桜セイバーさんと桜木君の騒がしい聖杯戦争   作:大小判

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別に、本編に至るまでが面倒だったってわけじゃないんだからね!? さっさと本編に合流させたくてダイジェストっぽくしたわけじゃないんだから!!


桜色のショートショートストーリー 其の壱

 

 

 

 

 

 ~約束されたデス☆クッキング~

 

 

「お腹が空きました」

 

 轟々と吹き荒れる風と雨。駒王町を襲う大型台風は住民たちの外出を心理的に阻んでいた。竹林の奥にある桜木邸もそれは同じで、剣の英霊のセイバーこと、沖田総司も昼食時にはこう呟かざるを得ない。そんな彼女の願いを聞き、家主である桜木雄也は棚の奥からカップ焼きそばを取り出す。

 

「備蓄用のカップ麺ならあるけど」

「それはもう飽きましたー!」

 

 外食、コンビニ飯、カップ麺。大体このローテーションで回る桜木家の食事事情に総司は居候といえども不満の声をあげた。召喚されてはや4ヵ月、日々の食事に変化が無くては辟易するのも無理はないだろう。

 

「というか、どうしてこの家には調理器具がまともにないんですかー! うわーん!」

「いや、俺も爺さんも料理なんて作らないし」

 

 この家の元の家主である桜木六郎太(故人)が居たころからこんな食生活を送っていた雄也には、当然のように料理経験がない。必然的に、フライパンや炊飯器といった調理器具は存在せず、使用されることのないクッキングヒーターとアイスやら飲み物を入れておく冷蔵庫、インスタント食品を温める電子レンジとウォーターサーバーがあるだけだ。

 

「んー、俺の食生活にこんな落とし穴があろうとは」

 

 家にあるのはすっかり食べ飽きてしまったカップ麺。外食しようにも、この台風ではそれも躊躇われる。

 

「やっぱりですね、自炊は大事だと思いますよ。なんでしたら私が作りますし」

「え!? 沖田さん料理なんてできるの!?」

「ふっふっふ。この沖田さんの女子力を見縊らないでください。新撰組では私が料理当番の日が多かったくらいなんですから」

 

 ドヤッ! とでも聞こえてきそうなほど自信満々な総司。今までの残念美少女の評価が覆りそうな頼もしさだ。

 

「それじゃあ、また台風が止んだらお買い物に行きましょう」

「んー、まぁ何事も経験かな」

 

 

 

   ---------------

 

 

 

 後日。台風も通り過ぎ、快晴の中で食材や調理器具の買い物を終えた雄也と総司。時刻はちょうど昼頃、このまま調理に移ろうとした矢先に

――――

 

「うぅ……すみません。私が作るって言ったのに……こふっ」

「まぁ、こればっかりは仕方ないって。大人しく休んどきな」

 

 Aという高いランクで身に着けている、突発的に行動不能になる超デメリットスキル『病弱』が発動し、あえなくノックダウンすることとなった総司。血を吐いた彼女を布団で寝かせ、雄也は購入した食材や調理器具の前に立つ。

 

「んー、どうすっかな」

 

 料理は総司が作るといったが、肝心の彼女が寝込んでしまってはどうしようもない。かといって、目の前に食材があるのにこのまま外食というのも気が進まない。

 

「よし。ここは俺がやってみっか」

 

 スマートフォンを片手に意気揚々と調理に取り掛かる。料理はレシピ通り作れば何の問題もない。レシピもネットにはいくらでも公開しているので、何の問題もないだろうと極めて楽観的な雄也。

 炊飯器の準備をして、米を研いで炊飯を開始する。画面に表示された39分という文字を見て、雄也はポツリと呟いた。

 

「しかしあれだな。このままレシピ通りというのも味気ないな」

 

 調理開始からおよそ10分、不穏な発言が料理未経験者の口から飛び出す。素人の不要なアレンジが招く結果を全く考慮せずに、片っ端から病人に良さそうな食材をネットでピックアップしていく。

 

「沖田さんも腹減ってるだろうし、作るとしたら雑炊とかお粥かね」

 

 そして悪魔の矛先が病床のサーヴァントに向けられた。雄也は当然のごとく認知していないが、別室で眠る総司は意識がないにも関わらず、まるで悪夢にうなされるかのように顔を歪めていた。

 そうしている内に米の炊き出しが終わり、今地獄の蓋の窯が桜木邸の台所で開いた。

 

「えーと、疲れをとるには蜂蜜レモンっと」

 

 梅干しなどと良心的なものではない。開幕早々お粥や雑炊には決して必要のない甘くて酸っぱい蜂蜜レモンが幼気な白米に投入される。それを皮切りにどんどん料理に入らない食材を足していき、料理は米を煮込む段階に踏み込んだ。

 

「ここで塩を……このくらいでいっか。……って、やばい! これ砂糖だ! まぁ、塩で中和出来るだろ」

 

 目分量で間違えて入れた佐藤の、これまた目分量で2倍の塩を投入する。この時点で小鍋に入ったお粥(?)は異臭を放ち、白から極彩色に変化しているのだが、雄也がその異変に気付く様子もなく更に調理を進めていく。

 

「食感に遊びが無いのもつまらないな。どうするべきか」

 

 もはや病人食の『吞み込みやすい』という前提すら崩壊しつつあるお粥(?)を前に、雄也は更なる食材の無駄使いをしていった。ここに主夫力をもつ弓兵が居たら卒倒する光景は、その後2時間続くこととなる。

 

 

 

   --------------

 

 

 

「え? 雄也さんが私に料理を作ってくれたんですか?」

「あぁ。ちょっとレシピを見ながらな」

 

 調理を終えたのと同じころ、眠りから覚めた総司に背を向け、出来上がった料理を小鍋から器によそう雄也。布団の中で上体を起こしただけの彼女の為に、それをお盆の上に飲み物と一緒に乗せて持っていく。

 

「まぁ、一緒に住んでるんだし? 助け合いっての? うん、そういうのが必要でしょ」

「ゆ、雄也さん……!」

 

 沖田総司は感動していた。召喚された当初は、こんな病弱でステータスの低いサーヴァントなどどんな不遇な扱いを受けるかと覚悟もしていたが、サーヴァントとしての役割を果たしていない自分をこんなにも労わってくれる。瞳に溜まった涙を拭い、極力明るい声で尋ねる。

 

「それで、どんな料理を作ってくれたんですか?」

「あぁ、今回は炊飯器初使用ってことでお粥をな」

 

 そういって差し出されたのは、器の中で鎮座した一本のエビフライ(?)だった。

 

「えっと…………おか、ゆ?」

「お粥」

 

 疑問に満ちた顔で尋ねる総司に、自信満々で答える雄也。改めて器の中を見てみても、そこには赤い尾を持つ見事なキツネ色にカラッと揚がった一本のエビフライ(?)しか見えない。これをなぜお粥と言い張れるのか。

 壮絶に嫌な予感がするが、せっかく善意で作ってくれたものを無碍にするのは気が引ける。総司は意を決して、箸で摘まんだエビフライを一口かじった。

 

「はうあぁぁっ!!?」

 

 香ばしい衣を突き破った瞬間、何かドロドロしたものが中から垂れ出し、口内で爆発的に広がる味の暴力。甘み、苦み、辛み、酸っぱさ、しょっぱさがまったく調和されずに混沌とした不協和音を奏でている。

 湯気が出るほど温かいはずなのに、何故か全身の体温が奪われていき、ゾッとする寒気が総司を襲う。海老の要素は全く存在せず、食感は衣のザクザク感とお粥と思われる中身のグチャグチャ感だけだ。

 冷や汗をダラダラ掻きながらもせめて呑み込もうとするが、不味すぎて喉が受け入れを拒否している。この味はきっと覚者だろうが魔術王だろうが一撃で昏倒させることができる神秘が宿っているに違いない。

 

 この料理に名前を付けるなら、控えめに言って『お粥風殺人エビフライ』といったところだろうか。

 いつまでも呑み込めないまま舌を蹂躙する殺人エビフライ(お粥)にとうとう視界が歪み、気が付けば総司は綺麗な花畑と目の前を横断する大きな川の前にいた。川の向こうには、生前に敬愛した上司と幕末を共に駆け抜けた仲間たちが揃って手を振っている。

 

『近藤さーん! 土方さーん! 皆さーん! 今行きますよー!』

 

 陽気に笑いながら河川敷にいる黒いローブを着た骸骨マスクの人に小舟を出してもらい、河を半ばまで渡った時、総司の意識がプッツリと途絶えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~大掃除の刀狩り(ブレイド・テイカー)

 

 

 

 

 12月の末頃、桜木邸では大掃除が行われていた。身を切るような冷水に雑巾を浸けては絞り、雄也は蜘蛛の巣混じりの埃で汚れた窓ガラスを拭いていく。

 

「ひぃぃ~、冷たい! 本当に此処(・・)の掃除いるかぁ?」

 

 桜木邸には生活空間のほかに、庭の隅にある小さな窓付きの倉庫が存在する。基本的には物置になっているのだが、実態は処分に困る家具やら何やらの掃きだめ状態だ。

 「偶にはちゃんと整理した方がいいですよ」という総司の言葉があって言うとおりにしているのだが、何年も掃除してこなかったため、少し物を動かすだけで埃が舞い飛ぶこの空間で病弱な総司を入れることもできるわけがなく、結局雄也が単独で掃除をすることに。代わりに総司は生活空間全体の掃除をしているが。

 

 とりあえず入り口に近い順から中に置いてある粗大ゴミなどを手古摺りながら外に出していき、倉庫内を箒で履き、雑巾で窓ガラスを拭く。冬の冷気と水に耐えながら掃除を終えると、中にあった品を捨てるか捨てないかで選別していく。

 

「えーと、灯油ストーブ。これはもうエアコンあるから要らんだろ」

 

 そういって右に寄せる。

 

「扇風機。んー、場合によっちゃいるかな? とりあえず洗って動くの確認してからだな」

 

 そういって左に寄せる。

 

「あっ! うわっ! エロ本だ! でもセンスが古すぎるぜ! 1970年って、俺が生まれるより前のだぞ」

 

 エロ本を右に置く。

 

「おー、懐かしい! 流し素麵セットだ! これも一応置いとこーっと」

 

 3年ほど前に六郎太と共に作った流し素麺用の半割竹を左へ置く。

 

「古いエロ本」

 

 右へ置く。

 

「古いエロ本」

 

 右へ置く

 

「古いエロ本」

 

 右へ置く。

 

「古いエロ本」

 

 右へ置く

 

「バイブ」

 

 ピンクの陰嚢を模したオトナな玩具をそっと左へ置く。

 

「古いエロ本」

 

 右へ置く。

 

「SM参考書」

 

 そっと左へ置く。

 

「エロ本、エロ本、エロ本、エロ本、エロ本、エロ本、エロ本、エロ本、エロ本……エロ本ばっかりだぁー!!」

 

 怒涛のエロ本ラッシュに絶叫する。特に知りたくもなかった亡き養父の性癖を図らずも知ってしまい、ちょっと複雑な気分になった。

 

「ったく、あの爺さんは………ん? 何これ?」

 

 エロ本を纏めて縛る雄也の眼に、白い樫木の棒が映る。手に取って軽く振り回してみると、シュラッという音と共に、端の方から何かが抜けた。

 

「うわっ!!? 何これ!? 刀!?」

 

 金属音を立てて地面に転がるソレを恐る恐る手に取り眺める。雄也がイメージにしかない片刃ではなく、峰両刃造……分かりやすいイメージで言うならサーベルに近い流麗な刃。一切の錆や汚れのない鏡のような直刃は芸術的でありながらも、怪しい光を放っている。

 

「そういや、沖田さんが刀をギャンブルで摺ったって言ってたな」

 

 英霊の座で賭け大富豪に大負けして愛刀二本を持っていかれた総司。代わりの刀を見繕おうにも、この法治国家において刀の購入には資格が必要だ。どうしたものかと悩んでいたが、これはまさに棚から牡丹餅という奴だろう。

 

「それにしても意外だな。こういう骨董品には興味ないかと思ってたけどまぁ良いや! おーい、沖田さーん!」

 

 意気揚々と刀をサーヴァントの元へもっていく雄也。

 しかしこの時、2人は知る由もなかった。エロ本だらけの倉庫から出てきたこの刀こそ、桓武天皇の時代に大神宮より遣わされた大鴉によりもたらされた現存する宝具、その銘を『小烏丸天国』だということを。

 

 

 

 

 




オリジナル宝具紹介

『小烏丸天国』
 大神宮の大鴉にもたらされた平家伝来の宝具。壇ノ浦の戦いの後行方不明だったが、この世界ではアザゼルがそれを見つけ、後に桜木六郎太に譲渡され倉庫に入れっぱなしになっていた。
 ちなみに鞘と柄は時代とともに劣化し、刀身だけが綺麗な状態で残る。白い樫木の鞘と柄は魔術的措置が施されており頑丈。作ったのはアザゼルだったりする。光と闇が混じって最強に見える中二ブレードのモデルだったりするのは秘密。
 本来は平家所縁の宝具であるため、平家の英霊以外は真名解放できず、それ以外の者が持っても極めて頑丈で切れ味のいい刀でしかない。真の力を発揮する機会はこの作品では無い。きっと。

次回から本編開始です。
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