレベル相応の威力しか感じ取れなかった。

威力を確認したと同時にメイスでトロールの両足を砕き動きを封じる。

 

遅れて襲いかかってきたゴブリンの攻撃をわざと受けることにした。

トロールであの程度の威力ならそれより攻撃力の低いゴブリンなら大したダメージを受けることはないだろうという判断を下し、どれくらいの傷を負うか確認するためである。

刃物で傷つけられたが痛みという感覚はあったがやはり大したものではなかった。

おそらくユグドラシルでいえばレベル差による最低ダメージの1を受けたということだろう。それとは別に痛みに対して鈍感になっている。そんな感じだった。

実験は終わり、メイスを横一線になぎ払いゴブリンをまとめて4体処分する。すると最初のトロールの頭が回復していることに気づいた。

そういえばトロールといえば種族特性として強力の再生能力を持っていることで有名な種族だ。どうやらここのトロールの特性は自分の知るトロールと変わらないと思ってよさそうだと勲司は確信した。

 

回復したトロールは先ほどより戦意を失っていたが怒りが勝ったのか他のトロールと同じように雄叫びを上げて襲い掛かってくる。

「五月蝿い。」

再び頭を潰す勲司。しかしまた再生をしようとするトロールを見てトロールの特性を再び思い出した。

 

「そういえばお前たちはこうやって潰すんだったな。」

 

そう言うと勲司はなにもない空間に手を突っ込みと手首から先が消え、引き抜くと1枚のスクロールが握られていた。

 

火属性付与(エンチャントファイア)。」

 

トロールの再生能力の効果を阻害する火属性と酸属性のうちの片方を武器に付与させる。

スクロールが使えるのはそれを習得できるクラスを所持している者、もしくは盗賊系のスキルでスクロールを騙して使うしかない。

そして今日まで勲司は盗賊系のスキルを所持していないためノエミに周辺の調査を任せていた。

つまり勲司は種族はオークメイジの系列であり、その上位種族の種族まで達している。そのため自身のみを強化するためにスクロールを使用した。

 

自分たちの天敵となりえる炎を見てトロールたちの動きを止めてしまう。そんなトロールに対して勲司は

 

「焼けた肉の臭いというのを嗅いだことがないんだ。どんな臭いがするか教えてくれないか?」

「ガ…ガガ…」

「ああ、まだ言葉が喋れるほど修復してないのか。なに言葉は必要ない…っさ。」

 

言葉を言い終わると同時に再びメイスで叩き潰す。

ジュウウウという肉が焼ける音と臭いが辺りに充満し、弱点の属性で急所を潰されたトロールは一瞬のうちに絶命した。

 

「初めて肉を焼いたけど上手に焼けたかな?」

 

まだ生き残ってるトロール2体に対してそんなことを言うが返事はもちろんない。

あるのは恐れによる鳴き声だけであった。

腰を潰されたトロールのほうは完治するより先に動ける時点で一目散に逃げ出した。

一方両足を潰されたトロールはまだ歩けるだけの修復が終わっておらず腕の力だけで逃げようとしたので火属性が付与されたメイスで両腕も叩き潰し、ついでに治りかけの足も潰しておいた。

 

「グオオオオオオオオオオオオオオオオ!」

 

襲い掛かって来た時と同じだが今回は意味合いがまったく違う雄叫びを上げる。

 

そしてゴブリンは……すでに居なかった。

 

「しまった。ゴブリンも1体捕まえるんだった……。」

 

トロールに対する怒りとそれによる嗜虐心から、少し楽しんでしまったこととゴブリンの存在を忘れてしまったことを思い出した。

 

「勲司様。お忘れ物はこちらですか。」

 

と見慣れた美しいメイド服のエルフが当然現れた。

脇には縛り上げぐったりとしたゴブリンが1体居た。

 

「すまない。捕らえてくれたのか。」

「はい。捕らえると自分から言っておきながら最初の一撃から殺す気にしか見えなかったため自分で提案したことを忘れていると判断しました。

そしてゴブリンを4体屠った時点ですでに残りのゴブリンが逃げる準備をしていたため、逃げると同時に1体捕獲し、他は刻印(マーク)済みということもあり逃しました。勲司様の忘れ物を置いたらすぐに最初の命令通り追います。」

「あっ……そう……。」

 

相変わらずチクチクと口撃をしてくる。が、こればかりはなにも反論できない。

 

「それでは失礼いたします。」

 

と言い残し姿をノエミは姿を消した。

 

ノエミの登場から退場で怒りと闘争心が一気に下がり冷静になった。気持ちが盛り下がったとも言うが。

 

「さてお二人さん。ちょーっとばかり聞きたいことがあるけどいいかな。」

 

勲司は捕らえた2匹にそう言うとちょっと過激で野蛮な質問が始まったのだった。




・火属性付与(エンチャントファイア)
読んで字の如く
心底痺れさせるさせるための一発芸ではない。

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