キャラ紹介
・七子永二
本作の主人公の2人のうちの1人。極東戦役の香港での戦いを終えたキンジたちの前に現れた記憶を失っている、どこから来たのかもわからない謎の少年。脳のリミッターを外し人間の能力を限界まで引き上げる特殊な電流を流す謎の拳銃『L―ブレイカー』を持つ。『L―ブレイカー』を使うことで15分だけ記憶を失う前の自分、第二人格とも言うべき存在の『永人』と入れ替わることができる。アリアから「予測不能の伸びしろ」と言われるほど吸収力と潜在能力があるらしい。現在は極東戦役に参戦していて所属勢力は『師団』。武偵庁で仲間を守るための力を手に入れるため修行中。
・永人
記憶を失う前の永二。本人は『永人』と名乗っている。普段は永二の『心の部屋』という場所にいる。口調は乱暴で永二と似ても似つかない。自分以外の人間をなんとも思っていなく殺してもなんとも思わないほどである。実力も現在の永二と違い圧倒的で誰もが予想しえない戦闘技を見せる。永二が持っていない記憶を全て持っているらしいのだが、なぜか永二には一切記憶に関することを教えようとしない。永二には脳内に直接話しかけることもできる。
・遠山キンジ
本作の主人公の2人のうちの1人。眷属の原田静刃とは武偵高で友好を深めてしまうも静刃が眷属と知り、因縁とも言うべきものを持つ。静刃とは極東戦役の中のどこかで再戦を誓うことに。現在、武偵庁で永二と共に力をつけるため修行中。
・神崎・H・アリア
キンジと同じ経緯でアリスベルと友好を深めてしまう。しかし親友とも言うべき存在になったアリスベルが眷属と知り強いショックを受ける。今は立ち直り、いつか来るアリスベルとの戦いのため力をつけようと考えている。SSRで何かの特訓をしているという噂が…?
~武偵庁~
・遠山金一
自分が条理予知コグニスで見た最悪の未来に備えるため、キンジを武偵庁に呼んだ。その最悪の未来はキンイチ以外知る者はいない。だがその未来はキンイチの話によるとアリアの「緋弾」関係ということらしい。
・服部宗助
服部半蔵の子孫。忍者であり、ヒット&アウェイという戦闘スタイルでキンジを苦しめた。後輩として染みついているのか「~っす。」という語尾で喋る。武偵庁では新米である。強襲科と諜報科という前代未聞の掛け持ちをしていたがそれは本人が考えて見つけた新たな武偵の形だった。
・雀野葵
武偵庁では救護科の武偵。キンイチの武偵高の頃からの同期。すごく気の弱い性格でなんにでもビクビクしてしまう。キンイチ相手には普通に話せる模様。キンイチのことは武偵高時代から想いを寄せていた。
・屋島真一郎
武偵庁ではかなりの実力を持つ武偵。キンイチの先輩である武偵だがキンイチの方がしっかりしているので立場は逆転気味である。本人がかなりマイペースなこともあり強そうに見えないのだが実力はSランクである。永二の勝負の相手となる武偵である。
2弾「白昼夢に眠る」
キンイチ「じゃあ、ヤジマさんとエイジ、準備してくれ。」
プロの武偵との手合わせ。キンジさんの相手はキンイチさんの後輩で武偵庁にも入りたての服部さんだった。それでもプロだ。服部さんの実力はすごかった、とても僕じゃ敵わないだろう。それでもキンジさんは勝利した。プロを相手に。僕の相手はその服部さんよりも遥かに強いであろうヤジマさん。キンイチさんの先輩で武偵庁の中でも実力はトップクラスだろう…。そんな人を相手に僕は…
ヤジマ「おいおい…キンイチ。俺はそんなこと聞いてねえぞ。このガキどもにいろいろ教えるだけじゃなかったのか?実際に戦ったりもするのかよ…。めんどくせえなぁ…」
ヤジマさんはすごくダルそうにそう言った。この人、身なりといい、めんどくさがる性格といい、強く見えなさそうだけど…腕などの筋肉を見るとかなり鍛えられているのがわかる。それも毎日鍛錬しているかのように鍛えられている筋肉だ。この人はそういうトレーニングもめんどくさがりそうに見えるのだが…きっともうこの人にとってそういう鍛錬は日課レベルになっているのだろう。そう思わせるほどに鍛えられている体だったのが見てとれた。本当のプロというのは鍛錬を鍛錬とも思わず、自分が生き残るための当たり前なこと、生活の一部みたいな考えかたなんだろうな。
キンイチ「昨日メールしたぞ…。まったくあんたは…。」
ヤジマ「マジかよ。見てなかったわ。すまねえすまねえ、そうキレんなって!」
キンイチさんの背中をバシバシと叩いた。
ヤジマ「ところでそこのガキはどいつと戦ったんだ?」
ヤジマさんはキンジさんを見た。キンジさんは服部さんとの戦いで少しボロボロになっていたためそれを見て気になったのだろう。
キンイチ「俺の弟で、遠山キンジ。服部とやって…キンジが勝った。」
ヤジマ「マジかよぉ!!服部、武偵高のガキに負けたのかよ!それってもう下負けじゃねえか?」
ヤジマさんはキンイチさんから結果を聞くなり大爆笑していた。
服部「ヤジマさん…やめてくださいよ。実際、キンジくんは強かったんすから。」
服部さんは実質、下負けという結果のおかげか声も弱かったがキンジさんの実力を認めていた。
ヤジマ「ほう…。んで、お前がそのキンイチの弟の遠山キンジか。」
キンジ「なんだ、遅刻常習の大先輩。武偵なら時間は守れよ。」
キンジさんは開口一番ヤジマさん相手にそんなことを言った。たしかにそうだけどキンジさん…度胸あるなぁ。身長もキンジさんより高く僕よりも高いので180はありそうだ。
ヤジマ「はははは!!そりゃそうだ!忠告ありがとよ!いやぁ、なかなか威勢のいいガキじゃねえか。俺もよ、今までいろんなやつを見てきたから目を見ればわかるぜ。修羅場をいくつかくぐってやがるな。しかもそれでいてまだまだ強くなれるぞお前。伸びしろはキンイチ以上じゃねえか?もしかしたらカナより強くなるかもなんてなキンイチ!!」
そうヤジマさんが言ったところでキンイチさんは顔色を変え急にヤジマさんに詰め寄った。
キンイチ「あんたしばらく会わない間に忘れてるんじゃないか…?俺の前でその名前を出すなとあれほど…!!」
キンイチさんは鬼気迫る表情でヤジマさんの胸ぐらを掴みこちらに聞こえないくらいの声で何かを言っていた。
ヤジマ「わ、わりぃ…。は、ははは。うっかりしてましたぁ~。な、なんちゃって?」
またカナという名前が出たけど武偵庁の人間なのかな?有名な人なのかは知らないけど僕も会ってみたいなぁ。
ヤジマ「じゃあ、そろそろやるか!えっと…そこのガキ!名前は?」
永二「え?あ、はい!七子永二っていいます。武偵ランクは強襲科のDです。よろしくお願いします!!」
急にヤジマさんは僕に名前を聞いてきたのでビックリしたが自己紹介をなんとかすませる。
ヤジマ「ほうほう。ランクはDっと。ふ~ん、お前は…」
ヤジマさんは僕の顔をじろじろと見ている。なんだろう…?なんか恥ずかしいな。
永二「な、なんですか?なんか顔についてますかね?」
ヤジマ「うん?ああ、さっき言ったろ?人の目を見りゃどんなやつかわかるって。」
ああ、そのことか。そういえば同じことをうちの校長の緑松先生も言ってた気がするな。やっぱりいろんな人を見る人はそういう力も身に着くのだろうか。
ヤジマ「お前、………いや、なんでもない。」
永二「え?なんですか?ちょっと気になるじゃないですか。言ってくださいよ。」
ヤジマさんは何か言いそうだったが言ってくれなかった。
ヤジマ「なんでもねえって言ってんだろ。ほら、もうやるぞ。これ以上話してたらまたキンイチにどやされる。」
永二「はぁ…、わかりました。」
そして僕とヤジマさんはキンジさんと服部さんの時みたいにこの部屋の中央に立った。
キンイチ「勝敗は地面に膝もしくは手や腕以外の上半身が3秒以上ついたら負け。武器は使用していいがその場合は防弾服のみへの攻撃とする。以上だ。」
永二「わかってます。」
ヤジマ「へいへい。」
そして僕の戦いは始まった!
永二「いきます!!」
ヤジマ「おう、こいこい。」
僕はまずヤジマさんに接近して左のパンチを大振りで放つ。でも大振りだともちろん相手も避けるのは簡単だ。だから…
ヤジマさんは僕の大振りの左のパンチを見てかったるそうに右の腕を盾のように構える。僕はその腕に当たる寸前でパンチを止める。そう、これはフェイントだ。パンチを止めたと同時に逆側の脚、つまり右足でヤジマさんの脇腹めがけてキックを放った!僕の大振りの左を見て実力はこんなものかと油断したんだろう、僕のキックはうまく決まった。だが、
ヤジマ「いいキックだ。けどな、もっと力いれてこいよ。」
ヤジマさんはまったく効いていなさそうだった。嘘だろ…。これでも本気だった。普通の相手だったら今ごろ倒れるか、それでなくても体勢くらいは崩せるはずだ。なのにヤジマさんの体勢はまったく崩れていない。こっちもまるで鉄の塊を蹴った感じだった。どんだけ鍛えているんだ…。
ヤジマ「じゃあ、次はこっちの番な。」
そう言って、相撲の張り手のようにドンっと押してきた。そう、ただそれだけだったのだが…僕はふっとばされゴロゴロと転がされた。3秒以上経つと負けなのですぐに起きると僕とヤジマさんの距離は10mくらい開いていた。すごい力だった、ただ押されただけなのに…
ヤジマ「どうした?ほら、どんどんこい。」
僕はまたヤジマさんに攻撃する。今度は鳩尾を思いっきり突くように蹴ったのだがこれでもヤジマさんの体はまったく動かない。ヤジマさん自身も効いてなさそうだった。人体の急所を攻撃したのになんでそんな平気そうなんだよ。そうツッコみたくなるほどヤジマさんの体はビクともしない。
ヤジマ「もちろん痛いけどよぉ、それよりもっと痛いのをいくつでも知ってるしこういう仕事してるとそんなことは嫌でも慣れる。お前ほどの力で殴られようが蹴られようが全然効かねえよ。」
今にでもタバコを吸いだすんじゃないかと思うほど暇そうな顔してそんなことを言ってきた。ようするに僕は弱いと言われているのだ。クソ…!これでも全力でやってるのに。
それならとショルダーホルスターからコルトガバメントを取り出しヤジマさんに向かって構える。だが僕が構えたと同時にヤジマさんもショルダーホルスターからコルトパイソンを抜き、発砲。そしてその銃弾は僕が拳銃を構えていた方の腕の制服の袖に引っかかるように当たった。僕は袖を強い力で引っ張られたようになりその勢いで拳銃を落としてしまう。
永二「あ!く、クソ!」
僕はすぐに拾おうとするが、僕が拳銃を取りに動いた瞬間に地面に落ちた拳銃を撃ってさらに遠くへ飛ばした。つまり…拾わせないぞという意味だ。拾いに行こうとしたら背中を撃つぞという意味でもある。
それよりも思ったのだがヤジマさんの発砲するタイミングがあまりにも早い。僕が拳銃を構えた時にはもう発砲していた。いや構える前に発砲している。まるで僕が拳銃を抜いて構えるのを未来でも見て知っているかのように。それにさっきのも僕が頭の中で拳銃を拾おうと考えて地面の拳銃を見た時にはもう発砲された後だった。あきらかにタイミングがおかしいのだ。この早すぎるタイミングには何か秘密があるのかもしれない。
ヤジマ「拳銃はあんまり好きじゃねえんだよな。やっぱり男は拳でなんとかしなきゃよぉ。ちょっと古いか?」
近接戦闘ではこっちの攻撃はまったく効かない。銃撃戦では未来視のような攻撃で拳銃を構えた時にはすでに発砲されていて僕は撃つことすらさせてもらえない。まるで敵わない…!勝つイメージが………できない。
僕はもう考えもそこそこにヤジマさんに向かってしまう。どう攻撃すれば勝てるのかわからないから思考をやめてしまったのだ。だがそれは戦うことにおいて一番やってはいけない最大の悪手と言ってもいい。
ヤジマ「はぁ…若いやつってのはどんどん成長もできるが、そういうことを簡単にやるからダメなんだ。」
そう言って僕が顔面へ繰り出したパンチを腕を掴んで止める。すごい握力で僕はそれを力づくで離すことができない。
ヤジマ「これだけは覚えておけ。何も考えずに戦うのは絶対にするな。お前もそれが悪手ってことぐらい知ってんだろうが。もし俺が凶悪な犯罪者だったらお前はもう死んでたぞ!」
ヤジマさんは子供の間違った行動を怒るかのように僕を怒鳴りつけた。
ヤジマ「これは俺からの『おしおき』だと思え。拳骨ってわけじゃねえけどよ…」
ヤジマさんは拳を握りしめた。力をため込むように。そして…体勢を低くして僕の右脚、膝の少し下あたりをすごい力で殴りつけた!
永二「ぐっ!!」
とてつもない衝撃が脚にくる。僕はまたふっとばされた。負けないためにすぐ立とうとしたが…
永二(あれ…?右脚に力が入らない!?まさか…骨が折れたのか!?いや、でもズキズキと痛むわけじゃない。じゃあなんで力が入らないんだ…?)
立って右脚に体重をかけた瞬間に電流が走ったような痛みがする。それに耐え切れず、力も入らずでまた倒れてしまう。それでも3秒以内に左脚の方でなんとか立つが…。
ヤジマ「右脚で立てないだろ?これは俺が昔から使ってる技でな、『死刻』っつう名前だ。それと安心しろ、骨は折れてない。強い力を受けて筋肉がマヒしてるんだ。まぁ、受けた部分の力の入り具合でそれが起こるか起こらないかなんだが…俺は見ただけでどこにどんだけ力を入れてるかが分かる。だから100%起こすことができる。」
なんだって…!そんなことができるのか。この人、何気にとんでもない技使うな。
ヤジマ「まぁ回復できるのは人によるが…長くて1週間。早くて2,3日くらいかな。」
逆に2,3日もこの状態なのか。クソ!マジで体重を少しかけただけでも立っていられないくらいの痛みが走る。これで骨が折れてないって言うんだからな。
ヤジマ「あと言わなくてもいいことだが…俺はこれを相手の両腕、両脚に打つ。そんで動けなくなった相手を捕まえる。……もう降参しとけ。右脚にくらっただけでも戦うことは難しい。もし、まだやるってんなら次は左脚に『死刻』を打つ。」
永二「………降参はしない。」
ヤジマ「は?」
僕は諦めない。僕は強くならなくちゃいけないんだ。そのためにはこんなところで退くことはできない。簡単に降参なんかしない。
ヤジマ「エイジよぉ…お前、勇気を勘違いしてないか?戦いから退くことも考えろよ。それも勇気だぜ?」
永二「答えは変わらない。降参しない。もう僕は退けないんだ…!」
永二はヤジマを睨むように目を向けてそう言った。
ヤジマ(こいつ…やっぱり危険だ。戦う前に目を見た時思ったが、こいつの目は今まで見てきた中でも相当ヤバイやつだ。いつか道を間違える。もう終わらせた方がいいな。)
ヤジマ「おいキンイチ!もうやめさせろ。これ以上やっても無駄だ。これは力を見るためのものなんだろう?右脚が使えない時点で力もクソもあるか!」
ヤジマさんはそんなことを言った。おい、待ってくれ。僕はまだやれる!僕は…まだ…!
キンイチ「………わかった。中止だエイジ。いいな?」
キンイチさんは僕の方を見てそう告げた。僕は…また無力をさらしただけだ。ヤジマさんは戦闘開始の位置から動いていない。僕はその位置から動かすことができなかったのだ。それほどの実力差があった。また何もできなかった。そう思った時、不意に永人のあの言葉が蘇った。
永人(全部お前が弱いせいじゃないか!)
僕は……もう…嫌なんだ。今度はアリアさんやレキさんやキンジさんがやられるかもしれない。僕が守るって決めたんだ。なのに…なんで僕はこんなに弱いんだ。手も足も出なかった上に最後まで戦わせてもくれなかった。これが今の僕の限界。わかってはいたけど…なんで惨めなんだ。
ヤジマ「ったく!エイジ、んな顔すんな!こっから強くなればいいじゃねえか。おいキンイチ!俺がこいつを担当していいか?どうせお前は弟を見るんだろ?」
キンイチ「まぁそうだが…めずらしいな、あんたがやる気を出すのは。」
ヤジマ「まぁな。ちょっといろいろとあってな。おいエイジ!俺がお前の担当だ。絶対に強くしてやる。」
ヤジマさんは僕の背中をバシバシと叩きそう言ってくれる。
永二「本当に…僕の担当でもいいんですか?僕、こんなに弱いんですよ?」
ヤジマ「アホか。お前は強くなりにここに来たんだろうが。それに俺を相手にしてるやつなんか大体ああなる。お前だけが手も足も出なかったわけじゃねえよ。」
そう言ってくれると僕も少しは救われた気持ちになる。そうだ、ここから強くなるんだ。ヤジマさんのもとで。ここから…!
あらたに決意をする永二だが、その裏でヤジマはあることを思っていた。
ヤジマ(エイジ、お前は気づいてないだろうが…お前の心の中にはとてつもない『狂気』がある。それは武偵としては最悪の『欠陥』になるものだ。そのままじゃ武偵は続けられない、いつか武偵を辞めることになる。俺の予想ではその『狂気』とは―)
服部「ヤジマさん!どうしたんすか?みんな治療室に行ってるっすよ?ヤジマさん来ないんすか?」
と、思考を途中で遮る服部の声がした。
ヤジマ「へ?あ、ああ。俺はいい。エイジの脚が治った日にまた呼んでくれ。どうせ俺は今日、上に呼ばれて前の作戦を寝坊して遅れたことの説教だろうからな。」
服部「了解っす~!ほらエイジくん行くっすよ!」
服部は右脚が使えないエイジに肩をかしていた。
ヤジマ(ま、俺がお前の担当になったのはそれが理由なんだけどな。お前のその『欠陥』を……『狂気』を直せればいいんだが…)
ヤジマは誰も知らないところで密かに決意をした。
ヤジマ「おっと…忘れるとこだった。おい雀野!ちょっとこい!」
ヤジマはデカイ声で雀野を呼ぶ。
雀野「はわわわわ。な、なんですか…?」
雀野はビクビク、オドオドしながらヤジマのところへ向かう。雀野は気が弱い性格なのでヤジマとはあまり合わないのだ。それにヤジマ毎度問題を起こすのでその処理を毎回させられているのは実は雀野だったりする。
ヤジマ「お前に頼みたいことがある。あの七子永二とかいう武偵を調べてくれないか?あいつが武偵として登録されてるなら武偵庁のデータベースを使えば一発でわかる。それであいつの情報を取れるだけ取って俺に渡してくれないか?」
ヤジマは小さい声で言った。
雀野「べ、別にいいですけど…。なんでですか?」
ヤジマ「いいから頼む!」
先輩にそこまで言われては断れないと承諾してしまった雀野は「わかりました」とだけ言ってキンイチたちが行った治療室の方に行った。
ヤジマ「よし、これでいいか。さて…どんなやつなのかね。」
そしてヤジマもトレーニングルームから出た。
キンイチ「さて、エイジは右脚が治るまで特訓は中止だ。キンジはさっそく始めるぞ。まだ動けるな?」
キンジ「ああ。休みたいところだが兄さんはこんくらいじゃ休ませてくれないだろ?」
そうしてエイジは治療室のベッドで休むことになり、キンジとキンイチはさっきの部屋にまた戻って特訓再開となった。
キンイチ「まずお前が身につけなければならないものは…HSSを自在に発動する方法だ。」
キンイチとの特訓が始まり、開口一番にキンイチはキンジにそう告げた。
キンジ「それは俺もカナみたいになれっていうのか?頼むからそれだけは勘弁―」
そう言ったところで兄さんは拳銃を取り出そうとした。そういえば『カナ』発言は地雷なんだよな。これは本当に気を抜くとすぐ踏んでしまうから困る。
キンイチ「違う…!キンジ、お前はHSSは女性がいないと発動できないと思っているんじゃないのか?」
兄さんはそう言ってきた。まぁ普通はそう思うだろう。なんたって性的興奮がトリガーだ。男に興奮すればなんとかなるのかもしれんが俺にそっちの気はないしジーサードやブラドみたいに特殊なもんでもない。ただ…少し引っかかるものはある。俺は過去に女がいない場所でヒスっていることがあるのだ。
キンジ「俺はそう思っていたんだが…女がいない場所でヒスる…じゃなかった、ヒステリアモードになったことがあってそれは違うと思い始めてる。過去、夢でなったこともあるんだ。」
キンイチ「ほう…。そこには気づいているんだな。」
正解だったか。それと実はそれだけじゃない。さっき服部と戦う時、雀野でなったわけだが正確に言うと同じ色の下着をしていた白雪を思い出してヒスってしまったんだ。そこに白雪はいなかったのに。そこから俺はその場所に女がいなくてもヒスれるんじゃないのかとも考えている。
キンイチ「お前が経験したHSSはどれくらいだ?」
キンジ「え~っと、ノルマーレとベルセに…かなり前にアゴニザンテもあったな。それと…レガルメンテ。」
俺は過去になったHSSを挙げていった。正直に言うとワイズマンもあるんだがゲーム大会に使ったなんて言ったら兄さんにボコボコにされるかもしれない。これだけは黙っておこう。っていうか俺も結構使ってるなぁ。自分でコントロールできるものでもないんだがこの数にはさすがにビックリだ。
キンイチ「なるほどな。だがここで気づくと思うがアゴニザンテ以外は全て発動が本人の感情に大きく頼るものだ。特にノルマーレはそれが大きい。それゆえに様々な使い方ができる。」
キンジ「……でも、どうするんだ?一応、引っかかるとこまでは来てるんだがあと1つってところなんだ。どうにも自在発動の発想がもう少しというところで出てこない。」
夢ヒスなら可能だが相手の前で寝るわけにはいかないし、夢に絶対出るという保証もない。
キンイチ「キンジ、お前は巣鴨の爺ちゃんの家に行ったんだろ?その時に見させられなかったか?あれを…。」
兄さんは目線を逸らしながら言った。この感じ、きっと兄さん的にもあまり良いものという感じではないということだ。それに『見させられた』ってことは…。
キンジ「その…爺ちゃんの『春水車』とかいうやつか?」
キンイチ「………見たんだな。」
俺と兄さんはそろって溜息をついた。他のやつの家の爺ちゃんがどんなやつなのかとかは知らんが自分の家の爺ちゃんがあんな風だとそりゃ溜息も出る。あれでも昔はすごかったみたいだけどな。今じゃ婆ちゃんに隠れて春水車やってるような爺ちゃんだよ。
キンジ「けど、あれがなんだっていうんだ。」
キンイチ「爺ちゃんはあれを『自在に返對する方法』だと言っていた。キンジ、お前はまだ服部戦のHSSが続いているな?自分で考えてみろ。」
兄さんは俺に答えを出させたいらしい。まぁ俺も武偵だからな。アリアに昔言われたように武偵なら自分で考えないとな。だが今の兄さんの言葉と俺が服部戦の時にここにはいない白雪でヒスった事実から…答えは見えてきたぞ。
キンジ「自分の頭でヒステリアモードになるような状況や女を想像しろってことか?」
一応、自分なりの言葉でそう兄さんに伝える。
キンイチ「正解だ。爺ちゃんは春水車のことを『時に返對しやすい女性を使い分け自在に返對する』とも言っていた。つまりそれはヒントでもあったんだ。HSSはそこに本物の女性がいなくてもなることができると。」
兄さんはカッコよく言ってるが内容はとんでもないことだな…。にしても、
キンジ「爺ちゃんが本当にそんなこと考えていたのか?ただ俺たちに見せびらかしているようにしか見えなかったが。」
キンイチ「…俺も正直、自分の都合よく解釈しているような気もするがな。さて本題だ。キンジよく見ておけ。」
言われた通り見るが……。うん?なんだこの感じは…。まさか!
キンジ「兄さん、今もしかして…ヒステリアモードになっているか?」
キンイチ「わかったか?これがさっきお前が言った方法だ。白昼夢を見るかのようにして人知れずになる文字通り夢のHSS。これがHSS・レヴェリだ。」
ヒステリア・レヴェリ…!そんな方法があったなんてな。たしかに今の兄さんからはヒステリアモードの時と同じ存在感を感じる。
キンイチ「このHSS・レヴェリは発動こそ自在だが実は欠陥がいくつかある。持続時間が短いことと発動までに時間がかかることだ。」
そんな欠陥があるのか。けど発動までの時間とは言うが兄さんは1分もかかっていなかったんじゃないかというほどの時間だった。
キンイチ「疑問に思ったかもしれないが俺はこれを何度も練習して今は発動時間は1分もかからない。また持続時間はこれも練習して増やすことができ、10~15分というところだ。ここらへんが限界だ。」
そこまで使えるなら戦闘に使えるレベルだ。いや、短くてもヒステリアモードになれるなら十分といっていい。特に1対1なら使える。
キンイチ「お前はこれを何度も練習して俺と同じくらいまで使えるようにしろ。まずはそれが課題だ。」
キンジ「…やってみるさ。」
たしかにそれは身につけておいた方がいいものだろう。特に俺はよく1人の敵を強襲することがあるからなぁ。
キンイチ「とりあえず今日はひたすらその練習だ。今続いてるHSSが切れたら、レヴェリの練習だ。」
さっそく始まるわけか。だが実際この練習はかなり長期にかけて行うことで効果が現れるものだろう。早く始めた方がいい。
キンジ「けどヒステリアモードは切れた直後はなりにくいだろ。少しなるのが大変かもしれない。」
キンイチ「そこがこの練習のポイントと言ってもいい。切れた後でもなることができるか、どのくらいの時間でなれるか、そうする中でHSSになることでレヴェリの持続時間と発動時間を成長させることができる。」
なるほどね。要は苦しんでもやれってことか。まぁそうじゃないと特訓にはならんからな。
そしてキンジの特訓は始まった。
一方、この頃アリアは―
時任「また来たのか。」
アリア「はい。」
アリアはSSRに来ていた。その理由はアリア自身が超能力を使えるようになるためである。実は前から時任の元へは通い続けていて、以前に永二が時任に相談しに行った時に時任が早めに相談を切り上げ向かった予定とはアリアの練習を見るためだったのだ。
アリア「もう少しなのよね…もう少し。」
アリアはそう言いながら何かを念じるように目を閉じた。そうすると少しだけフワフワとアリアのツインテールが動き出した。アリアが今練習している超能力とは理子が使っているのと同じ『髪を操作する』超能力である。
時任「驚いた。もうそこまでできるようになったか。確かにもう少しだ。もっとイメージを強くするんだ。自分が髪を操作している時にどう動かしているかを。」
アリア「うむむむ…。」
アリアがこの時イメージしていたのは理子のことだった。アリア的には複雑だったが理子は実際に髪を動かしているわけだし、それをこの目で見ている。イメージする分には大きく助けになっていた。またアリアは一度、キンジを助けるために緋緋色金による超々能力で髪を動かしたことがある。その経験も助けとなっていた。
アリア(……よし!大丈夫。このまま…!)
そうしてアリアが自分のイメージに自信を持ったとき、アリアのツインテールがフワフワと浮いているというよりも意思を持ったかのように動き出した。
時任「! 成功だ。そこまでできればもう十分だろう。」
アリア「…!よし!!」
アリアは時任のその言葉を聞いて目を開け小さくガッツポーズをした。
時任「あとは……その超能力に名前をつけるとか良いと思うぞ。」
アリア「名前…ですか?」
アリアはキョトンとした顔で時任を見た。あまり必要そうには思えないが…と考えていたのだが。
時任「戦闘中もそうやってウンウン唸りながら念じて使うのか?それなら止めはしないけど名前をつければ一発でイメージできてすぐに超能力が使えるようになる。例えば星伽なんかがいっぱい名前つけてるだろ?」
アリア「ああ…、あの緋緋なんちゃらとか言ってる噛みそうなやつ?あんな名前つけなきゃいけないんですか?」
アリアは戦闘中に白雪が言っているあれを見て「よく言えるなぁ。忘れないのかなぁ?」と思っていた。
時任「あんな難しい名前をつけるやつは星伽くらいだ。あいつは頭が良いから記憶もできるんだろうけどね。まぁそれ以外にも技に対してそういう星伽神社とかの風習的な何かあるんじゃないか?」
アリアは神社のことはまったくわからないので考えるのをやめた。それにしても白雪はすごいんだなと超能力に触れてみてあらためて実感する。体質や血統もあるんだろうが超能力を覚えることがここまで大変だとは思わなかった。
アリア「名前…名前……何がいいかしら?」
アリアは普段こんなことを考えないので困っていた。理子とかがこういうことを考えてそうなので聞けばすぐに案を出してくれそうだが身につけた超能力が理子と一緒なので話しづらいのだ。白雪に聞いてもきっと難しい漢字がいっぱいある名前にされるのだろう。それだと自分が困る。レキは……何も答えてはくれないだろう。
時任「今、他のやつに聞こうとか考えてないか?そんなことをしても無駄。ちゃんと自分がその超能力をイメージできるような名前にしないと。自分でつけるからすぐイメージできるんだ。つまりその技の第一印象と言ってもいい。」
自分がすぐにイメージできるような名前…か。第一印象…。あ!1つちょうどいいのがあったわ!しかも自分でさっきの能力をイメージしやすい名前が。
アリア「………『双剣双銃』。うん、これが一番だわ。この超能力の名前は…双剣双銃!」
アリアはもっともしっくりときた名前が出てパァっと笑顔になった。
時任「なるほど。確かにそれが一番かもね。星伽もそうしているが口に出すとさらにイメージはしやすくなる。まぁ逆に相手にも読まれやすくなるがそこはスピードか読まれにくさを選ぶか状況に応じて考えるといい。」
アリア「はい!あ、ありがとう…ございました。」
アリアは先輩に向かって素直に感謝を述べる。
アリア(こっちは…さっそくできることが増えたわよ。キンジ、エイジ頑張んなさいよ。そして……アリスベル、待ってなさい。)
アリアは窓から空を見上げながらそんなことを考えていた。いつか戦うであろう『敵』の存在も思い浮かべながら。
「はぁ…はぁ…はぁ。」
1人の男はとある場所で木刀を振っていた。まるで鍛錬を積むかのように。
アリスベル「静刃くん…もういいんじゃないですか?静刃くんの異能は消耗が激しいんですから休んだ方が…」
静刃「いや、潜在能力解放が切れて準に切り替わった時にも十分に戦えるようになりたい。意味がないかもしれないが体を動かしていたいんだ。」
静刃がやっている練習は正直意味があるかと言われれば薄いものだった。なぜなら戦闘になれば『バーミリオンの瞳』の表示がサポートしてくれるわけだし素人がそれらしい練習をしても効果は表れないだろう。だが静刃はそれでも何かしていたかったのだ。きっとその理由は『未来で待ってくれている仲間たちのため』と………『遠山キンジ』の存在だった。
あいつはきっと強くなってくる。だったら俺も今のままではいられない。俺も成長しなければ。
刹那との練習を思い出して静刃は木刀を振り続けていた。そうすることで思い出すのは刹那との日々と……自らの宿敵、殲と巻の顔である。
静刃「俺たちの敵は師団だけじゃない。だからどの道俺たちは強くならないといけないんだ。」
アリスベル「静刃くん…」
もちろんアリスベルも何もしてなかったわけじゃない。アリスベルもまたアリアという相手がいるのだ。一度、アリアとは戦ったことがある。あの時は静刃と共に挑んだが手も足もでなかった。『緋弾のアリア』と言えば自身も聞いたことがあり、異能を超えた力を使うとも聞いていた。実際に接敵した時は底知れない力を感じた。しかし、武偵高で見たアリアにはそこまでの力は感じられなかった。無論アリアの武偵としての能力はSランクと格付けされていることもありそれなりの練度は見て取れたが、あの時のアリアとはあまりにも違いすぎていた。そのことに少々戸惑いもしたがアリアの身にこれから何が起こるのかはアリスベルは知らない。でも、アリスベルが関係しているのは今のアリアであり未来のアリアではないのだ。アリスベルもそのことから未来のアリアについては考えないようにしていた。ただあの時の力をアリアがもう手にしていたらと思うと自分も何か身につけなければと思うこともあるのだ。
鵺「なんだじょ静刃。まだそうやって木刀振ってたのかじょ?鵺は表示があるんなら鍛錬の必要はないと思うじょ。」
そこにゴスロリ服を着た幼女……に見える化生、鵺が現れた。
静刃「……ほっといてくれ。自分の気のすむようにやってるだけだ。」
静刃はそっぽを向くようにして答えた。
鵺「鵺はそういう地道な努力っていうやつが大嫌いなんだじょ。こういうのは強いやつと戦って経験を積むのが一番だじょ?特に静刃は戦えば戦うほど強くなるって感じじゃないかや?」
たしかに自分の潜在能力解放は実際に使って動いた方が練習になるかもしれない。それに『バーミリオンの瞳』の表示も様々な戦闘を通せば質の違った情報を提供してくれるかもしれない。戦闘の経験というのが最も静刃に効果があるのは頷ける。しかし、肝心の相手がいないのだ。自分1人の判断で師団に強襲をかけるわけにはいかないし、師団に単身乗り込むわけにはいかない。それになぜか今はイヴィリタの命令で強襲許可が出ないのだ。噂に聞くと何か大きい作戦を考えているらしい。身近な存在で言うとアリスベルだがこっちが手加減してしまうだろう。そう考えると……1人しかいないか。
静刃「そこまで言うなら……鵺、俺と戦ってくれないか。」
アリスベル「静刃くん!?」
鵺「びょ?」
アリスベルと鵺はそれぞれの反応を見せる。
鵺「なるほどだじょ。そんなにアリスベルよりも鵺と戦うのがいいんだじょ?静刃は本当に鵺のことが好きだじょ。重すぎる愛は鵺も困るじょ。」
鵺は体をクネクネさせながらそんなことを言ってきた。アリスベルは「静刃くん…!」と睨みながら何か誤解している。
静刃「違う、そんなんじゃない。単にアリスベルとやっても俺が手加減しそうだからだ。それに比べて鵺なら躊躇いなくぶっ倒せる。」
静刃はサラッと涼しい顔で言った。
鵺「なんだじょその理由は…。まぁいいじょ。それならこっちも手加減できずに殺しちゃうかもしれないじょ?それでもいいかや?」
鵺はニヤリと挑戦的な笑みを浮かべた。一応、仲間なので本気ではないと思うが…。静刃も本気でぶっ倒すと言っていたわけではない。ただ手加減なく戦えるというものは本当だったが。
静刃「ああ、よろしく頼むぜ…!」
アリスベル「鵺、それならこの後は私もお願いします!私もちょうど自分の鍛錬について思い悩んでいたので。」
静刃が妖刕を手に移動しようとした時にアリスベルも立ち上がった。
鵺「なんか鵺がお前らを鍛えるような空気になっちゃってるじょ…。もうそれなら2人まとめて来るといいじょ。今のところ鵺と1対1で勝てる力はお前らにはないじょ?」
静刃「おい、俺は勝ったぞ。」
鵺「あれは引き分けだじょ引き分け。」
一度、静刃は100%の潜在能力解放で鵺を圧倒したのだが鵺の中では引き分けとなっているらしい。まぁあの戦いはアリスベルがいなければ勝ててなかったと思う部分もあるため静刃もそれでいいやという感じだった。
鵺「とりあえず鵺といい勝負するくらいには鍛え上げてやるじょ。それで未来に帰ったらあの殲をボッコボコにしてやれってやつだじょ。びょびょびょ。」
そうやって笑いながら歩く鵺に並んで静刃とアリスベルは歩いた。今の自分から成長し、強くなるために。
アリスベル(待っててくださいアリア。今度会う時は………絶対に負けませんからね。)
そうして2人の少女は次会う日までと強くなっていくのであった…。
そしてキンジが特訓を始めた日の次の日…
ヤジマ「ふぅ~。今日もしんどい一日が始まる…。さすがに減給は嫌だからなぁ~もう寝坊するわけにはいかねえ…。」
ヤジマは先日、上から度重なる寝坊のせいでメチャクチャ怒られ次やったら減給というところまでになっていた。いや、今まで減給されなかったのが不思議なくらいなのだが…。
服部「おはようございますヤジマさん!今日は時間通りに来たんですね!」
服部は後輩気質なのかいつも時間より早く武偵庁に来ている。まぁ本当に後輩なのだが、というか新米なのだが。
ヤジマ「おう服部。お前はいっつも早いな~。眠くないのか?」
服部「何言ってるんすか。今でも7時ですしこんくらいに起きた方が健康でいいっすよ?特に俺たちみたいな仕事は体使うんすから。」
服部は先生かとツッコミたくなるようなセリフに嫌な顔をしたヤジマだったが
服部「ヤジマさん!あの……エイジくん動けるようになってましたよ。それで今は1人でトレーニングでもしているんじゃないすか?」
服部はヤジマから「永二が『死刻』のダメ―ジから回復して動けるようになったら俺に報告しろ」と言われていたので服部はヤジマにそう伝えた。伝えたということは…
ヤジマ「ちょっと待て。あいつもう動けるようになってんのか?それはありえん。あれは動けるようになるまで最低2,3日は…」
そう言ってヤジマは急いで武偵庁のトレーニングルームに向かった。エイジとキンジはここで寝泊りしていると聞いていたのでここにいるはずだと思って。
そしてトレーニングルームの扉を開けた時、そこにいたのは戦闘の動きの型を動いて確かめていた永二の姿だった。
永二「あ、おはようございますヤジマさん!ただ待ってるのもあれなんで1人で特訓してました!」
永二は笑顔でそう言った。だがヤジマはまさにありえないものを見たという顔だった。
ヤジマ「お前…脚どうした?立ててるのか?いつも通り動かせるのか?いったいどうなってる…。」
ヤジマは永二に『死刻』を受けさせた右脚を見ていた。
永二「右脚ですか?はい、この通り問題なく動かせますし立てますよ。さぁ今日から僕も特訓頑張ります。」
ヤジマ「あ、ああ。わかった。問題ないなら始めよう。」
永二、お前はいったいどうなって…。回復が異常に早いということなのか?さっぱりわからねえ。キンイチのやつ、もしかしたらトンデモねえやつを連れてきたかもしれねえな。とりあえず雀野に頼んだエイジの資料が来るまで深く考えるのはやめるか。
永二「よし。とうとう僕もスタートラインに立った。ここから…」
僕は変わる。『僕』は死なずに『僕』が生まれ変わるんだ。永人、君はもう…必要ない…!
~永二の『心の部屋』で~
永人「永二がなんか考えてるみてえだが……そううまくいくかな?お前は気づいてない、自分の『本質』が。自分がどういう人間なのかわかってない。お前はそんなキレイな心の人間じゃないんだよ。俺とお前は同じ人間なんだから結局のところ『本質』も俺と同じさ。お前が心の中に潜ませている『狂気』。それが現れるのはいつになるか…。そう遠くないかもしれない。もしかしたら…そろそろ…。」
永人は永二に聞こえない心の部屋の中でそう呟いた。永二に話しかけることもできるのだが今は高みの見物と決めているのだ。永人は永二の今の現状を見て永二がどうなるのかを知っているかのようにニヤリと…笑った。永二の中にいる永人が何を考えて、永二のどんな姿を想像しているのかはもちろん誰も知る由はない…。