魔法少女リリカルなのはvivid×仮面ライダーキバ 〜戦いの運命〜   作:NAGI

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第10楽章 rush! 溢れる怒り

初代キングの時代より遥か昔、ファンガイアは掟によって、人間を愛する事を認められていなかった

 

”破れば死が待っている”

 

それでも尚、人を愛してしまった者は逃げるように暮らしていた。しかし、そんな生活も終わりを告げる。2代目キングが死の間際、後継者として選んだ自身の弟。彼は人間を愛してはならないという掟を撤廃した

 

「彼が唯一行った善行」

 

とその時代を知る半分程の者が言う事であるが、実際、彼はとても見るに堪えない有様だったようだ。それを示すかのように今の時代では、存在すら抹消されている。彼がいた事はワタルさえも知らない

 

 

この掟がなくなってから約100年

 

今、この時代においてファンガイアは人間とのハーフだけでなく、ハーフと人間のクォーターが存在する。これを平和の証だと楽観視する者もいるが、一部のファンガイアの間では異種族混血問題と呼び、問題視されているのも事実だ。人間の血が濃くなり、ファンガイア態になれない者が増えた。ファンガイア態になれる者でも人間より少し強い力を持っているだけであり、純血の者達と遜色ない力を持つ者は珍しい。しかし、それでもまだ楽観視出来たかもしれない。レジェンドルガとの戦争さえなければ

 

 

レジェンドルガとの戦争。これは即ち、一族の存亡をかけた戦いになる。少しでも戦力が必要だ。だが、今のファンガイアには非戦闘員が多い。その者達を守る為の部隊。自身の庇護下にあるホビット族やマーメイド族等を守る為の部隊。レジェンドルガと戦う為の部隊。これだけでも、たくさんの兵が必要だ。クーデターさえ起こらなければ何とかなったかもしれないが。とは言え、もしもの事を考えても仕方がなく、キャッスルドランの中にある執務室でワタルは部隊編成に頭を悩ませていた

 

「これはこうすれば・・・いや。そうしたら今度はこっちが」

 

ワタルは書類と睨めっこしていた。内容は部隊編成についてだ。これをするのはワタルの仕事なのだが、何せ部隊編成など初めてである為に手間取っているようだ。まあ、それも仕方ないだろう。普段は部隊編成をする事がない。基本的にファンガイアは掟を守りさえすれば、有事の場合と任務以外は自由が保障されている。唯一の例外はワタルの護衛部隊ぐらいだ。彼らの仕事は当番制。本来ならルークの仕事を彼が今、いない為に代わりにやっているに過ぎない。まあ、彼らはそれを進んで引き受けたので、苦痛ではないのだろう

 

それはさておき。ワタルは人手不足な現状に頭を抱える。せめて、もう少し人材が欲しい。そう思っても現状は変わらず、投げ出したくなる・・・かと言って世界の危機を前に投げ出す訳にはいかず。良い案は無いかと考え続けるしか道は無いのだった

 

「おい!ワタル!」

 

ワタルの前に書類を持って来た次郎に目を向ける。彼は管理局の三提督と会議に行っていた。しかし、予定よりも時間が遅かったし、何かあったのだろうかとワタルは不安になっていた

 

「次郎さん。何か不味い事でもありましたか?」

 

「いや、三提督との会談は何の問題もなく終わった。お前の指名手配は取り下げ。やった奴は降格処分だ。レジェンドルガの事も伝えたしな。協力体制を取ってくれると言ってくれた」

 

どうやら指名手配は他の者が独断でやったらしい。そして、後で話を聞くと、その者達は精神に異常が見られたので、彼らが用意した部屋に監視付きで過ごしてもらうようだ。しかし、協力体制が取れるのは喜ばしい事で、ワタルはホッと胸を撫で下ろす。後は聖王教会との会議が明後日。ファンガイアのD&Pの上役達を始めとする企業の責任者との会議が3日後。リュウヤの父親代わりである嶋マモルが会長を務める嶋財団との名ばかりの会議が6日後。協定を結んでいる魔族の長との会議が一週間後に控えている

 

「良かった。教会とは明後日ですよね?」

 

「ああ。しっかりやれよ。なんせ一族の未来を決める大事な戦いの前だ。ヘマをする事は許されない。それを忘れるな」

 

そう念を押す次郎だが、それは当然だ。なので、次郎の言葉は間違っていなかった。それを理解しているのかは分からないが、期待するような目で次郎を見つめる

 

「はい。でも、付いて来てくれてるんですよね?」

 

まるで悪戯を思いついたような餓鬼のようだなと次郎は思う。そして、一方でこの子犬のような目に俺は弱いんだと次郎は心の中で叫ぶ。既に次郎の返事は決まっていた

 

「ああ。だから、気負わずにいけ」

 

「分かってます」

 

「ならいい。しっかり準備しておけよ」

 

ワタルの頭を撫でながら次郎が呟いた。この年になると恥ずかしがって拒否するものだが、ワタルにはそれがない。将来のことを考えると不安になる次郎。しかし、それでも甘えてくれる今の内に堪能しておこうと撫でる手を止める事はない

 

「はい。分かりました」

 

「それと少し前にビショップから連絡が来た。神田の今の居場所が割れたそうだ」

 

次郎が思い出したように言うとワタルの目が鋭くなる。神田には今まで会いたくなかった。彼はクーデターを起こした張本人。憎い。家族との時間を奪い、親友の父親の命が失われる原因を作った彼が。だが、その気持ちを抑えてワタルは会わなければならない。会って、聞かなければならないのだ

 

「何処ですか?」

 

 

 

 

翌日。ワタルは某研究所の中を歩く。階段を上り、廊下を歩く。険しい目で前を見るワタルの前にやがて、一つの大きな扉が見えた。彼はそれを押し、中に入る。ワタルは色々な機械がある部屋の中にいる白衣を着た男性に近付いて行く。この男性が神田博士だ。神田はワタルに気付いたのか、彼を見る

 

「オトヤの息子・・・ワタルか。あの赤ん坊がデカくなったものだ」

 

「貴方にだけは会いたく無かった。父さん達を裏切った貴方にだけは・・・」

 

余裕のある表情を浮かべる神田と怒りを必死で抑えているワタル。何しろ神田はワタルにとって本来なら得られた幸せの未来を潰した元凶であるだけでなく、親友の父親を奪った人物であるのだ。その怒りは当然だった。しかし、神田はその怒りを悟っても悪びれない

 

「私としては感謝してもらいたいぐらいなんだが。私のおかげでお前らの政策に反対するファンガイアはごく僅かになったのだからな」

 

反省などしておらず、むしろ、自身の行動を正当化しているような口ぶり。そして、その言葉を聞いたワタルが怒りを抑えられる筈もなく、左手で神田の首を絞める。首が焼かれているのか、煙が僅かに出ていた

 

「そのせいでリュウヤの父親は死んだんだ。貴方に聞きたい事が無ければ既に殺している」

 

そう言って手を離すワタルに神田はこの場においては不釣り合いな笑みを浮かべ、椅子に座る

 

「お前はオトヤに似ているな。そして、今の行動。私がこの道を歩む事が決まった時を思い出す。闇のキバになった奴に私達は負けた」

 

神田が言葉を切ると、ワタルはその結末を言った

 

「そして貴方は父さんにファンガイアの力を奪われて半端者になった」

 

「そうさ。お前と同じ半端者だ」

 

真のファンガイアと言えない二人。片や僅かながら人間の血が流れていて、片やファンガイアとしての力を失った。お互いに二つの種族を彷徨う存在であると神田は言っているのだ。人間と言えず、かと言ってファンガイアでもないのだと。しかし、ワタルはそれを否定する

 

「貴方と僕は違う」

 

「それもそうだ。私にファンガイアの力はないが貴様にはある」

 

言葉遊びをする為に来た訳ではない。しかし、冷静さを欠き、神田のペースに引き込まれてしまっていたワタルは話の内容を変える

 

「・・・貴方に聞きたい事がある。あの赤い戦士のシステムは貴方が作った物ですよね。あれは貴方一人で作った物ではない筈だ。協力したのは誰ですか?」

 

「・・・お前の父親だ。設計図を私に送りつけて来た。私はそれを元に作っただけだ」

 

神田の協力者がオトヤであると言う神田。ワタルには理由が分からなかった。何故、敵を作らせたのか。何をしたいのかも。オトヤの考えすらも分からなかった

 

「何で父さんが・・・?」

 

「さあな。奴が考える事は私達にも分からん。ファンガイアと人間のハーフであるがクイーンの力に選ばれた時もそのクイーンを殺さずに迎え入れたり、闇のキバを多用せずにイクサを愛用したりとな・・・・・・そういえばお前は闇のキバを使っているらしいな」

 

神田が話題を変える。それに対して、ワタルは神田の意図が読めず、困惑していた

 

「何が言いたいんですか?」

 

「お前にあの力は重い。いつか、命を落とすぞ」

 

「貴方には関係が無い事です」

 

「確かに私に関係はない。だがそれで暴走されて世界を滅茶苦茶にされるのはゴメンだ。お前がそれを纏う時は常に暴走の危険性が高い。赤ん坊の頃、お前の不安定な魔皇力が安定するようにオトヤが掛けた封印魔術も解け掛かっているみたいだしな」

 

それにワタルは答えない。しかし、一瞬だけワタルの手が僅かに動いたのを神田は見逃さなかった

 

「図星か」

 

オトヤがかつてワタルに掛けた魔術は解けかかっている。昔はオトヤの魔術安定剤のような役割を果たしていた。しかし、ワタルが成長するにつれて緩くなり、彼の魔皇力の不安定さを増長させていたのだ

 

「・・・今はどうでもいい事です。それより、あの赤い戦士の正体を教えてもらいます。力づくでも」

 

ワタルは平静を装う。分かっていた事であったが、改めて言われるときついものがある。それでも、戦う事に迷いはない。死んでも構わなかった。そして、その覚悟がワタルの過激さを生んでいた。

 

「私としても教えてやりたいのだが、どうやら時間だ」

 

それと同時に研究所のあちこちで爆発を起こる

 

「貴方は誰ですか?何がしたいんですか?」

 

ワタルが叫ぶ。感じる違和感。力を失った者ではない。自身を凌駕する力を秘めている。彼は危険だとワタルの本能が囁く

 

『流石はファンガイアの王だ。中々鋭い。そうだな。一つだけ言えるとすれば私の元へと来い。我が僕達を倒し、全てを終わらせる為に』

 

そう言うと神田の前に山羊を彷彿とされるカプリコーンファンガイアが現れる。しかし、その姿はどこか歪で、ワタルには改造されているように感じた。カプリコーンファンガイアが自身の身を研いで槍を取り出し、突く。それを寸前のところで躱したワタルであるがその威力は凄まじく、突き刺さった壁に亀裂が大きく入っていた。既に神田はいなかった。やはり、彼は何かが違う。ワタルはそれを確信する

 

「二世!」

 

「こいつは何かおかしいぞ。気を引き締めてかかれ!」

 

ワタルの元に飛来した二世はワタルの左手を噛む

 

「ガブリ!」

 

「変身・・・」

 

ベルトに自らついた二世。同時にワタルはダークキバへと変身を遂げる

 

「ハアァッ‼︎」

 

ワタルは再び放たれた槍を左手で掴み、カプリコーンファンガイアの胸を右の拳で殴る。魔皇力を込めて放たれたそのパンチにカプリコーンファンガイアは一歩、二歩、三歩と後ろによろめく。それをダークキバが逃す筈がなく、連続で拳のラッシュを浴びせ、右足で蹴り飛ばす

 

「wake up! one!」

 

世界から光が消える。唯一の光はダークキバの背後に浮かぶ紅い満月のみ。右拳に収束された魔皇力を、ダークキバはカプリコーンファンガイアにダークネスヘルクラッシュを放つ。キバの紋章が浮かび、爆発が起きるもカプリコーンファンガイアは倒れない。ダークキバが攻撃しようと構えると、カプリコーンファンガイアは身体のあちこちから煙を上げて倒れた

 

「改造されているのか。調べるか?」

 

「・・・・・・うん」

 

ワタルの顔は暗く、悲しみに満ちていた。操られていたのだろう。自我を奪われ、物言わぬ傀儡に成り果てた。再生体と同じ。いや、それ以上の屈辱を彼は与えられていたのだ。それを考え、ワタルは彼の身体をこれ以上弄りたくなかった。しかし、キングとして私情を捨てた決断を下さなければならない。死した同族と、生きる同族。優先されるのは生きる者達だ

 

「今度こそ安らかな眠りにつけますから、後少しだけ我慢して下さい」

 

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