緋弾のアリアNo name   作:ロリss

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眷属と戦うため日々努力する永二。だが、中々うまくいかない永二は心のどこかで焦りを覚える。そしてとうとう眷属の牙は永二に襲い掛かる!その時、永人がまたも永二に語り掛ける。眷属を前に自分の無力さを知る永二がとった行動とは…!眷属との対決、そして仲間を守るための選択の第3弾!!


3弾「疾風の射手」

 僕が極東戦役への参戦を決めて、その翌日の5時限目の強襲科の時間。今、僕が何をしているかというと…

 

永二「はあっ…はあっ…。」

 

アリア「そんなんじゃダメ!もっと考えて動きなさいよ!」

 

 極東戦役で戦えるようになるためにアリアさんと特訓中だ。アリアさんがまた僕に訓練をつけてくれるようになったのだ。けど、僕が全然動きに追いつけていない。色々と教えてくれているのだがアリアさんの動きが速すぎて僕の目で追うのもやっとというレベルだ。きっと前の強襲科試験の時と違ってレベルをかなり上げているのだろう。

 

アリア「もっと素早く動く!そんなに遅く動いてると簡単に撃たれるわよ!」

 

 さっきからこのようにダメ出しの嵐だ。僕がしっかりしてないのがダメなんだが…自信が無くなるなぁ。

 

 

アリア「そこまで!今日はこれで終わり。」

 

 強襲科の時間をフルに使って色んなことをひたすら練習していき身につけていくが…僕は本当に強くなれているんだろうか?正直、実戦とかしなくてもいいのかな?

 

永二「あの…アリアさん。」

 

アリア「どうせ『実戦訓練しなくていいんですか?』でしょ?たしかに実戦訓練で得られるものは多いけどそんなに毎日毎日してたら意味ないわよ。こうやって自分の動きを確認しながら反復練習するのだってちゃんと意味があるの。最初の強襲科試験の時も役に立ったでしょ?」

 

 たしかに。あの時もアリアさんから教えられた動きとかをひたすら練習して身につけていった。アリアさんの動きと比べると全然遅いけど実戦でギリギリ使えるくらいまでには身につけたものだ。ただどうしてもなぁ…

 

アリア「焦る気持ちはわかるわ。けど、どんな強い武偵だってこうやって強くなってきたの。あたしだってそうよ。あんたはまだ武偵なったばかりなんだからそんなすぐに強くなったりしないわよ。…正攻法では。」

 

 ……。アリアさんの言っていることはわかる。僕に対して暗に『L―ブレイカーを使え』と言っているんだろう。使うつもりは今は全然ないけど、もしも…もしもの話だ。あれを使えば眷属ともいい勝負ができたりするのだろうか?もしかするとあれを使えば…眷属にも勝てる?

 

 と、僕がそこまで考えたとき「ダメだ」と思考をやめる。こんなんじゃ僕の中にいる永人の思うツボだ。彼は力のない僕がどこまでやれるか見物だと言っていた。彼は僕が戦いに耐え切れなくなり『L―ブレイカー』に手を出すことを望んでいる。僕が強くならないとダメなんだ。にしても…佐々木さんに襲われた時は永人と会話できたのに今ではまったくできない。自分の中にいるっていっても自由に会話できるわけじゃないのか?二重人格ってよくわからない不便なものだ。戦い方の1つくらい教えてくれてもいいのにね。

 

永二「さてと…もう帰るか。」

 

 強襲科の時間も終わり、僕は帰ろうと思ったがその時アリアさんに呼び止められた。

 

アリア「あんた明日が休日だからって戦闘練習サボるんじゃないわよ?あたしが今日教えたことちゃんと復習すること!いいわね?」

 

 そう、明日は土曜日。だから武偵高はないんだが練習に休みなどない。でも僕も元々サボるつもりはないから全然問題ない。ただ…

 

永二「あの~それなんですけど、実は僕、明日補修が入ってまして…」

 

アリア「は!?あんた補修ってことは…赤点取ったの?あんた、真面目そうな感じなのに。」

 

 ううっ…。僕は変な時期に編入してきたから他の武偵高の生徒とは違う時期にテストを受けさせられる。僕は最近いろんなことがあったせいかテストの存在を完全に忘れてしまっていてバカみたいに戦闘訓練ばっかりしてたからまったく勉強していなかった。授業はちゃんと受けていたけど復習をちっともしていなければ身に着くはずもなく。悲しいことに赤点を一教科取ってしまったのだ。というか、テストの存在を忘れてたって記憶喪失の僕が言ったらほんと洒落になってないな…。

 

アリア「あんたねぇ…一流の武偵なら力だけじゃなく知識もつけるのよ!そんなんじゃまだまだよ。強くなるのは結構だけどちゃんと勉強する!」

 

永二「は、はい!!」

 

 結局、アリアさんに怒られた。なんか毎日毎日アリアさんに怒られてばっかりだな僕。情けないなぁ…。

 

 

 

 

       ~翌日~

 

 とりあえず朝起きて武偵高に向かう。本当は休みの日なのにね。悲しいね。

 

 武偵高に着いたけどやっぱり教室には僕以外に誰もいない。だって僕以外の人はテストなんてとっくに終わってるしね。はぁ…誰かいてくれれば少しは気が楽になるけどこれは結構心にくるな。出席しなさすぎて留年の危機があるキンジさんは別の日に補修を済ませたみたいだし。本当に孤独とは悲しいものだ。そんな感じで僕が悲しみに暮れていると教室の扉が開いた。先生が来たんだ!と思ったが…

 

?「はい、はい。君が七子永二君ですね?では補修を始めましょうか。」

 

 入ってきたのは少し年を食った感じの人だった。特徴は…それくらいしかない。というかほとんどあげる特徴が見つからない。う~ん、武偵高の先生にこんな人いたっけ?

 

永二「えっと…僕は数学が赤点で高天原先生が来るって聞いてたんですけど…」

 

 まさか高天原先生が変装してるとかじゃないよな?あの人探偵科の講師だし。でも、そんなドッキリされても反応に困るしなぁ…。

 

?「ああ、はい。高天原先生は私が代わりに行くと言って今日はお休みにしました。私が君に少々興味がありまして。あ、私でも勉強は教えられますから安心してください。」

 

 休みにした…?いや、それよりも僕に興味がある?一体誰なんだこの人。武偵高では見たことないし本当にここの先生なんだろうか?この人は僕のことを知ってるみたいだけど僕はまったく知らない。困ったな…誰なのか聞くべきだろうか?うん、聞こう。

 

永二「あの…失礼なことと承知で聞きたいことがあるのですが…その…どちら様でしょうか?」

 

 聞いてしまった…いや、だってマジでこんな人知らないもん。なんか…こう…ダメだ本当にあげる特徴が見つからない。THE「無個性」って感じだ。すごい失礼だけど。

 

?「おや?編入時に登録関係で一度会ったと思うんですけど…忘れてしまいましたか?ここの校長の緑松ですが。」

 

永二「は?」

 

 え?嘘…え?マジで!?確かに武偵高に入って事件を解決した後あたりに会いに行ったことはあったんだが…こんな人だったか?今、こうやって前に現れても全然わからない。こんな人だったような、違うような…すごく曖昧な感じになってる。おいおい、僕さっきまで「無個性」とか超失礼なこと思っちゃってたぞ!

 

緑松「まぁ、入ってまだ間もないですからね。仕方ないと思いますよ、はい。次は忘れないでくださいね?」

 

 笑顔で僕にそう言ってくる校長先生。裏の意味はないんだろうがすごく怖い。脅迫されているみたいだ。まるで「次はないぞ」と言わんばかりに。しかし自分の頭はまだこの人の特徴を捕らえきれていない。きっとすぐ忘れてしまうだろう…。

 

緑松「では、改めて補修を始めましょうか。」

 

 そして僕は緑松校長から数学の補修を受けた。校長って勉強教えられるの?って思ったけどすごい普通の授業な感じで教えられた。先生なんだから当たり前か。アリアさんも言ってたけど一流の武偵はいろんなことができるって言ってたし。にしてもあんまり強そうな人じゃないな。どっちかっていうと蘭豹や綴のような他の武偵高の教員の方が強そうだ。この人本当に戦えるのか?

 

緑松「はい、これで終わりです。お疲れ様です。」

 

永二「ふぅ~、ありがとうございました。」

 

 やっと補修が終わった。今は昼の12時だ。3時間くらいやったからもうヘトヘトだ。

 

緑松「補修が終わった後で申し訳ないんですが君の話を聞かせてもらってもいいですか?」

 

永二「構いませんけど…」

 

 校長は僕の話が聞きたいそうだ。まぁそのために今日の補修にも来たみたいだし僕が話せることならなんでも話そう。

 

緑松「七子君は記憶喪失と聞きましたがあれから記憶が戻ったりはしましたか?」

 

永二「ああ…それが、まだ全然です。一体なんのために僕は武偵高にいたのか。誰かが何かのためにそうしたってことはわかっているんですが内容まではさっぱりで。」

 

緑松「ふむ…なるほど。」

 

 校長はこんな答えでも納得したかのように相槌を打ってくれる。

 

緑松「あと…なんでしたっけこの銃。えっと…………忘れちゃいました。人間のリミッターを強制的に外すなんて中々面白い考えですよね。」

 

永二「あはは、そうですよね…って…………!?」

 

 校長は教壇のところでL―ブレイカーを手で持ちながらマジマジと見ながらそう言ってきたが…ちょっと待ってくれ。僕は渡した覚えはない。ショルダーホルスターと同時期に買っていた『L―ブレイカー』を入れていたヒップホルスターを見てみたがいつの間にか無くなっている。知らない間に緑松校長に盗られていた。だが一体、いつ盗ったんだ!?この補修中のどこかで盗られた?確かに何回か校長は僕の机の横に来て問題の採点などをしていた時があったが…まったく気づかなかった。

 

緑松「おや?気づきませんでしたか?私があなたの銃を盗ったのを。もっと精進しなくちゃですよ七子君。その調子じゃこれを盗ったのも気づきませんでしたか?」」

 

 そう言って、僕が持っていた弾倉2本、最近購入したコンバットナイフ、カバンに入っていた本などメチャクチャ盗られていた。なんだよこれ…こんだけ盗られてるのに僕はまったく気づけなかった。前言撤回だ。この人…かなりヤバイ。それも蘭豹や綴とは違う、感じさせない強さだ。

 

永二「校長は物を盗るのが得意なんですか?」

 

 僕はせめて自分に言い訳するかのようにそう聞いた。だが、

 

緑松「いやいや。こんなのはただの生徒をテストするくらいの遊びですよ。物を盗られたって己の体で戦えばいいだけですし。武偵は武器にたよってはいけませんよ。あくまで武器とは道具です。まずは己が武器を超えないと。武器に使われているようではそれは武偵ではありません。」

 

 なるほど…まずは自分が武器を超える…か。武偵高の校長ともなると言うことも違う。

 

緑松「これでわかったと思いますが人間とは意識を外されるとその部分に対してはとても無力です。事実、あなたは補修の授業に集中していて私が物を盗ったのに一度も気づかなかった。」

 

 本当に恐ろしい話だ。気づかないうちにここまでされていたなんて。だがこの感じ、校長は僕に何かを教えようとしてくれているのか?

 

緑松「まぁ戦い方は様々ってことですよ。力の強さだけが全てじゃない。例えば蘭豹先生はとても力が強いですよね?私と腕相撲とか何かで力比べをしたら10回中10回蘭豹先生がきっと勝つでしょう。」

 

 やっぱり校長でもあのゴリラ……じゃなかった、蘭豹には力では勝てないのか。だとすると蘭豹は緑松校長より強いのか?

 

緑松「ですが実戦になると10回中10回、私は蘭豹先生を殺すことができるでしょう。実戦とは力だけでは勝てませんからね。あ、もちろん蘭豹先生も力だけではありませんけどね。強襲科のプロですし。」

 

 あはは…もう苦笑いしかできない。この人、なんでこんなこと笑顔で言ってるんだろう。本気じゃないとは思うが笑顔で殺すとか言っちゃうとかもう怖すぎます。あなた本当に武偵なんすか?

 

 でも、何かとても大事なことを教えられた気がする。

 

永二「それにしても…なんで校長はそのことを僕に?」

 

緑松「はい?ああ、長く武偵高で生徒を見ていますとね、生徒の目を見るだけで悩んでいることなどがわかったりするんです。今のあなたは『とにかく力が欲しい』と、そういう感じに見えますね。」

 

 そ、そんなことがわかったりするのか。たしかに今の僕はまさにそのことで悩んでいる。アリアさんとの訓練の時もそうだったが焦っているのだ。僕は眷属を前にして戦えるのかどうかわからない。善戦するのか、それとも何もできず瞬殺されるのかわからない。でも力があれば死ぬことはない。そう…力があれば…

 

緑松「今のあなたはとても危ない目をしていますよ。そのままではいつか道を間違える……そんな気がする目です。なのでいろんな戦い方があることを教えてあげたのですよ。たとえ後方支援でも立派な戦い方なんですから。なに、先生からのアドバイス程度に受け取ってくれればいいのですよ。はい。」

 

永二「ありがとう…ございます。」

 

 そうして補修を終えていた僕は校長に盗られていた諸々を受け取り教室を出た。いろんな戦い方がある…か。でも、僕はそれでも強くならなくちゃいけない。みんなを守れるくらい。相手を圧倒できるくらい。 

 

 僕はそういったことをずっと考えて家に向かった。

 

 

 

 

緑松「ふむ…あれが七子君でしたか。なるほど不思議な子ですね~。」

 

 緑松は校長室で1人椅子に座り七子永二の武偵として登録する際に使った書類を見ていた。それには武偵高が調べ上げたその人間の様々なプロフィールが書かれていた。これはその人間の素性を調べて武偵高にどこかのスパイなどを容易に入れないようにするためであったり武偵にするに足る人物かどうかも判断するものだ。永二の結果は…「問題なし」だった。だが、それは永二のプロフィールに問題が無かったわけではなく…

 

緑松「名前は自分で作ったものにしているとは聞きましたが…まさか、調べても何も出なかったなんて、本当に不思議ですね~。」

 

 そう言って七子永二の書類を机に置いた。その内容は…「世界のどの場所においてもこの者に該当する者は存在しない。よって情報も存在しない。再調査しても結果は同じである。」と書かれていた。そう、そもそも判断するための情報が1つも無かったのだ。世界のどこを探しても永二の顔や体のデータと全て一致する人間は1人も現れなかった。

 

緑松「さて…君はどこから来たのでしょうか…。そして何が目的なんですかね。本当に記憶はないみたいですが…」

 

 緑松はこの不思議な生徒の書類をしばらく眺めていた。

 

 

 

 

 とりあえず休みの日なんで補修が終わった後、昼は外を歩いてみることにした。これはキンジさんに言われたことだけどこうやって休日に外を歩いて土地勘をつけるのも大事なんだ。特に今回のような戦いだとまずここが戦場になる。だから重要だ。

 

永二「まぁ、あんまり意識しすぎるなとも言われたけどね。普通にブラブラと歩いていればいいらしいし。特に行きたいところがあるわけじゃないしな。それにしても…」

 

 なんか誰かに見られている感じがする。寮の部屋を出て少し進んだ時から。僕は探偵科じゃないからこういう時どう調べるかなどわからない。う~ん、僕の考えすぎだといいんだけど…

 

 と、考え事をしながら歩いていると

 

?「ッ!」

 

永二「おっと。」

 

 女の子とぶつかってしまった。僕は日ごろから鍛えているし相手も小さい女の子だったからぶつかってもなんてことなかったが相手の女の子は尻餅をついた。

 

永二「あ、ごめんね。僕がボーッとしてたせいだ。立てる?」

 

?「……。」

 

 その子は何も言わずスッと立った。うわ、よく見てみるとすごく可愛い子だ。ジャンヌさんのようなキレイな銀髪をしていた。中学生くらいの子で手に弓を持っていて矢筒を背負っていた。……弓道部なのかな?最近の女の子は多芸っていうし。学校の部活に向かってるのだろう。

 

永二「えっと……怪我してない?」

 

?「大丈夫。」

 

 その子はボソッとそれだけ言った。こう言っては失礼だけどあんまり愛想よくない子だな…。

 

?「お兄さん、どこかに行こうとしてる途中?」

 

 その子は僕の顔をジーッと見つめるとそう言ってきた。

 

永二「いや、そういうわけじゃないよ。ただブラブラしてただけ。なんかここらへんで良い所ない?」

 

 僕は目的もなく歩くのも面白くないのでその子にオススメでも聞いてみることにした。最近の女の子ってこういうのに詳しかったりするんじゃないかな?僕の偏見だけど。

 

?「あっち。」

 

 とその子は一言だけ言って方向を指さした。う~ん?なんだろうこのコミュニケーションが微妙にとれてない感じは。

 

永二「あっちに何かあるの?」

 

?「うん。それじゃ。」

 

 と、それだけ言って女の子はそっちの方向に駆けて行った。なんだったんだ…。まぁ、一応、教えてくれたから行くけどね。

 

 

 とりあえずケータイの地図を見ながらさっきの女の子が指した方向に進んでみた。でも地図を見てみてもここら辺に面白そうなものなんて無いぞ。なんかゲームセンターでもあるのかと思ったけど。やっぱり秋葉原とか台場とか行ってみた方が面白いかな?でもせっかくあの女の子がオススメ(?)してくれたし無視して行かなかったら失礼というものだ。自分から聞いたんだしね。

 

 そうしてただただ女の子が指していた方向に進むと高層ビルが多く現れるようなところに入った。でもここは東京だ。そういうところは多い。特に最近になるとすごい高い建築物なんてよくある。ビルだけでなくホテルとかでも100m超えるのなんてあるくらいなのだから。

 

永二「う~ん、とりあえずこんなところまで来たけどこういうところは見ておいて正解だったかな。特に師団にはレキさんっていうすごいスナイパーがいるしね。こういうところを覚えておくとスナイパーとの連携がやりやすいだろうし。」

 

 無理やり得たものがあったと片づけてみたけど本当にさっきの女の子が謎だった。はっきり言ってなんにも面白くなかったぞ。う~む、最近の女の子さっぱりわからない。と、そんな時、急にケータイが鳴った。相手は…レキさん!?

 

永二「うわわわわ!すっごい珍しい!ええ!?ちょっ!あの人携帯持ってたんだな…いや武偵だからそりゃ持ってるか。にしても…僕に何の用だろう?」

 

 そこで通話ボタンを押してみた。ちょっとドキドキしながら。無理もない、女の子から電話がかかってきたらドキドキしてしまうところは僕も男なのだ。それにレキさんって美人だし。武偵高でも何気に男から人気があったりするのだから。

 

永二「ふぁ、ふぁい!ななひ(七子)でしゅ!」

 

 すっごい噛んだ…。いや、だって仕方ないじゃん?レキさんと会ったことはあっても会話したことないからこう…言葉が前のめりになったというか、急ぎすぎたというか。もう終わった…なんだよ「でしゅ」って。僕でもドン引きするわ。

 

レキ「そこからけっして上を見ずに2分進んだ後、2歩後退してください。」

 

 と、レキさんからはよくわからない言葉が届いた。僕の「でしゅ」にも動じてないみたいだが…急になんだろう?とりあえずレキさんとの通話状態のまま言われたとおりにずっと下を向き時計を見て正確に2分計りながら歩いた後2歩下がってみた。

 

永二「こうですか?」

 

 って言ってもレキさんにはわからないか。と僕が思いながらレキさんに電話で言った瞬間、

 

 ヒュッ!!ドッッ!!!!

 

永二「え?」

 

 僕が1秒前にいたところに矢が撃ちこまれた。

 

永二「な、な、なんだよこれ!なんで…」

 

レキ「落ち着いてその場にある横のホテルの屋上を見てください。」

 

 レキさんは淡々と僕に告げた。僕は言われた通り横にあったホテルの屋上を見てみた。そのホテルは100mを超えておりよく見えなかったが…たしかに人らしきものが見える。こちらを見下ろす者が…!

 

永二「って、あれって!」

 

 僕は目を凝らして見てみると微かにそいつの髪の色が銀色だということに気付いた。銀髪、矢、この場所。嫌なピースが犯人のパズルを組み上げていく。さっきの子か…!

 

 矢が地面に撃ちこまれたこともあって周囲の人はさすがにこの異常性に気付きこの場から悲鳴をあげて逃げていく。

 

永二「武偵です!この場は危険ですので逃げてください!」

 

 僕はまだ状況が呑み込めていない人に向けてそう叫んだ。だが、狙われているのは確実に僕だ。僕はここを離れるわけにはいかない。しかも、今の時期に僕を狙ってくるということは…あの矢を撃っているあの子は確実に…『眷属』だ!

 

 そして銀髪の子は僕に向けて2射目を撃ってきた。だが、相手は矢だ。銃弾と同じく見えずらいがここまで離れたところから撃たれても僕のように武偵として鍛えていれば避けられないこともない。僕は上を見上げながら今いた地点から移動する。だが、

 

永二「え!?矢が…僕に向かっている!?」

 

 矢は完全に空中で僕が移動した方向へと曲がった。なんでだ!?これは…ヤバイ!!

 

 だが次の瞬間、矢は別方向から向かってきた弾丸に狙撃され矢はバラバラになり地面に落ちた。

 

セーラ「!?」

 

 銀髪のスナイパー―セーラは今起きたことに驚いた。セーラも同じ芸当はできるがまさか師団に同じ実力の者がいるとは思ってなかったからだ。

 

 

 

レキ「大丈夫ですか?」

 

 と、そういえばまだ通話状態だったケータイからレキさんの声が聞こえてきた。

 

永二「さっきのはレキさんが?」

 

レキ「はい。私はアリアさんに言われてエイジさんを監視していました。さっきの狙撃ですが矢をそこから1km先にあるビルのエイジさんが見える場所から狙撃しました。しかし、相手よりも低く、相手が視認しづらい場所なので相手自体をここから狙撃するのは少々難しいです。1、2階ほど上に行けば相手の狙撃も可能ですがその間に100%エイジさんが狙撃されます。」

 

 そんな場所から高速に動く矢を狙撃できるのか…。でも、なるほどね。僕はかなり追い詰められているのか…。いや待てよ!僕があの銀髪のスナイパーがいるホテルの中に入れば…!僕がそう考えた時だった、

 

 

永人(それはダメだな)

 

 永人の声が頭に響いてきた。 

 

 

永二「永人!永人なの?また話ができるようになったの?それよりもなんでホテルの中に入るのがダメなのさ。」

 

 僕はスナイパー相手に対して良い考えだと思ったけど永人はそれを否定した。

 

永人(別に俺はかまわないがお前がそうするとレキ…だったか?あの女が死ぬことになる)

 

 永人はわけのわからないことを言ってきた。

 

永二「どうしてレキさんが死ぬんだよ?」

 

永人(あ?ああ、その前に…そろそろ3射目が来るんじゃないか?)

 

永二「!?」

 

 永人の言う通り上から3射目が僕に向かってきた。矢になると銃と違って無音だから相手を見ていないとわからない。2射目と同じく僕がそれを回避しようとして矢が僕の方向に曲がったところでレキさんが撃った弾が矢を狙撃した。レキさんは相手が矢を操作していることに気付いていたのか曲がる瞬間を狙っていた。またレキさんに助けられたのだ。

 

永人(今の通りだ。お前がまだ生きているのはレキのおかげだ。そのお前がここから消えたら…今度はレキが狙撃される。しかもレキの場所からは相手の狙撃は難しいときた。相手の場所はレキよりも高所。スナイパーにとってこれは致命的だ。レキがまだ狙撃されてないのはお前への牽制とレキ自身がうまくやってるからだろう。が、それも時間の問題だな。)

 

永二「なんだよそれ…じゃあどうすれば…」

 

 僕が八方塞がりの状況に苦悩していると

 

永人(おいおい…あるだろ?この状況を打破できる一手が。俺と代われよ。あれを使って。)

 

永二「僕に…L―ブレイカーを使えって言ってるのか!?」

 

永人(俺ならこんな状況なんともない。けど、お前じゃ無理だろ?お前がどうしたって自分と仲間を死なせて終わりだ)

 

 永人は僕にひどい言葉を投げかける。けど実際に僕はそんな状況に追い込まれている。

 

永二「ぼ、僕は…使わないぞ。絶対に使わない!」

 

 僕は自分の考えを変えず永人に何度目かの拒絶をする。

 

永人(お前は仲間が危険にさらされてる状況でもそう言うのか?そもそもこんな状況になったのはお前のせいじゃないか。)

 

 ぼ、僕の…せい?

 

永人(お前がもっと強かったらここまで追い詰められることはなかった。お前が警戒していればこんな相手が有利な場所に来ることもなかった。レキだってお前を守らなければ階を上へ移動して相手と対等に戦えただろうに。お前を守ることで自分の身を危険にさらすことはなかった。全部、全部全部お前が弱いせいじゃないか!!)

 

 僕が…弱い…せい。僕のせいでレキさんが危険に…。僕が…

 

永二「僕は…弱いけど…お前の手なんか借りなくてもいい!それにお前はどうせ相手を殺すつもりだろ!」

 

永人(当たり前だろ。そうしないとこっちがやられるだけだ。生かすだけ無駄だろ)

 

 やっぱり僕の予想通りだった。永人は最初から殺すつもりだったんだ。だから君には戦わせられないんだ。

 

永二「レキさん!僕のことは構いませんから階を移動してください!」

 

 通話状態のケータイにそう伝えた。僕がこの状況をなんとかしてやるんだ。

 

レキ「私はそれだと助かりますが永二さんは間違いなく狙撃されますよ?」

 

永二「だ、大丈夫です。1、2回くらいの矢は僕がなんとかし、します。」

 

 僕は震える声でレキさんに言った。言ってしまった。自分の命綱を自ら手放した。

 

レキ「……わかりました。では通話を切ります。通話終了後から15秒で移動を完了させますので。」

 

 そこで通話が切れた。そして上を見上げると銀髪のスナイパーは4射目を撃ってきた!

 

永人(終わったな。ここでお前は死ぬ。)

 

永二「死ぬもんか。どうにかしてやる!」

 

 向かってくる矢に僕がどうにか回避を試みようとするが…その時

 

子供「うえ~ん!ママ~、どこ行ったの~ママ~!」

 

 僕の真後ろ、しかも僕と1mも離れていない場所あたりから声が聞こえた。その声が聞こえた瞬間、後ろを見なくても状況がわかってしまった。マズイ、こんな時に親とはぐれた子供がここに!?ヤバイヤバイヤバイ、4射目はそんなことに構わず僕に向かっている。僕が避ければこの子供に…いや、あの矢は僕を追ってくるんだ。だから僕が避ければ子供の方向からは逸れる…はずだ。だから大丈夫。だけど…もし僕を追ってこなかったら?元々、矢というものはまっすぐ飛ぶものだ。もしあのスナイパーが曲げてこなかったら?僕が避けたら子供が…!どうするどうするどうする!クソッ!!

 

 ヒュッ!!!ドシュッッッ!!!!!!!

 

 そして矢は風を切る音と共に……永二を貫いた。永二の……………『手』を貫いていた。

 

永二「うっ!ああ、くぅ…ああぁぁあぁああ!!」

 

 永二は避けずに手を前に開いて突き出しその矢を受けたのだ。永二はあまりの痛みに悲鳴をあげる。無理もない、まだ永二は痛みに慣れてもいない。自分の手のひらと言えど矢が勢いよく貫いたのだ。なんとか矢は顔の前で止まっていたからまだ運が良い方だろう。そんな永二を見てか子供はさらに泣き出しその場から走って離れた。その子供を見て永二はホッとした。

 

永人(………一応、なんでそんなバカなことやったのか聞いていいか?たしかに死にはしなかったが避けようとしなかったのはわからねえな。いくら追ってくるとはいえ回避しようともしないのはバカだ。防ぐにしたって自分の体を使わなくてもいいだろ。)

 

 永人は罵倒混じりで僕にそう質問してきた。

 

永二「僕が…弱いからさ。」

 

永人(あ?)

 

永二「君の言う通りだよ。僕は弱い。さっきの子供と自分の両方を救う方法なんてなかった。僕が普通に移動していれば矢は曲がったかもしれない。でも、気づいたら体が動かなかった…」

 

永人(なんだよ、ただのビビリかよ)

 

 永人はそう片づけた。違う、そうじゃないんだ。

 

永二「子供の方を助けなきゃって思ったら…僕の体から避ける選択肢がなくなった。でも、矢をどうにかすることができなかったから自分の体で子供を守った。これが弱い僕の…やり方だ。」

 

 そしてケータイに電話がかかってきた。

 

レキ「移動が完了しました。こちらはもう大丈夫ですので警戒しながらその場から退避してください。」

 

 レキさんはそう僕に言った。これで僕は助かる。けど、いいのか?仲間を置いて僕は逃げるのか?僕が極東戦役に参戦して、眷属が僕を狙って、それを仲間が助けて、僕は逃げる。だって僕は弱いから。足手まといだから。それでいいんだ。……いや、違うだろ。そうじゃない。僕は言ったじゃないか師団の前で。『僕がみんなを助ける』って!僕がやるんだ!!

 

永二「僕だ。僕が…やらなきゃ…!」

 

 そう僕が決意した時、

 

永人(お前のこと、ただのビビリの雑魚だと思ってたけど…案外度胸あるじゃねえか。さっきので少しは見直したかな。)

 

 そう永人が言ってきた。ひどいな…僕も君は気に入らないけど僕のことそんな風に思ってたのかよ。

 

永人(いいぜ、その度胸に免じて約束してやるよ。殺しはしない、相手をできるだけ傷つけずに無力化する。だから…俺と代われ。)

 

永二「そんな口約束を信じろっていうのか?」

 

永人(レキは移動したからって無事になったわけじゃない。立場がイーブンになっただけだ。負ければ死ぬ。お前が相手の場所に向かったところでレキの射撃線を邪魔するだけだ。俺がやってやるよ。信じろとは言わねえ。俺に代わるかどうかは自分で考えろ。武偵だろ?)

 

永二「……本当にお前がやればレキさんも無事でこの戦いを切り抜けられるんだな?」

 

 僕は仲間を助けるためなら…『L―ブレイカー』を…

 

永人(何度も言わせんな。さっさとしろ。)

 

 僕は…決めた。決めたぞ。僕が仲間を助けるんだ。でも今の僕に力はない。だから…今だけ君の力を借りる!!

 

 そして僕はコルトガバメントがあるショルダーホルスターではなく、ヒップホルスターにある『L―ブレイカー』を矢が刺さってない方の手で取った。それをロシアンルーレットでもするかのごとく…頭に向けた。銀髪のスナイパーはレキさんの方向に警戒して身を隠そうとしていたがその時、僕の方を見た。きっとレキさんも僕のこの奇行を見ているだろう。

 

永二「レキさんと銀髪のスナイパー、ここから表情は見えないけど…わかるぞ。どうせ『何してるんだ?』って不思議そうな顔してるんだろうね。けど、今から起こることはそう大したことじゃない。」

 

 僕はそう言って最早決め台詞になってしまったのか、あの言葉を口にしながら引き金を引く!!

 

永二「『僕』が死んで―」

 

 バチイイィィィィィィィッッッ!!!!!

 

 

 

永人「『俺』が、生まれる。ただそれだけさ。」

 

 そして15分という制限で永人が僕と入れ替わり、体のリミッターは外され、能力は無理やり100%引き出された。片方の藍色の目も輝き、永二の体に未だ未知数のさらなる力を与える。あとは…頼むよ。永人―

 

永人「ああ。ここからは…俺の出番さ。」

 

 

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