グルムとバガンに続いて族長宅を出るとすでに外は陽が落ちてたい。松明に火を灯すと3人はその足で村の広場に向かう。
広場といってもそれほど広いわけではなくあくまで狭い村の中で一番広い場所程度の広さしかない。
松明で明かりの灯った広場には40人弱のオークがすでに集まっていた。
先ほどバガンに辺りを見張っている者以外の村のオークを広場に集めてもらうよう頼んだのだ。
3人は広場にある台座まで進み、グルムが台の上に立った。
「皆の者。よくぞ集まってくれのぅ。今日は皆に伝えたいことがある。すでに知っている者もおると思うが先ほど村の外、より遠くの地から同胞がやってきた。」
そういうとオークの視線が勲司に集まる。
多くの視線を集めることに慣れてない勲司つい会釈をしてしまったがグルムは話を続ける。
「この者はクンジといい遠くの地より参られた同胞。クンジ殿の部族はすでにパラブシオ神の御下に帰られた。それゆえ放浪者となりこの地まで参られたが皆の知るようにこの地は憎きトロール達によって支配されつつある。しかしこの者は我らの村までたどり着いた。これはなにを意味するかわかるじゃろう。そう、クンジ殿はトロールを打ち倒し参ったのじゃ。」
グルムの言葉にざわつき始めるオーク達。
「そんなまさか。」
「身体だって俺より小さいぞ。」
「運よく会わなかっただけなんじゃないか?」
などといった疑問の声が聞こえてくる。
自分たちでは倒せない敵、文字通り一匹すら殺すことができない相手を一人で、しかも自分たちより小柄な同族が倒したのだ。
「そして倒したトロールからこれを取り返し、我らの元まで届けてくれたのじゃ。」
そういうとグルムは懐から首飾りを取り出し上に掲げた。
「これはトロールによって殺されたザンジが身につけていた者じゃ。クンジ殿はザンジよりこれを奪ったトロールを倒したなによりの証拠と言えよう。」
その言葉に再びオークが騒ぎ出す。
中にはバガンと同じように膝を付き泣き出す者も居た。
「そこで儂はクンジ殿の頼んだ。トロールを滅っし我ら同胞の仇と打って欲しいと。しかしクンジ殿はそれを断った。」
今度は不満の声で騒ぎ出すオーク達。
「なぜだ。」
「同族の危機になにも思わないのか。」
といった具合がほとんどである。
「同族とはいえ遠くから来た彼に我らの都合で命を賭けて戦って欲しいというのが元々無理なことじゃ。断られて当然ともいえよう。だがクンジ殿はただ断っただけではない。理由は直接クンジ殿から聞くがよ。クンジ殿。」
台に上がるようグルムに促され、クンジは村のオーク達の前に立つ。
「グルム殿より紹介に預かったクンジだ。」
今後のことを考えると多少偉そうに話したほうがいいと判断し先ほどと口調を変えた。
彼らはまるで不審者や敵を見るような目つきでクンジを見つめている。
今の彼らからすれば一族を助ける力を持ちながら見捨てた者と思っているのだろう。
「いま貴様ら全員「なぜこいつは戦わない。」そういった目をしているな。当然だ。たまたま出会ったトロールを倒して拾った首飾りを届けただけの縁だ。この村の者の形見だったんだろ?それを届けた俺は感謝こそされこれ以上弱い貴様たちの尻拭いをするつもりはない。」
その言葉に広場は怒りに満ちた。
オーク達がクンジに襲いかからなかったのは隣にいる族長と戦士のバガンが黙って聞いているからにすぎない。
「今度は怒りの目で俺を見ているな。だがやめておけ。トロールごとき1匹も殺せないお前たちじゃ何人束になっても俺には勝てない。それに弱い者を弱いと言ってなにが悪い?」
クンジは心の中で挑発しすぎたかな?と思ったがすでに言ってしまったものは仕方がない。
「俺ならトロールの100や200苦もなく全滅させてやれる。だがトロールに勝てないから弱いと言うのではない。そんな俺に頼って俺一人でトロールを全滅させ土地を取り返したとして、お前たちは満足か?貴様達は半分以上の同胞が殺されたにも関わらず、逃げ、トロールにされるがままただ隅で丸くなっている。殺せないから戦わず逃げる。貴様らはそれでもオークか。勝つために逃げたのではなく殺されたくないから逃げたのだ。にも関わらず今度は他所者にすべて頼ろうとしている。それを弱いと断じるのは当然だ。」
図星だったのだろう。オーク達を取り巻く空気が怒りから狼狽に変わった。
「大切な同胞を殺され、食われ、侮辱され、先祖から守ってきた土地を追われ好き勝手荒らされる陵辱される。同胞に、先祖に恥ずかしくないのか。」
「恥ずかしいに決まってる!殺したいに決まってる!」
一人の若いオークが声を上げた。
「ならばなぜ戦わない。なぜ剣を持たない。殺されたくないからか。一匹も倒せず無駄死になるからか。だがいまも貴様らはオークとしての誇りと気概を無くしている。死んでいないだけだ。どうせこのままでは貴様らは死に、滅びゆく。」
今度は誰も声を上げないが何人かが目が醒めたような目に変わった。
「ならば今死ね!惨めに死なず、誇りを失いゆっくりと滅びゆくのならば、誇り高いオークとして同胞のために戦い今死ね!」
暴論である。
しかしそれはまさに純粋な戦士のオークならではな言葉でもある。
「取り戻すのだ貴様達自身の手で!奪われた誇りと土地を!死ぬ気で闘う者に俺は協力しよう。自分たちの手で取り戻した時初めて貴様達は生き残り強いオークになるだろう。共に私と敵を打ち倒せ!」
一瞬広場は鎮まりかえった。
直後、
「ウオオオオオオオオオオオオオオ!」
全てのオークが吠えた。
挑発されたが触発もされたのだ。そして勲司の言葉に聞き入ってしまい、魅了されたのだ。
勲司の職業(クラス)のひとつ、カリスマ。
その中のスキルの一つ<心酔Ⅲ>によって燻っていた闘争心に火が付いたのだ。
吠えるオーク達を族長が声を上げる。
「以上をもって我らはクンジ殿と共にトロール共と再び闘う。反対のものはおるか。」
辺りを見回したが誰も何も言わない。闘う決心が付いたのだ。
「ならば近日中に出立の連絡をする。それまで英気を養い戦に備えよ。解散。」
これ以上必要ないと判断したグルムは皆を解散させた。
そして勲司は広場からグルムとバガン以外が居なくなったのを見計らい台から降りた。
(うまくいってよかったー。)
正直少しやりすぎたと思っていた。
喋ってるうちに自分もだんだん熱くなってきて気づけば暴言紛いな事も吐いていた。
「クンジ殿、お疲れ様。」
バガンはクンジに労いの言葉を述べる。
「いえ、大したことはしていませんよ。元々心のなかに抱えてたんでしょう。でも勝てる見込みもないのに戦いを挑むのは愚者のやることです。いままでよく忍んだと思います。」
「しかし我らは勝てるのだろうか。」
「私も協力はしますが、恐らくそれほど難しい戦いにならないと思いますよ。」
そういったがバガンはやはり不安そうな表情を浮かべた。
「明日は情報を集めたいので早くても明後日に進軍しましょう。ところで今夜どこか部屋を貸していただけないでしょうか。」
「そういうことならうちに来るがよい。儂と身の回りの世話をしてくれる者しかおらんので客人を泊めるぐらいの部屋はあるぞい。」
グルムがそういい、再び族長の家へと戻って行った。
今回のオリジナルスキル
心酔Ⅲ=範囲内の自身以外の味方は鼓舞され能力が上昇するパッシブスキル。『