緋弾のアリアNo name   作:ロリss

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0章 「名無しの武偵」編
●1話「完全忘却の屍(ノーメモリー・アンデッド)」1弾「何も持たない武偵」


 これは…あるEランク武偵が、とある男と出会い、運命が書き換わる物語。物語の表がハッピーエンドなら…その物語はどうなってもハッピーエンドになるのか?これはそのハッピーエンドの『表』の物語をある男の手によって『裏』返す物語だ。

 

 

 

 ここは…どこだろう?僕は……誰だろう?何もわからない。わかっていることと言えば『僕は目を覚ました。そしてここにいた。』それだけだ。さすがに『お金』とか『日本』とかそういう皆が口をそろえて当たり前と言うような物はわかる。でも、自分の名前やこの場所がどこなのか?そして自分がどこから来たのかがわからない。そして何もわからない僕はどこかわからない建物の中にいた。

 

?「いったい…僕ってなんなんだ?と、とにかく移動してみよう…。」

 

 僕は当てもなく今いる建物の中を歩き出した。そして少し移動してみてもやはり『ここがどこだかわからない』という答えしか出なかった。でも、なんだろう…何か音が聞こえてくる…。

 

 ズガン!バギン!ダンダンダンダンダン!

 

?「なんだよこの音…すごくうるさいなぁ…」

 

 音はある1つの部屋からドア越しに聞こえていた。僕は気になってそのドアを少し開けてみてしまった。そこでは…

 

蘭豹「おうお前ら!ちゃんと狙えよ!一発も外すなや!」

 

 銃を使って射撃訓練をしていた。さすがに僕でも銃のことは知ってるし銃がどれだけ危険な物かも知っている。こんなまだ少年少女と言える子たちが持つべき物ではない。しかも見たところ、ここは学校みたいだ。まさか…戦闘技術を教えているのか!?

 

?「なんだよ…これ…?」

 

蘭豹「! おいお前!そこのドアんとこおるお前や!何をさっきから覗いてるんや!」

 

 しまった…!見つかった。もし捕まったらどうなるかわからない。僕はすぐにその場から逃げようとした。けど…

 

蘭豹「おい待てや。」

 

 気づいた時にはもう僕の目の前にいて腕を掴んでいた。速い…!しかもこの握力……!なんだよこれ…本当に人間なのか…!

 

蘭豹「お前、今逃げようとしたやろ。見たところ…武偵高生やないみたいやけど…どこから来たんや。言えや。」

 

 くっ…!腕を掴む力がどんどん強くなっていく。でも今この女の人が言ったことでこの場所がわかった。武偵…か。聞いたことはある。けど実際見たのは初めてだ。いや見たことはあるのかもしれないが今の僕には何の記憶もない。

 

蘭豹「はよ言えや!」

 

?「ぼ、僕は…何も知らないんだ!いきなりなんなんだよ!離せよ!」

 

 僕はあまりの痛さに悲鳴を上げるように言った。さっきも言ったが俺は自分の事については何も知らないんだ。言えることなんて今まさに自分の腕がちぎれそうに痛いってことぐらいだ。この人が求めている情報なんて何も言えない。

 

蘭豹「ちっ!やっぱウチはこういうのは得意やないなぁ…おい!誰か尋問科(ダギュラ)呼んでこいや!」

 

?「な!?」

 

 クソ!尋問科だって?こればっかりは聞いただけでヤバイってわかる。なんの情報も持たないのに拷問をされるなんて…嫌だ!そこで僕は逃げるために反撃を試みた。掴まれているのは左腕だ。だから右腕の方で力の限り腹を殴ろうとした。さすがに相手は女の人みたいなので顔はやめた。だが…そんな気遣いなんて嘲笑うかのような出来事が起こった。なんと僕のパンチが腹に届く前にこの人は片腕だけで僕を後方へ投げた。まるでいらない紙クズをゴミ箱に投げ捨てるかのように。

 

蘭豹「なんや今のおっそいパンチは。その実力から見てスパイみたいなもんやないとは思うけどなぁ。」

 

?「ぐ…がはっ!」

 

 クソ…メチャクチャじゃないか…。地面から受けた衝撃が痛い…。

 

蘭豹「おい!尋問科(ダギュラ)はよ来いや!」

 

?「なんで…僕がこんな目に…」

 

 何も覚えてないからこそ今の状況がより理不尽に思える。この中にいるやつなんか誰も僕を助けようとしないしこの女を止めようとするやつもいない。きっとこの女は武偵高でも皆が逆らえないようなやつなんだろう。射撃訓練の時だってこいつが指導してた。つまりは教師ってことだ。それなら…生徒が助けることなんてなおさら…ありえない。

 

女子「あ、あの!私、尋問科です!」

 

蘭豹「ならはよ出てこいや!こいつ綴んとこ持っていけ!」

 

女子「は、はい!」

 

 なんだよ…とうとう俺は…拷問を受けるのか。そこで俺はその『尋問科』という女子に手足を縛られ、目隠しをされどこかに運ばれた…。その途中でスタンガンで気絶させられた。

 

 

 

 

 

綴「おい、起きろよ。」

 

?「え?う、うわ!」

 

 目を覚ますと目の前にまた別の女の人がいた。なんか煙草(?)みたいなものをプカプカとふかせている。僕は…椅子に座らされていた。両手両足を拘束されて…。

 

?「あの…俺…何も情報は…」

 

綴「あーあー言わなくていい。お前が気絶している間に脳の状態を見たりとか色々したから。お前、記憶無いんだろ。」

 

 ! わかってもらえた!さすが、この道のプロってところか。

 

?「なら僕はもう…!」

 

綴「放す…わけねえだろ~がぁ」

 

?「あっつ!」

 

 急に煙草を押し付けてきた。あついあつい!

 

綴「そうなると謎が出てくるんだよなぁ~。なんでお前ここにいたんだ?しかも武偵高の中に。」

 

 確かに…そうなるよな…。こんな周りの制服と違う服を着ているやつなんかすぐにわかる。そんなやつが建物の中に入れるわけない。でも目を覚ましたらここにいたからこの謎に関しても僕からは何も言えない。

 

綴「おい。なんか考えてるみたいだけどお前に何か聞いてるわけじゃないから安心しろ。お前にはこの武偵高に留まってもらうことにした。」

 

?「は?なんだよそれ…。」

 

綴「二回言わすなよ…。ここで教師相手に二回聞いたら死ぬと思えよ。今回は特別だ。お前には実際に武偵高生になってもらう。そんで、お前の記憶が戻った時にどうやってここに入ってこれたのか、何が目的でそうなったのか、洗いざらい喋ってもらう。つまり色々拷問で聞くのは記憶が戻ってからってこった。だから逃げだされても困るからお前は武偵高でいてもらう。以上。すぐに専門科何にするか決めろよ~。あとここでは帯銃か帯刀が必須だからな。明日から持っとけ。」

 

?「そんなメチャクチャな!第一、僕は名前も―」

 

綴「名前?んなもんなんでもいいだろ。そうだな…お前は記憶喪失だから…『存在しない』…英訳でnot exist.う~ん『エイジ』でいいんじゃないか?」

 

?「はぁ?なんだよ『エイジ』って…。どうやってそのnot existからエイジになるんだよ。」

 

 僕は素直に疑問をぶつける。

 

綴「xをバツ印と考えて発音しない。そんでnotはno tだからxを消したeistからtを消す。それで、残ったeisで作っただけだ。あとは、エイシはよりもエイジが呼びやすいからそっちに。それとも普通に『エイズ』が良かったか?」

 

?「嫌だよ…保険の教科書に出てきそうな名前だな…。」

 

 なんだよ、ちゃんと考えてんのになんで最後だけ適当なんだよ。呼びにくいからって…。

 

綴「そういうこと覚えてるからなおさら謎なんだよなぁ。上手く都合よく自分の事だけ忘れてるからなぁ。…まぁいい。それじゃ『エイジ』で決定。漢字表記は自分で考えてあとで教務科にこい。武偵として申請するから。おっと試験もしなきゃか。」

 

 そう言って僕の拘束具を外し、勝手にどっかに行ってしまった。僕はこれからどこに行けばいいんだ?ただ不安だけが僕の心の中を占めていた。これからどうなるんだろう?

 

 

 

-------------------------------------------------------------------

 

蘭豹「お~い!綴!あのガキどやった?」

 

綴「どうって…記憶喪失だとよ。都合よく自分のことだけ完全に忘れてやがる。色々考えた結果、武偵としてここにいさせることになった。」

 

蘭豹「か~!記憶喪失かいな!そりゃ何も吐かんわな。……んで、あいつの体のことなんやけど…。」

 

綴「ああ、もちろん気づいてる。あえて言わなかったがあいつの『目』のことだろ。右目が藍色だったな。」

 

蘭豹「しかも、ありゃ普通に色がちゃうだけやないで。ちゅうか『目』だけやない。体のほとんどの部位や。」

 

綴「一目でわかったが、ありゃ体いじられてるな。体の様々な部位が移植されてる。目も片方、誰か別の奴のが入ってるな。」

 

蘭豹「改造人間ってやつかいな。あんま笑えへんな。」

 

綴「ただの移植なら重症からの手術で通せるがあれはおかしい。きっと高性能の人間を作る実験でもしてたんじゃねえか?特に目の方はあれはなにか超能力(ステルス)的なものがかかってるな。どういう効力があるのかわからんけど。」

 

蘭豹「こりゃますます怪しいな。ホンマにここに入れて良かったんか?」

 

綴「校長も良いって言ってたし良いだろ。」

 

 

 

 

 結局、僕の『エイジ』って名前の漢字は『永二』にした。僕は記憶を失って第二の人生を歩むということで『永らく二つ目の人生を歩めるように』と。まぁ、なんでもいいんだけど。苗字の方は名無しをもじって『七子』にするか。ここまでくると皮肉だな。でも、

 

永二「名前を付けてくれたことは…嬉しかったな。」

 

 僕には名前が無かったから…というか思い出せなかったから…名前をつけてくれるっていうのはなんだか嬉しかった。

 

永二「それにしても…これからどうすればいいんだ…?」

 

 そこらへんをうろついていると前にピンクのツインテ―ルの女の子と金髪のツインテールの女の子がいた。

 

理子「ねーねーアリアー!キーくんが教務科に呼ばれていなくなって暇だから遊んでよー!」

 

アリア「あーもー!うっさいわね!まったく…キンジ何で呼ばれたのよ…今は極東戦役で大変な時なのに…。」

 

理子「でもこの前、中国攻略したんだからもうすぐだよ~!」

 

アリア「話聞いてなかったの?今は欧州が押されてるの!眷属が傭兵を雇ったって言ってたでしょ?そいつらがかなりやるみたいなのよ。」

 

 なんか物騒な話してるなぁ。こんなのには近づきたくないな…可愛い女の子なのに台無しだよ…。と、そんなことを思いながらその女の子二人組とすれ違った時

 

アリア「ちょっとあんた!武偵高の制服を着てないみたいだけど…あんた武偵高生?」

 

 うっ!マズイ…。服のこと忘れてた。まだ試験とやらも受けてないから武偵とは言えないし…ここは!

 

永二「えっと…制服忘れてきたんだ。僕、忘れっぽくってさ。さっきも先生に怒られたところだよ。」

 

アリア「嘘ね。」

 

永二「え?」

 

 なんでバレたんだ…?

 

アリア「あなた知らないの?この制服がTNKワイヤーでできていて防弾性能があること。ここに来てるやつがそのことを忘れて制服を着てこないなんてありえないわ。」

 

理子「わー!アリアの名推理だー!見た目は子供でも頭脳は大人!その名も名探偵アリア!」

 

アリア「見た目は子供じゃない!」

 

理子「子供じゃなくて幼児?」

 

アリア「風穴!」

 

 そう言ってアリアという女の子は金髪の女の子に向かって銃で何発も撃っていた。金髪の子は「うひ~」と言いながらなんとか避けてたけど…この光景でわかる。それほど武偵にとって『撃つ撃たれる』は変わったことではないのだろう。これは…僕が迂闊だった。

 

アリア「で?あんたは何者なわけ?一般人がここに入れてる時点でおかしいけど。名前は?」

 

永二「な、七子永二…だ。」

 

 なんか自分が作った名前って言うの恥ずかしいな…。

 

アリア「偽名の可能性アリだけど…簡単に名乗るのね。てっきり眷属(グレナダ)かどこかのスパイかと思ってたんだけど。」

 

永二「眷属(グレナダ)?」

 

アリア「見たところ本当に知らないみたいだし。ますます謎ね。武偵高生って言い張るならちょっと実力見せなさいよ。抜きなさい。」

 

 ぬ、抜く?な、何を?

 

アリア「銃抜きなさいって言ってんのよ!」

 

永二「じゅ、銃なんて持ってない!」

 

アリア「持って……ない?」

 

 しまった…とうとう言ってしまった…。

 

アリア「決まりね。あんたはここで捕まえて教務科に持っていくわ!理子!あんたは先に帰ってなさい!」

 

理子「ふぇ~い。」

 

 そう言ってアリアは戦闘態勢に入る。金髪の…理子って子は、すたこらと帰っていった。

 

永二「ちょっ!ちょっと待って!」

 

アリア「あんたは持ってないみたいだから銃は使わない。だから安心しなさい!」

 

 そんな問題じゃないだろ!と思った瞬間、アリアはもう僕の目の前にいた。

 

アリア「ふっ!」

 

永二「がぁっ!」

 

 掌底打ちを腹に打たれた。そして前のめりになったところを顔に裏拳。やったことはこれだけでも1発1発がものすごく重い。そして速かった。この2回の行動に1秒かかっているのか疑わしいレベルだ…。

 

アリア「何よ、全然歯ごたえないじゃない。」

 

永二「メチャクチャ…痛ってぇ…。」

 

 僕が地面に倒れているとアリアはつまらなそうに言った。僕は女の子にボコられたことで少し惨めな気持ちでいると…

 

アリア「ん?あれ?あんた銃持ってるじゃない。おかしいわね、重心は持ってるような感じはしなかったけど…」

 

永二「え?」

 

 うわっ!全然気づかなかった…。僕の上着のポケットから1つの銃が見えていた。なぜ、僕が銃を持っていたのかは記憶喪失だからわからないが…これは良いチャンスだ!

 

永二「う、動くな!」

 

 僕はその銃を抜きアリアに向ける。

 

アリア「……その銃…見たことないわね…。何よそれ?」

 

 アリアにとっては見たことない銃だったのか少し動揺が見える。でも、自分にとってもこの銃に2つほど疑問がある。1つはこの銃、軽すぎるのだ。銃って少し重い物だろ?武偵の方たちは慣れてるからそうは思わないかもしれないけどこの銃は素人からしても軽すぎると思える。……はっきり言って『おもちゃ』かもしれない。このアリアって女の子も「見たことない」って言ってるし。そしてもう1つ、自分は記憶喪失のはずだがこの銃を『どこかで見たことがある』と思うのだ。どんな物だったとかは思い出せないけど…この銃、見覚えがある。

 

アリア「ねえ。さっきから手震えてるわよ。狙いもブレまくってるし。あんた撃ったことないでしょ。」

 

 即座にバレた。やっぱりこういうのって一目でわかるんだな。でも、ここは…!

 

永二「ぼ、僕は本当に撃つぞ…。」

 

アリア「いいから撃ってみなさいよ。言っとくけどこの状態からでもあんたが引き金引くのと同時にあたしもあんたを撃てるわよ。」

 

 威嚇したんだが、逆にアリアから出された情報にこっちがビビる。武偵に威嚇は効かないか。

 

永二「なら…本当に撃ってやる!」

 

アリア「!」

 

 武偵にとっては「撃つ撃たれる」は日常なんだろ!それなら撃っても大丈夫なはずだ。でもちょっと怖いから手のあたりを狙う(手が震えてブレブレだけど)。そして…引き金を引いた!それと同時にアリアも目で追えないスピードで2丁の拳銃を即座に抜き僕を撃つ!というところでアリアは止まった。なぜなら僕の銃から出たのは…

 

 バチイイイイイイイィィィィ!!

 

アリア「で、電流?」

 

永二「あ、あれ?」

 

 弾ではなく電流が出てきた。しかも…

 

アリア「射程距離…短すぎじゃない?それ1メートルも無いじゃない。0距離くらいじゃないとその電流当たらないし、当たっても気絶するかしないかってところよ?まぁ、頭に直接撃ったら死ぬかもだけど…。それならスタンガンの方がいいしわざわざ拳銃の形にしなくても…。」

 

 すごいダメ出しをくらう。これ…完全なおもちゃじゃん!もっとさぁ…電流でもこう…超電磁砲みたいな感じならカッコイイのに…。

 

アリア「はぁ…あんたねぇ。武偵ごっこがしたいならここの外でやりなさいよ。それにしてもそれ、スタンガンとはちょっと違うわね。形もそうだけど電流の感じが…スタンガンのとはちょっと違うような…?」

 

永二「へ?」

 

と気になることをアリアが言っていた時、

 

 

アリア「あら?教務科からメールだわ。『神崎・H・アリアとエイジは至急教務科に来るように』…キンジもさっき呼ばれてたみたいだし同件かしら?あと『エイジ』って…?」

 

永二「あ、それきっと僕です。」

 

アリア「な!?あんたって本当にここの生徒だったの?」

 

永二「えっと…正確には違いますけど…合ってる…かな?」

 

アリア「は?何言ってるのよ。まぁいいわ。それなら早く教務科に行くわよ!そこであんたが武偵高生かどうかはっきりするし。」

 

永二「え、あ、はい!」

 

 そう言ってさっきのおもちゃ(?)の銃をまた上着のポケットに入れてアリアと共に教務科なる場所へ向かった。

 

 

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綴「やっと来たか。遅えよ。」

 

 僕とアリアが教務科について早々、あの綴という女はキレ気味にそう言ってきた。

 

アリア「エイジ…だったわね?あんた足遅すぎよ。もうちょっと素早く動けないの?」

 

永二「えぇ…でも僕が遅いというより君が速すぎるというか…」

 

 実際、教務科に着くまでにアリアのあまりの速さに僕が置いてかれることが数回あった。その度にアリアが息切れ気味だったこっちを気にしてくれてたけどね。

 

綴「まぁいい。今、遠山にも話したところだ。お前たちにも関係することだから神崎とエイジ、お前たちにも言う。」

 

 綴がそう言ってきた。どうやら僕とアリアは同件らしい。それに…遠山?って人も。

 

アリア「なによキンジも同じ用で呼ばれてたの?」

 

 するとアリアは綴の近くにいたある1人の根暗そうな男に話しかけた。

 

キンジ「ああ。なんでも『エイジ』ってやつの教育係をやれだとよ。」

 

アリア「え?それって…」

 

永二「あの…『エイジ』って…僕のことなんですけど…。」

 

 急に僕の名前が出てきてビックリした。教育係ってどういうことだ…?

 

綴「おい自己紹介しておけ。」

 

永二「あ、はい…。えっと…七子永二(ななし えいじ)です。」

 

 やっぱり自分で作った名前を言うのって本当に恥ずかしい。綴なんか笑ってるし。きっと七子(ななし)ってところがウケたんだろうな。自分でもどうかと思うし。

 

綴「まぁ、そういうことだ。さっき報告で聞いたんだが神崎、お前そいつと一悶着あったんだろう?そいつは今日から武偵みたいなものなんだが…どうだった?」

 

アリア「素人も素人。体術、距離の取り方、詰められた時の対応、どれを見てもまるでダメって感じでした。はっきり言って非戦闘科に行かせた方がいいと思います。それに拳銃も変なおもちゃだったし。」

 

キンジ「おもちゃ?」

 

綴「なんだ…?こいつ銃持ってたのか?気づかなかったぞ…」

 

 みんな僕の持っていた銃(?)のことを聞き、頭に疑問符が出ている。

 

永二「あ、これです。」

 

 そう言って僕は綴に銃を渡した。

 

綴「ふ~ん、異常に軽いなぁ。おい遠山。」

 

キンジ「なんですか?」

 

綴「よっと。」

 

 と言って遠山さんに向かって引き金を引いた。

 

 バチイイイイィィィィィィ!!

 

キンジ「うおっ!おい!いきなり何するんだ!って…あれ?スタンガン…か?」

 

アリア「スタンガンっぽいんだけどなんか違うのよねそれ。ほぼ直感なんだけどね。」

 

 アリアはさっき僕ともめた時と同じくその銃はスタンガンとはちょっと違うと言う。僕としてはどっちでもいいんだけど。

 

綴「そうだなぁ…。確かに見た感じはスタンガンなんだが…。こんな拳銃の形になってるスタンガンなんて聞かねえし。相手をスタンガン以上に警戒させるだけだしな。」

 

 結局、謎は深まるばかりだ。っていうかそれよりも!

 

永二「あの…僕の教育係ってどういうことですか…?」

 

綴「あ?あぁ、そうだった。さっき神崎が言った通りこいつは弱い。そんで知識も無い。さらに…記憶喪失ときた。ここで預かることになったから武偵として生きさせるために遠山と神崎にはこいつの世話をしてもらう。」

 

アリア「その話ですけどあたしたちだって今、大変なとこなんです!なんであたしたちなんですか!?」

 

綴「神崎、お前の評判は聞いてるぞ。お前の戦姉妹の間宮、あいつの急成長ぶりは教務科も一目置いている。そしてそのきっかけになったお前も育成の面に関しても教務科は評価しているんだ。」

 

遠山「俺も不満を言おうと思ってたんだが…俺は別にやらなくていいんじゃないのか?」

 

綴「お前も知ってるだろうが…お前は各国に…特にイギリスから目をつけられている。そんで、『お前をチーム…バスカービルから外せ』だとよ。」

 

キンジ「な!?」

 

綴「そこでもしこの話を受けるのなら今回のチーム脱退の話を無し…にはできないかもしれないが延ばしてやってもいい。まぁ、武偵高が独断でやることだからあとで面倒なことになると思うがな。」

 

キンジ「別に…いい。どうせチームだろ。もう会えなくなるわけじゃないんだ。だから俺をこの話から外してくれ。」

 

アリア「な、何言ってるのよキンジ!そ、そんなの…」

 

 あんなに鬼のように強かったアリアが遠山さんの言葉に泣きそうな顔になっていた。そんな顔を見てしまったら…

 

永二「あ、あの…遠山さん?それはちょっとひどくないですか?」

 

 僕は何も知らない立場なのに遠山さんに向かって言ってしまう。

 

キンジ「……どういうことだ?」

 

永二「だ、だってアリア…さんとチームってやつを組んでたんでしょう?アリアさんだってそれを大切に思ってたかもしれないのに。それをあなたは簡単に捨てるようなことを…」

 

 僕は…言ってしまった。武偵のことなんて素人なのに…遠山さんに思ったことを。

 

アリア「エイジ…。」

 

キンジ「……。」

 

 遠山さんは少し悲しそうな顔をした。もしかすると遠山さんも思うところがあるのかもしれない。

 

綴「あ~も~!お前らで話するな!おい遠山、実はこの話はすでに決定している。良かったな、バスカービルに残れて!そして残念だったな、新人育成任されて!」

 

キンジ「お、おい!」

 

綴「以上だ!はい解散!」

 

 本当メチャクチャだなこの人…。

 

 

 

永二「え~とどうすればいいんですかね?」

 

アリア「まずは入りたい専門科を決めるのよ。ってちょっとキンジ!あんたも教育係でしょ!どこ行くのよ!」

 

 僕がアリアさんから指示を受けていると遠山さんはどこかへ行こうとしていた。

 

キンジ「帰るんだよ。俺はこの話を受けた覚えはないぞ。ただでさえ今は極東戦役で忙しいんだ。この件に2人も人員を割く必要ないだろ。」

 

アリア「ちょっと待ちなさいよバカキンジ!帰ったら風穴開けるわよ!」

 

 だが遠山さんは何も聞かなかったように帰っていった。なんかあまり愛想がいい人ではないな…失礼だけど。

 

永二「なんかすみません。僕のせいでこんなことになって…。」

 

アリア「はぁ…いいわよ、あんたが謝らなくても。それでなんの専門科にするか決めた?」

 

永二「いえ…。」

 

 専門科に関しては何があるかさっぱりだ。でも、実はやりたいことはある。

 

アリア「あたしは強襲科に入ってるわ。まぁ、教えるって言っても強襲科のことぐらいしか教えられないけど…」

 

永二「あ、それに行きます。」

 

アリア「は?何適当なこと言ってるのよ。強襲科なんて1番の戦闘科よ?はっきり言って死ぬやつが出るなんて普通にあるんだから。」

 

 と恐ろしいことを聞いた。

 

永二「そう…だったんですか。でも…僕、アリアさんと一瞬だけど戦って思ったんです。『強くならなくちゃ』って。記憶を戻すためにもまず力をつけなくちゃいけない気がするんです。」

 

 僕もいつか記憶を取り戻さなくちゃいけないんだと思う。でもそれが正直怖い。その記憶が良い物だなんて保証は無いんだ。自分が何者かだなんて知りたくない。でもきっと知らなきゃいけない日が来る。だからその日が来て…ちゃんと自分1人でも生きていけるように力をつけたい。

 

アリア「……そこまで決心がついてるなら止めないけど…厳しいわよ、あたしの訓練は。今から一週間後にあんたの試験があると思うけどそれまでに素人が強襲科の試験に通るくらい鍛えるのはかなりキツイ。でも、あたしの特訓についてくることができれば可能性は見えてくる。だから弱音を吐かないでついてくること。」

 

永二「は、はい!」

 

アリア「あと…『無理、疲れた、面倒くさい』この3つの言葉は絶対言わないこと。この言葉は人間が持つ無限の可能性を自ら押しとどめる良くない言葉だから。」

 

永二「わ、わかりました。」

 

 この日から僕の武偵になるための特訓が始まった。

 

 

 そして僕が遠山キンジと神崎・H・アリアと出会い、あるべき運命を変えてしまった…その物語の始まりだった。この頃の僕はまだ何も知らない。そう、これは僕が遠山キンジの運命の中に入りそれを捻じ曲げてしまった物語だ。

 

 

2弾「最初の試練」に続く

 

 

 

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