バーガーバーガーを見て思いついた一発ネタです。

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死の支配者~オーバーバーガー~

「はあぁー、相変わらず副料理長の作るハンバーガーは美味しいね!」

 

 ハンバーガーを右手に持ちながら、左手でフライドポテトを摘み口へと運んだ。油でベタついた喉を潤すべくコーラを勢い良く飲み干した。

 

「いやー、アウラ様の食べっぷりは何時見ても幸せそうな笑顔で……作った甲斐がありますよ」

 

 キュッキュッとグラスを拭きながら副料理長であるマイコニドは(ほう)けた笑顔で――茸顔が笑えるかは疑問だが――答えた。

 

「ふぅー、食った食った!」

 

 ポンポンとお腹を擦りながら、思わずゲップが漏れてしまった。

 

「今のあたしってオジサンみたい」

 

 そう言いつつも、お代わりしたコーラを再び口にしている。

 

「アウラ様は、他の種類を召し上がったりはしないのですね。フィッシュバーガーなど、さっぱりとして女性に人気だと伺いましたよ」

 

 アウラしかハンバーガーを食べていないのに一体何処の女性陣に人気なのかは分からないが、彼女が同じハンバーガーしか食べていないのは事実だ。

 副料理長(マイコニド)としては多種多様な料理を作ってみたい。様々な構想が浮かんでくるものの、肝心のアウラが同じハンバーガーしか食べないのでは意味がない。

 ナザリックの大切な食材を、自己満足の試作品に費やすなど不敬が過ぎる。提供する相手が居ないのでは作る意味が無いのだ。

 

「うーん、あたしとしてはガツンとお腹に来るものが欲しいんだよね」

 

 飲食を不要とするアイテムを保有するアウラは、本来であれば食べる必要など無い。だが至高の御方(アインズ様)が用意した時間をただぼーっと過ごすのも勿体ない。

 どうせなら普段やらないことを、と思い付いたのが食事だった。マイコニドが用意したハンバーガーは美味しく、手軽に食べられる。

 今は第九階層に設置されたバーで食べているが、第六階層が森林で食べるのも乙な物だ。

 

 食事も終わり、そろそろ戻ろうかと考えていると扉が開かれた。

 ドアベルの音にふと視線を移すと、バーテンダーで最も似つかわしい人物。しかし、このナザリック地下大墳墓において彼無くして成り立たない重要な人物でもある。

 

「アあ呼、アインズ様!?」

 

「ん? おお、アウラか。食事中であったか。よい、そのままの姿勢で構わないぞ」

 

 慌てて跪こうとするアウラを手で制し、アウラの隣の席に座った。

 

「アウラは……どんな物を食べていたのだ?」

 

「ハンバーガーです! アインズ様!」

 

「ハン……バーガー?」

 

 アインズが人間だった頃は人工食が主食であり、自然食品なんて大枚を叩かないとお目に掛かることすら叶わなかった。

 この世界に来てから様々な食べ物を見てきたが、アンデッドの肉体であるアインズは食べることが出来ない。美味しそうな香りの漂う食べ物を見たところで、飲み込む胃がなくては意味がない。

 悲しくなるだけなので、意識してこの世界の食べ物と接してきたことはなかった。

 

「アインズ様、不躾ながら写真でよろしいでしょうか?」

 

 グラスを拭く手を止めたマイコニドが答えた。

 

「今から作っても、残念ながら私では食べられないからな。食材を無駄にしないことは良いことだ」

 

「こちらです、アインズ様」

 

 マイコニドが用意したメニュー表には様々な食べ物が掲載されており、指差す先に日本語で“ハンバーガー”と書かれていた。

 

「ふむ……これがハンバーガーか。確かに食欲をそそられるのも無理はないな」

 

「ありがとうございます。今、様々なアレンジを考えているのですが、マーレ様がガツンとした物が良いと仰って、今一アレンジの幅が拡がらず困っているのです」

 

「フィッシュバーガーやチキンバーガーって、なんか食べ気にならないんだもの。やっぱりカロリーを気にせずドカンと食べた方が美味しいよね」

 

 森の中で日夜動き回っているアウラならではの要望だ。飲食を不要にする指輪があるとは言え、余分なカロリーはどの道消化される。

 ならばカロリー爆弾を腹の中に投下したいのも頷けよう。

 

「うむ……確か、そんなハンバーガーをかつての仲間が話していたような」

 

 アインズは思考の海へと身を投下させた。

 

 

 

 

 

 

「この人数じゃ、冒険に出るには心許ないですね。人が集まるまで待ちましょうか」

 

「そう言えばハンバーガーショップを経営するゲームやりました?」

 

「ああ、ユグドラシルで遊べるようにコンパイルしたやつだろ? まさか仮想ダイブしてコントローラー握るとは思いもしなかったよ」

 

「普段は股間のコントローラー握ってるもんな」

 

「黙れ弟」

 

「姉ちゃん!? 仕事のはずじゃ」

 

「トリックだよ。じゃなかった、ゲームのシナリオが追加されるとかで、今日は影響のない他の声優が収録するから休みになったんだよ」

 

「そ、そうなんだ……」

 

「今、ハンバーガーを作るゲームについて話していたんですよ」

 

「うーん、フィッシュバーガーを作りたいのに、肝心の魚もタルタルソースもイベント入手とか……」

 

「それよりエジプトのピラミッドを破壊して食材(トリュフ)を強奪するとか意味わかんねえよ」

 

「殆どの食材がイベント入手なのが厳しいですよね」

 

「理論上はイージーとノーマルだけ全食材を手に入るんだっけ?」

 

「セーブ&リセットな必須な時点で実用的じゃないよなあ」

 

「それより三ツ星から生まれた宇宙人、あれなんだっけ」

 

「最強マネージャーだっけ? キャビアの」

 

「そうそれ、名前が出てこないけどキャビアだけを挟んだチートバーガーが最強なんだよな」

 

「色んな食材が挟めるのに、全部キャビアにした増し増しバーガー1万円が馬鹿売れとかこれもう分かんねえな」

 

 

 

 

 

 

(今のアインズ・ウール・ゴウンが結成する以前の出来事だったから、誰が喋ってたか朧気だなあ……でも、確か…………)

 

「マイコニド、ちょっと良いか」

 

「はい、なんでしょうか」

 

 近づいたマイコニドに寄り、アインズは耳打ちをするように小声で色々と伝えている。

 聞き耳を立てるのも失礼かと思い、アウラは話の内容を聞かないようにしていた。

 

「あの……これで美味しくなるのですか?」

 

 恐る恐る尋ねたマイコニドに対して、アインズは頬らかに答えた。

 

「ああ、嘗ての仲間たちが話していた大絶賛ハンバーガーだ。問題ない」

 

「!?」

 

 高揚感を隠せず、そわそわとアインズへと視線を行ったり来たり往復させるアウラ。

 

「今すぐ食べたいですアインズ様! 副料理長、早く作って!」

 

「ははっ。はやる気持ちも分かるが、アウラは食べたばかりではないか。待ち遠しいだろうが、明日に楽しみを取っておくのも悪くはないぞ」

 

「そ、そうですよね! ごめんなさいアインズ様。あたしお外走ってきます!!」

 

 食い意地を張っていると思われたのか、脱兎の如く走り去ってしまった。明日に向けてお腹を空かせているのかも知れない。

 

「それでアインズ様、食材なのですが――」

 

 

 

 

 

 

『ふえぇ〜 お昼の時間ですぅ〜 腹ペコりーたっ!』

 

 腕時計から発せられた声に思わずにやけ顔になりながら、設定していたタイマーを停止した。

 

「はい! ぶくぶく茶釜様!」

 

 第六階層に連れてきた外部からの存在。基本的に自給自足が可能な者を連れてきているが、中には飲食が必要な者も居る。

 飲むだけなら湖があるが、生殺与奪を与えられていない彼らが狩りを行うことは禁じられている。そう言った者達に食事を用意するのも、階層守護者がアウラの役目だ。

 

「それにしても変わった魚だなあ」

 

 台車に乗っている魚は1mを優に越え、長細い変わった形状をしている。普段の丸々と肥った魚と種類は違うが、これも金貨1枚で大釜から召喚可能な食材だ。

 

「はぁー、ロロロかハムスケ……欲しいなあ」

 

 ロロロはコキュートスが、ハムスケはアインズが管理しているため、大森林で飼うことは叶わなかった。

 百を超える魔獣の中には存在しない種族なだけに、弱いながらも収集欲を刺激されたのだ。

 

「よし! お昼の餌やりおわりー!」

 

 何時もより駆け足で、それでいてきちんと全員に魚を渡し終えたアウラは駆られる気持ちを抑えきれず、全速力で――は流石にはしたないので、競歩に近い速度で転移用のゲートへと向かった。

 

「はみゃ!? アインズ様!!?」

 

「おお、アウラか。良いタイミングだな、探す手間が省けたぞ」

 

 アインズの側に控えているメイドから、鼻孔を刺激する芳醇な香りが漂っている。

 気になって視線を向けると、両手でお盆を持っていた。何時ものハンバーガーより平たく、色鮮やか……とは言い難いものの、非常に食欲をそそられる何かがその皿に詰まっていた。

 

「ふむ……向こうに丸太椅子が並んでいるし、そこで食べるとしようか」

 

「はい! アインズ様!」

 

 木を囲むように開けた場所が確保され、巨木から木漏れ日が射し込んでいる。

 丸太椅子の中央には、同じく木のテーブルが置かれている。

 

 アインズが腰掛けたのを確認し、隣にアウラが腰を下ろした。

 

「アウラ様。こちら、特製ハンバーガーになります」

 

 コーラ、ポテト、そして……通常より平ぺったく、パンズの中には宝石のように輝く何かが溢れんばかりに詰まっている。

 アウラ自身、これを見るのは生まれて初めてだ。ダグザの大釜から、金貨1枚と引き換えに召喚された魚。その魚が蓄えし至宝。

 

 未知への好奇心に思わず舌舐めずりしそうになったのを既の(  すんで  )所で制止し、口の中をコーラで潤した。

 空いた右手でハンバーガーを掴み、早速口元へと動かした。海の幸特有の磯の香りが漂い、それでいて嫌な生臭さが抜かれキラキラと光り輝いている。

 

「はむっ!」

 

 口の中で黒真珠のような粒がぷちぷちと弾け、滑らかな舌触りと旨味の核爆弾が口いっぱいに広がっていく。

 ゆっくりと噛み締めるように咀嚼し、最後は流れ落ちるように嚥下(えんげ)した。

 

「もの凄く美味しい! なにこれ!?」

 

「キャビアだ!」

 

 アインズは破顔した。

 

「このスライスしたトマトの代わりに入ってるのは?」

 

チョールナヤ・イクラー(ロシア語でキャビア)だ!」

 

 アインズは破顔した。

 

「この瑞々しいレタスの代わりに入ってるのは?」

 

鱣子(キャビア)だ!」

 

 アインズは破顔した。

 

「この肉汁を閉じ込めたパティの代わりに入ってるのは?」

 

「 キ ャ ビ ア だ ! ! ! 」

 

 アインズは破顔した。

 

(う……)

 

 アウラはわなわなと震え、全力で想いを放出した。

 

「うーーまーーいーーぞーーぉーー!!!!!」

 

 

 こうしてナザリック地下大墳墓は誕生した。


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