Fate×Gate = Gate Order =   作:No.20_Blaz

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ちょっと早めだったりと原作無視が見え隠れしてますが、そこはご愛敬で…(汗

さてさて。遅ればせながらチャプター2の三話目です。
少し話が長くなる…とは思いますが、一応予定は変更せずです。
そんな今回は夜の出来事からまたぶたれる直前まで。
長めの話になりそうですが、そこは辛抱を…(汗


話は変わって、FGO、夏イベが終わりましたね。皆さん、成果はどうでしたか?
自分はそれなりの成果を出せました。
…最後の交換礼装、ラスト一枚とり逃しましたけど…
そして、お次はプリヤとのコラボ。クロがもらえるらしいですけど…
ステータス。見たよエミヤ。泣くなよ。体力はお前が勝ってるんだから。
ってなわけでこれからも頑張りましょう!


では、今回もお楽しみ下さいッ!!


チャプター2-3 「二つの世界 = 真夜中の反省会 =」

 

 

事の経緯だけで言えば実に呆気ない話

そんな話は何処でも聞いたことがあるだろう

そう。ただ小さなイザコザがちょっとした話になり、やがてそれが話題になる。

物語を書く作者はそうした小さな話でさえも大きくしなければならないのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

イタリカに蒼夜たちを残し、伊丹たちは先にアルヌスに帰還することとなった。

明日には日本で特地から何人か人を呼んでの審問会を開くためで、その対象として彼が連れ帰った三人の少女が選ばれた。

魔導師とエルフと神官。それぞれ職業が違うということで都合もよく、更に種族も異なっているのでこれ以上にない対象人物たちと言える。

そこでその彼女たちを預かってる伊丹に矢が刺さり、彼女たちと共に特地での暮らしや文化、出会いの一つである炎龍との戦いについてなどを質問したいと言っていたらしいが

 

 

 

「―――建て前だよなぁ…それって」

 

「ええ。どっからどう見ても建て前ですね」

 

ゴトゴトと揺れる車内で、助手席にいる伊丹は運転をする倉田にぼやいていた。というのも、審問会で何をするかと彼が訊ねた時に上司である檜垣は特地の暮らしなどについて、と答えていた。それは相違はないのだろう。

だが問題はもう一つあり、それがむしろ彼ら政府にとって本命だと言える。

 

「多分、暮らし云々については本当だけど、実際向こうは炎龍襲撃時の結果を批判したいだけ。狙いは自衛隊の予算くすねとることか?」

 

「無くはない話ですけど、それじゃあ今の状況なら完全誤りッス」

 

「だよなぁ…けど、向こうは意地でも通すだろうに。自衛隊の費用を獲れる、オマケに弱みを握れる絶好の機会」

 

「二次被害は知らぬ存ぜぬ。向こうにとっては美味しい話でしょうね」

 

 

炎龍襲撃時、少なくとも伊丹たちが護衛していたコダ村の住人に被害が出たのは事実。最低百数十人は黒焦げにされてしまった。その他、馬車からの転落や引かれたり、更に押しつぶされたりと死因は複数ある。

いくら自衛隊の装備を持っていたとしても、正直ドラゴン相手に余裕勝利が出来るなどと伊丹も始めから思ってはいなかった。

 

「炎龍の襲撃。正直アレは予想外だ。それに向こうは滞空能力を持ってるし、ブレスでの遠距離も応戦が出来た。それを小銃と機関砲二門でどう相手に出来た?」

 

「榴弾でやっと腕一本でしたからね。でも政治家にはそんなの言い訳っつーか。完全に逃れるための方便って取られて笑われるのが見えます」

 

「……蒼夜たちが居たから、まぁ被害は抑えられた。彼らが居なかったら、もっと被害は出てただろうからな」

 

第三偵察隊はそもそも、現地民との交流関係を築くことから目的として編成されていた隊だ。それをイキナリ、ドラゴン相手に倒して来いというのも、色々と無理がある。ゲームのようにダメージを与えられでも、それで一発即死という都合のいい話がある理由がない。

 

 

 

 

最新の装備だから。最新の兵器だから。

 

だから勝てるだろ?

 

そんな理由で果たして通じるだろうか。

 

 

 

「それを知らずに、向こうは被害が出たってことだけを追求する…んで自衛隊への費用削減を言い渡し―――」

 

「その費用削減が原因だっていうのに金をかけてないからだって言い訳をする…やってられませんね。そうなったら」

 

「全くだよ……ふあぁっ…あー…ねむてー…」

 

完徹していたお陰で、睡魔が今になって伊丹に襲い掛かってくる。大きくした欠伸は体内から生命力のようなものを抜け出させ、思考能力は少しずつだが低下していってしまう。そんな中で伊丹は、帰ったらやるべきことが残っていると必死に頭を起こしながら、帰路につく車に揺られていた。

 

 

「隊長、無理しなくても少し寝ててください。ただでさえ疲れることが続くんですから。寝れる時に寝ておかないと」

 

「つってもね…ここに来て道中・行く先々でトラブルが続くから寝るに寝れないよ…」

 

「…否定要素が全くないッスね」

 

少し長い帰路だというのに睡眠すらも難しい。これでは次に睡眠を取れるのはいつごろかと、長くなることは確実な一日に憂鬱さを感じていた彼は、まるで死体のように僅かに頭を動かしながら目の前の景色を眺めていた。

寝る事も出来ず、かといって起きている気力もない。もはやどうすることのできない状態に、思考は停止していた。

 

 

 

 

 

 

 

が。この直後。伊丹の願いである睡眠は、嫌でも叶う事になったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――少年の話をしよう。

 

 

 

ある街に一人の少年が居た。その少年はある小さな、ほんの些細な事件に巻き込まれてしまった。

旅行の旅先で好奇心に任せて、まだ見ぬ土地を走り出していた。抜き目もくれず、ただ目の前にある新しい景色に刺激され、足は進み止まることはない。

唯々。走り続けて、疲れた時に少年はやっと気づいたのだ。

 

ここがどこなのか。自分が今どこにいるのは全く分からなくなってしまったのだ。

頼りになる人も居ない。いや、そもそも言葉が通じるかさえも怪しい。

誰も居ない。漠然と広がる大地に、少年は虚しさと悲しさで涙を浮かべる。

親が何処か。一体ここは何処なのか。

遂に泣き出しながら、少年はまた歩き出してしまった。

その場に居た方が捜してもらえるとは思わなかったのだろうか。いや。逆にその場に居ては探せてもらえない。だから彼はせめて誰かいるところをと足を踏み出したのだ。

 

 

 

 

 

すると。泣き疲れてただただ足を動かしていた時に、少年は一人の男と出会った。

 

 

 

 

 

 

―――どうした。そんなに泣き疲れた顔をして

 

 

 

言葉が通じる。男は何気ない問いかけを少年に向けて言った。

少年は目蓋からまだ出続ける涙を拭きながら答えた。

親を探している。何処にいるのか分からない、と。

すると男は呆れてこうぼやいた。

 

 

 

――――それって、迷子ってことだよな

 

 

 

否定はできなかった。自分から始めたことだという自負があった少年には下を俯いて黙秘することしかできなかった。

子どもながら責任感はあるんだと思ったのか、男は小さく微笑むと、膝を曲げて少年と同じ目線に立つ。

 

 

 

―――――よし。なら探そう。俺も手伝う

 

 

 

疑う余地のない顔だった。それがその時少年にとって、どれだけの救いになっただろう。

迷いのないその言葉に、少年の顔には明るい笑顔が戻った。

それを見て、男はよし。と言って彼の親を探す。

すると。少年は何気ない、他意のない意思でこう尋ねた。

 

 

 

――――お兄ちゃん、名前なんていうの?

 

 

 

――――俺…? ………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――俺は…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

すると。そこで少年の意識は突然途切れた。

まるでもう時間切れとばかりに暗くなった世界と共に彼の意識は闇の中へと落ちていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ふと。意識が戻ってくる。夢の中にでも居たのか、気だるい感覚と共に神経からの感覚が伝わり、眠っていた意識などが次々と目覚めていく。

幽体離脱していたのか、合わさるような感覚とともに目の前が暗くなる。そして、神経から伝わり脳が再び動き出す。

眠っていたことで離れていた五感が、次第に動きを起こす。

聴覚は空気に触れた音を聞き入れ。触覚は全身に柔らかい柔軟さを伝える。

味覚は特になく強いていうなら口内にある唾液のぬめりだろう。

嗅覚は体内に溜まっていた空気を吐き出させ、外部の新しい空気を取り込む。

そして。最後に視覚である重くなった目蓋をゆっくりと開き、蒼夜は目を覚ました。

 

 

 

 

「――――――ここは?」

 

 

 

 

目を開けると、そこは。といった典型的な結果。そして状況だった。

そう。所謂、見慣れない天井。それが蒼夜の目の前に広がっていた。

あまりに典型的なことだからか、どうにもそこから先の言葉が出るに出させなかった蒼夜は口をそのままにしてしばらく固まってしまう。

さて、二言目はどうしようか。

起きたばかりだからか、まだ呑気な考えの状態である彼に、聞きなれた声が耳に入った。

 

 

「フォルマル家の屋敷だ。今は下手に動かない方が身のためだぞ」

 

「えっ…」

 

だがそれでも、声に釣られて上半身を起こした蒼夜は、声の主のほうへと体を向けると、そこには壁際に置かれた椅子に座る孔明の姿があった。

聞きなれた声と仲間の姿に安堵した蒼夜は思わず声を出そうとするが、その直後に彼の体、特に頬部に強烈な痛みが走る。

 

「キャスッ……!!」

 

「無理をするな。今までのが、一気に来たんだからな」

 

「今まで……」

 

「隠しても無駄だ。第五特異点までの傷と疲労。本当は完全ではないのだろ?」

 

鋭い一刺しのような言葉が蒼夜に向かい穿たれる。迷いのない孔明の言葉は確実に蒼夜とその内心をつかんでおり、逃がす気のない彼の態度と雰囲気に体を起こした蒼夜は苦笑する。

 

「………バレた?」

 

「加えて鬼ヶ島での無理な登山と丑御前との戦闘。前線指揮とはいえ無理しすぎだ

 ……骨。何本イッた(・・・)?」

 

孔明の問いにしばらく考える蒼夜の表情はどういうかと説明と言い訳を必死に考えている様子そのものだ。

というのも、孔明の問いの答えは未だ彼らにも明かしていない極秘事項のようなもの。それを知っているのはマシュとエミヤ、リリィを加えたごく少数しか知らない案件だ。

しかし場の空気からどうにも隠せないと判断して観念した彼は、言いにくい様子で硬くなっていた口を緩めた。

 

 

「………三本」

 

「嘘つけ。医療スキルを持ってなくても分かるぞ」

 

「……………六本」

 

「おまっ―――」

 

危うく素が出るところだったが、孔明はその直前で冷静さを取り戻して息を整える。

だがそのあまりの結果には予想外だったようで、それを深いため息で代用して彼の容体に頭を抱える。

 

「……お前。よくそれで鬼ヶ島から帰れたな」

 

「ま。今に始まった話でもないからな」

 

「…いつからだ?」

 

「え…?」

 

「その骨。何時から折れていた?」

 

 

 

 

 

 

―――蒼夜曰く。第五特異点の西武時代のアメリカの時に既に大半の怪我を負っていたらしい。あの場では治癒魔術によって完治はしていたが、どうにも完全に骨が治ったかと言われれば、どうにも原因は別の骨にあったらしい。

加えて、大して筋力トレーニングというものを日常的に行っていない事からの身体的な負担。そしてその疲労からの筋肉、骨へのダメージ。

これも大半はロマンたちによって治療されて文字通り問題なし。だったのだが。

 

 

「治癒魔術って言っても結局は傷を治すだけだ。さすがに体への負担はね」

 

「……で。それを今まで隠していたか?」

 

「五番目の特異点の後、直ぐに鬼ヶ島だったからね。さすがに集中治療する暇もなかったし…アイリさんに頼んで誤魔化してもらってた」

 

アイリことアイリスフィールは、元は人…というよりホムンクルスだが、現在はカルデアでサーヴァントの一人として活動している。

孔明と同じくキャスターのクラスである彼女は医療魔術を習得しているので治療に関しては並の医療スタッフやその手の魔術持ちと同じかそれ以上。なのでその魔術を行使することはなんら変でもない。

 

「といっても完全に隠せるわけでもなし…ある意味痛み止めのようなもので自分を騙してた訳なんだけど」

 

「痛覚への幻覚と疲労の抑制…薬でなくても無理をすれば廃人だぞ」

 

「うん。けど…流石に、そんな理由で降りられる話でもないからさ」

 

 

さらりと重い発言をする蒼夜に、孔明もそれについては深く追及することはできない。確かに、人理を守るために彼は今まで様々な時代、特異点を渡り歩いてきた。それが連続に続く連続ではないのは確かだが、その辛さと厳しさ。そして激しさは新たな特異点へと向かうごとに増していく。

そんな中で彼も常に万全にと体調には気を使っていたようだが、彼の様子からそれもかなり瀬戸際になっているようだ。

 

「…で。この事についてドクターは」

 

「知ってるよ。あくまで奥の手。最悪の場合って時に許可してくれるからさ。で、時間がある時に集中治療ってやるんだけど…」

 

 

 

 

今回は流石にここまでの間にそこまでの余裕がなかったのだろう。だから蒼夜の体は精神的に溜まっていた疲労感が今になって襲い掛かって来た。それには孔明もため息をついて呆れる他なかった。

 

 

「ところで……なんで俺、屋敷で…寝てたんだ?」

 

「……覚えてないのか?」

 

「…うん。殴られたことと……あ。リリィ!」

 

「その様子だと…まぁ仕方ないか。取りあえず事の経緯と君が殴られた理由。それと現状について話しておく」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

結論から言うと、蒼夜たちはイタリカにとどまっていた。

明日には自衛隊基地のアルヌスへと帰還するのだが、その前にこのトラブルが発生してしまったのだ。

 

そして。そのトラブルで起こってしまったこと。それは

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何てことをしてくれたんだお前たちはぁぁぁぁ!!!!」

 

屋敷の応接間。そこでは一人玉座に座るピニャの怒号が響き渡り、彼女の行き場のない怒りは手に持っていたゴブレットを地面に叩きつけ、中にあった酒を盛大にぶちまけたほどだ。だが彼女の怒りなどの感情はその中にあった酒よりも多く、そして深い色濃いもの。

それには彼女の三人の騎士たちも思わず身を退いてしまった。

まさかあれだけでここまで怒りをあらわにするとは思いもしなかったのだ。

 

それもその筈。なにせ、結んだその日に協定違反を自分たちでするという最悪の事態かつ最速の違反をしてしまったのだ。

結んだ相手。自衛隊の第三偵察隊。伊丹をこれでもかというほどボコボコにして連れて来た瞬間。まさか半日でそれが終わってしまうとは思いもせず、ピニャは小一時間言葉を失ったほどだ。

 

 

 

 

 

「――――――――――――――!!!!!!!!」

 

 

 

 

 

これでもかというほど沸き上がる怒りと絶望感に当てることのできない彼女はその場で地団駄を踏んで暴れるという王女という立場が霞むようなことをして怒りを発散させていた。

というのもそれだけで済むようなことではないので、彼女もどうするべきかと容量が越えた怒りに暴れた。

もし彼女が怪力のスキルでも持っているのなら応接間一室が完全に崩壊する勢いの怒りに、彼女の騎士たちはとりあえず主に落ち着いてもらいたいと声をかけた。

 

 

「お、落ち着いてくださいで―――」

 

「これが落ち着いてなどいられるかぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああ!!!!」

 

もはや王女ということは関係ない。一人の人間として許容量を超えた怒りを発散させるためピニャは怒り、暴れ、そして叫んだ。

それが約五分ほど続くと、一先ずは落ち着いた彼女は盛大に椅子に座り込む。

 

 

 

 

アルヌスへの帰路についた伊丹たち。そこに偶然というべきか最悪のタイミングというべきか、彼女の私兵隊。ピニャ直属の部隊である薔薇騎士団が到着来たのだ。

しかも互いにすれ違うように同じ道に居たお陰で逃げることもできない彼らは、気まずい中で取りあえず事実だけを言った。が、それが不味かった。

事情や内情。そして実力を知ったピニャたちならいざ知らず、ただ帝国の敵であるという認識しかない彼女たちにとって、自衛隊は敵。倒すべき相手だ。

その彼らがイタリカから帰ること。イタリカに居たことなど疑問に思い、彼女たちは何処から来たのか。何処へ行くのかを訊ねる。当然、下手に誤魔化すことも出来ないので事実を述べたのだが、結果として彼女たちに敵としてみなされる。

そして仲裁に入った伊丹は殴られ貶され、最後には隊員たち全員を逃がしたが、自分一人はその場に残ったので、騎士団たち全員にこれでもかというほど殴り蹴られいじり回されたのだという。

 

 

伊丹は抵抗することも出来ず一方的に殴られ気絶。それで勝利に浮かれ、更には敵を捕まえたということでピニャが喜ぶと思った彼女たちは予定通りイタリカに入場。そこで後で説明することになるが、蒼夜たちも全員捕縛したのだ。

 

 

 

 

 

 

 

「は――――ははははははははははは………」

 

 

「で……殿下?」

 

 

「もう無理。もうオシマイだ。帝国はもうオシマイ。滅ぶわ」

 

支離滅裂な言葉を並べるが一貫しているのは帝国終了のお知らせぐらいか。

取りあえずピニャの底知れない絶望感に一体どうしてそうなるのかと疑問に思うが、理由を知らない騎士たちは必死に彼女のモチベーションを治そうする。

 

「お、落ち着いてください! こんなことで帝国が滅ぶ理由が―――」

 

「お前らは気楽でいいなぁ。そんなの滅ぶに決まってるだろ」

 

「えっ……ちょっ……殿下?」

 

「無理。絶対に無理。明日には帝国全土焼野原だわ。もう終わった。ラグナロクだ」

 

「最後あたり一体何言ってるのか分かりませんが……取り合えず落ち着いてください殿下ッ!!?」

 

 

 

しかし。結局彼女たち騎士ではどうにも立ち直らないということで、傍にいたハミルトンが一人頑張って気遣うことになり、その間にグレイが三人の騎士たちに事情などを説明することとなった。

 

「………。取りあえず説明する前に聞いておくが…殴ったのは誰だ」

 

若干あきれ顔のなかに疲労感を感じるため息を吐き出すグレイの言葉に、ピニャの騎士である三人は互いに目を合わせるが、一人だけその視線に痛々しさを感じるのか苦しい表情をする。

その様子に犯人を確信したグレイはため息をついた。

 

「…殴ったのはお前か。ヴィフィータ」

 

「あはははは…」

 

最早言い逃れはできない。紫髪の女騎士のヴィフィータは苦笑して場をごまかそうとするが、当然言い逃れも言い訳にもなるわけではないので、最後には折れた彼女が落胆して白状した。

 

「………ハイ」

 

「お前なぁ…」

 

「申し訳ない…」

 

「グレイ。彼女だけを責めないで下さい。私たちにも罪はあるのですから…」

 

流石に彼女だけに罪を着せることに罪悪感を感じていたのか、他二人の騎士も弁護を測る。金髪の縦ロールという、見るからに貴族系の見た目をするボーゼスと男性のような中性的な顔立ちの白髪のパナシュは、かばうように言うのだが、いざ話を聞くとかばうどころの話ではなかった。

 

 

「そもそも、殴ったというよりぶったのは私もなので…」

 

「伊丹殿を?」

 

「………ハイ」

 

と申し訳ない顔で言うボーゼス。そもそも食い掛かった彼女が伊丹の言葉を無視して殴るは抜刀するわとしたので、最後まで彼の話を聞かなかった彼女に非はある。

加えてパナシュも事情を聴かずに敵であると一方的に決めつけたので、武器を持ってない(厳密には握っていない)ことをいいことに降伏勧告をした。

結局のところ。彼女たち二人も十分協定違反どころか独断行動だったというわけでもあるのだ。

しかしだからといって三人同罪というわけでもない。

それがヴィフィータの話だ。

 

 

「………。で。お前はどうして殴ったんだ?」

 

「ええっと…実は……」

 

 

 

 

 

伊丹をボコボコにして捕獲後、イタリカに入った騎士団。そこで一人異様な服装をする者たち(蒼夜、マシュ、孔明)を見つけ、声を掛けたのだが、三人は会話中で特に蒼夜は気付いてなかったらしく、後ろから声をかけたヴィフィータを無視していた。

一応孔明が気付き、目を合わせたが「今話している最中だ」と目で語ってそのまま会話に戻ったので、しばらく待つことにした。だがどうにも終わりそうになく、しかも何を言っているか分からない。

遂には怒りの沸点を振り切ったということで

 

 

 

 

 

 

 

「……彼女が後ろから君に声をかけて」

 

「鉄拳一発と……」

 

「言っとくが、悪いのは君だぞ。マスター」

 

「………ゴメンナサイ」

 

この場合、殴ったヴィフィータも悪いが、その前に声を掛けたのに聞こえてなかった蒼夜も当然悪い。というよりも彼が気付いて振り向いていれば多少マシな結末になっていたはずだ。

 

「お陰で我々全員、屋敷に幽閉状態だからな」

 

「え……?」

 

 

 

 

 

 

 

「………。なるほどな…」

 

「本当にすみませんでしたぁ!?!!!」

 

もうどうすればいいか分からない彼女たちはとりあえず独断行動の謝罪として頭を下げるが、彼女たちの常識であればそれだけで済む話でもない。

だが相手は文化や価値観の違う者たち。それを踏まえてだと、また結果も多少違ってくる。

 

 

「―――――結んだその日に協定違反とは…」

 

「今回の場合は仕方がありませんな。何せ彼女たちはまだ協定について知らなかった」

 

「が。普通可笑しいと思うだろ。敵の軍勢の後ろで町が滅んでないのだ」

 

「それだけで状況全てを察しろというのも無茶な話です。殿下」

 

取りあえずは立ち直り、椅子に座ったピニャは頭を抱えて姿勢を曲げる。

グレイの言葉も分からなくもないと言うが、結果だけを見るとピニャたちが一方的に違反したことになる。特に騎士団は彼女の私兵部隊。であれば最終的な責任はその元締めである彼女だ。

 

 

「……グレイ。このまま向こうは戦争を仕掛けてくると思うか?」

 

「帝国でしたら仕掛けるでしょう。ですが相手は自衛隊、異世界の軍勢でその思想、価値観は我々とは異なっている。

 加えて、彼らの第一原則というべき主義…」

 

「人道的…か。ま、状況だけで言えばそれも破ったことになるが」

 

人道的。つまり人として扱う事。

更に民主的な考えである彼らのことを考えると、それだけで戦争に持っていくとは考えにくい。それはピニャもグレイも同意見だ。

 

「それでも幸い死人が出なかったのです。今なら謝罪だけで事が済む筈」

 

「………妾に頭を下げろというか。騎士グレイ」

 

「そ、そうです。いくらなんでもそれだけで殿下が頭を下げるなど…」

 

「騎士ボーゼス。本来なら重罪にもなりかねないことを殿下が謝罪するだけで済むというのだ。それが、向こうがどれだけ良心的か…分かるか?」

 

「………ッ」

 

「加えて、殿下もご覧になったハズです。自衛隊…彼らの力を。アレに対して、殿下は勝てるとお思いで?」

 

もし自分たちが悪くない、といって返せばそれだけで両国の関係は悪化する。そしてその場合には戦端が開かれ、確実に帝国は滅亡するだろう。

だか、今ならそれを謝罪と彼女が頭を下げるだけでなかったことにも出来る筈。可能性の話ではあるが、確率としてはそれで済むかもしれない。それはその場にいる誰よりもピニャが良く知っている。

力も、思想も。何もかもが違う者たちにたったそれだけで無かった事にできるのだ。

であれば、苦渋といえど答えは決まっている。

 

 

「……………それしかない、か」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――――ところでキャスター。他のみんなは?」

 

「…取り合えず全員無事、とだけ言っておこう。だが全員バラバラだ」

 

現在、部屋には蒼夜と孔明の二人だけしかいない。その他のサーヴァントたち、何より一緒に居たハズのマシュが居ない事に気付いた蒼夜は、彼から知っている限りの状況説明とサーヴァントたちの居場所を教えてもらえた。

孔明はあの場で両手を上げて降伏をしたからか、捕まることはなく口八丁で上手くマスターである彼といっしょに居て様子を見ることができた。

しかし残り町の各地に散らばっていたサーヴァントたちはマスターが気絶して指揮系統を失ったということで命令待ちになって全員拘束されてしまった。

 

アーチャー、ランサー、ライダーはその場で抵抗しようにもマスターの許可がないので逃げることもできず、かといって応戦もできない。孔明から彼が気絶したということで撤退を提案されたが、エミヤはマスターが心配ということで自分から降伏。ランサーは一人逃げようとしたが、ナンパ目的で留まった。

そしてライダーはピニャの行動が見たいということで孔明に仕掛けを頼んですんなりと降伏を受け入れた。

また清姫は女性ということで別室に居るらしく、そこにはマシュもいる。

 

 

「…リリィとアサシンは?」

 

「二人は墓地に居たからな。辛うじて逃げられたらしい」

 

「………そっか」

 

二人の無事と全員が手を出さなかったということで一安心した蒼夜は、とりあえず全員に無事であることを伝えるため、魔力による念話をサーヴァント全員に飛ばした。

 

「全員無事か?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――おお。やっと起きたか坊主」

 

薄暗い地下牢の中、堂々と石製の地面に座っていたライダーは頭に響いた彼の声に反応した。

 

『ライダー。他のみんな…アーチャーとランサーは?』

 

「ここに居るぞ。二人とも、お前の指示を待っておるわい」

 

ライダーが顔を上げて目の前で待機している二人の様子を見ると、聞こえているよという様な顔で目を合わせていた。

ランサーは昼寝でもするように壁にもたれかかっており、その対面にはアーチャーが壁に寄りかかっている。サーヴァントということで大して疲れもしていないが、あまりに長い待機命令だったのでランサーはやっとか、とぼやいていた。

 

「随分長く寝てたなぁ坊主。そのまま寝ちまったかと思ったぜ」

 

『ゴメンランサー。けど本当は逃げててもよかったんだけど…』

 

「ああ。そこは気にすんな。俺が自分で残るって決めたんだからな」

 

『……どういうこと?』

 

ランサーの意図が読めないということで念話越しに首を傾げるが、直後に笑ったような彼の声が返って来た。

 

「いやな。女の騎士っつーことで華奢な嬢ちゃんばかりかって思ったけど、思いのほかいい面してるヤツが居たんでな。思わず残っちまった」

 

「セクハラする気満々だったという訳だよ、マスター」

 

強気な女は好みだ、と以前ランサー本人から聞いたことがあったなと会話越しに昔の記憶を思い出した蒼夜は、それが理由なのだろうかと、向こう側で険悪なムードになっているだろう向こう側のランサーとアーチャーの様子を想像しつつ、この後をどうするかを考えつつ一先ずは彼ら三人に対して指示を出した。

 

『…取り合えず、三人とも無事なら霊体化してコッチと合流してくれ。もちろん、変なことは起こすなよ。ただでさえ、今のイタリカは緊張感が高まってる時なんだから』

 

「了解した。こちらは君の魔力を辿って其方と合流する、が彼女たちはどうする?」

 

『マシュと清姫には俺から連絡しておく。けどマシュは霊体化できない筈だから、向こうの姫様が許可してくれない限り、二人とも動けないだろうし』

 

「―――それもそうだな。今は合流を優先する」

 

 

マシュが動けないのは確かだが、それは裏を返せば彼女たちの周りでトラブルが起こらない限りは安全であるということだ。冷静な性格のマシュならそこまで無謀なことは起こさないだろう、後で蒼夜が連絡を入れるのであればなおさら動くこともない。

蒼夜の指示と行動に納得したアーチャーがそういって念話を終えると、他の二人を含めたサーヴァント三人は一斉に霊体化し、薄暗い牢の中から姿を消した。サーヴァントの持つ霊体化能力。それによって物理的なものは何一つ意味も成さない、ある種の本当の霊だからだ。

 

 

 

 

 

「よし。これでアーチャーたちはこっちに来るだろうから。あとは…」

 

ある種の問題児。それをどう宥めるかと、蒼夜は考えつつその悩みの種たる彼女へと念話を飛ばした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――そうですか……ご無事で何よりです、先輩」

 

『ゴメン、二人とも。心配かけちゃって…』

 

 

地下牢に入れられていた男たち三人とは違い、マシュと清姫は女性ということもあってか屋敷の一室に軟禁されていた。どうやらマシュ達は女性ということや非戦闘員だと思われていたらしく、特に降伏を命令されることもなかったが、反面半ば強制的に部屋に押し込まれた。

夜だというのに、部屋の中は比較的明るく、なぜだろうと思って時間を潰していたマシュ。軟禁ということで、そこまで理不尽さや不自由さはなかったが、二人ともマスターである蒼夜のことを心配し、気にかけていた。

二人はソファに腰かけてしばらく黙り込んでいたが、彼からの連絡に反応して声を出すと、部屋の外で警備をしていた騎士たちもやっと声が聞こえたと胸を撫で下ろしていた。中であまりに静かな様子だったので心配していたらしい。

 

 

「いえ、先輩が無事で安心しました」

 

『二人とも今どこに?』

 

「フォルマル家の屋敷、その一室に軟禁されています。どうやら私たちは女性ということで、ある程度は扱いもよかったといいますか…」

 

『アーチャーたちが地下牢だからね…女性を無理に牢屋に押し込めるのも、この世界の人としての倫理観に反するんだろう』

 

価値観が中世時代的な特地の考えだと、恐らく男尊女卑的な社会なのだろうと予想するが、だからといって全て男性優位かと言われればそうではない筈だ。女性という人種に対し社会的地位はなくても、代わりに女性として、人としての扱いは男性よりも上。特に組織的に余裕のある帝国であれば、女性への対応も男性よりは数段上だろう。現に、伊丹に対しては容赦ない攻撃をしたのだ。

 

「なるほど…つまり女性に対しては…」

 

『基本、帝国は丁重に扱う。…いや、そもそも国単位でだったり、国っていう社会の中にある組織ならば当然のことかもしれない』

 

「社会的な常識…というやつですね。だから私と清姫さんは丁重に…とは言いにくいですけど、扱いが良かったと」

 

 

 

加えて、清姫の服装は異国のものであったとしても、質がいいというのは見て分かるもの。なので、彼女の姿を見て「どこかの貴族の出なのでは?」と思い、彼女たちへの対応を買えたとも考えられる。なお、清姫は名と見た目通り裕福な家庭の出なので、その姿と性格(一部を除く)に誤りはない。

 

『だろうな。清姫は実際、当時としてはそこそこ名のある家の出だったから振る舞いも貴族と似たような物のハズだ。だから―――』

 

「私たちだけは扱いをよくしてくれた………というわけですね。旦那様?」

 

『げっ…』

 

声からして分かる気配。その言葉に、蒼夜は背筋を凍らせて体温が下がるのを肌で感じる。そして、露骨に嫌な顔をして、向こう側から聞こえる声の主とその表情に思わず声を出してしまう。

 

 

 

 

―――恐らく。彼の現状を聞いて、物理的にも、精神的にも怒りを溜めているサーヴァント。

 

 

 

 

伝説に出てくる修行僧の末裔ではないのに、絶対に彼の子孫、ないし転生体だと信じてしまっている者。当然、クラスは狂い狂ったバーサーカー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて。旦那様の無事が確認できたということで…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

燃やしましょう。この国」

 

 

帝国の焼却(・・)数秒前の発言に、蒼夜は残り二画の令呪を使用するしかないと、清姫の言葉に思わず右手を握った。

狂戦士というより彼女の自分への異常な愛から絶対にそれを一人でしかねないと思った彼は、清姫がそれを実行しようとした時に令呪を使い、何としてでも阻止せねばと、まるで世界を滅ぼす鍵を握ってしまった青年のように、息をのんで覚悟を決めた。

 

「―――――――。」

 

「………全く。相変わらず危険な子だな」

 

「令呪…使うかな」

 

「一日経つまで待てよ。もう直ぐ日をまたぐだろうからな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

特地の夜は現代の世界などと違い、かなり幻想的な光景が広がっている。

夜の大地から小さな光があふれ出し、ゆらりゆらりと揺れて天へと昇っていく。

話では大地などからあふれるマナの光だと言うが、そのお陰で夜だというのに懐中電灯の類は全く必要がない。小さな明かり程度だが、互いの顔と服装の大半を見る事が出来るのだ。

 

 

 

「………隊長。ぽっくり死んでないかな」

 

「大変です、富田さん。栗林のヤツが隊長殺してます、っていうか殺そうとしてます」

 

薄い紫の光の中、地面に伏せて双眼鏡を持っていた栗林が本心九割の本音を暴露し、それを聞いていた倉田が間髪を置かずに隣に居た富田に言った。もはや隊長である伊丹のことを生死関係なくほっておこうとでもしようとしている彼女の目に迷いはなく、大方今までのことからこれで死んでくれれば清々する、とでも思っていたのだろう。が、そこは流石にマズイので、できれば現状では隊長は生きていてほしいと願っていた。

何せ、それで後々面倒なことになるのは確定なので、彼一人でその尻ぬぐいなどを自衛隊全員でやらされるのはゴメンだからだ。

 

「栗林。お前、そんなこと言ったら後でおやっさんにどやされるぞ」

 

「あの人でなくても何かヤバイと思うので、全員聞かなかった事にして下さい」

 

「いや、流石にそれは…」

 

 

 

 

―――斯くして。日をまたぎつつあった夜の中で、第三偵察隊と+アルファの面々は、次第に明かりが消えていくイタリカを見つめ、進入の機会を窺っていた。

というのも、原因は当然伊丹にあった。

 

 

 

偶然にも遭遇してしまった第三偵察隊と薔薇騎士団。双方の誤解などから生じた問題により、騎士団たちによって捕まりかけた彼らだが、隊長である伊丹が結果として自分の身を挺したことで、他の隊員たち全員をその場から逃がすことに成功。ただし、当人の安全が保障されていたかというのは言うまでもない。

斯くして残る隊員たちは全員無事だったが、隊長なしでは色々と立ち行かないということで、出戻りのようにイタリカに戻った彼らは、夜半を待って囚われているだろう隊長、伊丹の奪還を計画した。

が。これが協定違反であることは向こう側の元締めであるピニャが一番知っており、彼女の逆鱗と共に胃に穴が開く思いで、この事態をどうするかと考えていた。

考えが食い違っているので、最悪衝突は免れない。が、それでも自衛隊は隊長奪還のためにこうしてイタリカが見える小高い丘に陣取っていた。

 

 

「にしても…本当に隊長、大丈夫か心配だな」

 

「大丈夫ですよ。隊長なら。それに…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ううっ……マスタぁぁぁぁぁ……」

 

 

 

「…そういえば、彼女たちのマスター…蒼夜、だったかな。彼も無事なの…か?」

 

「流石にあの年の青年をいたぶるほど、騎士団も横暴ではないでしょうに。それに、万が一死なせれば、それで制裁されても不思議でもなし」

 

「協定違反で向こうはこっちが報復してくるって思うだろうな」

 

伊丹奪還のために丘に陣取った第三偵察隊。そこには彼らだけでなくサーヴァントのリリィとアサシンの二人も居た。

というのも、墓地に居て偶然イタリカ内部に居なかった彼女たちは、幸いにも逃げれる場所にいたということから、現場にいたマシュから一旦外に退避してくれ、と頼まれる。しかし当然リリィはそれに反発してマスターを助けるのであれば、自分も捕まると言い、頼みを断ろうとしていた。

が、孔明曰く、外の状況を確認できる者を配置しておきたい。またリリィの姿から色々と誤解を受ける可能性もある、という理由からアサシンだけでなくリリィのような人物も必要だと言われ、断ることもできなくなった彼女は苦渋の決断でそれを受け入れた。

リリィもアサシンも蒼夜の奪還を考え行動しようとしていたが、相手が相手で迂闊に手を出せば関係の悪化や立場が危ぶまれる。そうなれば彼らの立場が悪くなって、聖杯どころの話ではなくなってしまう。最悪、日本と帝国の両国を相手に戦わなければならなくなるのだ。

なので蒼夜を助けるのは、場が整っているか、マシュたちが中から助けるかこの二つに賭けるしかないとして、こうして偶然の合流から共に町の様子を眺めていた。

 

 

 

「リリィ、大丈夫か」

 

「うう…大丈夫です。けど…マスターが心配です…」

 

どうして泣いているのか分からないレレイは、気にかけて言葉を投げかける。リリィもバイタル的には問題ないのだが、マスターのことが心配なのと自分が何もできずに離れてしまったことなど色々と負い目を感じていたらしい。

 

「案ずるな、白のセイバー。魔術師殿は無事だ。そうでなければ我らに異変がある筈。我らに何の異常もないということは、あの方は息災だということだ」

 

「うっ……アサシンさん…」

 

「今は中に居る者たちを信じよ。我らはそれまでに機会を窺うまで」

 

 

 

「………アレって本当に日本の戦士なの?」

 

「いや…流石にウチの…っていうか日本にはあんな髑髏は居ない筈ですよ…」

 

あんな奴が居てたまるかと言わんばかりに応える倉田は、アサシンに指をさして訊ねたロゥリィに対し速攻で答えた。

見た目からして不気味なヤツを自衛隊が置く理由がない。加えて、彼のような潜入や隠密行動が出来る部隊は自衛隊の中には存在するだろうし、装備だってあんな古風かつ中東的なものではない、と。

 

「そういえば、いつの間にか増えてたな。あの髑髏」

 

「ええ。最初は帝国の刺客か何かって思いましたけど…」

 

リリィの口添えもあって、彼が敵でないことはとりあえず信用した一同。なにせ、見た目が見た目で、しかも雰囲気から易々と受け入れられるようなものではなかったのだ。

アサシンも自分の姿からとても受け入れられるとは思ってなかったので、口数を最低限にした仕事人モードで居たが、一緒に居たのがリリィでよかったと内心では思っていた。

彼こと、ハサン・サッバーハは暗殺者。狂信的な者たちの中の頭領として選ばれ、顔と名前を棄てた者たちだ。

そして、アサシンの語源そのものであれば、いよいよその雰囲気を纏う者としての威厳というのが出来てくる。

 

 

「まぁ…裏切るって雰囲気でもないですし、あの子といっしょなんで味方である、とだけ思ってますけど…」

 

やはり今までの面子と違って、明らかに敵の暗殺者という雰囲気の姿をしているので、信用できないと思えてしまう。

だが、実際は仕事と私情を分けるタイプなので、プライベートであればかなりフレンドリーなサーヴァントだ。

 

「取り合えず、彼が敵ではないってことだけは確かなんだから、それだけを知っておけば十分だろう」

 

「なんスかねぇ…」

 

斯くにも未だアサシンの存在に慣れない彼らは、時折アサシンの方を見つつ双眼鏡でイタリカの様子を窺っていた。

 

「…時刻はそろそろ日をまたぐか。警備も甘くなる時間だな」

 

「隊長、無事なんでしょうかね」

 

「さぁ…だが、生きているのは確実だ」

 

ふと、富田の言葉に疑問を感じた栗林は純粋に不思議がるように彼らに訊ねた。いくら自衛隊員だからといって、絶対に生きているとは言い切れない。もしかしたら瀕死程度にはなっているかもしれないとあることない事、本心を交えていた。

 

「なんで生きてるって言いきれるの? 瀕死程度じゃないけど、それくらい重傷にはなってると私は思うけど」

 

 

「まぁ普通ならな。けど、隊長は一応レンジャー(・・・・・)持ちだし」

 

「そうそう。変にあの人、スタミナあるんだよなぁ」

 

「取り合えず、下手に動かせないって位の怪我にはなってないだろう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――――――――――え?」

 

「………うん?」

 

「どうかした?」

 

 

「―――――今。なんて言った?」

 

「え。あの人、変にスタミナあるから大丈夫って―――」

 

「その前。アンタじゃなくて」

 

「………あー…」

 

 

 

「隊長。ああ見えてレンジャー持ちだからな」

 

 

 

直後。その言葉を聞いた栗林は、無言のまま表情を固めて前に倒れ込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場所は再びフォルマル家の屋敷内。その応接間では立ち直ったピニャが玉座に座り、とりあえずはとグレイに指示を出していた。

怪我をした蒼夜と伊丹は現在、それぞれ別室で療養しており、マシュ達二人も更に別室に軟禁されている。そしてサーヴァント三人はそこから地下の牢屋に入れられているという完全に敵対行動ともとれる行為をどうにかして早目に解消しようとしていた。

 

「取り合えず、地下牢の三人を開放して、あの青年…蒼夜、といったか。彼のもとに。少女たちは地下の三人を出してから、軟禁を解いてやれ」

 

「承知しました。伊丹殿についてはどうしますか?」

 

「……当人はしばらく動けない。なにせ相当痛めつけたようだからな。それに、彼は部下たちを全員逃がしたんだ。ボーゼスたちからの話を聞くに、恐らく向こうは彼を救うために、もう一度イタリカに戻ってくる。なら…」

 

「今度は丁重に…ですね。ですがもし向こうがこっちに敵対意思があると認識されてしまったら…」

 

「そこは気にするな。既に手は打ってある」

 

伊丹の方については既にある程度、誤解を解けるようにと手を打ったというピニャに、手早いものだな、と感心するグレイ。実際は彼女の内心で帝国が滅ぼされると脅迫概念に突き動かされての手腕なのだが、それを知ることは出来ない。

兎も角、もしこれを理由に戦端を開かれれば絶対に帝国は滅んでしまう。それだけは確実だと言い切れることから、ピニャも慎重かつ打てる手は全てうつといった構えだ。

帝国と日本の軍事力は総兵力としては圧倒的に帝国が有利だが、自衛隊、ひいては日本にはそれを余裕で覆せるだけの軍事力と兵器がある。

技術、戦術、戦略。どれをとっても特地では最強である帝国が足元にすら及ばない。いくら大規模の兵力を投入しようと。いくら武器を投じようと、結果は変わらなかった。

 

 

「それと。あの三馬鹿をここに呼ぶように。今回の一件。その処遇を言い渡す」

 

「なるべく罪は重すぎないようにしてあげませんと。今回のは情状酌量の余地はあるのですから」

 

「分かっておる。だが…それでも協定違反であることに変わりはない。相応の罰は受けてもらわねばな」

 

協定違反は重罪だ。それが事情を知っていようとなかろうと、それがどちらの世界でも常識の話であることに違いはないのだ。たとえ、協定について知らなくても一方的に相手をいたぶった、というのも含めれば、今回の騎士団主要メンバーへの処遇はそこそこ重い物になる。

そこでもし軽い罪で済ませたのであれば、その瞬間ピニャの指揮官としての資質は無きに等しくなってしまう。

 

「最悪。アイツらには体で払ってもらわねば…」

 

「仮にも貴族の出ですぞ…そんなこと…」

 

「何。ボーゼスの家はなり上がりの家でもなし、そこら辺は仕込まれてるハズだ。今回の一件、出方次第ではそうなる、と言っただけだ」

 

「………なんと」

 

 

容認しがたいことを聞き、表情を硬くするグレイに、ピニャは横目で彼の様子を見ると地面へと俯く。正直、彼女もそんなことを言いたくはないのだが、今回の一件で違反よりも相手を一方的に傷つけたということに、自信への負い目を感じていたので、その決断もしなければならないと思ってしまっていた。

それが、ピニャたちの世界では当然のこと。謝罪として、贖罪としてまだ軽い方だと言われていた。

が、それを言い渡すことに抵抗感がないと言われれば、それは彼女が怒りで反発するだろう。

 

 

(すまんな。ボーゼス。だが…)

 

 

 

 

 

「たっ……大変ですッ!!」

 

刹那。突如、扉のほうから大きな声と共にハミルトンが勢いよく扉を開いて姿を現した。よほどのことなのか、肩で息をする彼女は、今にも倒れてしまいそうな様子で呼吸する。

 

「どうした、ハミルトン。そんなに急いで」

 

「敵襲か?」

 

「い、いえ………実は……」

 

ようやく呼吸を整え、口の中を下で舐め回し滑舌をよくしたハミルトンは、そうまでして伝えなくてはならない急ぎの伝令をピニャたちに伝えた。

 

 

 

「ち、地下牢の三人が居なくなってますッ!!?」

 

「なっ…」

 

「脱獄したというのか!?」

 

「はい。しかも表の警備にあたっていた騎士たちも、彼らが抜け出したことに気付かなかったと…」

 

突然の彼らの脱獄に驚く、そして開いた口が塞がらないピニャとグレイは一体どうやって脱獄したのかと、恐れるようにその可能性をはじき出す。が、警備に抜かりはなく、しかも出口は騎士たちが守っていた場所のみ。それなのにどうやって彼女たちに気付かずに脱獄できたのか、と未だに信じられない。

 

「警備していた騎士たちは」

 

「ハッ…私が行った時に気付いたらしく…」

 

「そうではない! 魔法か何かの類を受けてないのかと聞いているッ!!」

 

「い、いえ…私が見た限りは…」

 

歯切れが悪いが、恐らくハミルトンはいいえと答えたいのだろう。それが伝わって、唇を強く締めたピニャは、直ぐに冷静さを取り戻したグレイから可能性の話を出される。

 

「―――まさか、彼らが…?」

 

「あり得ん…警備のほうも報告が来てないのだぞ」

 

「ええ。ですから…」

 

「警備のものがやられた、か? だとしても、ちょっとした騒ぎになる筈だ」

 

仮に警備の騎士たちを倒して脱走したにしても直ぐに気付くことだ。

特に地下牢には今回の戦闘での捕虜も居るので、警備は厳重だった。仮に脱走出来たにしても他の場所を警備していた誰かが気づくハズだ。

加えて、その脱走方法はあまりに信じられないものだとすれば、彼女たちの考えでは到底追いつくことができない。

 

「加えて…警備の騎士たちが気付けず、中はまるで誰もいなかったかのようにもぬけの殻で…」

 

「…彼らだけが居なくなっていたと?」

 

「信じられませんが…」

 

実際は霊体化して壁をすり抜けていったのだが、未だ彼らがサーヴァント、霊体の類であることを知らない彼女たちは、人間であることを前提として考えてしまう。つまり、彼女たちにとって人間である彼らが、あの場を痕跡もなく逃げ出すことはできない。そんなことは魔導師や幽霊の類でない限りは到底不可能だ。

まるで、今まで捕らえていた者たちが全て虚像だったかのように否定されたことに、信じる事が出来ないピニャは頭を抱えるが、今はそんなことを言ってる場合ではないと冷静な部分から指摘を受ける。

 

 

「…クソッ。皆に捜索させろ。そう遠くには行けない筈だ」

 

「分かりました」

 

「それとグレイ」

 

今は信じられることだけを優先する。ハミルトンに捜索の指示を出し、予定通りに他のことを行うピニャ。消えたことに驚いてはいるが、今はその理由よりも事実だけを受け止めるべきだ。

 

「彼女たちの移動は予定通り行え。兎も角今は出来ることを先決する」

 

「了解しました」

 

確かに彼らが消えたことは驚いたが、だからといって他のことに支障をきたすわけでもない。今は出来ることを優先させると、焦りが逆転して冷静さとなっている彼女は二人に命令する。

が、そこへ一人の来訪者が姿を現した。

 

 

 

 

「―――――ほう。随分と冷静ではないか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――――そろそろ、いい時間だな」

 

「行きますか。隊長助けに」

 

 

丘に陣取っていた第三偵察隊の面々は、夜の時間も良い頃合いだと見て、ゆっくりと立ち上がる。寝静まった時間、警備の民兵たちも睡魔に襲われる時だ。

攻防戦での疲れなどもあり、普通の一般人からなる民兵なら体内の時間からそろそろ休眠の時間だ。眠る時間に無理やり頭を起こしているのだから、彼らは今頃睡魔と戦っているだろう。

例外として騎士たちはこんなことで警備を怠るワケもない筈だが、そこはそこで彼らもしっかりと対策を立てている。

あとは突発的なアクシデントが無い限りは、作戦上問題はない。

 

 

斯くして。隊長、伊丹の奪還のため第三偵察隊を主軸としたメンバーは、再びイタリカへと戻っていく。

そこには彼らだけでなく、特地で出会った三人の少女たち。そしてリリィとアサシンも居る。

願わくば、何事もなく終わってほしいのだが

 

 

 

 

 

 

 

―――そうはいかないのが世の常らしい。

 




後書きと言う名の雑談。

未だに主人公たちの素性が分からないですよね…
一応、幕間では牛若丸に話しているようですけど、どういう人生っていうかどうなってるんでしょうね、あの二人。
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