緋弾のアリアNo name   作:ロリss

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特訓を続ける永二はとうとう力を得るために完全に狂ってしまう…。永二が服部に提案した練習方法は危険というレベルではないものだった。その永二の増幅する狂気を目にしたヤジマのとった行動は…?そしてある日、武偵高でとてつもない大事件が起きる。それはただの事件ではなく、師団と眷属の戦いの再開を告げる号砲だった…。とうとう極東乱戦が始まる!!そして力を得た永二が選ぶ道は…


4弾「発狂」

~15日経過 夜~ 

 

永二「大丈夫ですよ…。すごく…すごく簡単なことですから。」

 

 永二は笑顔でそう言ってきた。まぁそれなら手伝ってやるかと服部は内容を聞く。

 

服部「俺はどうすればいいっすか?」

 

永二「服部さんは僕が言ったヤジマさんとの練習の銃弾を撃つ役です。つまりヤジマさんと同じことをしてください。本当は僕はC装備をしなきゃいけないんですが今回は装備しません。このままでいきます。あと僕の半径10mを回ってもらうつもりでしたが今回は半径5mでいきます。」

 

 永二が言ったことは簡単なことだが永二を撃たなければいけないというものだったため少し覚悟がいるものだった。犯罪者ならまだしも知っている仲の者を撃つのは気が引けた。それに間違っても防弾制服以外を撃ってはいけない。そのことから少し緊張したがこれでも服部はプロだ。まぁ変なところに撃ってしまうことはないだろう。

 

服部「C装備…いいんすか?」

 

永二「はい。より集中するためです。これなら僕も慎重になりますし感覚も鍛えられると思うんです。」

 

 永二が思いついたのは装備を薄くすることと距離の縮小だった。服部は感覚についてはわからないのでとやかく言うのはやめておいた。永二自身がそう言うならそうなんだろうと思った。

 

服部「じゃあ俺は撃つだけでいいんすね?」

 

永二「はい。……『ちゃんと』狙ってくださいね?」

 

 永二はまた笑顔でそう言ってくる。その笑顔が少しだけ……怖かった。

 

 

 

 そして練習は始まった。服部は目隠しした永二の半径5mの周りを回る。そして永二の背後についたところで拳銃を抜く!

 

 その瞬間、永二は服部の殺気を感じその場から飛び退いた。その直後、永二の体があった場所に銃弾が通過する。

 

服部「おおー!すごいっすね!それが殺気を感じるってやつっすか?こっちは足音を消してたのにどっから撃ったのかの場所までわかるんすね!」

 

 服部は興奮気味だった。服部自身はそんなことはできないため感動したのだ。

 

永二「……ダメだな。もっと早く感じないと。あとどこを狙われているかまでわからないとダメだ。」

 

 永二はあまり納得いってない感じだった。そして目隠しを外し、壁の弾痕からさっきの銃弾がどこを狙われていたかを確認する。

 

永二「服部さん……さっきどこを狙いましたか?」

 

服部「うん?ああ、えっと…永二くんの背中っすね。」

 

 服部は何気なくそう答えた。だが永二はそれを聞くなり、

 

永二「服部さん……もっと真剣に撃ってくれませんか?これじゃ全然練習にならないんですよ。」

 

 永二は溜息をつくようにそう言ってくる。これには服部も頭にきた。

 

服部「な!?そりゃたしかに俺は拳銃を戦闘で使わないっすけどねぇ…これでも毎日、射撃訓練してるんすよ!成績も武偵庁の中じゃいい方だし。それにさっきのどこが悪かったんすか!」

 

 服部の射撃訓練の成績がいいことは本当だった。いくら戦闘で使わないとしても、もしもの時があるかもしれない。そういう考えで拳銃を使う練習もかかさず行っている。それにさっきの狙いも悪いとは思えない。背中だが当たり所によれば真正面から受けるのと同じで下手をすれば呼吸困難も起こす場合だってあるのだ。服部の狙いは実戦的と言えた。

 

永二「いや……あのですね。もっとちゃんと僕を『殺すつもり』で撃ってくださいって言ってるんですよ?制服ごしに撃っても僕は死にませんよ?」

 

 永二は服部にそう言った。いたってそれが普通という感じで。

 

服部「………………は?」

 

 服部は今言われた言葉が呑み込めなかった。まるで言語が理解できなかったという風に目を見開いて永二を見た。

 

永二「聞いてます?例えば僕の頭に撃つとか制服で隠れていない部分の手足でもいいですね。もっと真面目に狙ってくれないとこっちも練習になりませんよ。」

 

服部「ちょっと、永二くん…何言ってるんすか?頭を狙え?そんなことしたら…死ぬじゃないすか…。」

 

 服部は信じられないことを聞いて混乱していた。自分の聞き間違いと思いたかった。

 

永二「はい、死にますよ。それが…どうかしたんですか?」

 

 永二は何もおかしくないと言うが……明らかに異常だ。

 

服部「そんなことなら俺はやらないっすよ。俺に人を殺せって言ってるのも同じじゃないっすか。」

 

 服部はトレーニングルームから出て行こうとする。まるでこの異常な空間から早く出たいというつもりでもあった。今の永二はまさに異常の一言だったからだ。

 

永二「それは僕が失敗したらの話でしょう!やってみてくださいよ!」

 

服部「言ってることメチャクチャっすよ!失敗したら?そしたら俺は武偵3倍刑で死刑確実っすよ。」

 

 服部は少しキレ気味で叫ぶように永二に言うが永二はまったく気にも留めていない様子で

 

永二「だから……それがどうしたんですか?要は僕次第ですよ。僕は強くならなきゃいけないんだ。死ぬのなんて何も怖くない。どうせ監視カメラついてるんですから脅されたとでも言えばいいじゃないですか。」

 

服部(本当に永二くんなんすか…?まったく別人のよう…。少し見ない間にここまで人は変わるもんなんすか?)

 

 服部はこの永二の変わりように戸惑っていた。だが、最終的に

 

服部「…わかったっすよ。やるっす。けど、もしこっちが無理だと判断したら即やめるっすからね。」

 

永二「ありがとうございます。」

 

 服部はそう言いながら、頭の中で応急処置の手順を思い出していた。ついでに雀野の連絡先と。これはもしもの時のための準備だ。

 

 

 

 そして練習は再開した。服部はまた目隠しした永二の周りを歩く。そして永二の左斜めで止まり、とりあえず最初は永二の左手を撃ち抜く狙いで撃った!

 

 永二はさっきよりも強く殺気を感じとり左手を少し動かすだけでその銃弾を避けた。

 

永二「これはすごい…。どこを狙われているかもわかる。これなら今日中にコツを掴むことができそうだ…」

 

 服部(永二くん…君はいったいどうしちゃったんすか…。)

 

 服部は心配するも次に移る。今度はまた背後で止まり…永二の後頭部を狙った。頭で何度も応急処置の手順を繰り返し思い出し、覚悟を決めて引き金を引いた!

 

 永二はまたも強い殺気を感じ取り今度は頭を少しだけ左横に動かす。だが少し考えが甘かったか、避けた逆側の右頬を銃弾がかすめた。

 

 ビッッッ!!

 

 という音と同時に永二の右頬から血が流れる。

 

服部「永二くん!!大丈夫っすか!?」

 

 服部は急いで駆け付けたが

 

永二「ふ、ふふふ…はははは!強くなれる、その実感がある。この調子だ。この調子でいけば…!服部さん、次お願いします。」

 

 服部の永二を見る目はいつからか変わっていた。その笑う姿を見るだけで背筋が冷たくなる。過去、凶悪な犯罪者の中にもここまで歪んだ人間を見たことはない。間近でその『狂気』にさらされ服部にこの練習を辞退するような力さえも抜けていった。

 

 撃っている途中で1時間ごとに休みがあった。休んでいる時には何度も外で吐いていた。武偵として人の死を見たことはあっても人間をここまで殺すように撃ったことはないからだ。もう辞めたいと思ったがそれが次第に永二への怯えとなりそれすらも言えずできなかった。そしてほぼ朝まで撃った頃には服部の精神状態はもう限界まで来ていた。

 

 

 

 

ヤジマ「……嘘だろ…。」

 

 ヤジマは雀野に服部を休ませるよう連絡を入れて、それからトレーニングルームの扉を開けた。そこからは血の匂いがかすかにした。

 

 そこに立っていたのは……手足から血を流して、顔に銃弾を何度もかすめたのか頬からも何か所か血が流れていた永二だった。もう血が固まっているところも複数あり、ここまで血を流しているのになぜ立っていられるのか不思議に思うほどだった。

 

ヤジマ「お前……、永二…なんだよな?」

 

 一瞬そこに立っていたのが永二とは思えなかった。つい最近まであんなに普通の少年だったのに、今はもう…。

 

永二「あ、ヤジマさんおはようございます!早速特訓…始めましょうか?」

 

 永二は変わらず笑顔で挨拶をしてきた。その笑顔にヤジマの背中はゾクリと寒気がした。

 

ヤジマ「お、お前…そんな血だらけで…大丈夫か?」

 

 ヤジマは言いたいことは山ほどあったがまずは心配した。

 

永二「へ?ああ大丈夫ですよ。かすり傷ばっかりですから。」

 

 永二はかすり傷と言うが出血量がマズイ。これでは今日は特訓は難しいだろう。

 

ヤジマ「おい、お前服部に無理させたんだってな?ちょっとは悪いとは思わねえのか?」

 

 ヤジマは次に服部のことを永二に話した。これに関しては怒りを感じていたのだ。だが永二の答えは

 

永二「? なんでですか?服部さんは僕の練習を手伝うと言ったんです。それで手伝ってもらった。ありがたいとは思ってますけど。それに服部さんがあんな風になってるのは僕のせいじゃなくて服部さん自身が弱かったせいですよ。」

 

 永二はさも当たり前という風にそう言った。その言葉がヤジマの火に油を注いだ。

 

ヤジマ「なんだと?少しも謝る気がねえのか?冗談言ってるんじゃねえんだぞ?」

 

 ヤジマは怒りのせいか声も低くなる。永二を見る目も鋭くなってしまう。

 

永二「はぁ…。じゃあそこまで言うならヤジマさん代わりに謝ってきてくれません?『ごめんなさい』って。僕は特訓で忙しいのでそんな無駄な事に時間は割けません。」

 

 そう言う永二にとうとうヤジマの怒りは限界を超えた。

 

ヤジマ「お前なぁっ!!!!」

 

 ヤジマは永二の胸倉を掴みあげる。だが永二の表情はまったく変わらない。

 

永二「もうなんなんですか…?僕何か気に障ること言いました?痛いですからさっさとこの手離してくれません?」

 

 ヤジマは永二の目を見て言葉を失った。最初に見た時でも相当にヤバイタイプの人間だったことがわかるほどの目だったが今ではそれすらも生温いと思えるほどに冷たい目をしていた。

 

ヤジマ(こいつは……マズイ。こんな短期間でここまでヤバくなるやつは見たことがない。いったい何があった…?)

 

 ヤジマは手を離した。しばらく無言だった。話す言葉が出てこなかったのだ。

 

永二「特訓……しないんですか?」

 

 永二はそう聞いてきた。

 

ヤジマ「アホか。そんな傷でできるわけないだろ。今日は休め。明日からだ。わかったな?」

 

永二「はい。わかりました。」

 

 ヤジマの心にもう怒りはなかった。今ある気持ちは怒りではなく…『悲しみ』だった。

 

ヤジマ(どうしてその年でそこまで冷たい目ができるんだ。普通ならもっと希望にあふれた、これからへの期待が見えるんだよ、その年のガキっつうのは。でもお前の目には『憎悪』や『孤独』しか見えないんだ。その年でいったいお前には何があったんだ。)

 

 ヤジマはただそれが悲しかった。見ているのが辛かった。どうにかこの少年を助けたいと…思った。

 

ヤジマ「永二、今日は特訓が休みだから…ちょっとお勉強でもするか。」

 

永二「はい?」

 

 永二は?マークを浮かべたがヤジマに「ついてこい」と言われたのでとりあえず行くことにした。このままではマズイので途中で永二の傷を治療しておいた。

 

 そして行きついた先は1つの部屋でその中には机しかなかった。

 

永二「で?なんの勉強するんですか?」

 

 永二はその部屋の机の椅子に座ってヤジマに聞いた。

 

ヤジマ「実は勉強ってわけじゃねえんだけどよ。ちょっとこれやってみろ。」

 

 そうしてヤジマが渡してきたのは一枚の紙きれだった。それには何か問題らしきものが書かれてあった。

 

永二「え~っと……『武偵人格テスト』…ですか?」

 

 永二はそこに書かれていた文字を読んでみた。

 

ヤジマ「そうだ。それは武偵庁の武偵が1ヶ月に1度やらされる、武偵として正しい心を持っているかを見るテスト。まぁテストっつっても心理テストだから思ったことを書け。」

 

永二「わかりました。」

 

 永二はカリカリと心理テストの問題を解き始めた。それをヤジマはじっと見ていた。

 

ヤジマ(黙っていたが実はそのテスト点数がつくんだぜ。しかも点数次第じゃ武偵はペナルティをくらうようになっているんだ。)

 

 このテストは武偵庁の武偵の心に何も問題はないか、武偵として正しいかを見るテスト。それはヤジマの言った通りで間違いない。ただ永二に黙っていたのは点数次第でのペナルティが存在することだった。

 

 このテストは武偵庁専属のカウンセラーが答えを点数化し、答えが感覚的に武偵として正しいものほど点数が高くなる。100点満点で、これが70点を下回ると『武偵活動の1ヶ月休止』というペナルティが発生する。これはその人物が武偵として人格が少し怪しいと判断され武偵として活動させるには問題があるとされるからだ。

 

 そしてこれが50点を下回ると『武偵活動の6カ月休止』となり、30点を下回ってしまうと良くて『武偵活動の1年間休止』、もしくは最悪『武偵免許剥奪』まである。

 

 ただこのテストで70点を下回る者はそういない。いてもかなり稀である。武偵になる者は大抵人格はちゃんとしているのだ。普通の武偵でも80点はとるしキンイチは95点だった。

 

ヤジマ(だが…俺の予想で言えば永二、お前は確実に50点を下回る。お前の心には俺が見た限り大きな問題が2つある。1つは『力への執着』。まるで強くなければ価値がないと言うかのように力を渇望する。自分のことも無価値だとか思ってるんじゃないのか?だからあんなにボロボロの血だらけでも気にしていなかった。もしかすると死んでも構わないとまで思っているのかもしれない。)

 

 ヤジマはこれまで見てきた永二をまとめるかのように思い出し…考える。

 

ヤジマ(そしてもう1つ。これが最も武偵として致命的なものだが…それは『犯罪者への異常な嫌悪』。永二がどんな犯罪者と出会ってきたのかはわからないが永二の目には異常とも言えるほどの犯罪者に対する憎悪が見える。)

 

 そもそも武偵というのは犯罪者を捕まえる者だが、いくら武偵でも相手の犯罪者に事情があれば同情というものをしてしまう。もちろんそれで許すわけではない。だが人間である以上、どうしても場合によれば犯罪者に同情してしまうケースがあるのだ。しかし永二にはまったくといっていいほどそんな感情がない。犯罪者を同じ人間だと思っているかどうかも疑わしいほどだ。

 

ヤジマ(特にこいつの言動からみて『自分の仲間を傷つけるような犯罪者』のことをひどく嫌っている。もしそんなやつが現れたら今の永二はどうするか…答えは明白だ。武偵はどんな状況でも人を殺してはいけない。こいつはいつか絶対に道を間違える。いったいお前はどんな犯罪者と出会ってきたらそうな風になるんだ…!)

 

 永二は過去に2度、犯罪者のせいで仲間を失いかけた。1度は最初の事件の時にあかりを。2度目は眷属の襲撃で理子と白雪を。その2度の出来事が、仲間を失うことの恐怖が永二を確実に狂わせていた。だがそんなことはヤジマの知らないところである…。

 

ヤジマ(これからも今まで通り特訓は付き合ってやるし、俺が教えられることはすべて教えてやる。けどお前にそのテストの結果を見せて自分がどれだけ狂っているのかを知らせてやる。それが俺ができる精一杯だ。)

 

 そんなヤジマの思いは知らず、永二はただ黙々と回答を書いていた。そんな時、

 

雀野「頼まれてた物持ってきましたよ~。ってあれ?今取り込み中でした?」

 

 雀野がやってきた。ヤジマから頼まれていた「七子永二」の情報を持ってきたのだろう。

 

ヤジマ「いや、大丈夫だ。永二、俺はちょっとこの部屋から出るからちゃんとテストしてろよ~。」

 

永二「はい。」

 

 そしてヤジマは部屋から退出して早速、「七子永二」の情報が全て書かれた書類を雀野から受け取った。

 

ヤジマ「ふむふむ…。っておい!ほとんどが不明になってんじゃねえか。サボってんじゃねえよ。」

 

 ヤジマが見た資料にはほとんど見るデータがないというほど情報がなかった。名前と年齢と所属の武偵高、身体情報。あと解決した事件。これしかわからない。どこの生まれなのか、どこからやってきたのか、どこの子供なのか、何もかもが不明になっている。

 

雀野「サボってませんよ!失礼です!!というかその子、武偵庁のデータベースで調べてもまったくわからないんです。ここで情報がないとなるとお手上げですね。武偵になる時に人物の情報は調べられるはずなんですけどこの子のだけ『情報取得できず』って結果が出てます。こんな結果が出るのは少なくとも日本には存在しない人間ってことになりますよ?」

 

 そんなバカな。永二は明らかに日本人だ。言語も日本語、顔もいわゆる日本人顔で肌の色も日本人と一緒だ。

 

雀野「ただ…身体情報が少し変ですね。人間の体っていうのは左右非対称なんですよ。永二くんの体もそうなんですがそれが極端と言いますか。いや、目ではっきりとわかるほどじゃないんですけど数値で見たら全く違うほどなんです。こんな例が出るのは大抵、その部位を誰かから移植されたとかなんですけど…永二くんの体のほとんどの部分でそれが見られるんです。」

 

 経歴はまったく謎で生まれも謎。そもそもこの世界に存在する人物なのかも疑わしく、さらに体はいたるところを移植か。……謎すぎる。こんなに経歴が謎なやつ、普通は生きていけない。いったい何がどうなってる。まったくわからねえ。「存在しない」っていうなら今ここにいるこいつはなんなんだ?

 

 こうして「七子永二」の謎を見てしまう人物が増えたのであった。未だそれは誰にもわからない…。この世界に存在しないというならいったいどこから来たのか…。それがより永二の存在を不気味にさせた。

 

 

 

 

 

~20日経過~ side静刃

 

静刃「はぁ…!クソ!」

 

鵺「そんなもんかじょ~!静刃は動きがワンパターンだじょ。もうさすがに20日も同じ動きされるとこっちも飽きるじょ。」

 

 静刃と鵺は実戦訓練ということで実際に戦っていた。もう今日で20日になる。動きはよくなってきたのだが鵺の方が静刃の動きに慣れてしまったのだ。

 

静刃「そんなこと言われても表示に従って戦ってるんだ。これが一番最適な動きのはずだぞ?」

 

 表示の出す情報はほぼ確実だ。それに従って動けば間違った動きをすることはない。

 

鵺「そうは言うけどじょ?実際の戦いなんて最適解の動きだけが勝利につながるわけじゃないじょ?うう~なんか言葉にしづらいじょ…。」

 

静刃「それじゃ俺もわからんし、表示に従って戦えって言ったのは鵺の方だろ。」

 

 静刃はウンウン唸る鵺を見て納得がいかないと反論した。

 

鵺「さすがに20日も同じやつと戦うとか想定してないじょ。もう『炸牙』とかいい加減飽きたんだじょ。この月で一番聞いた単語だじょ。」

 

 こいつ…!たしかに俺の決め技でもある「炸牙」。やはりチャンスの時は表示が出してくるのだ。そして俺が発声すれば自動で技は発動するんだが…鵺が完全に「炸牙」のタイミングを掴んだというか少ないダメージで済むように立ち回れるようになっているのだ。

 

鵺「そうだじょ静刃!新しい技を考えるんだじょ!」

 

静刃「新しい……技?」

 

 急な鵺の提案に俺はビックリする。

 

鵺「『炸牙』を超える技だじょ。それを手に入れれば遠山も殲もボッコボコだじょ!びょびょびょ!」

 

 簡単に言うなぁ。そもそも技は俺が考えてるんじゃなくて表示が毎回出してくるんだよ。「炸牙」だってそうだし俺の持ってる全部の技がそうだ。だから鵺との戦いの中で表示が出してくれると思ったんだが……結局出なかった。きっと俺が「炸牙」を決め技と思っているせいでそれ以上の技を提案してくれないんだろう。なんてったってやったことのない技よりやったことのある技の方が失敗はないし確実だからな。表示もよほどのことがない限り新しい技は出さないみたいだ。

 

静刃「んなこと言われても出ないものは出ない!鵺、お前も極超短波増幅砲(メーザーピアス)ばっかり撃ってくんな!マジで当たったら死ぬだろ!」

 

鵺「何言ってんだじょ!当たるやつが悪いんだじょ!そんなに言うなら殲が使ってるっていう芭蕉扇(バジャオシェーン)みたいなすごい技作れじょ!この妖刕ヒモ男!びょひひ!」

 

 鵺は自分で言った「妖刕ヒモ男」ってギャグに笑ってる。どこが面白いんだよ。あれか、俺が妖刕に頼りっぱなしで技を考えるのも表示だからか?うるせえよ。でもそういえば妖刕の姿って女だったよな。あれ?案外鵺の言ってることが的を射てるような…。いやでも俺は戦って妖刕を喜ばせてるみたいだしWin-Winの関係のはず。って鵺の言葉になんでこんなに悩まされるんだ。

 

静刃「なんで敵の技を……って待て。芭蕉扇か…。お、思いついたかもしれない!」

 

 俺は殲の技を思い出した時に1つの技を思いついた。すぐに妖刕を手に取る。すると表示が『新技やってみた』というそれはどうなんだ言いたくなる名前つきの映像を視界に流してくれる。映像は俺が妖刕でその技を使っている仮想の動画だった。その映像を見てみると…俺が思い描いていた通りの技が映されていた。そして「成功。推奨潜在能力解放100%」と出してくる。つまりこの技は100%の潜在能力解放の時でやった方が成功する技なんだな。俺もとんでもない技を考えてしまったというわけだ。

 

鵺「なんだじょ?どんな技だじょ?鵺にも教えるじょ。1人で喜ばれてもキモイじょ。」

 

 キモイ言うな。でもこの技は殲の芭蕉扇並みの破壊力がある技だ。簡単に見せられるものじゃない。

 

静刃「これは結構危険なんだ。見せるって言ってもまた今度な。それにどっかで人以外に撃つことで見せてやるよ。」

 

 さすがに芭蕉扇並みの破壊力がある技を人に撃って試し打ちはないだろう。

 

アリスベル「どうしたんですか盛り上がって。」

 

 と、俺が喜んでいるとアリスベルが来た。

 

静刃「なに、ちょっと新しい技を思いついてな。それもかなり強力な技が。」

 

 俺は自慢げにアリスベルに伝える。本来なら妖刀を早くやめたい俺はこんなこと喜ばないが、さすがに今は強敵との戦いに必要なものだ。 

 

アリスベル「それはすごいですね!私も何か新しい技が必要でしょうか…。」

 

 アリスベルもそこで悩んでいるようだ。鵺との特訓でもあまりうまくいってない感じだったからな。

 

鵺「アリスベルに新しい技はいらんじょ。荷電粒子砲みたいな一撃必殺の技があるなら作る必要はないじょ?それよりも自分の技を生かす戦い方を極めた方がいいじょ。」

 

 鵺はそんなことを言っている。そこは俺も同意見だな。荷電粒子砲があれば技に関して言えばもう十分だろう。

 

アリスベル「そうですか…。では鵺、私とも1戦お願いします!」

 

鵺「びょ――!もう嫌だじょ――!お前ら鵺のこと好きすぎだじょ!さすがに鵺もしんどいじょ――!もう何回戦だじょ!鵺の体力も考えろじょ――!」

 

 毎日毎日連戦させられる鵺は悲鳴を上げながらアリスベルに連れさられて行った。あいつも昔に比べたら随分と丸くなったな。今は仲間だからか?

 

 

静刃(キンジ…、お前と次会う日がいつになるか…それはわからないが戦いには負けないからな…!)

 

 静刃は妖刕を手に取り自分も修行に戻った。

 

 

 

 

 

~25日経過~2月12日:12時40分・武偵高

 

 武偵高にある一台のトラックが入って来た…。

 

ブロロロロロロロ!

 

 

武藤「あん?なんだありゃ?なんで外部のトラックが武偵高の中に入ってきてんだ?こんな昼間だし車輌科が乗ってるものじゃないと思うが…。」

 

 武藤は昼にパンを食った後、暇だったので外に出てみたのだがその時にちょうど外部のトラックが入って来たのだ。武藤だけじゃなく、その場に近くにいた武偵高生全員も何事かと思っている。基本、外部のトラックが武偵高に入ってくることはほとんどないのだ。そんな命知らずなやついないだろう。

 

武藤「外部のやつが来るってことは……お~い、誰かなんか発注してんのか~?だったら教師共にバレる前に早く回収しとけよ~!」

 

 武藤は外部に何かを発注した武偵高生がいるのだと思った。近くにいるのかなと思って一応忠告しておいた。なぜ忠告かというと以前、武偵高にピザの配達を頼んだバカな生徒がいてそれが蘭豹に見つかり生徒はボコボコにされ、ピザの店員は蘭豹に恐怖しPTSDになるという事件があったのだ。これは「恐怖のお届け物事件」と言われている。ちなみにピザは蘭豹と綴が全部食ったらしい。

 

 そんなこともあり武藤は忠告をしておいたのだが……どの武偵高の生徒も発注してるわけでもなくこのトラックのことは誰も知らないらしい。

 

武藤「あれ?じゃあこのトラックなんで来たんだ?」

 

 と、武藤は一番近くにいたこともあり、トラックのドアを開けて運転手に聞こうかと思った。そしてドアを開けたんだが…

 

武藤「ぶわっ!ぺっ、ぺっ!なんだ!?急にドアを開けたら砂が出てきやがった。……っておいおい、誰も乗ってねえじゃねえか!?どうなってんだよこれ。自動操縦ってわけじゃないみてえだし。」

 

 そう言いながらトラックを調べていると、運転席の奥に何か赤く点滅している物があった。よく見ると…それにはカウントダウンが刻まれてあり、5秒、4秒と減っていた。まさか、これは―

 

武藤「うん?………これは!おい!!お前ら全員伏せ―――――」

 

 ドオオオオオオオオオォォォォォォォ――――ン!!!!

 

 

 突如、大爆発が起こった。トラックには時限式の爆弾が仕掛けられてあったのだ。トラックの荷台には多くの火薬が仕込まれてあったのでとてつもない爆発が起こった。

 

男子生徒「うわあああ!なんだよあれ!」

 

女子生徒「きゃあああああ!こんな爆発見たことないわよ!ちょっとやばいんじゃない!?」

 

 

 とてつもない爆発を見てさすがの武偵高生徒も悲鳴を上げる。

 

 

蘭豹「おい!これはどうなってるんや!!」

 

 蘭豹はすぐに外に出てきて事態の説明を求めた。

 

男子生徒「わかりません!急にトラックが入ってきて、それで、1人の男子生徒が調べたら…爆発して!」

 

 男子生徒は混乱していたのか言葉も震えていた。だが今ので全てわかった。誰かが爆弾を乗せたトラックをここまで運んできて時限式の爆弾で武偵高の爆破を仕掛けてきたのだ。

 

 

 

女子生徒「そ、それより!武藤くんが!武藤くんが爆発に…!」

 

蘭豹「なんやと!?」

 

 車輌科の女子がそう言った時、蘭豹はすぐに今も燃えているトラックのところへ走った。そしてすぐに炎の中で横たわっていた武藤を見つける。

 

蘭豹「おい!!しっかりせえや!!………何がどうなってるんやこれは…!」

 

 武藤は何も答えなかった。意識を失っているか最悪死んでいる。望みにかけてすぐに治療するしかない。

 

蘭豹「救護科Bランク以上はよ出て来い!重体や!」

 

 この日、武偵高に衝撃が走った。

 

 

 

 

 

カツェ「お~お~!派手に燃えたな~。」

 

パトラ「あまりやりすぎるのは嫌なんぢゃがのう。」

 

 2人の眷属は今の武偵高の状況を遠くから見ていた。というよりもこれを仕掛けたのはこの2人である。カツェがトラックを勝手に奪ってきてそれに爆弾を仕掛ける。そしてパトラが人間サイズの砂の人形を出してそれに運転をさせ武偵高まで向かわせるという方法だった。

 

カツェ「1ヶ月くらい攻めたくてもイヴィリタ様が行かせてくれなかったからなぁ。無理言って早めに解けたんだ。これくらい派手にやらねえとなぁ!」

 

パトラ「まぁ宣戦布告というやつぢゃの。」

 

カツェ「ああ、そうさ!さて、こっちは二手に分かれるか。固まってても面白くねえし。」

 

パトラ「そうぢゃの。1人で戦った方が思う存分やれるというやつぢゃしの。」

 

 2人は別れるように移動した。まるでそれぞれの場所で師団を待つかのように。

 

カツェ(ずっとこの時を待ってたんだ。トオヤマは欧州に来なかったからなぁ。頼むからこっちに来てくれよトオヤマ!)

 

カツェはワクワクするように笑いながら移動していた…。

 

 

 

 

   ~Go For The Next!!!~物語を破壊する者(ジョーカー)

 

 

 

キンイチ「キンジ!緊急だ。武偵高で爆破事件が発生した。眷属の可能性が高い、すぐに向かえ!」

 

今日も特訓かと思えば兄さんはいきなりそんなことを言ってきた。 

 

キンジ「爆破事件…!そんなことが。それより眷属はまだ動かないんじゃなかったのか?」

 

兄さんは「最低でも1ヶ月は動かない」と言っていた。今はまだ25日しか経ってない。

 

キンイチ「もしかしたら眷属が少し動きを早めたのかもしれない。いけるかキンジ?教えることはもう全て教えている。」

 

キンジ「ああ、まだ習得できてないものもあるが…いけるぞ。」

 

キンイチ「よし!いけ!そして悪を討て!」

 

 俺は兄さんの言葉を皮切りに走り出した。

 

 

 

キンイチ「さて…エイジの方はどうなっているのか。」

 

ヤジマ「キンイチ!!」

 

 キンイチが永二に武偵高での事件を伝えようと思って探していたらヤジマに名前を呼ばれた。

 

キンイチ「どうしたんですか…?それよりもエイジは?仕上がりましたか?」

 

 まずは最も大事なことを聞く。キンイチは永二の状態を一度も見ていないため気になっていたのだ。筋も良かったため期待していた。だがヤジマの答えは

 

ヤジマ「すまないキンイチ…あいつは…もうダメだ。」

 

 キンイチにとってあまり良くない報告だった。

 

キンイチ「強くはなれなかったか…。けど少しはマシになったんじゃ―」

 

ヤジマ「そうじゃねぇ!実力に関して言えばあいつの吸収力は化け物だ!最初の頃とは比べものにならないくらい強くなっている。あれほどの才能を見たことがない…!」

 

キンイチ「なんだ。じゃあ、何も問題は…」

 

 キンイチが思っていたのは強くなれなかったのかということだったので少しホッとした。

 

ヤジマ「キンイチ、これを見ろ…!」

 

 そうして見せてきたのは武偵としての人格を見るためのテスト、「武偵人格テスト」の「七子永二」の結果だった。そこには―

 

 

名前:七子永二

 

結果:12/100 点

 

 ・あまりにも思想が危険です。武偵免許を即座に剥奪させ、すぐに所定の機関のカウンセリングを受けさせてください。

 

 

 と、武偵としては異常な結果がそこには書かれていた。こんな点数が出るのは初と言ってもいいほどに最悪の点数だった。

 

ヤジマ「あいつの思考は最早、武偵よりも犯罪者だ!それもこのレベルは尋常じゃない!すぐに武偵を辞めさせろ!!」

 

 キンイチはこの結果を見て驚愕という顔をした。信じられないと。このレベルはたしかに犯罪者のような思考になっていると言えるほどだ。むしろそこらの犯罪者でもまだマシな点をとる。つまり永二は武偵としてはかなり危険な考えを持っている。

 

キンイチ「これは…エイジに見せたんですか?」

 

ヤジマ「いや、まだ見せてない。俺がさっきあった事件のことを話して向かわせた後にこの結果が届いた。」

 

 キンイチは何かを考えるようにした後、

 

キンイチ「いや、信じてみましょう。彼を。」

 

ヤジマ「正気か?あまりにも危険すぎる。武偵をやっていることがありえないくらいだぞ!」

 

 ヤジマは断固として永二は武偵を辞めるべきだと言う。

 

キンイチ「俺はエイジを信じます。エイジには俺からも言葉を送っておきます。それでは。」

 

 キンイチはその場を離れた。

 

キンイチ(エイジ、お前は俺が条理予知で視たいつか来る『最悪の状況』に必要な存在かもしれないんだ!キンジ1人ではそれには立ち向かえない。キンジと同等に戦える者がもう1人いなければならんのだ。俺はお前の中に眠る潜在能力に賭けた。俺はお前を信じるぞ…!)

 

 

 

 

 

 

キンジ「ん?あそこにいるのは…。おいエイジ!」

 

 武偵庁の外に出ようとするとエイジが出口付近で立っていた。

 

永二「キンジさん!聞きましたか?武偵高がピンチです。行きましょう。きっとこれは眷属の仕業だ。」

 

 永二はもうそこまで知っていたか。なら話すことが省けた。

 

キンジ「よし、行くぞ!」

 

 と、永二と一緒に武偵高に向かおうとした時、

 

キンイチ「待て!」

 

 兄さんに呼び止められた。なんだ?こっちは急いでるんだが…

 

キンイチ「俺からの最後のアドバイスだ。エイジ、『絶対に自分を見失うな』。わかったな?」

 

永二「? よくわかりませんけど…、はい。アドバイス?ありがとう…ございます。」

 

 永二はただ頷いた。意味は分かっていなかったが。そして用は済んだかと思ってキンジはすぐに武偵高に向かおうかと思ったら、急にキンイチがキンジに耳打ちしてきた。

 

キンイチ「キンジ、エイジを頼んだぞ。」

 

キンジ「え?エイジを?どういう意味だ…?」

 

 俺は訳の分からないことを兄さんから耳打ちされた。永二を頼むってどういうことなんだ。

 

キンイチ「絶対にエイジを1人にしてやるなよ。…それだけだ。ほら行け!」

 

キンジ「あ、ああ。じゃあ行ってくる。」

 

 俺は兄さんの言ってることがよく分からなかったが考えていても仕方ないので今は事件のことだけ考えるようにした。ただ兄さんの言葉だ、何か意味があるんだろう。

 

永二「キンジさん!何してるんですか?早く行きましょう!」

 

キンジ「わかった!」

 

 永二に急かされ、俺も走る。永二と一緒に仲間たちを救いに行くために。

 

キンジ「エイジ、力はついたか?」

 

 俺は走りながら何気なく永二に話かけた。永二がどうなっているのか気になっていたんだが永二とはあまり顔を合わせていなかったため久しぶりに話を振ってみた。

 

永二「はい。強くなりましたよ。これならみんなを守ることができます。」

 

 お、すごい自信だな。今の永二はどこか頼れる感じだ。

 

キンジ「エイジ、これからきっと戦いが続く。絶対に死ぬなよ。」

 

 永二が無茶しないように一応、言っておかなければな。これからの戦いはきつくなるだろうから。

 

永二「大丈夫です。キンジさんも絶対に死なないでくださいね。」

 

キンジ「もちろんだ。まだ天国や地獄でお世話になるつもりはないからな。」

 

 よし、エイジは大丈夫そうだ。何も心配することはない。緊張しているわけでもなくマイナス思考に入ってるわけじゃないので十分に力を発揮できる状態だろう。

 

 

 

永二(そうだ、僕はやっと力を手に入れたんだ。今の僕ならアリアさんたちを守ることだってできるはずだ。そして僕には考えがある。師団のみんなや武偵高のみんなを守れる方法。それをやっと思いついたんだ!すごく簡単な方法でなんで思いつかなかったんだろうって思うほどだった。そう、すごく簡単な方法。その方法とは…僕が眷属を―

 

 

                      

 

 

 

 

 

 

 

                      ―全員殺せばいいんだ。)

 

 

Go For The Next!!!

 

 

 

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