緋弾のアリアNo name   作:ロリss

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キンジと永二は武偵庁で特訓をすることに。だがキンイチが初日に考えていた特訓は……プロの武偵との手合わせ!?武偵庁の武偵の実力とは!?攻略の鍵は…………戦妹!?!?キンジVS武偵庁勤務武偵の第4話1弾!!

僕はただ仲間を守るために……力を求めた。力を求めた先に何が待っているのか。そんなことなど気にせず、ただただ力を求めた。そして力を手に入れる僕が選ぶ道はみんなと笑いあえる未来なのか、それとも―――――。成長と選択の緋弾のアリアNo name第4話!!


●4話「力の狂乱者」(エゴイスト)1弾「プロの実力」

 病院でのキンイチさんとの出会い、そして僕とキンジさんの決断。とりあえず明日からは武偵高ではなく武偵庁に行くということなのでアリアさんたちにもこの話をしておこうということになった。

 

 

アリア「は?なんでさっきの短い時間でそんなことになってんのよ?ちゃんと説明しなさいよ!」

 

 ま、こうなるよね。キンジさんと2人で「明日から武偵庁に行くことになった」とだけ伝えたらアリアさんは「何言ってるんだ?」という顔をしていた。

 

 僕とキンジさんはさっきあったことを伝えると…

 

アリア「その話…本当なの?特に最初の『眷属が1ヶ月ほど動かない』ってやつ。」

 

 やっぱりアリアさんもそこに食いついてきたか。

 

キンジ「ああ。兄さんが言うには眷属の方に情報を流してくれるやつがいるらしい。多分、パトラのことだろうな。宣戦会議の時も一緒にいたし。」

 

アリア「何言ってるのよ?未だにあの時の記憶はおぼろげだけどあの場所にあんたのお兄さんなんていなかったわよ。パトラと一緒にいたのは『カナ』ってやつだったじゃない。あんたの大切な誰かさんの!」

 

キンジ(ああ…アリアは兄さんとカナが同一人物ってことを知らないんだったか。たまに兄さんとカナ関係で話がややこしくなることがあるんだよなぁ。)

 

 キンジさんはなぜか溜息をついていた。なんだろう?僕はカナって人すら知らないんだけど…?

 

アリア「まぁいいわ。眷属が動かないっていうならこっちもその間に強くなるだけよ。ちょうどあたしもやることがあったし。それであんたたちは武偵庁でキンジのお兄さんに鍛えられるってわけね。」

 

キンジ「そういうことだ。」

 

 アリアさんはもうそれ以上は何も聞いてこなかった。ここからは自分で考えて強くなれってことだろう。そして僕とキンジさんはこの道を選んだということだ。

 

アリア「じゃあ、また1ヶ月後…かしら?エイジ、強くなってきなさいよ!」

 

 アリアさんは僕に期待を込めた目をしていた。きっと僕が強く言い過ぎた件を気にしているだろうか。

 

永二「はい。あの…さっきは強く言い過ぎてすいませんでした。頭に血が上ってたようで。もう大丈夫です。『僕』が…強くなりますから。」

 

 そうして僕たちは少しの別れを告げた

 

 

 

 

 ~次の日~

 

キンイチ「よし、言う通り来たようだな。」

 

 僕とキンジさんはいつも武偵高に行く時間に寮の家を出て武偵庁に向かった。他の武偵高生からはかなり不思議がられた。キンジさんなんか女子たちに「たらしのキンジが学校サボろうとしてるわよ。」「うわ、きっと武偵高以外でできた女にでも会いに行ってるんじゃない?」「そうよそうよ!絶対そう!」と言われていた。キンジさん、あんた一体何したらそんな風になるんすか…?

 

 と、まぁそんな話は置いといて。とうとう武偵庁に来たのだ。やはりどこかピリピリとした雰囲気というものがある。まさにプロがいるところというわけだ。

 

キンイチ「もうすでに武偵庁、武偵高のどちらにも話はつけてある。ついてこい、お前たちを鍛える部屋に案内する。」

 

キンジ「ジャンヌ風に言うとフォロー・ミーってな。永二、行くか。」

 

永二「は、はい。」

 

 僕たちはとうとう中に足を踏み入れた。そうして道を進むとやはりと言ったところか。武偵がかなりいる。いや武偵庁だから当たり前なのだが。僕が言いたいのは「かなり強いと言えるような武偵ばかりいる」という感じだ。EランクやDランクとかそんな話じゃない。Aランクとも言えるような武偵がゴロゴロいるのだ。

 

キンイチ「ここにいるのは武偵の中でも優秀な者ばかり。全員というわけではないがほとんどの者がAランク以上だ。」

 

 う、嘘だろ。Aランクでもすごいのに…。つまりこの中にいるほとんどがSランクもしくはSランクの卵…いや、中にはAランクであれど実力こそSランク級の人もいるのかもしれない。本当にすごい…!

 

キンイチ「ここがお前たちが1ヶ月ほど特訓する場所だ。まぁ武偵庁に備え付けられているトレーニングルームみたいなものだ。」

 

 そう言われて連れてこられた場所はかなり広い部屋だった。もう部屋というよりも学校の体育館ではないかとも言えるような広さの場所で何かがあるというわけではなく何もないただただ広いだけの部屋だった。

 

キンイチ「ここでは寝泊りもできる。好きに使ってくれて構わない。さらにこことは別にもう1室同じような部屋がある。そこでお前たちは1人ずつ分かれて指導を受けてもらう。」

 

永二「え?キンジさんと一緒じゃないってことですか?」

 

 僕は思った疑問を言っただけだったのだが…

 

キンイチ「お前は仲間がいなければ特訓することもできないのか?」

 

永二「ううっ…すいません、なんでもないです。」

 

 若干睨まれながらキツイことを言われてしまった。

 

キンイチ「……正直な話をすると俺ともう1人指導役をしてくれる武偵がいる。武偵庁内での俺の先輩にあたる人だ。その人と俺で1対1で指導をする。」

 

キンジ「兄さんの…先輩か。」

 

 キンジさんのお兄さんもかなり強い人だろう。でも武偵庁内には上がまだいるということなのだ。本当に恐ろしい場所だ。

 

 と僕がそう思った時だった。

 

?「あー!キンイチくんいつの間に来てたんですかー!心配してたんですよ!」

 

?「わ!マジでキンイチさん来てる!うっわ、超久しぶりっす!」

 

 知らない男女がキンイチさんを見るなり話しかけてきた。男の方の身長はキンジさんと同じくらいで髪は短め。女の方はすごく身長が低くアリアさんやあかりちゃんと良い勝負しそうなくらいのレベルで身長が低い人(子?)だった。髪はかなめちゃんと同じくらいの長さで顔は平均的に見て可愛い方なのだが低すぎる身長のせいというわけではなく顔は童顔だ。スカートをはいているのだが…失礼を承知で言おう。まるで女児みたいだ。

 

キンイチ「久しぶりだな。少しばかり武偵高の生徒をここで育てることになった。ということで俺もここに戻ったわけだが。」

 

?(女)「キンイチくんはいっつもそう!フラフラどこかに行ってはフラッと帰ってきたり!」

 

?(男)「まぁまぁいいじゃないすか。あの件の時からなかなか帰ってこないから何かあったのかと思ってたんすけどピンピンしてるっすね。」

 

 2人はキンイチさんとの話でヒートアップしていて僕とキンジさんは置いてかれ気味だ。というか置いてかれてる。

 

キンイチ「少し静かにしてくれ…。キンジ、エイジ、紹介する。男の方が服部、女の方が雀野だ。」

 

 キンイチさんは置いていかれていた僕たちに気付いてくれた。やっと僕たちも話が出来そうだ。

 

服部「うっす!武偵庁内でキンイチさんの後輩の『服部 宗助(はっとり そうすけ)』っていいます!諜報科部門の武偵庁勤務武偵でっす!俺のことは服部でいいよ?」

 

 服部さん…と。話し方からサバサバとした性格なのがわかる。聞いてて思ったけど武偵庁にも武偵高と同じように強襲科、諜報科みたいに分けてるんだな。キンイチさんは…強襲科かな?

 

雀野「えっ、えっと!わ、私は『雀野 葵(すずめの あおい)』です。救護科部門の武偵庁勤務武偵です。怪我とかしたら主に私が診てます。あと、事務的な仕事もしてます。」

 

 なるほどなるほど。雀野さんは救護科か。武偵高ではわからないけど武偵庁では救護科は事務的な仕事も回されるんだな。それよりもこの人たちは一見強そうに見えないけど武偵庁の人ってことは強いんだよな。雀野さんの方は救護科だから強さとは関係ないんだろうけど能力はAランク以上ということなんだろう。

 

永二「それで…この中にキンイチさんの先輩っていうもう1人の指導役の人が?」

 

 僕は気になっていたことをキンイチさんに聞いてみた。

 

キンイチ「違う。服部はさっき言った通り俺の後輩で雀野の方は武偵高の時からの同期だ。まぁ途中で俺はローマ武偵高に行ったんだが。」

 

永二・キンジ「え!?武偵高の時からど、同期!?このちっちゃい人が??」

 

雀野「もう~!失礼ですよ~!!」

 

 アリアさんの身長で高校生と言われるのはまだ理解できる。まだ…!でもアリアさんと同じ身長くらいでキンイチさんと同じ年齢だと言われるのは詐欺にしか聞こえない。

 

永二「あはは…すみません。えと、僕は七子永二です。今日からよろしくお願いします。」

 

キンジ「俺は…」

 

 僕に続きキンジさんが自己紹介しようとした時、

 

服部「あ!君が噂のキンイチさんの弟君っすよね?俺会ってみたかったんすよね~!」

 

キンジ「あ、ああ…。って噂?おい、なんの噂だ。」

 

 キンジさんはすでに服部さんに知られてるみたいだ。キンジさんは「何か嫌な予感がする」といった顔で服部さんに聞いた。キンジさんの噂っていったら…きっとあれだろう。1年の時に強襲科のSランクだったらしいからそれが有名になってるのかもだ。

 

服部「『Sランクから一気にEランクに落ちた外国から目をつけられてる女たらし武偵』だよね?どうやったらそんな暇しなさそうな肩書きつくの?俺、最初聞いた時吹いちゃったんだけど。」

 

キンジ「……。」

 

 うわ…。キンジさんはもうどこか予想していたという感じの顔だ。というか予想していたものが全部きたっていう顔だった。なんてことだ…悪名の方で有名なの?キンジさん。

 

キンジ「なんというかそれは…誤解だ。いや、最初と真ん中はあってるけど…。最後のは違う。そもそも俺は女は好きじゃない。」

 

服部「なるほどなるほど!男が本命ね。日常は女たらしで周りの目を欺いて本性を隠してるわけっすね。弟君、諜報科向いてるよ。それにしても男の方が好きなのか…。いや、俺は否定はしないよ?それぞれの形があるわけだし。」

 

 と服部さんはキンジさんの言葉から別の意味を受け取ったらしい。キンジさんはそれを聞いてさらに顔が青ざめていた。

 

キンジ「おい待て待て待て!俺は一言も男が好きだとは言ってない!」

 

 キンジさんは必死に否定していた。キンジさん、『女が嫌い』って言うたびにこんな誤解を受けてきたんだなぁ。

 

キンイチ「…おい。そろそろこっちも本題に入りたいんだが。」

 

 キンイチさんは威嚇するようにこっちを睨んでそう言ってきた。正直メチャクチャ怖い。

 

服部「あ!うっす!すんません!!」

 

キンジ「なんで俺まで…」

 

 2人が静かになったところでキンイチさんが本題…僕たちの特訓内容についての話を始めたのだが…

 

キンイチ「まずは現段階でお前たちがどこまでやれるか見たい。キンジとエイジ、お前たちにはここの武偵と少し手合わせしてもらう。」

 

永二「え!?」

 

キンジ「マジか…」

 

 僕たちはそれぞれの反応を見せる。僕はただただビックリしていた。お手本にするだけかと思っていたのだがまさか戦うことになるなんて。キンジさんの方は言葉とは逆に顔が「やっぱりな」という反応だった。きっとキンイチさんとの付き合いが長いからこういうことをしてくるだろうなとあらかじめ予想していたのだろう。

 

キンイチ「まずはキンジからだ。そうだな…誰がいいか。」

 

 まずはキンジさんからになった。でも次は僕なんだよな?僕なんかがはたして武偵のプロ中のプロに通用するのか…。

 

服部「はいはいはい!キンイチさん俺やりますよ!弟君と俺やらせてください!」

 

 なんと服部さんからの逆指名がきた。でも服部さんって…」

 

キンジ「諜報科…じゃないのか?俺は今は探偵科だが一応、前は…」

 

服部「ああそういうことなら問題ないっすから。俺、武偵高時代は諜報科と強襲科の掛け持ちだったんで。」

 

 な!?諜報科と……強襲科の掛け持ち!?専科の掛け持ちは聞いたことあるけどその二つの掛け持ちは聞いたことがない。というよりもその二つは全然違うからだ。強襲科は凶悪な犯罪者を真っ向から叩き伏せる戦闘科。対して諜報科はその名のとおり凶悪な犯罪者から『バレずに』情報を盗ってくるというものだ。戦闘ももちろんあるがそれも隠れての攻撃など強襲科とは全然違うのである。それの掛け持ちって…?

 

キンジ「そういう中途半端なことしてると命にかかわるぞ。プロ相手に言うのはなんだが俺たちはゲームしてるわけじゃない。」

 

 キンジさんは先輩相手にもお構いなく厳しい口調だ。でもたしかにこれは軽く流していい話じゃない。同じ武偵として言うことがあるというやつだろう。

 

服部「うっわ…初めて会った時のキンイチさんと同じこと言うんすね弟君。ひどいなぁこっちは結構真面目に考えたことなのに。それにさぁ…そういう固定概念に捕らわれてちゃ逆に危ないよ?お・と・う・と・君」

 

 服部さんのキレた顔が少しだけ出てきた。こ、怖い。でもキンジさんはまったく怯んでいなかった。

 

キンジ「じゃあ見せてくれないか先輩。その固定概念を壊した境地ってやつを。それと俺の名前は『弟君』じゃなくて『遠山キンジ』だ。兄さんの後輩だか知らんがいい加減名前を覚えてくれないか?」

 

 キンジさん…ほんと先輩相手に遠慮ないですね。こっちはもうヒヤヒヤして見てるんですが。

 

雀野「あわわわ…!ちょっと服部君も落ち着いてください!武偵高の子が来てくれてるんですからもっと優しくしないとダメですよ~!」

 

キンジ「あんたはちょっと黙っててくれ。これはこっちの話なんだ。それに俺たちは特訓しにきたんだ。優しくなんてしなくていい。」

 

 キンジさんは雀野さんの方に向いて少しだけキツイ口調で言ったのだが雀野さんは…

 

雀野「うわ~ん!そんな怖い顔しないでください~!」

 

 泣き出してしまった…。そしてキンイチさんの後ろに隠れてキンジさんをチラチラと見ている。

 

キンジ「いや、俺は別に普通だったんだが…。」

 

 キンジさんの言う通り、キンジさん自身はいつもと同じ顔だったのだがそこは周りの女子から根暗と言われているキンジさんだ。一般的にも目つきもあまり良い方じゃないのだろう…。僕は別にそうは思わないけど。………本当だよ?

 

キンイチ「まったく…お前らは一々騒がないといけないのか?まぁいい。それなら服部とキンジだ。このトレーニングルームを使う。ルールは膝もしくは手や腕以外の上半身が地面に3秒以上触れていたら負け。3秒の計測は雀野に任せる。武器使用はアリだがその場合は防弾服以外への攻撃は認めない。それ以外はどこでも攻撃OKだ。」

 

キンジ「わかった。」

 

服部「了解っす。」

 

 そうしてキンジさんと服部さんは体育館の広さもあるこの部屋の中央に立った。そろそろ始まる!

 

 

 

 

 

キンジ「さて…どうするか。」

 

 俺は今、ヒステリアモードじゃない。正直言ってこの状態で武偵の中のプロを相手にするのはキツイだろう。それで諦めるというわけではないがどこまで戦えるかというところだ。

 

服部「どうしたんすか?まさか今頃ビビってるとかじゃないすよねぇ?」

 

 考え事をしていたら挑発された。うるせぇ。こっちはどう戦うか考えてるところなんだよ。ただでさえそっちは強襲科と諜報科っていう変態掛け持ちしてるんだ。ちょっとは考えさせろ。

 

と俺が心で毒づいていると、

 

雀野「あ、あの!ほんとに気を付けてくださいね!怪我としたら痛いですから!」

 

 なんか身長が平賀さん並のミニ武偵、雀野がそんなことを言ってきた。あんたほんとに武偵なのか…?まるで萌のような一般高のやつみたいなことを言うものだ。

 

雀野「そ、それと…き、きゃっ!」

 

 雀野は小さい悲鳴を上げて何もないところで転んだ。しかも器用にも後ろ向きに。一体何につまづいたというのか。……って、ちょっ!

 

 こっちから見るとスカートの中が丸見えじゃないすか!しかもどうせガキみたいなパンツだろうと思ったらまさかの黒の超大人!なんでそこは大人なんすか雀野パイセン…。あ、ダメだ。黒の下着はさらに白雪のも連想させてしまう。こうなってしまえばもうヒス性の血流は一気に流れる。何気に黒の下着がよくある分一番危険なのかもしれないな…。

 

雀野「わあああ!!見ましたか?見ましたよね?違うんです!今日はそろそろキンイチくんと会えるかな~と思ってちょっと気合をいれようかと…って違うんです~!!」

 

 永二)その言葉にキンイチさんもさすがに顔を赤くして「大きな声でやめろ…」と言っている。服部さんは見ていなかったのか普通の顔だ。僕?僕は…まぁさっきの流れを見たら何が起こったのかわかりますよ…。

 

キンジ「何も心配することはないさ。兄さんにアピールできたんだから結果オーライとしないか?先輩。それに俺もよくは見えなかったさ。つまりはさっきのはノーカンだ。今度は誰にも見られないようにちゃんと隠しておくんだよ先輩。」

 

 完全になったな…ヒステリアモードに。これが大人の対応ってものだろう。このままじゃ雀野先輩があまりにも可哀想なんでね。そんなことを思っていると服部が

 

服部「……なったみたいっすね。やっぱりそこはキンイチさんと一緒ってわけっすか。」

 

 と俺にしか聞こえない声で言ってきた。こいつ、ヒステリアモードのことを知っているのか?

 

キンジ「その感じだと兄さんのも知っているみたいだな。」

 

服部「そりゃ一緒に仕事したのも1,2回じゃないすからね。お互いの情報くらいは伝えてますよ。」

 

 なるほどな。兄さんと服部は何度かチームを組んだこともあるんだな。俺はシャーロックの時の1回しか組んでもらったことはないが…。ならこれは知っているか服部先輩さん?

 

キンジ「カナは知っているのか?」

 

服部「!! 逆になんで君がその人を知ってるんすか!?その……お知り合いなんすか?俺、1回だけ会ったことあるんすよ。ちょっとだけ話したことあるんすけど…それで、その、なんつうか、ほ、惚れちゃって…。ぜ、絶対誰にも言わないでくれっすよ!」

 

 あちゃ~、カナ(兄さん)のことは知らなかったか。しかもカナに惚れてるだって?なるほどなるほど。服部先輩はカナ(男)が本命なわけね。それを兄さんに悟らせず普通に兄さんと会話できてるなんて。服部さん…あんた諜報科向いてるよ。それにしてもカナ(男)が好きなのか…。いや、俺は否定はしないよ?それぞれの形があるわけだし?……という感じでさっき俺が言われたのをそのまま返してやりたいが兄さんの面目もあるし、服部に聞かせたらきっと卒倒して再起不能。なんせ惚れたのが女装した先輩ときてるんだ、その現実を受け入れられず武偵生命が危ういだろう。

 

服部「その…HSS?って状態にならせてあげたんすから黙っててくださいね。」

 

キンジ「してあげた…?どういう意味だ?」

 

 こいつ、まさか…

 

服部「……雀野先輩の靴に細工したんすよ。これも言わないでくださいね。俺は本気の弟君と戦いたかったんすから。」

 

 どうりで何もないところで躓くわけだ。こいつは諜報科なわけだしそういうのを仕込むのも得意なんだろう。それにしてもいつ仕込んだのか気づけなかった。俺と戦うことが決まって…俺と口論している時か?そうだとしたらこいつ…相当やっかいだな。意外と頭もキレるというわけだ。

 

キンイチ「そろそろ始めろ。時間がもったいない。」

 

キンジ「ああ、わかってる…!」

 

服部「じゃ…!行くっすよ!!」

 

 

 その言葉が戦いの火ぶたを切り、いきなり服部はこっちに向かってくる。そしてそれと同時に何か刃物のような物を投げてきた!それは横向きに弧を描きこちらに向かってくる。なんだ…?ナイフでもない、弧を描く軌道からブーメランかとでも思ったがこっちに向かってくる物の形状はあまりに小さくX字のような物だった。まさか…!

 

 俺は『二指真剣白刃取り』で止めようかとも思ったが初見の軌道だったため念のため避けておいた。そして地面に刺さったそれを見てみると…、やっぱりな。『手裏剣』だ…!!

 

服部「それで俺がなんなのかわかったっすよね?」

 

 そう言いながら今度はクナイを取り出し腕の皮膚を制服ごしに切りさく軌道で横なぎに振って来た。

 

 俺はそれを咄嗟にバタフライナイフを取り出しクナイを受け止める。もうこれで間違いないな。

 

キンジ「あんた…『忍者』か?」

 

服部「正解…っす!」

 

 今度はバタフライナイフと切り結んでいる方とは逆の手でクナイを取り出し、それを逆手に持って足を切り裂きにきた!すぐに服部から離れ距離をとる。

 

服部「へぇ~、やっぱキンイチさんの弟君なだけあるっすね。反射神経もいい。」

 

キンジ「まさか先輩から褒められるとはな。次はこっちからいくぞ!」

 

 俺はこれでも元強襲科だ。強襲するのは慣れてるんだよ。

 

 俺は下半身の骨で「桜花」を使い、亜音速で地面を蹴り、走る!一瞬のうちに服部の目の前まで接近した。そこからさらに桜花を叩きこんでやろうかと思ったが

 

服部「おっとっと!なかなか速いっすね弟君!ちょっと驚いたっすよ!」

 

 服部は俺が殴りかかる前に距離をとった。これには俺も驚く。俺自身が亜音速で走ったわけではないが初動はそれに近かった。まさかそれに反応するなんて反射神経いいのはどっちだよ。

 

服部「ほらほらこれならどうするっすか!」

 

 そう言って今度は手裏剣を両手の指の間に挟み込み合計8枚を一気に投げてきた!それらは弧を描き、全てが俺を正確に捕らえている。俺はベレッタを手に取り即座にフルオートに切り替え―撃つ!

 

 ダダダダダダダダン!!!!ガギギギギギギギギンッッッ!!!!

 

 全ての手裏剣を『銃弾撃ち』で撃ち落とした。服部はそれを見て目を大きく見開いた。まさか全て防がれるとは思ってなかったのだろう。

 

服部「これは…あれでいくしかないっすね。」

 

 そして忍者、ハットリくんの次に取り出したのは―小さい球体のようなものだった。そしてそれを俺の真下の地面に当たるように投げてきた!その球が地面に当たった瞬間、とてつもなく大きく煙が上がった。俺の視界は煙で覆われ何も見えなくなった。これは煙玉というやつか。普通は逃げる時に使うのだろうが…俺の視界を塞ぐ使い方をするか。たしかに意外だがこれは悪手。向こうも俺が見えていないのだから意味がない。結局、膠着状態になるだけじゃ…。

 

 そう思って集中を切らした時だった。ヒュンヒュンと何かが風を切る音が聴こえ、何だ?と思った瞬間、

 

 シュッ!ザクッ!

 

キンジ「ぐあっ!また手裏剣か…?右腕を少しやられたか…。」

 

 防弾制服の防刃性能も万能というわけじゃない。それよりもなぜ俺を狙えた?煙でお互いの姿は見えないはず。

 

 そうして煙が晴れると服部はニヤニヤと笑っていた。

 

服部「驚いたっすか?別に諜報科なら視覚情報なくても人を感知することぐらいわけないっすよ?例えば耳とかで……ね。」

 

 クソ…!やられた。強襲科のものさしで計っていたらやられる。相手は諜報科だ。さすが強襲科のやりにくい相手なだけあるぜ。それに強襲科が諜報科に勝っている点―近接戦闘の技術においても掛け持ちで強襲科に入ってたおかげか服部はかなりうまい。

 

 固定概念に捕らわれるな…か。そういうことか。諜報科の中では『相手を真っ向から倒せる強襲科のような諜報科』というのはあまり意味をなさないだろう。なぜなら諜報科にとって相手に見つかってしまうことが失敗だからだ。それなら近接戦闘の技術よりも完全に気配を絶つ訓練をした方がいいだろう。そこから俺たちは「強襲科のような諜報科」は必要ないという考えがあったわけだが…これが「強襲科のような諜報科」ではなく「諜報科のような強襲科」となると話は変わってくる。つまり「諜報科のような搦め手で攻めることもできる強襲科」という考え方ができる。それに気づいた服部はその2つを掛け持ちすることで正攻法と搦め手の2種類の戦闘ができる武偵になれたということだ。

 

服部「ほら、どんどん行くっすよ!」

 

 そして服部はまた煙玉を俺の方に投げてきた。さっきと同じだ。立ち止まっていたら手裏剣が飛んでくる。移動しなければ!

 

 そう思い煙から抜け出そうとしたのだが…それは悪手だった。煙から抜け出す寸前に俺の目の前に服部が現れた。

 

服部「いやいや、そんな動いてたら一発でわかるっすよ?」

 

 そして油断していた俺は肘で鳩尾を突かれ、掌底突きで顔を殴られた。

 

キンジ「くっ!次はこっちの番だ!」

 

 今度こそ俺は桜花を叩きこんでやろうと思ったが俺が攻勢にでた瞬間に服部はその場から離れ俺からまた距離をとった。これは…ヒット&アウェイという戦い方か。本当に『プロ』だな。

 

 

 

永二「あ、あのキンイチさん。」

 

キンイチ「なんだ?」

 

 僕は服部さんの戦い方についての質問をする。

 

永二「服部さんのやってるあのヒット&アウェイってそんなに強いんですか?ただ攻撃して逃げるってだけの作戦なんだから破るのも簡単なんじゃ…」

 

 さっきからキンジさんは服部さんに殴られ蹴られ、反撃しようとしたところで逃げられるの繰り返しだ。何か攻略の手はないのか?と思ったのだが。

 

キンイチ「それは違うぞ。ヒット&アウェイは決して簡単ではない。」

 

永二「え?」

 

 キンイチさんの口からは自分の予想とはまったく違う答えが出てきた。ヒット&アウェイが簡単じゃない?

 

キンイチ「服部がやっているような戦闘に取り入れたヒット&アウェイに必要とされるのは3つ。『近接戦闘能力』、『相手の攻撃の予測』、『一瞬の隙に相手から逃げる』の3つだ。この3つの内1つでも欠けるとヒット&アウェイは破綻する。」

 

永二「え?なんでですか?」

 

キンイチ「自分で考えろと言いたいが今回は特別だ。まず『近接戦闘』をこなせなければ相手にダメージを与えるどころか返り討ちにあう。次に『相手の攻撃の予測』がないと引き際が掴めない。チャンスだからといって攻撃し続けると自分に隙が生まれる。だから相手の初撃の前に逃げるのだ。そして『一瞬の隙に相手から逃げる』は言わなくてもわかるだろう?相手の初撃が来る前に適切な距離を一瞬でとる技術だ。」

 

 すごいな…。ヒット&アウェイとは口にするのは簡単だけど実際に行うのはとても難しいことなんだな。

 

永二「な、なるほど。じゃあ僕もそれを身につければ…!」

 

 僕は強くなれる方法をさっそく見つけることができて喜ぶが

 

キンイチ「やめておけ。その3つの技術は強襲科の人間では手に入れるのに苦労する。習得できるのは1つ目の『近接戦闘』くらいのものだ。」

 

永二「なんでですか!ヒット&アウェイも戦闘技術なら強襲科でも身に着けられるはずです!」

 

キンイチ「たしかに形だけなら問題ないだろう。だが服部レベルのものとなると強襲科には不可能だ。なぜならさっき言った3つの技術の内、後の2つは『諜報科の技術』だからな。」

 

永二「諜報科? …!! そういうことか!」

 

 服部さんは自分の戦闘スタイルを完璧なヒット&アウェイにすることを考えていたから強襲科と諜報科の掛け持ちという今では異常なことをしたんだ。たとえ周りから蔑まれても自分を信じて目標に突き進んだんだ。そんなすごいこと、僕にもできるかな?いや、強くなるためなら僕だって…!

 

 僕はキンジさんと戦う服部さんを見ながらそんなことを思っていた。

 

 

 

キンジ「このままじゃいつかやられる。何か手は…」

 

 ヒステリアモードの頭で記憶を探っているが使えそうなものは………あ、あった!!かなり昔の記憶でまだ俺が神奈川武偵高付属中学にいた頃、そうだあの時だ。風魔がヒステリアモードの俺と戦って、それから俺にやたらついてくるようになって…そして中学の卒業が近くなった時に少し話をした日があった。たしか俺はあの時、面白半分で忍者はどうやって相手を攻めるかを風魔に聞いたんだった。あの時の風魔の言ったことは…たしか…

 

 

 

服部「さぁ次いきますよ!ほら!!」

 

 服部はもう何度目か煙玉をキンジの真下の地面に投げつけた。そしてキンジはまた煙の中に姿を消す。

 

服部「さてさて…もうそろそろ弱ってる頃だからここで決めるっすかねぇ。」

 

 もう十分にキンジにダメ―ジは与えたので、次で気絶までもっていく算段を立てていた。トドメも念のため安全に行くことに決めていた。

 

 そして服部は耳をすませキンジがどこにいるかを探ったのだが

 

服部「? 一歩も動いてない?あれ、もう諦めたんすか?」

 

 服部は拍子抜けしていた。キンジなら、キンイチの弟ならこの状況を切り抜けるぐらいしてくると思っていた。だがそのキンジは一歩も動いていない。つまりもう何をしていいかわからないから『動けない』のだ。

 

服部「そうっすか…。ちょっと買いかぶりすぎだったみたいっすね。じゃあ…これで最後にしてあげるっすよ!!」

 

 服部はキンジがいる方向に向けて走り出した!そして服部のとった行動は―

 

 

 

その数十秒前

 

キンジ「たしかあの時風魔が言っていたことは…」

 

 

 

~約2年前~

 

キンジ「なぁ風魔、お前以外にその…忍者…っているのか?」

 

 俺はふと気になったことをこの忍者のような恰好をして忍者と言い張る女―風魔に尋ねた。

 

風魔「もちろんいるでござるよ。」

 

 マジか。こんなのが他にもいたりすんのかな。もしくは犯罪者の方にいたり?うわ、なんか面倒くさそう。いろんな意味で。

 

キンジ「お前の戦い方は俺も予測がしづらかった。できればその…忍者ってやつがどんなことを考えて相手を攻めてんのか教えてほしいんだが。」

 

 俺はそろそろ武偵高を受験する。一応、戦闘知識はどんなものでも知っておいて損はないだろう。それがたとえ忍者とかいうものでも…。はっきり言って役に立つかわからんが。

 

風魔「師匠なら構わないでござるよ!では1つ。忍が相手に見つかり戦闘になったとするでござる。そして忍が勝負を決める時、どのようにしてどこを狙うか…師匠はどう思われるか?」

 

 風魔は俺が忍者に興味を持ったと思ってるのか少し上機嫌な感じだ。にしてもその質問は簡単だろ。どうせ『自分の身を隠して相手の背後へ忍び寄り、背中を狙う』だろ。

 

キンジ「そんなこと普通にわかることだ。言うまでもない。」

 

風魔「その通りでござる。師匠にとっては簡単なことでござろう。では答えを言うでござる。」

 

 お、答え合わせか。

 

風魔「自分の身を隠し、相手の背後へ忍び寄り、背中を狙う…」

 

 ほら見ろ、正解だ。聞くまでもなかったな。

 

風魔「……今言った方法はもうすでに忍の間ではあまり使われてはござらん。相手に自分の姿がバレていなければ有効手なれど、完全な戦闘になった相手にこれをするのはあまりに単純すぎて1周回ってただのバカでござる。」

 

 風魔は師匠である俺を疑いもせずそんなことを言ってきた。拙者、バカでござるか…。

 

風魔「もしこの方法を答えだと言い張る者がいるのであれば、その者は忍の世界で言えば『時代遅れ』というものでござろう。」

 

キンジ「時代遅れでござるか…」

 

 まさか、中学でここまで後輩に罵倒されるとは思わなかった…。いや風魔は何も知らずに言ってるのだが。つーか時代遅れって忍者が言う!?

 

風魔「拙者から見ればその者は滑稽でござるな!」

 

キンジ「おい…もういいからそろそろ答え教えてくれ。」

 

 風魔が笑顔でそんなことを言い出してさすがにもう耐えられなくなりました。

 

風魔「では…真の答えとは、『相手の視界を奪い、真正面から背中を狙う』でござる。」

 

 は?何を言ってるんだこいつは。視界を奪うのはまだわかる。だが真正面から背中を狙う?どうやってだよ。意味が分からない。

 

風魔「忍には目が塞がった相手に自分の場所を偽る術はいくらでもあるでござるよ。それを使い、真正面から接近するも相手には背後にいると思わせるのでござる。」

 

 んん?なんか風魔が難しいこと言い出したぞ。

 

風魔「実演するでござるよ。師匠、少々目かくしを。」

 

キンジ「お、おう。」

 

 風魔から布を受け取り、それを目に当て後ろでくくる。俺の視界はこれで塞がったわけだ。

 

風魔「相手の視界を奪うのは目つぶしでも…または煙幕でも構わないでござる。では今から30秒後に前、後ろ、右、左の4方向のいずれかから拙者が師匠に近づくでござる。師匠は先ほどの話を気にせず拙者がいると思った方向に向いてみてほしいでござる。それで向いた方向に拙者がいれば師匠の勝ちでござる。」

 

 なんだよ勝ちって。これ勝負なのか?まぁそれは置いといて、これこそ簡単だろう。目が塞がっていてもさすがに足音とかでわかる。

 

風魔「ここに30秒のタイマーを設置しておくでござる。このタイマーが鳴ったときに拙者がいると思う方向に向いてほしいでござる。では…師匠、いくでござるよ!!」

 

キンジ「おう。」

 

 俺は30秒経つ間、集中し続けた。少しの足音も逃さないために。そして30秒経った時、背後でガッ!!と言う音が鳴った。それと同時にタイマーが鳴る。だがもう風魔の場所はわかっている。俺の背後だ。足音がバレバレだ!

 

 そう思って後ろを向き目隠しを外してみると………あれ?風魔がいない?なぜだ、足音がしたはずなのに…!

 

風魔「こっちでござるよ師匠。」

 

キンジ「!!」

 

 声がしたのは俺が背後に向いた状態からの背後―つまり元の状態の俺の正面にいたのだ。今では俺が風魔に背中をさらしてしまっている。そう、俺自身が後ろを向いて風魔に背中を見せてしまったのだ。

 

キンジ「どうやったんだ?もう正直に言う、さっぱりわからんかった。俺が考えていたのはお前の言う1周回ってバカな時代遅れで滑稽な方法だったよ。」

 

 もうこの際、恥なんて知らん。笑うなら笑え。

 

風魔「そ、そうでござったか…無礼を許し下され…」

 

キンジ「あー、もうそのことはいい。それよりどうやったんだ?俺は背後で足音がしたと思ったんだが…。」

 

 俺はもうさっきのトリックが気になって仕方がなかった。無礼とか今は知らんでござるよ。

 

風魔「これでござる。」

 

キンジ「石…か?」

 

風魔「そうでござる。これを師匠の背後に投げた。ただそれだけでござる。」

 

 はああああああぁぁ?俺はそんなのに騙されたのか?ってそれ風魔側から見たら俺メッチャ恥かしいやつじゃん!

 

風魔「師匠は今、『そんなバカな』と思ったでござるな?しかし、それは今、師匠の視界が開けているからでござる。」

 

キンジ「というと?」

 

風魔「視界がなければ人間は相手を見つけるのに耳を使うでござる。逆にそれは耳から得る情報を全てと思ってしまうのでござるよ。さっきの師匠のように。」

 

 な、なるほど…!たしかに目がなければ耳で判断するしかない。そして耳が確実に音を拾えばそこに人がいると思ってしまう。戦いならすぐに相手の方に向かなければ致命的だ。そんなことから判断力を失い、ただの石が落ちる音を相手の足音と勘違い、早計してしまうというものか。

 

風魔「そうでござる。つまり忍が最後を決める時はまずこれを警戒してくだされ。」

 

 

 

 

 

キンジ「………だったよな風魔。」

 

 完全に思い出した。ならばあの時と同様、俺は動かない。ここで相手が来るのを待つ。耳をすませてその時を…!

 

 そして少しすると…

 

  ザッ!!

 

 背後から音が聴こえた!体が反応する。けど堪える、後ろに振り向くのを。なぜならお前は……正面にいるからな!!

 

服部「え!?な、なんで!」

 

 風魔の言葉通り、服部は煙の中を前から現れた。服部は変わらず前を向いていた俺を見て驚いたのか一瞬だけ硬直した。俺はその瞬間を逃さない。この煙がアダになったな。煙のせいで俺がちゃんと後ろを向いているかの確認ができなかった。俺が音に従って後ろを向いたと思ってたんだろ?だが残念だったな。初見じゃないんだ…!

 

キンジ「やっと…捕まえたぞ……!!」

 

 俺は右手で服部の左腕をしっかりと掴んだ。これでヒット&アウェイは破綻した。

 

 そして俺はさらに左手で服部の胸ぐらを掴む。これで俺は左右の手で服部を捕まえたわけだ。そこから……足首・膝・腰・首と速度を渡し、マッハ1に近い速度で…頭突きを食らわせる!!

 

  ガッッッッッッッッッッッッ!!!! 

 

 亜音速の桜花頭突きを食らった服部は声も出せず気絶しその場に崩れ落ちた。これで終わったな。と俺は思っていた。だがやはりプロは甘くなかった。

 

 もうしばらく起きないだろうと思っていたのだが…なんと服部は気絶からすぐに目覚め立ち上がった。

 

服部「はぁ…はぁ…!あれ?俺、今落ちてたっすか?ヤッベ!嘘だろ…!何秒間気絶してた…?」

 

 こいつ…桜花の頭突きを食らってもちょっとしか気絶しないのかよ。マジでプロの武偵は化け物だな。だが…

 

雀野「地面に手や腕以外の上半身もしくは膝がついていた時間……3.27秒。服部くんの負けです。」

 

 ストップウォッチで時間を計っていた雀野はそう服部に告げた。すぐに気絶から目を覚ましたのは化け物だが、ちょっとだけ時間がオーバーしたな。

 

服部「マジ……っすか。俺が…負けた!?」

 

キンジ「いや、こっちもギリギリだったぞ。最後のは俺も危なかった。」

 

 こっちもさんざんボコボコにされたので服部にそう言っておくが

 

服部「そこっすよ!なんで最後、俺が正面から来るってわかったんすか?背後の音は聴こえたんすよね?」

 

 やっぱり風魔が話していたことは本当だったんだな。ここは俺にとっては珍しいことだが戦妹に感謝だな。

 

キンジ「聴こえてた。だが正面から来るってことはわかっていた。兄さんの後輩にあんたみたいな忍者がいるように、実は俺の後輩…というか戦妹に忍者がいるんでな。」

 

 俺はそう服部に伝える。言ってみて思ったが後輩に忍者がいるのは兄さんと俺の共通点でもあるな。

 

服部「は……はっはっはっは!マジッすかそれ!うわ~、そりゃ最後のはバレてるっすよね。」

 

 服部は大笑いしていた。一体、どこが面白かったのかは知らんが。

 

キンジ「勝負は俺の勝ちだ。ありがとな服部。」

 

服部「ははは…タメ口は変わらないっすね。でもまぁ、完全に俺の負けっすよ………キンジ君。」

 

 服部はやっと俺の名前を呼んでくれたわけだ。まぁ俺の敬語は結局出てこなかったがな。でもこっちも強襲科と諜報科の掛け持ちを最初はバカにしていたが今では少し尊敬もしている。中々できることじゃないからな。それにしてもさすがはプロの武偵というところだな諜報科の武偵でも武偵庁の武偵となるとレベルが違う。ヒステリアモードの俺でもヒヤヒヤさせられた時もあった。俺ももっと力をつけなきゃいけないってことか。

 

 

 

 

キンイチ「よし終わったな。次は永二だが…」

 

 きた!とうとう僕の番だ。さっきの戦いを見て自分もあんなに戦えるかどうか不安になる。とりあえず今の自分の全力は出さなきゃ。

 

キンイチ「困ったな…。誰にするか。あの人はまだか?ずいぶんと遅―」

 

 とキンイチさんが言った時だった。僕らだけしかいなかったトレーニングルームにいきなり人が1人入って来た。遠慮なくドアをドーンと勢いよく開けて。

 

?「ふ~、ヤベェ!遅刻だ。メチャクチャ寝ちまってたぜ。」

 

 その男は30代くらいの年齢の男で髪はボサボサ。生活感のなさそうな印象があった。髭もあまり剃っておらずみっともないという感想が出てしまうほどだらしない感じになっていた。まさかこの人が…

 

キンイチ「思いっきり遅刻だ……ヤジマさん。また上から怒られるぞ。昔、重要作戦の日も寝坊してただろあんた…。まだ懲りてなかったのか。」

 

ヤジマ「いいじゃねえか。堅いこと言うなキンイチよぉ。それにお前、イ・なんちゃらの『同士討ち』の件はどうなったんだ?俺、あれの報告『遠山金一殉職』って聞いたんだけど。もうちょっとであの仕事俺に回ってくるとこだったじゃねえか。」

 

 ヤジマさんという人はかったるそうな声でキンイチさんにそんなことを言っていた。何の話だろう…?

 

キンイチ「あの作戦は一度、俺が死んだことになって内部に潜入するって話だっただろう。あんた、話何も聞いてないのか…。まったく…キンジ、エイジ、この人が一応俺の先輩にあたる人だ。」

 

ヤジマ「どーもどーも。屋島真一郎(やじま しんいちろう)だ。まぁ見ての通りみっともないおっさんで人にものを教えるような立派な人間じゃねえが…戦闘に関してならおめえらにいくつか教えられることはあると思うぜ、武偵高のガキども。ま!よろしくな。」

 

 ヤジマさんはそんな感じで笑いながら僕たちに自己紹介してきた。

 

キンイチ「じゃあ…エイジの相手はヤジマさんだ。元々、キンジかエイジのどっちかとはぶつけるつもりだったからな。」

 

 僕の相手は…キンイチさんの先輩のヤジマさん!?もちろん服部さんより強いはずだ。そんな人に…僕は…勝てるのか!?

 

 

 

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