夫婦転生 二度目の人生を彼女と ~異世界にヲタク夫婦が兄妹で転生するらしいです~ 作:リムル=嵐
温かい何かに乗っかって、揺られてるのに気付いて、目が覚める。
「やっと起きた?」
どうやら誰か大人の人に背負われてたらしい、視線が高い。
声に釣られてそっちに目をやると、でっかい袋を両手で持って、横を歩く歩がいた。
「もう少しで砦に着く、降りるのはもう少し休んでからでも良いよ。」
俺を背負ってくれてる人が誰か気になって、名前を聞いた。会話しようにも名前分かんなきゃ続かないし。
「あなたは?」
「陸軍国境防衛隊北西部隊所属、跡部陸軍中佐です。女帝蜂の大量討伐と、巣の破壊、お疲れ様です。」
跡部?
どっかで聞いた事あるような無いような。
俺が悩んでると、鮎川が助け船を出してくれた。
「中佐は何で今回の依頼を出したんですか?ここは中佐の管轄と離れてますけど………」
あぁ!!
今回の依頼主の一人か!!
「自分の故郷が、ここら辺の国境付近でね、自分は仕事があるから万事屋に依頼をしたんだ。」
うん?
仕事あるなら何でここに?
「今日は休暇でね、いつまでたっても依頼の話が進まないから、万事屋に話に言った時に、丁度君達が依頼を受けた後だったみたいでね、自分も子供二人が受けたって聞いて、心配だから来たんだよ。」
そうだったのか。
「不甲斐ない所、迷惑掛けてすみません。」
「君達二人が揃っていれば、簡単な依頼だったろう?不甲斐ないのは砦の連中さ。あそこは手練れが少ないとはいえ、兵隊蜂に遅れをとる様な連中ばかりだと…………先行きが不安だねぇ。」
溜め息を吐きながら言う跡部中佐に、俺も同意する。
少なくとも、霊鳥國オルニスとの戦争が始まれば、上級魔獣の軍隊が攻めてくる。人並みの知性が宿るのは、大体上級からが殆んどだからだ。ここは沿岸沿いでもオルニス方面でも無いけど、一部の防御が薄いと、やっぱり不安になるな。
オルニス方面や海沿いの場所は、今どうなってることやら。人員の増員や移動、建築物の補強や増設。その為の物資のやりとりや、戦時の補給線の構築。賑わってるんだろうな、戦争が原因のため、良いか悪いかは判断に困るが。
そんな事考えてると、砦が見えてきた。跡部中佐に下りることを伝えて背中から下りる。慣れない体勢で寝てたからか、体がちょっと固まって痛い。
「俺達は砦の責任者に顔見せたら、そのまま帰ります。明日早いんで。」
「そうか、自分の管轄じゃ無いから、少し休んでくれなんて、言えないからね。気を付けて帰るんだよ?今は魔獣の動きが不規則で読めないから、女帝蜂以外にも大物がいるかもしれない。」
跡部中佐の心配してくれる言葉に、それってフラグじゃ?なんて思った。まぁ、現実でそうフラグ回収なんて無いから、大丈夫だろ、うん。
後、こういう時の休んでくれは、休みにならないんで遠慮する。どうせ飯時とかに色々やらされるんだろうし。
「その時は私が倒すから、未だ全然暴れ足りないし。」
歩が不敵に笑って親指を立てるが、幼女がしてもちぐはぐで、なんとも微笑ましい。
「それじゃ、自分は復旧作業手伝ってくるからここで、良かったらまた会おう。」
「はい、楽しみに待ってます。」
別れる跡部中佐と握手して、砦の入り口辺りで別れる。
さて、責任者はどこに居るんだか。一言、俺達の事は気にするなって声掛けてからじゃないと、家の方に押し掛けられても困るからな。軍隊はそこら辺しつこいし、歩俺達の名前出しちゃったし。
「事後処理の書類とか作ってるだろうし、責任者の部屋か何か分かれば良いんだがなぁ。」
「魔力探知で一番強い奴に会いに行こう。」
お前はどこの戦闘種族だ。
脳筋丸出しな提案に、思わず半眼で歩を見る。
ただ、歩の出した案しか無いのが現状だ。この国は、階級が高いほど強い奴が多い傾向にあるから、あながち間違っても居ないんだよな。魔力探知で得られる情報は魔力の大まかな量だけだが、魔力量と強さは直結してると思っていいからな。
ギフトを発動するのも魔術を使うにも、魔力がなきゃ出来ないのは共通だ。魔力が多ければその分継続して戦えるし、ギフトと魔術の同時発動だって平気だ。魔力量は訓練や実戦で伸ばせるから、強い人ほど魔力量が多いのは常識と言っていいだろう。
「仕方無いか、じゃあ行くぞ。」
魔力が一番強いのが、跡部中佐になりませんように。
探知を使うと一番大きい魔力量が、結構離れた距離にいるのが分かる。跡部中佐歩いてたし距離的に多分跡部中佐じゃないな、良し。
位置が高かったから上の階だろう、さっさと言って話まとめよう。
砦三階の右最奥、両開きの扉に『司令室』と書かれた、いかにもな雰囲気の部屋の扉を軽く叩く。
「誰だ?」
「今前初と鮎川歩です、話があって来ました。」
中から聞こえた声に、歩が少し大きな声で返事をする。いかにも分厚そうな扉で、結構声を張らないと扉の向こうまで声が届かないだろう。
「………中へどうぞ」
中から少しの間沈黙が続いて、扉が内側から開く。
扉の前には山みたいにデカイ印象の、図体の良い巨漢がこちらを無表情で見ていた。
俺と歩が中に入ると、数人の人間が中央の円卓に座っていて、俺から見て正面に座っている一人が、部下らしき人からお茶をもらって飲んでいた。
多分こいつが司令官、ここの責任者だろう。
「遠慮せず座ってくれ………そこの君、お茶を淹れてあげてくれ。」
司令官の位置から見て、正面に並んで二つのイスがあったので、二人で座ると、さっきの無表情の男がゴツい手でお茶を淹れてくれた。
「改めて、私はこの砦の司令官をしている木端軍人だ。適当に司令とでも呼んでくれ。今回の助力、本当に感謝している。」
そう言って司令は席を立って俺達に頭を下げた。最敬礼まで下げた頭は、俺らが何か言うまで上げない気らしい。
名前言わないとか、こいつ人としてどうなんだよ?とか思ったけど………前世だと未だ小学生位の相手に、真面目な顔して頭を下げられるのは、素直にスゴいと思ったんで、突っ込むのはやめる。名前はギフトか何かの制約にでも引っ掛かるのかね。
「俺達が好きでやったことです、どうか気にしないでください。」
「戦闘に入る前に預けたものがあるんですけど、無事ですか?」
「籠に入った動物なら、こちらで預かっている。直ぐに連絡しよう。………………君達二人に何もせずに帰す事は、私の様な小心者には出来ないんだ。せめて感謝状と何か追加で用意させてくれ。欲しい物とか無いかね?」
司令の言葉に反応して、強面の男が部屋から出ていく、多分歩が預けた荷物を、取りに行ってくれたんだろう。
欲しい物ねぇ、何か有ったかなぁ?
俺としては、飯代位の金くれりゃ良いんだけど。それじゃあ向こうが納得しないよなぁ。命救ってもらった対価が、たったの一食分とか、俺だったら思考停止するわ。
「あ、それじゃ一つ良いですか?」
俺が考えてる間に、歩が目輝かせてた。歩の欲しい物って一体、まさか
個人で買うとなると、例え将校だろうと大臣だろうと、バカみたいに高い値段で売るからな。予備を余裕持って管理してるのは、軍と天皇と宮廷の二ヶ所と一人だけって歩から聞いた。軍と宮廷は備品とか貴重品扱いで、私用で使うと厳しい罰則があるとも、連座制で三親等までの懲役だったかな。歩が父さんに質問して、父さんの答えに項垂れてたのを思い出した。
「エリクサーを分けて下さい。一回分、小瓶に半分で良いですから。」
やっぱり、現状で歩のお母さんを助けるには、それしか無いからなぁ。
「………………………エリクサーか。うぅむ、今直ぐには無理だが、それでも大丈夫かね?」
「どれくらいで準備できますか?」
「今は微妙な時期だ。エリクサーは五条天神社を筆頭に、
二、三ヶ月か、結構掛かるな。
「それでも大丈夫です、お願いします!」
ま、これで部活で主席狙う必要が無くなったから、歩は嬉しそうだけど。歩のお母さんの病気は、暴走したギフトの対処が出来れば、他は普通の人と変わり無い。問題なのは一日中いつ暴走するか本人にも直前まで分からない事なんだけど、病院なら対処が出来るし後二、三ヶ月位なら平気だろ、うん。
「分かった、手配しておこう。連絡先をここに書いてくれるかな、仕入れ次第直ぐに連絡しよう。………それで、今前君は決まったかな?」
俺なぁ、欲しい物とか思い付かないんだよな、困ったもんだ。金も今回の依頼で貯まったから、欲しいって訳じゃ無いし。金はあって困るもんじゃ無いけど、有り過ぎても困る、金銭感覚ずれるからな。
物は有るし金もある。住む場所に困ってる訳でも食う物に困ってる訳でも無い。娯楽も部活でやってるのがある。人間関係も友達が少ないとか、そういうのは無いし。
う~む、何か無いかね?……………………………あったわ一つだけ。
「情報を一つ、欲しいものがあります。」
「情報、何か知りたい事があるのかい?」
歩がエリクサーだったからか、また高い値段の物を言われると思ってたのか、司令は拍子抜けした様な顔をする。
「初代天皇様、神武天皇の封印について知りたいです、出来れば封印場所も。」
「初代天皇………そうか、分かった。今すぐかな?資料庫から探そう。」
今すぐって言って、情報の漏れあってもやだしな、これは初音を連れてくるべきだろ、多分。
「いや、後日妹を連れて来ますから、紙に情報をまとめてくれると助かります。」
一度言葉を区切って、イスから立つ。
「お願いします、どんな些細な情報でも良いんです。出来るだけ多くの、神武天皇の情報を頼みます。」
司令に向かって誠意を示す為に頭を下げた。
「分かった。未だ復旧が全て終わった訳では無いし、人員の補充も未だだから…………一週間は欲しいが、それでも大丈夫かい?」
神武天皇の記述は、少ない割りに眉唾が多くてとにかく精査に時間が掛かる。それでも今は取り合えず、情報量が欲しいんだ、情報が少な過ぎるから。
学校の図書館は蔵書数は多いんだが、如何せん新しい物ばかりで、古い物は保存の為に中々閲覧出来ないんだ。
イヴに掛け合ったから、夏休み明けに許可が下りる様にはなったけど、それでも早く手に入るならそれに越した事は無いからな。
「分かった、時間は掛かるが全力で探そう。」
「ありがとうございます。」
子供じゃ限界あるからな、イヴも場所を知らない位だ、天皇家の秘密とかになってなければ良いんだが。
「今日はもう直ぐ夕暮れだから、泊まって行くかい?部屋と食事は出せるが。」
「いえ、明日も早いので、帰らせてもらいます。」
歩がそう言ってイスから立ち上がると、司令は残念そうな表情をした。
「そうか、護衛はかえって足手まといだな、砦前まではせめて見送りさせてくれ」
立ってた俺も司令と三人で部屋を出る。
強面の男が、扉脇の壁沿いに荷物を置いてた。未だ出てってから時間経ってないだけど、近くの部屋にでも置いてたのか、それともギフトか何かなのか、どちらにしろ速いのはありがたい。こいつらを置いていくと報酬から減額されるからな。店長の飼ってる動物みたいだし。
「あ、ありがとうございます。」
「………いえ、仕事ですから。」
扉脇の壁沿いに荷物を置いていた強面の男に、お礼を言って荷物を持つ。司令と強面の男も少し荷物を持ってくれた。
ネズミとかが多いけど、籠の重さとか考えるとやっぱり、ギフト無しじゃちょっと辛いな。………歩は種族進化してるから軽々持ってるけど。
初対面の大人相手に気軽に話せるほど、たくましいコミュ力が無い俺と歩は、無言で先頭を歩く司令についていく。
砦の入り口、戦闘後で酷く荒れてる場所で、荷物を司令と強面の男からお礼を言って受け取る。
受け取る時に司令の指が歪んでるのに気付いた、特に人差し指の腹の部分、妙に凹凸が出来て瘡蓋やら火傷跡が出来てた。あれもギフトの能力の影響なのか?
司令のギフトが気になるな。
「荷物、ありがとうございます。」
「今はこれしか出来ないがね、用意が出来たら直ぐに連絡する。」
「お願いします。出来るだけ早く欲しいんです。」
歩が司令にもう一度頭を下げた後、俺が象の式紙を呼んで、背中に荷物を乗せて紐で固定する。
「今日は本当にありがとう、君達のお陰でこの砦の人間は命を救われた。」
「自分のしたいことしただけで、偶然です。お互い運が良かった。」
そう言って、歩が式紙に乗ったのを確認して、歩く様に指示をする。
森の中だろうが山だろうが、こいつなら踏破出来る、歩く速さはそれほどでも無いけど、ここから国境まで一キロも離れて無い目と鼻の先だし、そこからは孤児を荷物運びに雇う。
国境付近は捨て子が多いせいで、孤児院や収用出来なかった孤児が結構いる。職人連中や商人の独身なんかはそういう孤児と、魔術契約して面倒を見る代わりに弟子や部下にするんだ。理不尽な魔術契約も、魔術契約を外見から判断出来るように作られてるから、結構少ない。弟子や部下に子供を選べる人間なんて、結構成功してる人間だから、バレた時の信用問題とかあるんだろう。
で、そういう契約して、路上生活から脱却した奴等と同じ様に、上に行くのを目指してる奴等が、格安で何でも屋みたいに仕事をしてくれる。中には万事屋と契約して専属の運び屋とかになってる人間もいる。俺らが雇うのはそういう奴。
俺の式紙じゃ動物しか出せないから荷物持たせて走らせるのは不安だし、何より町中だと周りに迷惑だからなぁ。歩の式紙はおどろおどろしい悪鬼とか、ゾンビとかみたいな奴だから、俺と同じで以下略。
式紙はその人間の適正の奴しか呼び出せないからね、仕方無いか。
あ~あ、頼むから条件の良い荷物運び見付けられますように~
うん?
何かポッケに何か入ってる。ここに物入れた覚え無いんだが………
中に入っていた紙切れを開いて見ると、血文字で何か書かれていた。
「日ノ本義人伝の原典に、答えがある……………?」
日ノ本義人伝って一体、そもそもこれは誰から?
もしかして司令か?あの指先は頻繁に血文字を書いているからか?何でこんな手段で………………うぅむ、分からん。
取り合えず、手掛かりが増えたな。
イヴに日ノ本義人伝について聞いてみよう。
来月もぎりぎりになりそうです、すみません。