夫婦転生 二度目の人生を彼女と ~異世界にヲタク夫婦が兄妹で転生するらしいです~ 作:リムル=嵐
最近この挨拶が板についてきた気がする、すみません遅くて、話の流れも遅いんです、すみません。
後少しで大会に行くんで、本当にすみません。
「えっと、つまり俺が大会に出て、そのシーダって奴の娘の許嫁に選ばれれば良いんですか?」
野菜を洗い終わって、ちびっこ達に台所まで運ぶようにお願いした後、前原達の部屋で前原に大会について話しをした。
「そうだ、強さなら最近の前原なら大丈夫だろうし、お前らの中でそういうの任せられるの、前原だけでな。」
俺がそう言って、頭を下げると前原が慌てて頭を上げるように言った。
「ちょ、そんなことしないでください、初さんは俺達の恩人なんだ。それくらいの話ならいくらでも力になりますよ!」
その言葉に慌てて前原に詰め寄る。
「いや、それくらいって、結構俺無茶言ってると思ってるぞ?この子と六年は許嫁になるんだから!」
写真を指差しながら言うと、前原が笑いながら言う。
「たったの六年ですよ。それくらい、命の恩人の頼みなら大した事じゃ無いです。」
たったの六年ってお前、普通の人間なら六十まで生きれば良い方って言われてるこの世界で、六年は重たいだろう。
「それに、この子も許嫁を勝手に選ばれて可哀相ですし、俺なんかが同情するなんて、とは思いますけどね。写真を見て、何かほっとけない感じがしたんです。」
んん???
前原が言った言葉に、違和感がして思考が止まってると、前原が遠い目をし始めた。
まさかこいつ、一目惚れしたんじゃ……………早まったことをしちゃったかと考えた俺に、前原が話しを続けた。
「なんて言うんですかね………聞いた話だとこの子、親がスゴい身体が強いのに、虚弱体質でしかも本人は大人しい性格なんですよね?引きニートの気配がして他人事に思えなくて。」
苦々しそうに言う前原に、思わず目が点になる。
そう言えばこいつ、前世で引きニートって言ってたっけか、これは、あれか?
似た境遇の奴のことほっとけないだけか?
「そ、そうか。お前が乗り気なら俺は良かったよ、うん。」
面倒にならなそうで一先ず安心する。
こいつが一目惚れしたなんて言ったら、俺は今後こいつとシーダの娘の事を見張らなきゃならなかったからな。主に前原が暴走しないかの見張り。
「じゃあこれが登録用紙だから、後で書いて持ってきてくれ。」
「あ、はい、夕飯後に部屋に持っていきますね。」
それに答えて、部屋を後にする。とにかく、問題が片付いたなら良かった。後は朱司の話しを咲さんに言うだけだな。
「その話なら、さっき楓と帰ってきた瀬良に聞いたわ。もう向こうが乗り気だから仕方無いけど………今度からはちゃんと相談してね?」
う、それを言われると返す言葉も無いです。
思わず縮こまって頷く俺をみて溜め息を吐く咲さん。ぐうの音も出ないとはこの事か。
「はぁ、あなたも初音ちゃんも、揃ってお人好しの無鉄砲なんだから。」
「すみません、以後気を付けます。」
「当たり前よ。それよりも、今度やる武道大会は大人の部の優勝の景品が五百万円って、本当なのね?」
あぁそっか、咲さんちびっこ達に仕送りしてるから、お金のことになると面倒なんだった。
「……はい、でも事情がありまして。」
咲さんにシーダの事を話すと、頭を抱えて空を仰いだ。
まぁ、最初聞けばそうなるよな、うん。
「拓と銅次も参加させたかったのに、これは無理か。」
あぁなるほど、あの二人のどちらかが許嫁になんてなれば、修羅場確定だからなぁ。
「初君は朱司君との事があるから仕方無いけど、もし許嫁になんてなったら…………初音ちゃんの暴走、過去一番にヤバいことになるわね。」
俺が選ばれる可能性がある?
いや、それはないでしょ、俺は今六歳ですよ?許嫁にしても六つも歳の差あるんだぞ、それなら未だ前原の方が歳の差少ないし、実力的にも問題ないだろうし。
あいつ最近は俺とタイマンでも、俺が力をテューポーンと同時に発動しなきゃ、結構持つようになってきたし。
「大丈夫だと思いますよ、俺も大会では本気出さないようにしますし。」
「なら良いんだけど………とにかく、これは夜もう一回皆で話し合わないとね。」
その日の夜、初音がキレて暴走したり、俺が安請け合いした罰で床に正座したり、鐵が乗り気で他の男からロリコン扱いされたり、色々あったが何とか話はまとまった。
次の日、朝御飯を食べ終わって、皆して食堂でわいわいしてると、来客を知らせる鐘の音が鳴った。
咲さんが来客を連れて食堂に来ると、ちびっこが来客をみてざわつく。
「はい、今日から少しの間皆と一緒に暮らすことになりました、ウサギさんに朱司君です。少しの間だけど、全員仲良くするように。」
「…………………」
「ウサギって言いまーす!これから武道大会までの間、皆さんよろしくで~す!!」
全員が居間代わりの食堂に集まって、うさぎさんと朱司の事を見てた。
昨日の夜のうちに皆には話してあるから、たいして混乱はないが朱司の態度が問題ありだな。
俺に対しての敵意や殺気は今まで通りだが、他の人間に対してもあんな険呑な雰囲気で接して、見てて危なっかしい。
「にしし、よろしくな!」「うさぎさんうさぎさん、『かんごふ』さんって何するの?」「朱司って蛇なんだろ?何の蛇何だ?」「なぁなぁ、皆で外で遊ぼうぜ!」
ちびっこ達は、他にも色々言いながら、朱司とウサギさんに絡んでいく。
「誰がテメ「朱司?」………悪いが俺は修行しに来たんだ、そんな暇はねぇ。」
「落ち着きなさい。」
朱司が舌打ちしそうな位機嫌悪そうな返答をしようとすると、ウサギさんが底冷えするような低い声で名前を呼んだ。
あまりの怖さに一瞬、俺と五馬鹿は戦闘体勢に入ろうとしたけど、咲さんに言われて自然体に戻る。前原とか板橋は、未だ少し警戒してるな、俺も初対面の時に実験台にされそうになってるから、戦闘体勢は解いても、警戒はしてるな。
「じゃあ俺らと『もぎせん』しようぜ、こうみえても俺ら強いんだからな!!」「私は良いや、ウサギさんに、おはなししてもらうの」「私もそうする!」「男は全員戦うぞ!!」
「お前らが相手になんのかよ、俺は最上級魔獣でも強い方なんだぞ?」
あぁ、それね、多分問題ないんだよな、うん。
「ここに居る男は皆レアギフト持ちだぜ?」
ちびっこの一人がそう言って、魔力を身体から溢れさせる。なんとも強キャラ臭の漂う行動である。
「なに?」
ちびっこが言った言葉を聞いて、咲さんに確認するように視線を送る朱司。
「………はぁ。」
面倒臭そうに頷く咲さんに、どや顔して胸を張るちびっこ。まぁ、その後見事に楓さんに頭叩かれてたけど。
「いてっ、何すんだよ楓姉!!」
「手加減もマトモに出来ないのに、お客さんと戦わせるなんて出来ない。」
「なんだ、その程度か。」
「手加減出来ないだけで、強さは折り紙付き、あなたの修行相手は私と瀬良。」
「はぁ!?」
見下すように言う朱司に、ちびっこが言い返す前に楓さんが反論する。
因みに修行相手云々は楓さんの思い付きで、俺達に何の相談もないその場の勢いである。
お陰で瀬良さんが嫌そうな顔してるけど、咲さんがゴーサインの合図をしてたから、不服そうな顔して黙る。
「なら、今すぐにでもやろうぜ。」
「ん、近くに良い場所があるから二人とも、付いてくる。ウサギさんはのんびりしてると良い。」
「それじゃ、お言葉に甘えて。怪我や病気の治療は、ここにいる間は私に任せて下さいね。」
「ん、頼りにしてる。」
「お昼には一度帰って来なさい。」
「了解。」
食堂を出る前にそう言って、楓さんは出掛けた。後を追って瀬良さんと朱司も居なくなる。
なんとも言えない空気の中、咲さんが手を叩いて皆の視線を集めると、全体に向かって話始めた。
「さぁ、それじゃ皆、今日のお仕事を言うわよ~。」
「「「「「はーい!」」」」」
朱司が来てからもうすぐ三時間程、そろそろお昼の時間かなという時間帯。
朱司と犬神姉妹は、仲良くとは言わないが、それなりに打ち解けてる監事で、修行してた。
「攻めが甘い。」
「がぁッッ!?」
おー、やってるなぁ。
空家近くの広場で、楓さんに吹き飛ばされる朱司を、洗濯物を干しながら見てる。あ、瀬良さんに受け止められて反省点を言われてる。
洗濯と言っても外に干してるのは基本男物で、女物は部屋干しで、初音とちびっこの女の子達で干してる所だ。男は例えちびっこでも入れない徹底っぷり、本当女の人はそこら辺スゴいと思うわ。
「初さん、こっち終わりました~。」
「こっちももうすぐ終わる、これが終わったらなんだっけ?」
板橋が空になった洗濯籠を持って俺を見てきた、こっちは台がないと手が届かないんだよ、ちょっと待っててくれ。
「えっと、僕達は森にちびっこを連れて山菜取りですね」
「そっか、俺は昼飯でも手伝うかな?」
「初さん料理好きですよね、御夕飯とかよく手伝ってくれますし。鐵とか前原とか、全然手伝ってくれないんですよ?冴羽はたまにやってくれるんですけど。」
俺の呟きで何か地雷踏んだのか、板橋が愚痴り始める。
そういえば、こいつら歩ともう一人含めて六人で暮らしてたんだっけ?
「じゃあ僕は皆を呼んで森に行ってきます。」
「おう、ちびっこ達に怪我させないようにな。」
洗濯籠を置いて、板橋はちびっこを集めて空家の反対側で作業をしてる前原達の所に行った。
ま、後で聞けば良いか、ここの風呂デカイし、男で風呂に入りながらでもいいだろ。
そう考えて家の中に入って、台所で大量の野菜相手に奮闘してる咲さんと綾女さんに話し掛ける。
「洗濯物、干し終わりましたよ。板橋は他の男と一緒に、ちびっこ連れて森に食料調達に行きました。」
「そう、ありがとうね。それじゃあ、ウサギさんの相手してもらってて良いかしら。今は食堂で暇そうに煎餅かじってると思うから。」
「うい、分かりました。」
朱司の付き添いで来た、いかにも怪しそうな言動の恐い女性を思い出す。
あの人も、前世では考えられない位濃い人だよなぁ。この世界、濃い性格の人多過ぎ。
「あ、ちょっと待って…………はい、これ味見してくれない?」
咲さんに返事をして、お茶を急須に入れて湯飲みと一緒に持っていこうとすると、綾女さんに匙で掬ったものをつき出されたから、そのまま口に入れる。
手が塞がってたし、これくらいノーカンノーカン。
ふむ、野菜に鶏ガラのスープか、塩が少しキツめだけど胡椒が加わってる事で良い塩梅になってて、そこに全てをぶち壊す大量の砂糖ガガガガガ。
「!!?!?!?」
「ど、どう?お兄さまの好きな味になってる?」
綾女さん、これはヤバい、砂糖が全てを壊してるっつうか、どれどけ砂糖を入れたんだあんた。
「甘過ぎです、砂糖がヤバい。」
入れたばかりの急須からお茶を注いで飲む。
うぅ、未だ甘い。お茶請けに梅干しでも持ってくか。
「え、本当ですか!?」
自分でも改めて匙で一口味見する綾女さん。
顔が真っ青になってるから、多分気付いたんだろう。
「あ、甘過ぎる。私またやらかした…………」
「今からでも何とかなるわよ、ちょっと調整すれば大丈夫よ大丈夫。」
落ち込んでる綾女さんの横で、味見した後にそう言って励ます咲さん、やっぱり咲さんは苦労人だなぁ。
後綾女さんはドジッ子ね、覚えたぞ。
「お、俺はこれで。」
「ゴメンね初君、今度御詫びはするから。」
「いや、気にしないでください、失礼しました~。」
申し訳無さそうにしてる綾女さんには悪いけど、冗談じゃない、ドジッ子にその手のことは鬼門だって、俺でも分かるぞ。
「あら?初君はお手伝いしなくて良いの?」
どうかこの合宿中にでかいやらかしをしませんように、なんて俺が
見た目美人だから絵にはなるけど、性格を知ってると恐怖しか感じないのは何故だろう。
「ウサギさんを見張ってろって言われました。」
「あら、随分警戒されてるわね。」
残念そうに呟くウサギさんを、呆れた目で見ながら言う。
「初対面の子供相手に、いきなり実験しようとしたりするからです。」
「ちゃんと本人に同意は求めたわよ?」
「あれをそう言える精神がスゴいですね。」
「意地悪はやめて。それよりも、もっと別のお話ししましょうよ。」
分が悪いと思ったのか、話題を露骨に変えるウサギさんを、白けた目で見る。
「何です?」
「シーダの情報、欲しくない?」
ウサギさんはゾッとするような妖艶な笑みを浮かべて、俺達がこれから関わる災害級魔獣の情報という、下手しなくても喉から手が出る程に重要な情報を、俺にちらつかせてきた。
この人は一体、俺に何を要求するつもりなのか、実験台とかでは無いことを、強く願った。