逆襲のオーク ~オーバーロード~   作:脳筋プレイ

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オーク

家を出てから西に向かい、逢魔が時という言葉に相応しい光景があたり一面を染め始めた頃、目の前に簡素な木の柵で囲った小さな集落が見えてきた。

 

「何が見える?」

 

ノエミにそう問いかけるとすぐに返事があった。

 

「勲司様が見えます。人数は見える範囲では門の前に2人、櫓にそれぞれ1人の計4人です。もっと居ると思うとおぞましいですね。」

「……つまり同族ということか。ならば下手なことをしなければ襲われるようなことはなさそうだな。」

 

そう言うと軽い足取りで門番の二人に近づいていった。

近づいて初めてきづいたことがあった。

この二人のオークは勲司と少し違っていた。

まず筋肉の付き方が違う。勲司はファイター系ではなくマジックキャスターなため筋肉がファイター系のほと付いていなく、細めのマッチョである。しかしここのオークは肉付きがよく、腹もメタボリックのように出ており、顔も潰れ、鼻や牙も猪のソレに近い。やはり別の似て非なる種族なのではないかと思えるが、勲司には一つだけ気になることがあった。

 

「止まれ!何者だ!同族のようだがどこから来た。」

 

近づいてきた勲司に対して警告を発する。武器を構えてこないのは同族への配慮なのだろう。

 

「私は勲司といいます。後ろのエルフは私の従者でノエミです。ここより西の遠いずっと遠くからやってきた旅の者ですが、道中でこっちに同族が居ると聞いてやってきました。」

 

警戒している相手に少しでも友好的だと示すために丁寧語で接することを試みる。

 

「エルフを従者にだと?変わった奴だな。クンジとやら、部族名を名乗っていないがなぜ名乗らない。旅の者ということは部族を失ったか?」

(部族名?オークは名乗る時○○部族出身の△△のような名乗りをするのが基本だったのか。失敗だったな。)

 

そう考えたがすでに名乗り忘れた上、部族なんて知らない身としては適当なことをいまさら言うわけにもいかなくなってしまった。しかし部族ではなく家族のような仲間のことなら心当たりがあった。しかしー

 

「ああ、ずっと昔に……。いえ、崩壊自体はもっと前から始まっていたのかもしれませんが……。」

 

思わず昔のクランメンバーのことを思い出しつい必要以上に言葉が漏れてしまった。

 

「崩壊?流行病にでもかかったか。それはすまないことを聞いた。許してくれ兄弟。西からきて道中でここに我々が居ると聞いたが誰から聞いた?ここのことを知ってるものはさほど多くはないぞ。なぜここに来た?」

 

そう言われ勲司はトロールが持っていた首飾りを取り出した。

 

「トロールがこれを持っていたものでして。そいつが食ったオークが身につけていたと言っていたので届けに来ました。」

 

すると門番のオークは驚愕の表情で膝を落とした。

 

「デザハム・パラブシオ!おお兄弟……これこそパラブシオ神のお導きか……ありがとう兄弟……。」

 

勲司は嗚咽を漏らし礼を述べる門番の言葉が引っかかった。

 

(今パラブシオと言ったな。やはりあの首飾りはパラブシオを象った首飾りだったか。)

 

パラブシオ。ユグドラシルの設定ではオークを創造した守護神とされており、すべてのオークはパラブシオ神の力を借りて戦っていると言われている。中でも他種族より知力が低く、MPや魔力も低く詠唱速度も遅いオークは魔法を使うのは明らかに向いていない。だが、オークメイジの上位職であるオークシャーマンは自らを傷つけることでパラブシオ神に生命力を捧げ、魔法を行使し、他種族にはない効果を得ることができる。

その中の一つが魔法の強制範囲化である。

出発前に使用したバフは本来一人ずつしかかけられないものである。

加速(ヘイスト)であれば自身とノエミにそれぞれ2回かけなければならないのだが、パラブシオ神の加護を受けているオークシャーマン以上の上位種はこれらを強制的に範囲化し、ユグドラシル内であれば近くにいるパーティーメンバー、もしくはクラン、ギルドメンバー全員に効果を受けることができる。

しかしこの世界においてフレンドリファイアが可能になったのと同じく、一定範囲内に居る敵にも効果が及ぶようになったのではないかと勲司は推察する。

そのためトロールを殺すときに自身が持つ『火属性付与範囲化(エンチャント ファイア オブ パラブシオ)』を使わず、自身のみに付与する『火属性付与(エンチャントファイア)』のスクロールを使ったのだ。

 

「気にするな兄弟。殺したトロールが持っていたものを届けに来ただけです。それは貴方の一族だったのか?」

 

形見一つでここまで泣き、見ず知らずの同族に感謝を示すのだから当然に疑問だった。

 

「血は繋がっていない。だが我ら一族は皆家族も同然。それを殺したトロールどもが許せなかった。しかしやつらを殺すことは我々はできず、これを取り戻すことが叶わなかった……1つではあるが本当にありがとう。」

 

最初の警戒心はどこへやら、すでに感謝の気持ちしか感じさせないオークがそこには居た。

 

「兄弟よ、先ほどの非礼を詫びよう。ようこそグルガ族の村へ。私の名はハガン・グルガ。遠い地の同胞(ハラカラ)クンジよ。族長に変わりおまえを歓迎する。どうぞ中へ入り族長と会っていってくれないだろうか。」

 

ハガンと名乗ったオークは勲司とノエミを通すと族長の元まで案内すると申し出たため承諾し案内をしてもらうことにした。

 

道中に10程度の石を積み上げただけのような建物ががあり、その奥に一番大きな家に案内をされた。

短い距離だが何人かのオークが表に出ており、遠目でこちらを見てしかめっ面で話している姿が見られた。

 

「すまない兄弟よ。村人は私も含め一族以外の同胞を見たことがない。そのため同胞でありながら見た目がまったく違う兄弟のことを珍しく思っているのだろう。気を悪くしないでくれ。」

 

ハガンはこちらが言葉を発する前に教えてくれた。だがわずかに違和感を覚えた。耳を澄ませばこんな声が聞こえてきた。

 

「おいみろよ、エルフだぞ。」

「本当だ、なんて醜い姿をしているんだ……。ああ、気持ち悪い。」

 

違和感の正体はどうやら自分に向けられてる視線ではなく、自分の後ろを見ていたからだ。つまりエルフであるノエミだったようだ。

問題はその言葉の内容である。

 

(ノエミが気持ち悪い?一番いいプリセットを選んだんだが……。この衣装だってメイド服に人生を捧げてるとまで豪語してる作者が公開した自信作で、ダウンロード数も衣装系データでも上位10位に入るダウンロード数なんだけどな……)

 

勲司は公開されているフリーのデータを探している時に見つけた作者のコメントがあまりにも印象的すぎていまでも部分的に覚えている。

溢れる情熱を語ったあと、「ビバ!メイド服!」という言葉に情熱を通り越して執念すら感じたのだった。

 

「種族が違うのですから美的感覚が違ってくるのは当然かと存じます。」

 

ノエミは探知系に優れているだけあってクンジに聞こえるような声は当然ノエミにも届いていたためこちらの心の中を読んだようにタイミングと内容で小声を発した。

 

「しかし私個人を侮辱するならばなんとも思いませんが、クンジ様によって作ってくださったこの姿を侮辱されるとクンジ様を侮辱しているようで非常に不愉快です。屠殺場送りにする許可をいただけないでしょうか。」

「許可するわけないだろ。いいな、絶対に勝手なことをするんじゃないぞ。傷めつけるような事も相手を侮辱するような事も言うな。不況を買う真似だけは絶対にやめてくれ。」

「不本意ではありますが畏まりました。臥薪嘗胆の思いで耐えぬいてみます。」

「その心意気はいいが、復讐を成功させるなよ。いや復讐をするなよ。絶対だぞ。」

「畏まりました。」

「着いたぞ。」

 

そんなやり取りをしているとハガンは族長の家に着いたと教えてくれた。

 

「入る前に忠告をしておく。これは兄弟のためだ。族長はこの村で一番の年長者だがその分大きな力を持っている。見た目こそ我らより小さいがその力は一族の誰も持っておらず下手に逆らえば呪い殺される。言葉には気をつけろよ。」

(呪い殺す?)

「特にそこのエルフ、本来エルフが我らの村に入ることなど許されることではないが恩人である兄弟の従者ということで特別に通した。粗相のないようしろ。」

 

一拍置いても返事をしようとしないノエミに不安を覚え、クンジはフォローを入れることにした。

 

「わかったなノエミ。そのようなことをしないと私は信じているが敢えて言おう。頼むぞ。」

「畏まりました。」

 

今日一日でNPCの基本的な思考が見えてきた気がしたが、

 

「ハガン・グルガが旅の者をお連れしました。お目通り願います。」

「かまわん、入れ。」

「はっ。」

 

すぐに中に通されたため思考は中断された。

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