これはまだ楽しかったあの時の日常の話。まだキンジと静刃―彼らが対立する前の…
キンジ「さすがに腹が減ったな…俺はコンビニで弁当買っていくから先に行ってくれ。そこから前に進んでいけばわかるから。静刃も何か弁当いるか?」
静刃「そうだな…じゃあ『ハンバーグ弁当』を頼む。」
俺、原田静刃は今、眷属からの命令で武偵高に来ている。なんでも眷属が日本に戦線を置くには玉藻とかいうやつが張っている「鬼払結界」というものが邪魔らしい。そこで傭兵である俺(とアリスベル)はその玉藻がいるであろう師団の本部とも言うべき武偵高に潜入している。
ただ困ったことに俺は…師団の一員であるキンジのことが気に入ってしまった。最初は、俺はキンジのことをよく思っていなかったんだ。なぜならあいつは俺がいないところで…正確に言うと未来でなのだがアリスベルと、同じ俺の仲間である貘を強襲したらしいのだ。俺はそのことから「遠山キンジは絶対に許さない」という風に考えていた。それはもう『絶対許さないリスト』というものを作ってぶち込んでやってもいいくらいだった。
だが実際に会って話をしてみると…そこまで悪いやつじゃないんじゃないかと思い始めた。あいつの言葉の中にはブレない何かがあった。見た目は根暗そうなやつだが考えていることは正義そのものだった。本人は嫌がるかもだがああいうやつが「正義の味方」っていうんだろうな。俺はそこが気に入ったんだ。そしてできることならこんな友人が欲しいと…そんなことを思ってしまった。そして色々あって今は武偵高の学校案内を終えて寮のキンジの部屋でゲームでもしようということになっていた。
静刃「え~っと、ここから先に進むと…あれか。」
キンジは先に行っておいてくれと言って鍵をくれた。そこで言われた通り進むと寮の部屋が1つ。
静刃「まさかこんな広いのを独り占めしているのか?まぁ俺も似たようなものだったか。」
静刃自身も居鳳高にいたころの寮というか家は広い家を独り占め状態だった。そこから人は増えたわけだが…。
静刃はキンジから受け取った鍵で寮の中に入った。
静刃「リビングででも待っているか…。にしてもやけにキレイに片付いているな。キンジは掃除好きなのか…?」
静刃はそんなことを思ったが否、白雪のおかげである。
静刃は持っていた妖刕を下し、ソファーでくつろぐことにした。キンジが来るまで一眠りしようかと思ったが―
ガチャッとドアをが開く音がした。もうキンジが帰って来たのかと思ったが足音は二つ。あきらかにおかしい。静刃はさっき下したばかりの布にくるまれた棒(妖刕)を手に取り身構えた。
静刃「誰だ…?ここにまだ他に住んでるやつでもいるのか?」
とりあえずリビングを隔てる扉の向こう側にいる2人組を感じとり「バーミリオンの瞳」の表示を待つ。そこで出た情報―人物情報は「G―Third、G―Forth」と出ていた。
静刃(な、なんだこれ。ジー…さ、サード?と、ジー…フォースって出てるよな?外人…いや、ロボットか?意味が分からん。表示の誤作動か?)
そしてドアを開け、身構えた静刃の前に現れたのは、
GⅢ「よぉ!いきなりだけど邪魔するぜ!」
かなめ「お兄ちゃ~ん!可愛い妹が来たよ~!」
すっごい派手なキラキラの服を着た男とすごく愛らしい容姿をした女の子だった。
静刃(な…は!?なんだこいつら。女の方は知らんが…あの派手な服着てるのって…キンジか?)
GⅢ「あれ?兄貴がいねぇ…。人の気配はしたんだが。」
かなめ「あ、お兄ちゃんじゃなくてそこの人の気配じゃない?」
そう言って二人は静刃の存在に気付く。だが静刃は…
静刃「ぷっ!はははははははは!!キンジ、なんだその服!お前、いつの間に着替えたんだ?あっはっは、すごいセンスだなぁ。こんなに笑うの久しぶりだ。」
なんと静刃はGⅢのことをキンジと勘違いしているのだ。しかも服のあまりの派手さに大笑いしだした。
GⅢ「…………。」
かなめ「あ~、それ言っちゃ…」
かなめはチラッとGⅢの方を見たがGⅢはただ黙っていた。いや、黙っていたのだがその体からは激しい怒りがほとばしっていた。
静刃「なるほどな。先に寮に行っといてくれってそういうことだったのか。サプライズは成功だぞキンジ。にしてもそんなキラッキラな服着るとかなかなか度胸あるなぁ。俺じゃさすがに着るのは…」
静刃がそこまで言った時、
GⅢ「………ぶっ殺す!」
GⅢはパキポキと骨を鳴らし静刃に迫る。その瞬間、静刃の方でも
静刃「うん?」
自分の視界が警報で埋め尽くされる。内容は『予想勝率18% 逃亡推奨』というものだった。あれ?おかしいなぁ。あきらかに身の危険を感じさせる情報なのだが。
かなめ「ちょっとキンゾー!暴れたらマズイって!ここにいるってことはお兄ちゃんの知り合いだろうし。それにキンゾーの服が変なのって…ププッ!今更じゃん!」
GⅢ「うっせぇ!兄貴の知り合いでもぶっ飛ばす!つかお前も笑ってんじゃねぇ!」
かなめは前からGⅢを押さえつけていたがかなめが笑いを堪え切れず噴き出したのを見てさらに暴れだし、手が付けられない状態になっていた。
静刃はそこで気づいた。まさか…キンジじゃない!?さっきのG―Thirdって誤作動じゃなかったのか!
と静刃が気づいた瞬間に表示は「×遠山キンジ ○G―Third『GⅢ』(キンゾー)」と出してきた。いやいや、遅いって!絶対わざとだろ!!ってかこいつ、キンゾーって名前なのか。GⅢって名前とのギャップすごすぎだろ。
リビングにキラキラの服を着た猛獣が暴れている時、さらにこの寮に来客が現れた。
理子「やっほ~キー君!理子りん登場~!!」
なんと朝知り合った……リコリンだっけ?そんな名前の女が現れた。だが今度は一瞬で表示が「△理子りん ○峰 理子」という情報を視界に出してくる。なんで今回は早いんだよ。あと△って。自由だなぁ…。
理子「……プッ!あはははははは!!ジーサ、…キー君変な服~!超派手!あはははははははは!ジーサ、…キー君いつの間にそんな服持ってたの~?」
理子は俺と同じように笑い出した。ただ俺みたいに誤解してない気がするんだが…?
GⅢ「峰理子テメェ、わざと兄貴と間違えて服けなしてるだろ!お前らまとめてぶっ飛ばす!!」
猛獣がさらに暴れだし、リビングもメチャクチャになってきたところで
キンジ「おい…人の家で暴れるな。静刃と理子はまだわかるがお前らいつの間に来たんだよ…。」
やっとキンジが現れた。助かったぜ。俺はホッとしてキンジを見た時、また表示が情報を出してくる。「○昼行灯 ○エネイブル ○遠山キンジ」と。もうわかったから、ってかその情報いるか?明らかにどうでもいいだろ。全部○なら出さなくてもいいじゃん。いい加減表示がウザいので妖刕を手から離した。
理子「あ、キー君だ!なんと!こっちは弟君だったのか~!ププッ!」
GⅢ「1ミリも兄貴とは思ってなかっただろが。」
キンジが帰ってきたこともあってキンゾーとかいうやつはようやく静まった。と思った矢先に
理子「キー君~♪」
峰理子はそう言いながらいきなりキンジに抱きついた。キンジは心底嫌そうな顔をして離そうとする。
キンジ「なんで急に抱きついてくるんだよ!おい離れろ。」
理子は顔をスリスリとキンジの体にすりつける。ぐぐぐっ!と顔を押しのけようとするキンジ。いったい何やってるんだよ…。と思ったら理子はチラッともう1人の女の子、俺の表示で「G―Forth」と出た子を見た。するとその女の子はプルプルと震えて、急に目をカっ開いた!
かなめ「おい峰理子!お兄ちゃんから離れろよ!!お前の匂いがお兄ちゃんにつくだろ!お兄ちゃんの体が汚れるんだよ!」
そんなことを超怖い顔で叫びだした。今、妖刕手にしたらきっとまた警報出るだろなぁ。マジでそんぐらい怖い。
理子「理子りんスメルはキー君の体を逆に癒す効果があるのだー!スリスリスリ!」
理子は効果音を自分で言いながら顔をすりつけるのをやめない。ああ、そういうことか。あの子にちょっかい出すためにこんなことしてるんだな。キンジはもう顔が青ざめている。可哀想だ。
かなめ「お兄ちゃんの体はもう妹スメルでしか満足できない体になってるんだよ!早く離れろ!」
そう言ってキンジの右腕を引っ張る。逆に理子は左腕を引っ張る。キンジは苦しそうに両側から引っ張られていた。って待て待て!今さっきとんでもないセリフがあったような…。
キンジ「痛い痛い痛い!どっちも離せ!かなめは捏造して喋るな!」
捏造か。そこは安心したぜキンジ。さすがに今のが本当だったらもう俺は「お前が気に入った」とか前言撤回どころじゃなくなるぞ。
なんとか2人から逃れたキンジはもうボロボロだった。
キンジ「はぁ…こんなこと昔にもあったような…。」
静刃「お前も苦労してるんだな。俺も……わかるぜ。」
俺も散々、祈やアリスベルとでも色々とあったからな。その苦しみはわかる。
キンジ「とりあえず飯食うか。ほらハンバーグ弁当。498円だ。」
静刃「ありがとな。」
飯にありつく俺とキンジ。話しながら飯を食うことに。ちなみに理子とかなめはまだ睨み合っている。理子の方はニヤニヤとした笑顔だが。キンゾーはというと…
GⅢ「おい、静刃とか言ったか?さっきのことはもう許してやるからよ、お前の持ってるそのジャパニーズソード振らせてくれよ。日本来たら振るの夢だったんだ。」
そんなこと言うが妖刕は俺ぐらいしか持てないものだ。渡そうかどうか迷っていたら…
かなめ「キンゾーは剣とか興味ないでしょ。あたしから先!あたしもジャパニーズソード振ったことないんだ~。」
キンジ「ジャパニーズソードって…刀のことか?」
かなめ「そうそうカタナ!」
そんなことを言ってかなめは俺の布にくるまれていた妖刕を取り出した。そして持とうとしたところで、
かなめ「……え!?重っ!!カタナってこんなに重いの!?サムライってこんなの振り回してたの?」
かなめはう~んと力を入れるがビクともしない。そりゃそうだ。俺しか振れないんだから。
GⅢ「マジかよ。次、俺だ。アメリカじゃバットぐらいしか振るもんねえからなぁ。」
そしてキンゾーが妖刕を手に取った。そして「ふんっ!!」と力を入れた。すると妖刕がズンッと重い音を響かせながら浮き上がった。………浮き上がった!?!?!?
GⅢ「おお!こりゃスゲェな。サムライはこれで斬り合ってたんだろ?俺も驚いたぜ。こんな!重いのは!なかなかないからな!!」
妖刕を両手でブンブンとバットのように振り回しながらキンゾーは感想を言い始めた。嘘だろ…妖刕を筋トレ感覚で振っている。化け物だ…。
かなめ「キンゾーズル~い!あたしも振りたい振りたい!」
GⅢ「じゃあ、かなめも俺みたいに鍛えて筋肉つけろ。俺くらい筋肉つければカタナも振れるぜ。」
そう言って超ムキムキな筋肉を見せつけるキンゾー。それを見て「うぇ~」と言うかなめ。もう何がなんやら。
キンジ「言い忘れてたが…あいつらは俺のバカ弟とアホ妹だ。」
静刃「キンジ、お前は毎日暇しなさそうだな。」
俺はキンジに向かって冗談まじりで言った。
キンジ「それどころか命がいくつあっても足りないくらいだ…」
静刃「ははっ!そんな感じだな。」
俺は笑いながらそんなことを言ってキンジは溜息をついた。俺もそんな暇しない、命がいくつあっても足りないような……でもそこにはかけがえのない仲間たちが待っている、そんな場所に戻ろうとしているんだ。妖刕が聞いたらブーイングしそうだが……キンジ、俺はお前とは戦いたくないな。でももし戦うことになるのだとしたら……そういう運命ってことなんだろう。存分に…戦おうぜ。