大統領が増えればいいのですが。
ちょっとキリが悪いですが、元々2.4万だった旧版の#5が、こちらの#5(今回分と分割済み)と合わせて倍以上に増えているので今回の話も次回と分割しています。
12の機影がドイツの大型輸送ヘリから落ちて行く。 ドイツのシュヴァルツェ・ハーゼ所属IS“シュヴァルツェア・イェーガー”3機とドイツ製特殊機動重装甲“ドーラ”9機だ。
ドイツの第2世代ISシュヴァルツェア・イェーガーは同じく第2世代のローター・ティーガー同様、その原型機の大統領機“シュベーレ・グスタフ”から88cm砲以外を継承して開発された全身装甲の機体だ。
ローター・ティーガーやドーラと違って足裏の無限軌道は排除されてしまったが、同じ機体を基に開発されたシュヴァルツェア・イェーガーとドーラは所謂姉妹機である。
スペックも超重量の88cm砲を担げるパワー、88cm砲を担いだ状態で維持できる高い運動性と機動力と共通点はいくらか存在するが、シルエットはそう似ていない。
ローター・ティーガーやドーラには余裕を持たせて原型機同様に88cm砲発射時の衝撃から守るための、分厚い装甲の内部に入口を連動して開閉できる形で埋め込まれた全身のスラスターが存在する。
兵装はドーラは88cm砲を運用できるスペックのまま折り畳み式88cm砲の代わりに折り畳み式240mm砲を搭載。
更にドイツにおいて21世紀初頭から多用途戦闘機“ハウニブ2025”が登場するまでの間運用されていた
しかしISであり、スラスターを装甲の外に出したシュヴァルツェア・イェーガーのほうが更に機動性が高い。
もう1つ違いがあるとすれば、どれも開発時に最新鋭技術が投入されているので、必然的に開発時期が遅いシュヴァルツェア・イェーガーの技術のほうが新しいという点か。
「……とても、先程まで要塞があったとは思えないわね」
迫る地表には、大量の瓦礫が散乱している。 4度の大量爆撃によって大きな瓦礫は砕かれ、ISが隠れられるようなものは存在しない。
数千発の子弾が過剰とも言える火力を発揮した結果だ。
雪上の要塞と化していたそこは、ありとあらゆる構造物が最早用を成さない残骸として屍を晒していた。
「各機、降下姿勢!」
耳の部分から斜め後方に伸びる太いアンテナと黒い機体色に映える白く輝くツインカメラアイ、使用時には額部分から降りてくる
ハイパーセンサーで索敵しつつ1機のISに特殊機動重装甲4機が近づいていき、5機で1チームを編成していく。
しかし、隊長であるクラリッサ機に寄ってきたのは1機のみ。 両チームからハブられたラウラ・ボーデヴィッヒである。
当初こそ高い成績を誇っていたが、とある事故の後は一転して落ちこぼれに転落。 部隊最年少にして最後の
それが織斑千冬が赴任してきたここ3週間ほどでかつての実力を取り戻しつつある。 将来的にはクラリッサを追い抜き隊長となるのかもしれない。
彼女が落ちこぼれていた間、教官だった国家代表ゼクス・アルトマイヤーの厳しい指導の中でもクラリッサは隊長としてずっと彼女を気にかけ、時にはそれとなく庇った。 伊達にお姉様と呼ばれていないのである。
ゼクスもゼクスなりに気にかけてはいたのだが、彼女が指導するのは“シュヴァルツェ・ハーゼ”のみではなかったので1人1人にそう時間が取れないとぼやいていたのを覚えている。
今回2人きりとなったのも、彼女と他の隊員の間の隔たりを気にかけてだ。
知っての通り、ISは数が少ない。 ドイツには20のコアがあり、首都防衛隊と空軍海軍、特殊部隊にそれぞれ3機ずつISが配備された
総統専用ISを除いてドイツ製ISは遺伝子強化試験体が運用することを前提にピーキーな調整をされているので、一般人ではとても扱えない反応速度を誇る。 せっかく常人より強化されている
ドーラは一般人でも扱えるのだが、やはり遺伝子強化試験体の機体は反応速度が引き上げられている。
そして大統領機のシュベーレ・グスタフとその後継機である
何故なら当時ドイツ首脳のトップである首相が駆った機体だからだ。 そしてドイツ元首相は首相でありながら
そんなグスタフツヴォーは今作戦のグラウンド・アルファ方面へと、未だ彼を慕う陸軍所属特殊機動重装甲部隊と共に参戦していた。
「行けるな、ボーデヴィッヒ中尉?」
「……問題ない」
首を動かすことなく、内側からハイパーセンサーで斜め後方を見るクラリッサ。
装甲に阻まれ表情は窺えないが、恐らく彼女は機械のように無表情であろう。
もう少し愛想よくならないものか、と思いながら着地体勢に入りつつ、レールガンと重機関銃を展開。 敵の迎撃もないまま、高度を下げて行った。
*
そんなアメリカとドイツ軍が突入していく、このグリーンランド国立公園の2拠点は、亡国機業実働部隊の最大派閥“モノクローム・アバター”の本拠地であり、欧州・北米での活動を行う上での最重要拠点だった。
大規模なレーダー施設を持ち、強力な対空施設が空を守り、そして亡国機業の半数近い人員がここを守備し、幹部会のメンバー数名もここに籠っている。
だが、この拠点もこの日落ちる。 先日のホワイトハウス襲撃でとうとう業を煮やしたアメリカがこの作戦に最終兵器を投入したのだ。
そして、それこそ――合衆国大統領である。
大統領が出現した方はその報告を届ける間もなく壊滅した為、それを知らない“モノクローム・アバター”は壊滅したもう一方の拠点へ応援要請を送り続けていた。
「上空にIS反応! 数は――30以上!」
「そんなことはわかっている! こちらにもそのくらいあっただろうが!」
「先程から言っているように、地上部隊は最初の一撃でアラクネ以外全員通信途絶しています!」
「なら
「EOA部隊は司令の指示で全機出撃後、猛爆撃で全機応答途絶しています!」
「……無人機は格納庫内に3機生存、7機は損傷して出撃不能です! 発進ゲートが崩壊しているため、無人機に吹き飛ばさせます!」
混乱の極みに叩き落された管制室の中で壁にもたれかかっていたレインは、そんな管制室へスコールが入ってきたのを横目で確認していた。
「B3ブロックに敵機侵入! B2ブロック、応答途絶、火災消火できません!」
「まるでカーニバルだぜ、スコール叔母さん?」
「レイン、叔母さんはやめなさい。 IS部隊は? オータムはどうしたの?」
「IS部隊、既に半数がやられています! アラクネは生きています」
スコールは
その向こうからは爆音と銃撃戦の音が響き、状況が切迫していることがよく感じ取れた。
『なんだ! スコール!』
「状況はモニターしていたわ。 ここはもう落ちる。 退きましょう」
『分かった! だが脱出手段は何がある!?』
「原潜1隻と高速潜水艇が少しね。 地下にトンネルを掘ってあるの」
『オッケー! もうこれでおしまいかと思って――どわーっ!?』
「オータム!?」
オータムとの通信が途切れる。
スコールとレインの居る管制室は、数秒前に2機の特殊機動重装甲が、更にそれを追ってドイツ軍、アメリカ軍が落ちてくるのを確認していた。
ISも多数戦闘不能となっており、 遅かれ早かれここに敵が雪崩れ込むだろう。
「総員、退避! 脱出プランB! スコール、レイン、脱出を援護しろ」
威張るばかりで何もしないここの最高責任者がそう命令すると同時に、管制室の面々が我先にと駆けだしていく。
地上からここまでは床と天井の間に各1枚、10枚の特殊装甲が存在し、更に階ごとには様々なトラップがしかけてある。 相当な時間が稼げるはずだ。
ドタドタと逃げ出す管制室の面々をスコールと共に見送りながら、レインは嘲るような笑みを浮かべる。
「ハッ、脱出を援護しろだってよ。 どうする、スコール叔母さん?」
「叔母さんはやめなさい。 ……新世界に不要な司令と幹部会の人間は原潜に乗せてあげるわ。 連中を囮に、別ルートで脱出――」
「敵拠点への潜入に成功した!」
相当な時間が稼げるはずだった。 しかしそれは、
地下深くまで伝わるような声と衝撃が地下区画を揺らし、激震が襲う。
「いってぇな、この……っ!?」
転んで椅子に頭をぶつけたレインが椅子を蹴り飛ばしながら管制室のモニターへと目を向け、思わず絶句する。
モニターでついさっきまで上層部だけ赤くなっていた表示が、一気にここまで真っ赤に塗りつぶされていた。
「叔母さん! 特殊装甲10枚、全壊してるぜ!?」
特殊装甲10枚を一瞬で貫通するほどの純粋な運動エネルギーで何かがここまで到達したことを、2人は悟らされた。
時間稼ぎの為の策は、あっさり瓦解したのだ。 そして、そんな非常識な存在と言えば――!
「おい……叔母さん、まさかこの反応、
「本当にデタラメね……! レイン、先に潜水艇の準備をしておきなさい」
「オッケー! 本当に大統領なら、相手するだけ無駄だしな……」
『おい、スコール、何がどうなってやがる!? 今地下9階なんだが、なんか床をぶち抜いてったぞ!』
レインがヘル・ハウンドver1.5を展開して通路を飛翔し、スコールも歯ぎしりしISを展開しようとしたところで、よく聞きなれた声が通信に飛びこむ。
「オータム!? 無事なの?」
『無事だ! でもよぉ、上から大勢降ってくるぞ! ああくそ、大穴にエネルギーワイヤー張る瞬間にまた2機抜けやがった!』
またしても地下が揺れる。 しかし先程ほどではない。 粉塵が晴れ、スコールがハイパーセンサーで確認した先。 そこにいるのは計3機の特殊機動重装甲と、1機のIS。
「
「その通りだ。 隣の白い機体にはイチカ・オリムラ准尉。 君達の教官の弟だ」
「ハロー、ドイツの軍人さん?」
「お喋りとは余裕ね」
全身が金ピカの悪趣味な第3世代試作IS“ゴールデン・ドーン”を身に纏ったスコールが、閃光手榴弾、スモークグレネードを次々と放り投げながら背を向ける。
実のところ、このゴールデン・ドーンは未完成で武装がない。 あるのは四肢を覆う装甲のみで、設計段階で計画されている巨大な尻尾も未実装。
それどころか、とりあえず動くことを優先した為、黄金の装甲と薄い熱線のバリアである防御フィールド“プロミネンス・コート”がある以外はただの第2世代ISと同等の性能しかない完全な見かけ倒し状態である。
背を向けて逃げるしかないのはスコールも癪だったが、捕まるわけにもいかない。
「貴方達の相手はそいつらよ」
『Ураaa!』
壁をぶち破って現れたのは、マシンガンとその銃身下部に装着したヒートブレードで武装した身長1m半の大量のロシア製の真っ赤な機械歩兵、所謂サイボーグもしくはアンドロイド。
現在の兵器としては低性能だ。 機体名はやっぱり無機質な機体番号だけだが、専ら愛称の
歩兵でも強力な火器があればまだ対応できるレベルだが、安価なので多くの場合大量投入され、赤い津波が数で押し潰しにかかる。
しかし、2メートル程度のそれらの背後から更に壁を破壊して現れる10メートル程の赤い影。
突撃歩兵を従える、真紅の鋼鉄の巨人。
「コイツは……まさか、
「違う! そいつはデッドコピー版だ!」
「中尉、小さい奴をやれ!」
「……了解」
赤い機械歩兵の後ろからその巨体を現したのは、かつてのロシア大統領機のそっくりさん。 無人化する為にサイズが3倍の10mになっている。
両手の鋭利な指をドリルのように変形させて高速回転させ、頭部にウォッカを利用した火炎放射器、腹部から移動した胸部プラズマ砲と機銃、更にバックユニットに大量のミサイルを積みこんだそれがドリルを猛回転させながらクラリッサへと襲いかかる。
ラウラは重装甲高機動なドーラを操りながら、耳の部分から斜め後方に伸びる太く短いアンテナと黒い機体色に白く光るツインアイが存在する頭部で取り巻き共を睨む。
そしてその間に、スコールは狭い1本道の通路の中を逃げ出そうとしていた。
「ハルフォーフ大尉、そちらは任せる!」
「了解、任せられた!」
ドイツの2人と別れたメタルウルフとメタルレイヴンが地を蹴り、全身のスラスターに点火して一気に加速する。
しかし相手は未完成とはいえIS。 機動性、速度共に劣る特殊機動重装甲では普通、追いつけない。
「
ファイルスがメタルレイヴンの左腕を引き絞る。 ミサイルパンチの構えだ。 ついでに室内戦用に持ち込んだ
狭い通路の壁面に当たっては乱反射するレーザー弾がアサルトライフルで撃ちだされ、レーザーが次々と増えながらゴールデン・ドーンの進路を妨害しつつ、プロミネンス・コートの薄い熱線バリアを削る。
「
全くの同時、2人の声が重なりながらイチカが右腕を引き絞る。 ミサイルパンチの構えだ。 ついでにビームライフルを発射し、貫通レーザービームがプロミネンス・コートを貫通してシールドエネルギーを削る。
「鬱陶しい……! 火力だけはあるわね!」
「大統領魂にっ!」
「アメリカ魂に!」
「不可能はっ!」
「砕けぬものは!」
被弾で減速したゴールデン・ドーンを追ってブーストの炎が尾を引き、ますます加速するメタルウルフとメタルレイヴン。
搭乗者のテンションに応じて性能限界が上がるという訳のわからない仕様に、実のところフロム社以外のアメリカ企業は首をかしげるばかりだ。
「ないッ!」
両者が拳を同時に突き出し、ピストンのように伸びながら爆発。 ミサイルパンチがゴールデン・ドーンのプロミネンス・コートを貫き、逃走を図っていたスコールが爆発をまともに受けて通路でバウンド、墜落した。
「やっぱり未完成だとダメね……! それより、なんで追いついて……!?」
「
「それがアメリカ魂だ!」
謎の説得力を持ってスコールに迫るイチカとファイルス。
スコールも言いたいことは数あれど、とりあえずこれを聞くのが精一杯だった。
「……貴方、何者?」
「イチカ・オリムラ。 夢は大統領だ」
「ロバート・ファイルス。 そんな彼の保護者さ」
――マイケル・ウィルソン。 第46代アメリカ合衆国大統領だ!――
「……ふざけてるの?」
尻もちをついたスコールが半透明の存在を見つめながら起き上がるまでに、距離を詰めたメタルウルフがバックパックから武装を取り出す。
特殊機動重装甲用ムーンライトソード、剣のように構えて振り回しながら光波を発射する剣型バズーカだ。
先端をゴールデン・ドーンに向け、トリガーに指をかけながら更に接近する。
「十分真面目だ!」
――いかん、下がれイチカ!――
先代大統領の第六感からの警告に反応したイチカがスラスターを逆噴射させ、後ろへ飛び退く。
それと時を同じくして、隔壁がギロチンのように勢いをつけて落ち、更に分厚い隔壁が左右からメタルウルフを押し潰しかねない勢いで閉じた。
「くそっ、やられた!」
「何の問題もないだろう、イチカ。 壁など壊せばいいだけだ」
「それもそうだ」
閉じるときに一瞬見たところ、かなり分厚い隔壁だった。
それを前にしてイチカとファイルスがバズーカを取り出――そうとして、再び隔壁が開き出した。
重々しく開いていく隔壁の先に、赤い脚が見えている。
「なんだ?」
『Ураaa!』
『私の前に立つテロリストは、男女区別なく平等に皆殺しにした。 もちろん、これからもそのつもりだ』
「確かこの言葉は、プッチーン語録にあったな……ということは、こっちからも“英雄殿”と
隔壁の向こう、そこには三叉路があり、それぞれ隔壁がほぼ同時に開いていく。
思わずどこに隠していたのかというような、数えるのも嫌になるような大群だ。
「
3つの隔壁の先から現れたのは、先ほどドイツ軍に任せたのと同じ、赤い装甲に無骨な直線的なシルエット、ヒートブレード付きマシンガンを携える、全身金属の突撃歩兵。
だが、イチカが振るったムーンライトソードの貫通していく稲妻を伴った光波に引き裂かれ、赤い津波となって押し寄せたギローィはモーゼのように海を割られるかの如く、津波ごと切り裂かれて大統力の前に何もできないまま次々と出落ちしていく。
ツインバズーカによる2つのバズーカ弾が赤い津波の先頭集団を蹴散らし、唸りを上げて回転するガトリング砲の弾幕へと後ろから押されるがまま突っ込んでは崩れ落ちていく。
再びファイルスがリフレクトレーザー弾を発射し、壁面で乱反射する光が四方八方から赤い突撃歩兵を穿っていく。 イチカのビームライフルに狙われた敵機に至っては貫通レーザービームをアサルトライフルのように連射するので、次々と通路の前方から後方の機体まで貫通されたギローィが倒れ伏していく。
そしてそれらの後方から現れ、バズーカ弾も光波も貫通レーザーもENシールドに覆われた装甲で受け止めた10mサイズの人型巨大兵器。 全身金属の突撃歩兵を背後から睥睨し、督戦兵のように立つ
「デカけりゃいいってものじゃないんだぞ!」
「それで、このロシア大統領機だが、これだけ大きいと弱点も狙いやすい」
「弱点って?」
「そうだな……」
『だが、ロシアではテロリストは人間として扱わない。 相手は人間の皮を被った獣だ』
目の前で呑気に話しているのを感知したのか、ロシア大統領が両腕を突き出しつつ、ガシャリとその掌にあたる部分が開かせる。
その穴の中から明るい閃光が漏れだしていたかのように、イチカは一瞬見えた。
「ほら、そこが弱点だ」
『豚のように悲鳴を上げようが、我々は
その一瞬後にファイルスが、世間話でもするような調子で照準を覗くこともなく、流れるように容赦なくスナイパーライフルを撃ちこみ、真紅の巨人の腕が大爆発を起こして吹き飛び、体勢を崩した。
攻撃と同時にロシア大統領機の背中、腕部、脚部フィンから大量の高熱蒸気を噴出し、一瞬で周囲をサウナのような状態に変えながら視界を曇らせる。
「
――どうも大きいだけで、大したことないようだが……ファイルス君、この程度があのプッチーンなのか? 彼は850名近いテロリストを自ら抹殺したのだろう?――
「まさか。 本人はこの火力を維持したまま、時に柔道も使って立ち塞がる敵を叩き潰せた技巧派でしたので、単に大型化と無人機化で積んだAIが伴っていないのでは……?」
「そりゃ、機械に大統領魂の再現なんかが……あれ、じゃあ日本の試製78式って……?」
――イチカ、まずはこいつらを先に沈めるぞ!――
「大きくなって動きは遅くなったし弱点も大きくなったが、攻撃力も上がっているんだ、注意しろよ」
「
体勢を立て直したロシア機が腰を落としたかのように構え、イチカから見て死角になっているバックユニットを起動させ、一度に数百発のミサイルを雨霰の如くまき散らす。
イチカはミサイルにシールドメモリをガリガリと削られながらメタルウルフにヘッドスライディングさせ、その胸部、今は装甲に覆われているプラズマ砲に向かってムーンライトソードを突き刺した。
「アンタもかわいそうな奴だよ、プッチーン大統領。 死んでから、自分で何百人も始末したテロリストに逆に利用されて。 ……だから俺が、テロリストから解放してやるよ!」
『ガガ、ジジ……ッ!?』
切先が突き刺さったムーンライトソードから、零距離で光波が放たれる。 強固な装甲が弾け飛び、大爆発を起こしながら半壊して剥き出しになった砲口へ、イチカは別のバズーカ“TAIHOU”をめり込ませるように突っ込んだ。
「
大航海時代の古式大砲を特殊機動重装甲用に改良したそれは、プラズマ砲内に導火線に火がついたドクロマークの巨大時限爆弾を撃ちこんだのだ。
Yの字状に見えていた黄色いセンサー光を発する、頭部前面を覆う装甲が蒸気を洩らしながら開いた。 こちらを見下ろして黄色く輝く大きな単眼と、特製ウォッカによる火炎放射器が存在する口が露わになる。
そこから強烈な青白い炎が吐き出されるより早く、イチカはその背後へと抜けた。
「バカ、ここが地下だと忘れたのか!?」
「そんなこといいから、少佐!」
粛々と導火線が短くなっていく。 ファイルスが横を通り抜け、火炎放射しながらロシア機が振り返り――そして。
隕石が落ちたかのような大爆発を起こし、ロシア機が内側から巨大氷山の崩壊よりもド迫力な大爆発で弾け飛んで四散した!
「Yeahhhh! すっげぇ火力だ!」
「全く……むやみに火力の高い武器を使うのはお前の悪い癖だな」
「ちなみに大統領戦争だとどうしてたの?」
「最後になったアラスカ会議の時なら、
「参考になんねぇ……」
*
「ハルフォーフ大尉、そちらは任せる!」
「了解、任せられた!」
ロシア機の巨体を潜り抜けるように高速回転する無限軌道で加速しながら、ラウラは両腕の折り畳み高周波チェーンソーを展開した。 甲高い回転音と共に、刃渡り1m半ほどのそれがギローィを瞬く間に切断して斬り飛ばす。
しかし装甲1枚分の厚みを残して切り裂いたはずのギローィが、片目に眼帯を付けているせいで距離感がわずかに狂った結果、真っ二つになって崩れ落ちた。
舌打ちしながらラウラは背中から頭部側面両側に突き出されている27mmリボルバーカノン2門で敵を蹴散らし、折り畳み式240mm砲を背中から右腕側に展開させつつ、手順通り
機体で発射の反動を相殺させながら27mm弾でもオーバーキルなギローィに240mm砲弾が直撃し、周囲の敵機ごと跡形もなく吹き飛ばした。
ラウラは薄笑いを浮かべる。 これだ、と。 やはり我々は戦うことこそが生きる理由なのだ、と。
「やれる……! やはり我々は戦うためにこそ存在しているのだ、なっ!」
かつて戦うために消耗品の生体兵器、強化人間として生み出され、大統領戦争でローマ法王によって新規製造が禁止された現在では一転して扱いがよくなったらしい
その最後の1人として、やや日程を短縮しながら生み出された彼女は一見すると何の不良も存在しなかったが、肉眼へのナノマシン移植処理、左目の
戦うために生み出された遺伝子強化試験体が、まともに戦うことすらできなくなった。 これでは笑い話にもならない。
目に異常があるのはドイツ代表のゼクスも同様だが、彼女は最初から黒い眼球であった。 両目の金色の瞳は越界の瞳稼働によるもので、黒い眼球という見た目の問題はあれど別に視力に異常はなかったのだ。
だが、今月になってやってきた
――どうもお前は目に頼りすぎだ。 これまで上手く見えなかったのならば、いっそ見るな。 身体で感じ取ればいいのだ――
無茶苦茶ではある。 だが、真理ではあった。 そしてそんなとんでもないことを事もなげに言い放つ織斑千冬は打鉄でも強かった。 その強さに、憧れた。
そしてラウラは、視界が狭まると嫌っていた眼帯を付けたり、目隠しをさせられたまま操縦をしたりと3週間千冬に従った結果、心眼――とまではいかないが、片目での、そして眼帯をはぎ取っての
何故なら彼女は遺伝子強化試験体――強化人間であるからだ。 ただの人間とは違うのだ。
そんな強化人間ではあるが、NINJAや
27mmリボルバーカノン2門を放ちながら、折りたたまれていたチェーンソーを甲高い回転音と共に起動する。 マシンガンを放ちながら、ヒートブレードを叩きこもうと跳躍した数機のギローィを一閃し、思惑通り装甲1枚分の厚みを残して溶断。 まだ僅かに動く残骸をドーラの超重量で踏みにじり、アンカーで串刺しにした。
赤い鉄屑を増やしながら、ドイツの2機はロシア大統領機へ迫っていく。 だが忘れてはいけない。 ロシアの戦術は最初から人海戦術。
そして、気が付いたときには包囲され、大抵遅いのだ。
「中尉、避けて!」
「な――」
数が減った赤い津波が、押し潰さんと迫りくる。 突如高エネルギー反応を発生させたギローィがドーラに体当たりするように激突しながら自爆すると、直ちに背中の240mm砲弾薬庫が閉鎖され、発射不能になるのと引き換えに誘爆を防ぐ。
強烈な爆発で押し倒されたドーラへ、その機体が動かなくなるまでヒートブレード付きマシンガンを突き立てんとするギローィが何機も、何十機も覆い被さり、纏わりつこうとする。
相手のエネルギーが尽きるまで袋叩きのように集団で突き刺しては撃ってガリガリと相手を削っていき、最後には鳥葬のように中身ごとバラバラに引き裂くのがギローィの基本戦術。
だが、付近にロシア大統領機がいると思考ルーチンが変化する。 自らを敵の拘束具とし、ロシア大統領機の大火力で自機ごとぶち抜かせるのだ。
「な、め、る、なぁぁっ!」
ドーラの大推力で空中へと飛翔し、そのまま落下して振り払う。 鈍器になった240mm砲がギローィを砕いて打ち倒す。
そうして敵の拘束から逃れた瞬間、相対していたクラリッサの隙をついて発射されたロシア大統領機の腕部プラズマ砲が、ギローィごと左腕で胸部を庇うドーラを直撃した。
同時に全身から高熱蒸気を噴出するロシア機の腕が吹き飛び、頭と腕のない鋼鉄の巨人が仰向けに倒れ伏し、動きを止める。
「中尉! 機体はどう!?」
「まだ、動ける……っ!」
動ける――だが、もう動けるだけだ。 耳の部分から伸びるアンテナは溶け、ツインアイの輝きもくすんでいる。 ENシールドは消失し、厚い装甲の表面が溶けている。
いくらかのスラスターが破壊され、機動力を大幅に失っていた。 とはいえその程度で済んだのは重装甲のおかげか。
残っている武装も鈍器と化していた頑丈な折り畳み式240mm砲と、奇跡的に残った27mmリボルバーカノン1門のみ。
とても、戦闘できる状態ではない。
「幸い、足止めの殲滅という目標は達成しましたが……彼らを追いましょう。 中尉、私が守ってみせます」
クラリッサのシュヴァルツェア・イェーガーが残っていたギローィを掃討し、声をかけてくるが、今のラウラにはそれも嘲笑のように聞こえてくる。 貴様などお荷物に過ぎない、と。
戦うために生み出された遺伝子強化試験体。 強力な兵器であることを求められるその中で、このザマを晒している自分に存在する価値などあるのか、と。
そんなラウラの葛藤とは関係なく、状況は進んでいく。 ドーラが無限軌道を高速回転させ、シュヴァルツェア・イェーガーが通路の空中を浮かびながら進んでいった。
――その遥か後方、オーバーヒートで沈黙したロシア大統領機が冷却され、再起動を果たす。 10mサイズの機動兵器が亀のようなゆっくりとした歩みで目指す方向には、EOA部隊を集団で地上に送るための超大型高速垂直リフトが存在していた。
*
いつのまにか三叉路から適当にブーストで進んでしまっていた2人は、そのまま通路の先へとブーストと歩行で突き進む。
その最中、ファイルスへと通信が入った。
『スパイダーからレイヴンリーダーへ。 パパ、さっきから返事がなかったけどそっちはどう? イチカを酷い目に合わせてないでしょうね?』
「まさか。 今まさに私がイチカに振り回されたところだ」
「HAHAHA」
通信元はオラジワンⅢに戻っていたナターシャ・ファイルス。 メタルレイヴンのカメラ映像を拾いつつ、イチカ達の現状を確認していた。
「少佐、なんかこの先にデカい反応がある!」
目の前に広がる、広大な地下ドッグ。
そして、あからさまに出航準備中の原潜が1隻。 人の出入りがなく、今にも出航しそうなそれが、彼らの前に現れた。
『バカな! スコールめ、何をしている……!? 早く出航しろ、急げぇっ!』
「これは……ロシア製の原潜か。 こんなものまで持っているのか」
『こんなものまであったのね。 パパ、イチカ。 グリーンランドはお魚が美味しいの。 こいつらもお魚の餌にしちゃう?』
「まず一撃叩き込んで、潜れないようにしてやれ!」
「オーケェィ!」
『やめろぉぉっ!』
亡国機業の原潜から悲鳴が響くが、だからといって見逃すことはできない。
2人揃って同じことを考えたのか、同じマルチミサイルランチャーをバックパックから取り出し、顔を見合わせる。
「“HANABI”か」
「気が合うな。 私も”HANABI”だ」
「派手だからな!」
「違いない」
『私、日本の花火って生で見たことないのよね。 派手なのを期待してるわ!』
明らかに選択ミスではあるが、テンションが高まりすぎてツッコミ不在の2人は止まらない、止まれない。 ナターシャは煽ってくる始末だ。
2人は笑いながらミサイルランチャーのトリガーを引く。 瞬間、ドッグで何かを大きく間違えた花火が炸裂した!
「タァァァマヤァァァ!」
「カァァァギヤァァァ!」
謎の花火メーカー“TAMAYA”と大物花火師によって製作されたミサイル、HANABIが全弾発射され、原潜に着弾して大爆発。
圧倒的な熱と光、そして遠目で見るだけなら綺麗だった花火が、原潜を包み込んだ――!
『浸水発生! 浮上、でき――』
『
そのまま原潜の各所から爆発が起こり、たっぷりと海水を飲み込みながらドッグの水面へとゆっくり沈んでいく。
ドッグの浅い水底に着底し、完全に水没したのか気泡が出なくなり、ゴミだけを浮かばせながら原潜は完全に沈黙した。
そしてドッグ自体も次々と爆発を起こし、ドッグの出入り口だったのだろう水中ゲートの前に偶然瓦礫が落ちて塞いでいく。
「……しまったな、原潜が沈んでしまった。 水中には我々は入れないぞ」
『はいはい、今から誰か行かせるわ。 お疲れさ――』
「……ナターシャ?」
「っ、少佐!」
ナターシャとの通信が不意に途切れたのと同時、沈んだはずの原潜が、破孔から水と中にいたかつて人間だった存在を吐き出しながら空中へと浮かび上がる。
ロシア製の原潜――のはずだった物体が、何故か空中に浮かんでいる!
「……いつの間にロシアは空飛ぶ原潜を開発したんだ?」
「空飛ぶ原潜とか何考えてんだよ……!?」
PICかUFOのようにふわふわと浮かんだ原潜が、VLSと魚雷発射管を開きながらこちらへ向き直る――が、相手が悪かった。 相手は戦車や大西洋艦隊司令巡洋艦すら沈める特殊機動重装甲。 潜水艦の薄い装甲で対処しきれるものではない。
回頭中に主力戦車も容易に撃破するツインバズーカとTAIHOUが直撃。 原潜が浮かび上がって以降装甲表面に発生していたバリアーが存在しないも同然に貫通され、原潜の薄い装甲を突き破り、艦首を大きく破壊する。
内部へ次々とツインバズーカとTIHOUの砲弾が撃ち込まれて再度大爆発を起こし、ドッグの水中へと勢いよく落下した原潜から飛び出してきたのは、人間ではなく小さな影。
原潜内部に隠れて
そんなUFOが反撃代わりに内部で何かをやっていたと思いきや追撃され、脱出の途中で撃ちこまれたツインバズーカとTAIHOUでUFOが粉々に吹き飛ばされたのはイチカ達には見えなかったが、原潜の中からその影――光線銃を持ったグレイ型宇宙人が無傷で現れた。
「宇宙人!? この原潜、UFOだったのか!?」
「なんでもいい、倒せ!」
ふわふわと浮かびながら緑色のリングレーザーを放つグレイ型宇宙人が、氷漬けにされて特殊機動重装甲2機の火力でハチの巣にされるまで、僅か数秒の出来事だった。
「こちらレイヴンリーダー! 再起動した原潜を撃沈した!」
燃えあがるドッグに沈む、散々に破壊されて生存者も確認できないロシア製原潜。
そんな残骸をファイルスは指さし、イチカと共に見つめながら通信を切り、自分とイチカだけにしか聞こえない状態にして呟いた。
「イチカ、この光景をよく覚えておけ。 誰かを助けるために、誰かを手にかける……それが、軍人だ。 よく知っているだろうが、特殊機動重装甲は強力な兵器だ。 ……力に溺れたり、この力を悪用するんじゃないぞ」
最後の言葉は、いなくなってしまった
イチカは原潜の残骸と、そこから溢れだす人だったモノを見つめ――しっかりと頷いた。
「……ああ」
*
時は少し遡り、イチカが地下最下層ブロックに突入した頃。
ストライクイーグルの半数が地下へと突入し、新人を含めたストライクイーグル部隊が空から敵を逃がさないように監視を続けている。
そんな時、小さなエンドレスエイトを描きながら――ISの一番の武器は機動性なので、単にPICで停止して滞空していると的になる――イーグルアイズの大出力小型レーダーへ警告音と共に新しい反応を捉えた。
「……っ、イーグルアイズよりイーグル及びハーゼ。 レーダーコンタクト、地下からボギー、3。 接近中……!」
『こちらオラジワンⅢ司令部。 情報を受信している。 紅茶反応あり、イギリスEOAだろう』
「今になって追加のお客さんか!?」
瓦礫が吹き飛び、それが姿を現す。
薄灰色の戦闘機のようなそれは、最初から人を乗せないことを前提に造られた、紅茶だけで駆動するティー・リアクター搭載人型兵器。 女性の機械音声が淡々と流れるのを、ハイパーセンサーが拾い上げる。
「機種……
『ターゲットヲ確認。 オペレーションヲ開始シマス』
イギリスの大統領機であるEOAが“アーサー”なのに何故湖の乙女やアーサー王関連の名前ではないかといえば、単にそれらが空戦機としての名に相応しくなかったというものと、そもそもシルフが大統領戦争が終結し、IS配備開始後に対IS兵器として造られたのでアーサーとは全くの無関係である、という2つの理由がある。
そしてそんな代物をイギリスが、イギリス女王が許すはずもなく。 イギリス正規軍と共にその開発チームも亡国機業へと流れていったのだ。
シルフが背中のジェット・ティー・パックと全身のティー・スラスターで高出力レーザーを放つ。
シルフの特徴は非常にわかりやすい。 自分と味方以外の反応には唯一の武装であるレーザー攻撃を行い、強力な反応がある方向へと突っ込んで更にレーザーで砲撃する。 たったそれだけの機体だ。
だが、それが戦闘機に近い速度で動きながら強力なレーザー攻撃を行う存在なので、厄介ではある。 そしてシルフの高出力レーザー4門はクアッド・ファランクスの25mmガトリング砲4門よりもよほど強力だ。
全身のハードポイントに電子戦装備を積み込み、頭部ENガトリングポッドすら高出力センサーへと交換したイーグルアイズには、レッドパレット程度の武装しかない。 戦うのは護衛のイーリスの役目だ。
レーザーを回避しながら、イーグルアイズの操縦者はあくまでも冷静に敵機の素性を叫ぶ。 シルフが向かう先にいるのはオラジワンⅢ、つまり彼女の母艦だ。
「こ、この……っ! きゃぁっ!?」
「イーグル23!? イーグル22、24! 23をカバーしろ!」
シルフとオラジワンⅢの間をたまたま飛行していた、新人が操るストライクイーグルが3機から6つのレーザーによる集中砲火を受ける。 シールドエネルギーを突破して装甲とウイングスラスターに直撃。 気を失ったりはしていないが、その高度を落としていく。
出鱈目な運動性でイーグルアイズの銃撃をかわしながら両腕の高出力レーザーでしばらく反撃し、思い出したかのようにオラジワンⅢへと接近するコースを取るシルフ。
対してイーリスの攻撃は的確で、1機の右膝にあるレーザー発射口を直撃し、右足を吹き飛ばして紅茶をまき散らさせた。
とりあえずオラジワンⅢの反応を
シルフにももちろん強力な対電磁防御が施されている。 ただ、それを上回るものを叩きつけたのだ。
『司令部よりイーグルアイズ。 そのまま接敵し続けることは可能か? 敵の制御を乗っ取れるかもしれない』
「……了解。 問題ない」
イーグルアイズによって欺瞞された位置情報をレーダーに受け取り、それを基に何もいない地点へと一斉に攻撃を開始する3機のシルフ。
これを見ると、やはり無人機は電子戦には弱いのだな、と痛感させられる。
「……なんだこりゃ。 やっぱ無人機はダメだな……FQ-35Cが退役したのもわかるぜ」
「相性がよかっただけです」
獣が自分の尻尾を追いかけてぐるぐる回るように、度重なる電子攻撃で混乱したシルフがその場でぐるぐると回転を始め、それをイーリスが呆れ顔で眺めている。
やがてイーグルアイズに掌握されたシルフは、その高出力レーザーを自分たちが発進してきた基地へと叩きつけた。
『こちら司令部。 レイヴンリーダーによって亡国機業の原潜が撃沈されたとのこと、各員――』
「ん、どうした司令部――!?」
不意の変化は唐突だった。 オラジワンⅢからの通信が突然切れた直後、それは起こった。
まず最初に、作戦中のIS全機へ一斉に、ISのステータスパネルへ警告文が表示された。
『警告! 電脳ダイブによりコア・ネットワークから攻撃を受けています!』
だがその警告文もすぐに表示が消え、武装がロックされ、ハイパーセンサーがシャットダウンされ、PICが消え失せる。
そして搭乗者へ激しい頭痛が襲いかかった。
「イーグルリーダー、これは……っ!?」
「ちくしょう、なんなんだよ……っ!?」
イーグルアイズの操縦者がイーリスに声をかけるが、それも届かない。 コア・ネットワークが遮断され、通信機能がなくなったISから発する肉声は、冷たい風の音にかき消される。
「まずい! このままだと落ちるぞ…っ!」
続いてISが軒並み墜落しながらも再起動したコア・ネットワークすら、表示がおかしい。
味方ISのIFF表示が点滅し、味方機と敵機の表示で揺れている。 そしてイーグルアイズの操縦者は頭痛に耐えながら、イーリス機のレッドパレットの銃口がこちらを向いたのを見た。 シルフは無反応でその場に滞空している。
PICが再起動するが、まるで制御を切られたかのように動けない。
「おい……勝手に動くぞ……!?」
「イーグルリーダー、正気か!?」
イーリスも強い意志で抵抗するが、勝手にISがトリガーを引こうとする。
そして、イーグルアイズも。 電子戦装備が勝手に立ち上がり、敵機と判定されかけているイーリス機の回路を電磁波攻撃で焼き切ろうとしている。
互いの声は風の音で届かない。
それをどうにかすべきオラジワンⅢも、今はコンソール室の面々がハッキングに対抗しつつも兵装が勝手に立ち上がり、友軍をロックオンしつつあった。
「やめ――」
そして、銃口が火を噴く直前。 始まりと同様に唐突に頭痛が消え、ISも制御を回復した。
『こちらレイヴンリーダー! 再起動した原潜を撃沈した!』
その通信と共に。
・UFO
宇宙人が乗っている未確認飛行物体、アダムスキー型UFO。
破壊することで中に乗っていた宇宙人が無傷で飛び出してくる。
プロペラも翼も持たず、エンジンガスも噴出せずにフワフワと飛行するその物体は、現代の科学技術では造ることのできない代物である。
近年ISとの類似性が指摘されているが、UFO迎撃は大統領の公務であり、中から飛び出してくる非友好的でコミュニケーション不能なグレイ型宇宙人共々毎回木端微塵に破壊されてしまうので詳細不明。
(半分ほど原作エネミーリストから引用)
・ティー・リアクター
石油資源枯渇後、紅茶を新たなるエネルギー源としてイギリス軍が総力を結集して開発した新世代動力源。
車や機動兵器から都市の発電まで可能なハイパワーかつ極めてエコな新世代エネルギー。
英国産人型機動兵器(EOA)に標準搭載され、機体内部を循環させて機体稼働のエネルギー源を全て紅茶(ストレート限定)で賄っている。
英軍が最も重要視した項目として機体を操縦しながらそのまま紅茶を飲むことができるが、飲み過ぎてエネルギー切れになる機体が続出した。
英国王室御用達紅茶を使用すると最高のパフォーマンスを発揮する。
このリアクターの完成後、イギリスにおいて全ての紅茶の価格が急騰し、緑茶を紅茶に偽装する、王室御用達紅茶が王室に供給されなくなるなどの問題で王室が激怒し、イギリス国内は内戦に突入しかけたが、国連による大統領戦争の仲介を受けて最悪の事態は回避された。
ただし、この件で軍を抑えて王室御用達紅茶の最優先権を握った王室の力が増したのは間違いなく、数年後の女尊男卑革命で王室が台頭した理由ともされる。
紅茶の方は次回更新時に活動報告に移動させます。