静刃とアリスベルが武偵高に来てもう5日ほど経っていた。キンジと永二と静刃はいつも行動するように仲良くなっていた。今日は月曜で学校も始まりキンジ達は今日も3人で話をしていた。
キンジ「静刃、もう武偵高は慣れたか?」
静刃「ああ。だが勉強がどうにもな…。訳あって俺は高校1年程度の勉強しか習ってなかったからな。」
永二「あ~。それだと大変そうだね。」
まぁ僕なんてどこの学校行ってたのかも知らないけどね。それはさておき、静刃君はもう武偵高に慣れてる感じだ。周りの皆も今では普通に静刃君に話しかけているし、アリアさんとも仲直りしたみたいだ。アリスベルさんの方も問題ないみたいだ。まぁ、アリスベルさんは性格や容姿が良いのか最初からクラスの評判は良かったみたいだけど。
キンジ「それにしても明日で静刃が行っちまうなんてな。もう少しいてもいいんじゃないか?」
永二「あはは…キンジさん、それは無茶ですって。静刃君の予定もあるだろうし。」
キンジさんも静刃君が行くのが寂しいんだな。キンジさん、男友達が出来たの喜んでたし。
静刃「悪いなキンジ。俺も色々と忙しいんだ。」
そういえば静刃君がなんでここに来たのか結局わからず仕舞いだったな…。聞きそびれたからもういいんだけどね。
そうしているとそこに1人の女子がやってきた。
ジャンヌ「おい遠山。今、少し時間空いてるか?」
キンジ「うおっ!なんだジャンヌか。なんだよ急に。ここで言えることか?」
ジャンヌ「いや、ここでは言えない。席を外せ。」
キンジ「わかった。」
銀髪の綺麗な女の子だった。キンジさんって女子の知り合いがいっぱいいるよなぁ。羨ま…いやいや!人望があるんだ人望が!アリアさんの言ってた「女たらし」って言葉を思い出したけどキンジさんはそんなことするわけないし。
ジャンヌ「ん?おいお前。」
ジャンヌさんは急に静刃君の前で止まり、呼びかけた。
静刃「………なんだ?」
あれ?静刃君は顔を合わさないように応答した。なにか気まずいことでもあるのかな?
ジャンヌ「お前……どこかで会わなかったか?」
ジャンヌさんは少し睨みながらそう問いかけた。ん?知り合いなの?
静刃「いや…知らないな。こんな顔どこにでもいるだろ。それにあんたのその目立つ顔こそ見たことないな。」
ジャンヌ「そうか……ならいいが。遠山、フォロー・ミーだ」
結局、ジャンヌさんの勘違いってことで終わったけど、なんだったんだ今のは。
キンジ「で?ジャンヌ、なんなんだ。」
キンジは気になっていたことを聞いた。
ジャンヌ「いや、お前に伝えておこうと思ってな。明日の晩に、例の眷属の2人の傭兵の顔写真がリバティー・メイソンから届く。送り先はお前の住んでるところになっているから受け取っておいてくれ。」
キンジ「なんで俺のとこに送るんだよ。」
ジャンヌ「たいした意味はない。当日そこに玉藻も来るだろう。そこで師団のこれからの会議も行うぞ。」
ジャンヌは「用件は言ったぞ」とさっさと帰ろうとしていた。
キンジ「だからなんで会議も俺のとこでやるんだよ。」
ジャンヌ「たいした意味はない。」
同じ答えが返ってきてキンジは溜息をついた。
そのまま1日はあっという間に過ぎていき、
永二「あ、あの!蘭豹先生!もう1度、特訓つけてくれませんか?」
永二は強襲科に行き、また蘭豹に特訓を申し込んでいた。
蘭豹「あぁ?あほくさ。なんでウチがお前の面倒見なアカンのや。前は特別や特別。そもそも教師は勝手に生徒と戦闘したらアカンしな。」
永二「そ、そんなぁ。」
蘭豹は鬼のように厳しく、ボコボコにされるが実力は確かに身に着くのだ。蘭豹は口は悪くとも足りないところはしっかり指摘してくれる。直せなかったら殴られるけど…
蘭豹「お前には教えてくれるやつがおるやろ。おい神崎!七子ちょっと見たれや!」
蘭豹がそう言って少しするとアリアさんがやってきた。けど、なんだか微妙な顔をしていた。
アリア「エイジ、あんたね…ここでは各自が自分の足りないところを自分で見つけて、それを改善するために自分で考えて特訓してるのよ。あんたもいい加減自立しなさい。」
蘭豹「まぁ神崎の言う通りやな。」
2人に呆れた目で見られさらにショックを受ける僕。っていうかアリアさん呼んだの蘭豹じゃん。
アリア「はぁ…わかったわ。1VS1でもやってあげるわ。」
永二「ほんとですか!!」
アリアさんはやっぱり優しい。本当に頼れる人だ。
アリア「ただし条件があるわ。あんた、あの…なんだっけ…そうそう、『L―ブレイカー』ってやつ!あれ使いなさい。」
永二「え?」
嘘だろ…僕はもうあれは使わないって決めたのに…それが条件だって!?
永二「あの…アリアさん…それは。」
僕はアリアさんに考えを改めるようにお願いしようとする。
アリア「まだ…怖いの?もしかしてあんた、あたしを倒せるとか思ってんの?」
永二「いや!そんな!でも…」
どうすればいいんだよ。アリアさんが…Sランク武偵が1VS1してくれるなんて中々ないことだ。いや、普通に武偵してても絶対ないことだろう。この機会は逃したくない。でも僕はまだ怖い。それに使わないという決心もついたんだ。
アリア「……今回の話は無しね。あんたがそこまで臆病者だとは思わなかったわ。」
永二「アリアさん、そんな…」
アリア「あんたに1つ言っておくわよ。もうこれはあんたも気づいてることだと思うけど、それを使う使わないにしてもあんた自身が強くならないと何の意味もない。けど、どうしてもそれを使う時は来るわよ。あんたの過去の自分が怖いって気持ちは聞いた。でも、あんたはピンチの時も奥の手があるのに黙って殺されるっていうの?」
アリアさんの一言一言がすごく心に刺さった。強くなるのは当たり前でも…使う時が必ず来る…か。僕はその時どうするんだろう…おとなしく相手に殺されるのか?それとも…
アリア「そのことをじっくり考えながら自分を鍛えなさい。」
そう言ってアリアさんは去っていった。でも僕にはわかる。アリアさんは僕のためを思って言ってくれてるんだ。自分が悪者に思われてもいいって覚悟で。
蘭豹「メッチャ言われてやんの。ほなな~」
くそ…蘭豹うるさい。せっかく良い感じでまとめたのに…
僕はショックを受けて落ち込んだまま帰った。結局、そのことを気にしすぎて集中できず、そこからの特訓などはあまり身に入らなかった。今でもずっとアリアさんの言葉が頭の中をグルグルと回っている。
永二「ダメだよなぁ~このままじゃ。」
僕は早く切り替えようと思った。その時、僕のケータイにメールが来た。
永二「ん?佐々木さんからだ…なんだろ?」
気になって見てみると、
(名無し先輩へ。あの時の誘拐事件について気になっていることがあります。もし今、時間があるようでしたら私の家に来てくれませんか? 佐々木志乃より)
という内容だった。あの…佐々木さん?『ななし』の変換間違えてますよ?僕、『七子』…。まぁ、わざとじゃないと思うからいいけど。
ちなみになぜ佐々木さんが電話で聞かなかったのかというと、僕たち武偵は作戦や事件概要はできるだけ直に話すようにと言われている。電話だとたまにその手の犯罪者による盗聴があったりするらしい。メールでのやりとりも作戦遂行時や緊急時のみとなっており情報は即座に消すこととなっているのだ。
なので僕は
永二「了解、っと。あ、佐々木さんの家までの地図を添付してくれてる。これで道は問題ないな。」
あまり警戒せず佐々木さんに了解とだけ伝えてさっそく佐々木さんの家に向かうことにした。この時、僕はまさかこの出来事からあんなことになってしまうなんて思いもしなかったのだ…
永二「えっと…ここだよな。」
僕が行きついた先はすごい豪邸だった。佐々木さんこんなところに住んでるのか?物凄いお金持ちじゃないか。だとしたらあの数々の奇行がより残念に思えてくる。
志乃「七子先輩、待っていました。どうぞ、こちらでお茶でも。」
と、なんと玄関のところで待ってくれていた佐々木さんが庭に招き入れてくれた。うわっ!庭も広いな~噴水まであるよ。庭園だな。
僕と佐々木さんは庭園の中にあったベンチに座った。そこにはテーブルもあって僕たちが席に座るなりメイドがすぐにお茶をだしてきた。すごい良い匂いのお茶だ。高いんだろうなぁ…って、そんなことよりも!
永二「それで…あの事件で気になってることって?」
僕はいきなり本題を出す。あんまり長居しても悪いしね。
志乃「そんなに急がなくてもいいじゃないですか。七子先輩もお疲れでしょうし、お茶を飲んで一息ついてからしましょう。」
佐々木さんは休んでからと言う。まぁ佐々木さんがいいなら別にいいけどね。佐々木さんってすごい美人だしこんな子と2人っきりでお茶だなんてすごいドキドキする。あれ?もしかして佐々木さん僕の事を…!ってそんなわけないか。出会ってまだ数日だし好きも嫌いもないだろう。なんだか邪な事を考えて悪い気がしてしまう。
そんな事を思いながら僕はお茶を飲む。すごい美味しい。こんなお茶飲んだことないや。いや、記憶ないからわかんないけど。でも、なんだろこれ?なんか途中、苦味があったな。そういうお茶なのかな?あともう1つ気になっていることが
永二「あの…佐々木さん?僕の顔に何かついてる?」
志乃「! い、いえ!」
佐々木さんは僕がお茶を飲んでいるのをじっと見ていた。あれれ?これまさか…マジで好きとかじゃないのか?いやいや!そんなこと思っちゃだめだ!でも…ちょっと期待しちゃってもいいのかな?
永二「あはは。じゃあ、本題だけど…事件について………ぐっ!なっ!なんだこれ…体中が…痛い!」
僕は事件の話をしようとしたのだが突如として体中に痛みが走る。そして次の瞬間、体がうまく動かせなくなり地面に倒れる。
志乃「七子先輩大丈夫ですか!?…………ぷっ!ふふふ。あははははははは!」
永二「佐々木…さん?なんで…笑って…」
佐々木さんは僕の心配をしてくれているのかと思ったのだが急に笑い出した。それは耐え切れなくなって笑ったかのように。
志乃「すみません七子先輩。そのお茶、実は毒入りなんですよー」
永二「な!?」
毒入り!?さっきのお茶にそんなものが…!それよりもなんで佐々木さんが僕にそんなことを…
志乃「ふふふ。大丈夫ですよ、死ぬとかいう薬じゃないので。ただ体中に激痛が走って体が動かせなくなるってくらいの薬ですから。」
なんだよ「くらいの薬」って。とんでもない薬じゃないか。
永二「なんで…こんなこと…を。」
僕はせめて理由を聞こうとする。だがそれは逆効果だった。
志乃「『なんで』?私のあかりちゃんを奪っておいて…!」
そう言い僕の顔を靴で思いっきり蹴った。しかもまったく容赦がない。僕は口を切ってそこから血が出た。
志乃「先輩は『下負け』って知ってますか?後輩に負けることを言うんですよ。それは上級生にとって最大の汚名。それをあかりちゃんが知ればきっと七子先輩に失望するはず…!」
また佐々木さんはあかりちゃんの名前を出す。僕があかりちゃんに何かしたのか?ダメだ。まったくわからない。でもこれは『三角形』(トライアングル)という現象だ。3人の関係性で1人のせいで内2人が争いあうといったものだ。
そして今気づいたけどこの庭園にビデオカメラが仕込まれてある。さっき佐々木さんが言ってたことから推測すると僕が『下負け』するところを録っているんだろう。毒という汚い方法だけど卑怯だなんて思わない。アリアさんからは引っかかる方が悪いと言われている。
志乃「ほらほら!何か言ったらどうですか!あかりちゃんは私のなんだから!私のなんだからぁぁぁぁ!」
永二「ぐっ!さ、佐々木…さん…やめ…がっ!がはっ!」
佐々木さんは何度も何度も僕を全力で蹴る。僕の顔や腹を何度も何度も。
志乃「この!この!あなたのせいで!あなたのせいで!」
永二「さ…さき…さ…」
僕はもう意識が途切れようといている。前の自分がバカみたいだ。会ったのは数回なのに『好き』はなくても『嫌い』はあるんだな。でも、せめて理由だけでも知りたい。こんなの…理不尽じゃないか…
僕がそうやって苦しんでいると
?(おい…)
どこからか声が聞こえてきた。でもこの庭園には今も僕を蹴ってくる佐々木さんしかいない。変な話だがこの声は自分の頭に直接語りかけてくる感じだった。
?(あれを…L―ブレイカーを使え…)
謎の声は僕にL―ブレイカーを使えと言ってくる。なんなんだよこの声は。一体、誰なんだ…
そして僕は気を失ったのか視界が暗闇に包まれた。だが次の瞬間、視界の暗闇が急に無くなった。気を失ってる状態から目覚めたのかと思ったが…なぜかここはあの庭園じゃなかった。体も自由に動く。
今、自分がいる周りを見てみるとそこはある一室の部屋だった。窓は1つもない。あるのはドアだけの8畳ほどの狭い部屋だ。窓が無いのになんでこんなに視界が明瞭なのかも不思議だ。そして僕はまたあることに気付く。その部屋の奥にイスが1つだけあり、そこにある人物が座っていた。その人物の姿は…僕とまったく同じだった。というか僕そのものだった。
永二「君は…?」
僕はそこにいた僕と同じ姿をした男に声をかけた。すると…
永二(?)「言わなくてもわかるんじゃないか?」
とだけ言ってきた。まさか…
永二「僕の…記憶を失う前の…過去の僕?」
過去の永二「せいか~い。」
過去の僕と名乗る奴はふざけた調子で話す。
永二「えっと…わからないことがたくさんあるんだけど…まずここはどこ?」
気になることは山ほどあるけどまずは場所の確認からだ。僕はさっきまで佐々木さんの家の庭園で佐々木さんにボコられてたところだった。なのに今は庭園どころか佐々木さんの姿すらないし僕の体も自由に動くし傷もない。それどころか目の前にいるやつは過去の僕と言い出す始末だ。おかしいことだらけだ。
過去の永二「ここは、そうだなぁ…お前の『心の部屋』とでも言えばいいのかねぇ…」
過去の僕と名乗るやつはまた変なことを言い出した。
永二「意味が分からない…そんなものあるなんて聞いたことないし。まるで信じられない。」
過去の永二「じゃあ、今この状況をどう説明する?それに武偵なら超能力(ステルス)ってものがあるのは知ってるだろ?あれはどう説明する?」
メチャクチャ言われた…。いや、どれも説明できないけど…。まぁ、たしかに超能力を使う超偵という存在がいるのは知ってるし、アリアさんの話によると同じチームの星伽さんっていう人が超能力を使えると聞いたことがある。超能力も十分信じられないことだ。そう考えると…まだ納得できることではあるか?
永二「じゃあ、次に…今こうやって君と会話できてるけどこれはどういうことなんだ?」
過去の永二「ああ…こればっかりは面倒くさいことになってるんだが…簡単に言えばお前が持ってるL―ブレイカーのせいだな。」
永二「L―ブレイカーのせい?」
あれにまだ何かあるのか?たしかに使ったら一時的に失った記憶がどうとかあるらしいが…
過去の永二「あれは使い続けると完全に記憶が戻るようになってるんだよ。お前があの時に1回使ったろ?そのおかげで俺が蘇ったって感じだ。ちなみにあの時、お前の体を使って戦ってたのも俺な。まぁ1回目で不完全だったから意識は半分お前のままだったけど。」
な!?L―ブレイカーにそんな機能が…。ってことは使い続けたらいつか記憶が完全に戻って…僕は…『七子永二』が消えるのか?
過去の永二「察したみたいだな。今のお前は『二重人格』ってところだ。『今のお前』と『過去のお前』ってやつのな。と言ってもお前の体を自由に使えるわけじゃない。お前がL―ブレイカーを使った時だけってところだな。でもいつかは…。」
永二「そんなの…嫌だ!!僕は消えたくない。そんなことならもう絶対にL―ブレイカーは使わない!」
そうだ。使わなければいいんだ。そもそも使わないって決心したんだし。
過去の永二「お前、今の状況忘れてないか?あの佐々木志乃とかいう女にボコられてる最中なんだぞ?殺される前にL―ブレイカーを使え。俺ならあの女をすぐに殺せるぞ。」
永二「ふざけるな!それなら尚更使わない。それにいくらなんでも佐々木さんは僕を殺したりしない。」
過去の永二「なんでそう言えるんだ?今のあの女にはかなりの憎悪が見える。結果として『殺す気はなかったけど、うっかり殺しちゃった』ってのがオチだ。だから…」
永二「佐々木さんはそんなことしない!!」
僕は大声で怒鳴る。相手が僕っていうのが変な感じだけど。
過去の永二「わからないな…お前、あの女に何されたかわかってんだろうが。なんで毒盛って蹴ってくる女を信じられるんだよ?」
永二「同じ武偵としての…仲間だから。」
僕と佐々木さんは一応、1つの事件で共に戦った仲間なんだ。佐々木さんは絶対に人を殺すなんてことはしないってわかる。
永二「人を殺すなんて言う君の力は借りない。僕がどうにかする。」
過去の永二「じゃあ、やってみろよ。お前の弱い力で…いつまで俺の力無しでやれるか見物だ。ほら、行け。そこのドアを開ければ意識が戻る。」
永二「ああ、やってやるよ。………あと、君の名前はなんて言うの?昔の僕の名前ってことになるのかな?」
過去の永二「…………『永人(ながと)』。」
過去の僕はそっぽを向きながら僕にそう言った。永人…か。どことなく僕の『永二』って名前と似てるな。その方がわかりやすくてちょうどいいけど。っていうか苗字は教えてくれないのか?
永人「おい、早くいけよ。」
永二「う、うん。」
そうして僕はその部屋にあるドアを開けた。その瞬間、一気に自分の意識が引っ張られるようになって思わず目をつぶる。そして目を開けると…あの庭園だった。僕の体はボロボロで今も佐々木さんはすごい形相で僕を痛めつけていた。僕は気絶してたってことになるか。
薬が微量だったおかげでもう効力が切れていた。それがわかると僕は佐々木さんの蹴りを避けてその場から離れて立ち上がった。
志乃「あら?まだ動けたんですね。ここまで痛めつければもう動けないと思ってたんですが。」
さて…どうする?このまま逃げるか?いや、そんなのダメだ。ここで解決しないと次は武偵高で何かされかねない。
志乃「……あれは使わなくていいんですか?」
永二「あれ?ああ、L―ブレイカーのこと?色々と事情があって使わないって決めてるんでね。」
佐々木さんもやっぱり僕がこれを使って強くなってるって気づいてるんだな。まぁ、実際に見られてるからバレるか。佐々木さん、探偵科だし。
そして僕はここからどうするかなんだが…1つだけ思いついた。しかもこれは佐々木さん次第なところがあってかなりやりたくない手ではある。だがもう考える時間はない。ここは佐々木さんを信じる。
志乃「あのまま眠っていた方が良かったと思いますよ。すごく残念です。」
佐々木さんはとうとう鞘から剣を抜いた。あれ?剣は剣なんだがあれは刀か。柄が洋風だったから気づかなかった。ってことは…
志乃「残念ながら私には近づけませんよ。」
そのまま『居合切り』の構えをとった。やっぱりか。刀を使うということは技も主に刀を使った侍のものになる。ただ1つ疑問なのは鞘から抜いた状態だということだ。居合切りは普通、鞘に納めた状態で行うものだ。
永二「ならこのまま硬直状態が続くだけじゃないかな?」
それに居合切りは一種のカウンターみたいなものだ。これは佐々木さんのミスだ。この硬直状態が続けばその間に別の作戦を考えられるし。
志乃「そう思いますか?」
佐々木さんがそう言った瞬間、なんと居合切りの構えをとったまま僕のところまで一瞬で移動した。
ヒュッ!!
永二「うおっ!」
僕はなんとかギリギリでバックステップして避けることが出来たが…とんでもない剣速だった。次はないだろう。
永二「危なかった…それが佐々木さんの技?」
志乃「そうです。これで仕留めるはずでしたが…避けられた上に技も見られましたか。なら言いますがこの技は『飛燕返し』と言います。」
とんでもない技だ。まさかカウンター技を攻撃に使うなんて…。居合切りという固定観念を持っている者には絶大的な効果を発揮する。これはもう…僕も覚悟を決めるしかないか。
そして僕は佐々木さんに向かって駆けた。
志乃「何か作戦でもあるんですか?私の居合切りは飛ぶ燕をも切れますよ。」
永二「それはすごいや…でも僕にはこれしか思い浮かばなくってね。」
そうして僕は何も持たずに佐々木さんの居合切りの間合いに入った。そしてその瞬間、佐々木さんは居合切りを放つ!それを僕は…
ヒュッ!!ゴッ!!!!
志乃「な!?」
永二「良かった…信じてたよ。峰で打ってくれてるって。」
そう僕は横から向かってきた刀を腕で受けたのだ。要するに『捨て身』だ。こればかりは佐々木さん頼みな作戦だった。もし、佐々木さんが刀を刃で打っていたらあの剣速だ、今頃腕が切断されていただろう。それどころか胴体にも刃は届いていたはずだ。これは佐々木さんを信じた結果だ。どうだ見たか永人。佐々木さんはお前と違って人は殺さない!
僕はそのまま佐々木さんを押し倒し馬乗りになって持っていた拳銃、コルトガバメント(アリアさんのではなくこれは購入した)をショルダーホルスター(これも最近、購入)から抜き突きつける。
永二「はぁ…はぁ…これで終わりだ。」
志乃「くっ!………参り…ました。」
僕は満身創痍だ。ボコボコされたのにプラスされてさっきの居合切りで腕も痛い。これは折れてるかな?もうさすがにこれ以上何かされると僕が参るよ。
永二「ねぇ、教えてくれないかな?僕が佐々木さんにしたこと。なんかあかりちゃんが関係しているみたいだけど。」
そう言った時、佐々木さんは思い出したかのようにまたすごい形相になる。
志乃「嫌です。教えません。それより、もう何もしませんからこの体勢はやめてくれませんか?」
さすがに女の子を押し倒して馬乗りはやりすぎたか。僕は馬乗りを解こうとするが…
永二「あ、ごめん。でも、本当に何もしない?」
志乃「失礼ですね。私はどんな形であれ負けを認めました。その後から襲い掛かるのは恥の上塗りもいいところです。」
先輩に毒盛って蹴りまくってた子が言うことなのか…?まぁ、引っかかった僕はもっと恥を感じるべきなんだ。それに本来、犯罪者にこれをやられたら人質になったり、最悪殺されるんだ。僕はもっと気を付けるべきなのかもしれない。
永二「じゃあ…仲直りくらいはしてくれないかな?僕は…佐々木さんとは敵対したくないし。それに仲間でもいたい。」
志乃「どうしてそこまでするんですか?私は先輩にあんなことをしたんですよ?普通なら私を殴るなり蹴るなりすると思いますよ?」
さすがに無抵抗になった女の子を殴る蹴るするのは気が引けるけど…。佐々木さんにも僕のことを知ってもらういい機会だ。
永二「僕は…記憶喪失なんだ。」
志乃「記憶…喪失?」
佐々木さんが目を見開いて驚いている。
永二「うん。僕の居場所は武偵高しかない。だから、僕はあの場所で敵は作りたくないんだ。あの場所でずっといたいから…。」
志乃「そう…だったんですね。」
佐々木さんも少しは申し訳ないと思っているのか顔に陰りが見える。
志乃「で、でも!許してあげませんからね!」
えぇ~。この話をしてもダメなのか…僕、どんだけ恨み持たれてるんだよ。
志乃「そうですね…私たちは『宿敵(ライバル)』ですね。そうです!それが良い表現です!私たちはあかりちゃんを取り合う『宿敵』同士です!」
佐々木さんは何か納得したように語る。なんすかそれ…。しかもまたあかりちゃん出てきたし。いや、でも僕にも推理できてきたぞ…。そうかそうかそういうことか!
佐々木さんは…僕とあかりちゃんが親しくしていたことに嫉妬していたんだ!僕があかりちゃんと仲良くしていたからか。佐々木さんはあかりちゃんとかなり親しげだったし、取られたと思ったんだな。これで僕も納得だ。……でも『あかりちゃんを取り合う』ってなんだろう?まぁ、気にしないでおくか。いや~納得納得。
七子永二は半分当たっているが半分ハズれた推理で納得した。まさか…これが『友情の嫉妬』ではなく『恋の嫉妬』とは永二は思いつきもしなかった。
永二「あ、そうそう。僕、『名無し』じゃなくて『七子』だよ。メールの変換間違えてたよ。」
志乃「それはわざとです。(にっこり)」
うわ…すごい嫌がらせだ。心がエグられた気がした…
永二「じゃ、じゃあ、僕はこれで帰るね。」
志乃「はい。途中でくたばらないように気を付けてくださいね。」
笑顔ですごいこと言ってきたな…はぁ…今日は本当にメチャクチャな1日だったな。いつもの日常とはまた違った1日だ。まぁ、でもこれも『武偵の日常』というやつなのかな?
僕は武偵になった実感がして少しだけ嬉しい気持ちなった。これも僕の大切な日常の1つなんだ。こんなことでも大事にしていかないとな。
僕は帰路につきながらそんなことを考えていた。
きっとこんな楽しくも忙しい日常が続くんだろうなぁと……そんなことも思った。
そしてこの翌日、楽しくも大変なこの日常が…とんでもない出来事によって破壊されるとも知らずに…
3弾「信頼の三角形(トライアングル)」終了。次回、4弾「楽しい日々はこれで終わり」(予定)に続く。