カメラを持った飛行場姫さんが各地を転々とする話   作:灯火011

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「竹鶴ッテイインダゼ。シッカリトシタ泥炭ノ香リガスルシ、バニラミテーナ良イ香リモスル。ストレートデモイインダケドサ、敢エテ『ハイボール』ニスルト、炭酸ニマジッテ良イ香リガハジケルワケ。イッキニノンデモイイシ、香リヲタノシミ、チビチビヤッテモイイ。ソレガ竹鶴ヨ。OK?」

「・・お、おーけー」

「デダ、コッチノ響ハ逆ニストレートジャネェトイケネェ。ハイボールニシタラ薫リガ飛ンデスッゴイモッタイナイ。繊細ナンダ。ロックニシテ少シズツ加水サレテイキナガラ、香リヲタノシミナガラ長ク味ワウ。ソレガ響ダ。OK?」

「お・・・おーけー」

「ッテイウカお前何ヲビビッテンダヨ。初対面ッツテモ、コッチトラ只ノ深海棲艦ダゾ?」

「無理っすびびるっすっていうか尻尾が口を開けて僕の横にあるのは何か間違ってると思うんです」

「ソウカ!尻尾ガコエエッテカ!?・・・ジャア軽ク甘噛ム」

「ちょっ、やめっ、あ、なんかぬめって温かぬうううおおおおお!?」

「クヒヒヒ」

---東京都 赤羽 立ち飲み居酒屋にての一幕---


5話 とあるヨッパと取材陣

 日本全国の居酒屋という居酒屋には、一つの言い伝えがある。

 

 「深海棲艦が呑みに来た店は必ず繁盛する」というものだ。

 

 確かに間違いではない。何せ深海棲艦や艦娘が飲み食いをした店というのは、それだけでも箔がつくからだ。

 だが、ここでいう深海棲艦とは少しばかり特殊な深海棲艦である。メディアにも時々登場し、酒とツマミを熱く語る彼女。ご存知「深海棲艦 戦艦レ級エリート」のことだ。

 

 「ドウモー。久シブリノ正式ナ取材ダナー」

 

 キス島撤退作戦の時から海軍に協力していると思われる彼女は、無類の酒好きである事が知られている。というのも、普段は取材を断る彼女なのだが、とある条件を出すと必ずといっていいほど取材に応じてくれるのだ。その条件とは、これだ。

 

 「サテサテ。店員サーン!生中5ツオネガイネー!」

 

 『レ級さん、我々は取材中なので酒は・・・』

 

 「キニスンナッテー!一杯クライ呑ンデモワカンネェッテ!セッカクココラデ一番旨イ店ニシタノニサー。セッカクナンダシ食ベテ呑ンデイケッテ」

 

 『・・・ではお言葉に甘えまして・・・』

 

 「オッ、ノリイイジャナイ!」

 

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 戦艦レ級。2人いる彼女たちは常日頃、我々の生活の中に溶け込んでいる。片方のレ級は前回の番組でお伝えした通り、カメラを片手に持ちながら生活をしている。そして、今回紹介するのはカメラのレ級とはまた違う、もうひとりの戦艦レ級だ。

 

 前回のカメラのレ級との違いは、まず艦種である。カメラのレ級は「エリート改」、そしてこちらのレ級は「エリート」である。そして、彼女達の好みもまるで違う。片方がカメラ好きであるのに対して、こちらのレ級は紛うことなき酒好きである。

 

 『そういえばレ級さんはなぜ人類の味方を?」

 

 「レ級サンッテ硬ェナァ。私ノコトハ『ヨッパ』デイイゼ。デ、人類ニ味方シタ理由ネェ。酒ノタメダナ」

 

 我々の質問に対して、間髪入れずにこの答えが帰ってくる当たり、本物だ。

 

 『噂には聞いていましたが、本当に酒のために深海棲艦を裏切ったんですか?』

 

 「裏切ッタッテヒトギキガワリーナー。私ハ港湾棲姫ノシジノモト、動イタダケダゼ?」

 

 『港湾棲姫・・・というと、居酒屋鳳翔の?』

 

 「ソウソウ。・・・ンマァ、確カニ、ブッチャケルト酒ノタメニ味方シテンダケドサ」

 

 戦艦レ級、ヨッパは苦笑を浮かべ、頬を人差し指で掻きながら言葉を続ける。

 

 「経緯ハ長クナルカラハブクケド、港湾棲姫ト2人デ酒ニハマッテナァ。深海棲艦ニハ黙ッテイロイロナトコロデ酒ヲノミマクッテタノサ」

 

 『なるほど。つまりは昔から交流をしていた、と。しかし、それだけならば別に我々の作戦に加担する必要はなかったのでは?』

 

 「ンー、ソリャソウナンダケドサ。敵・・・艦娘ッテモ呑ミナカマト戦イタクナカッタシ。ソレニ作戦セイコウシタトキニ、帝国軍ノ連中ト呑ム酒ガ旨クテナァ!ハマッチャッタンダヨネ」

 

 笑顔を浮かべて、酒を煽るヨッパである。なお、彼女の酒癖に付き合わされて艦娘と交流を持つようになった深海棲艦は多数存在し、港湾棲姫はもとより軽巡棲姫やいなずま級、そして、深海棲艦の元締めともいえる南方棲戦姫を、大本営主催の酒の席に引っ張り出してきたのも、彼女の功績であると言えよう。

 

 『深海棲艦という立場よりも、酒を呑みたいのがヨッパさんなんですねぇ』

 

 「悪イカ?」

 

 『いえいえ、我々としてはその御蔭でこの平和があることですし、むしろ大歓迎ですよ』

 

 「ソリャアヨカッタゼ。ッテホラ、手ガトマッテルゼ!」

 

 そう言うヨッパは既に3杯目の酒を煽っていた。彼女の好みである「竹鶴」のハイボールだ。それもライム入りである。そして、ツマミはこの街名産の「餃子」である。彼女は醤油ではなく、酢とラー油だけで作ったタレを餃子に付けて、美味しそうに笑顔で味わいながら、ハイボールを煽っていた。

 

 「ンー、旨イ!!ココノ餃子ハ名産ノニラヲ多クツカッテテナ。サッパリトシテ、何十個デモイケチャウンダ」

 

 『確かに美味しいですね』

 

 「ッテオマエ、醤油デタベンノ?」

 

 『えぇ、餃子って醤油では?』

 

 「ワカッテネェナー!イイカッ!ココノ餃子ハ酢ヲ多クシテタベルト旨インダヨ!ホラ私ノタレ使ッテイイカラタメシテミロッテ!」

 

 ヨッパはそう言いながら、酢で作ったタレを進めてくる。正直な所、むせるだけだと思うのだが、全国津々浦々を巡る酒飲みの彼女が旨いというのなら、試してみる価値はある。我々取材班は彼女の特性タレを付け、餃子を頬張った。

 

 『・・・ほお、これは・・・』

 『意外といけますね。というか、酢のおかげですごくサッパリしてる』

 『酒とも合います』

 

 「イケルダロ?サッキモイッタケド、ニラガ多イッテコトハ、野菜ガ多イ餃子ナンダ。ソコニ味ノツヨイ醤油ヲツケチャア、野菜ノ味ガキエチマウノサ。ダカラ野菜ノアジヲ消サナイ酢ガ合ウワケヨ!ンデ、サッパリトシタ口ニアウノガコノハイボールッテワケ!」

 

 『確かに旨いですね。あぁ、ヨッパさん。ハイボール一口頂いても?』

 

 「イイゼー。相性バッチリダカンナ!」

 

 私はビールを置き、ヨッパから受け取ったハイボールを一口頂く。すると酢の酸っぱさと、残っていた野菜の旨味がハイボールの豊かな香りと絡み合い、また別格の旨さを感じることが出来た。

 

 『・・・これは旨いですね』

 

 「クヒヒ、旨イダロ?」

 

 ヨッパとの取材は、終始このように進んでいった。酒を呑み、つまみを食い、宴会なんだか取材なんだかよくわからなくなってくる。おそらくは彼女の人懐っこさがそれを可能にしているのだろう。他の深海棲艦では、どうも我々人類とは一線を超えないようにしている節がある。だが、ヨッパは全く関係なくこちら側に擦り寄ってくるため、親近感を憶えるのだ。

 

 『それにしても、ヨッパさんは軍に所属せずにいますが、その理由はなんでしょう?』

 

 おそらく帰ってくる返答は一つであるのだが、聞かずにはいられなかった。他の深海棲艦が帝国海軍に属したり支援を受ける中で、彼女は文字通り自由に活動しているのだ。その活動範囲は、日本国内に収まらずに、全世界中に広がっている。

 彼女はハイボールをテーブルに置くと、腕を組み、少しだけ考える素振りを見せる。そして、ハイボールを一口だけ呑むと、無邪気な笑みを浮かべて、あっけらかんに言い放ったのだ。

 

 「ダッテ軍属ダト好キニ酒呑メネージャン!」

 

 予想通りでありながらも、非常に彼女らしい返答に、我々取材班は思わず笑みを浮かべてしまうのであった。

 

 

 我々が取材を初めて2時間ほど立った頃、思わぬ客が店を訪れていた。カメラをもった深海棲艦である彼女は、我々を見つけると一直線に歩み寄りながらレ級へと声をかけたのだ。

 

 「・・・なにしているのよ、港湾棲姫の所のレ級」

 

 「ンオー!?飛行場姫様ジャン!オッヒサー!」

 

 「オッヒサー。じゃないわよ。また一般人を巻き込んで酒を呑んで。港湾棲姫と金剛に言いつけるわよ?」

 

 「ゲッ・・・!ソレハ勘弁シテー。ソレニ今日取材ダシー」

 

 レ級はそう言うと、我々に縋るような目を見せてきていた。

 

 『確かに我々はレ級さんを取材しています。○○○テレビの○○です』

 

 「あら、これはご丁寧に。私は・・・まぁ知っていると思うけれど、深海棲艦の飛行場姫、リコリスよ」

 

 「飛行場姫様、判ッテクレター?」

 

 「えぇ、取材なら仕方ないわね。というか、酒の席で取材って、あなたどんだけ酒が好きなのよ」

 

 「カメコノカメラ好キグライ」

 

 「・・・納得したわ。全く、餃子を食べにきただけなのに、どっと疲れたわね。店員さん、竹鶴のハイボールと餃子を2枚お願いね」

 

 飛行場姫はそう言うと、レ級の席の隣に腰を降ろしていた。あまりにも自然な行動に、我々取材班は驚きの顔を彼女に向けることしかできなかった。

 

 「・・・何よ?別にいいじゃない、一緒に食べたって。どうせ取材といいつつ宴会になっていたんでしょう?混ぜなさいよ」

 

 『いえ、こちらとしては全く問題ないのですが』

 

 「じゃあ問題ないわね」

 

 飛行場姫はそう言うと、運ばれてきたハイボールに早速口を付けていた。そして、残っていた餃子を一口食べて、うんうんと納得の表情を浮かべる。

 

 「サッパリとしてて美味しいわね。ハイボールとも合うし」

 

 「オッ、飛行場姫様モイケルクチダネー」

 

 「そりゃあね。私だって酒は好きだもの」

 

 「ヘェー?横須賀デノンダトキニ、ビール一杯デベロンベロンニナッテ、金剛ニ介抱サレテタノダレダッケー?」

 

 「・・・昔のことよ。昔のこと。今は全然問題ないわよ」

 

 彼女たちは随分と仲が良さそうだ。やはり同じ深海棲艦というだけあって、交流があるようである。

 

 『それにしても飛行場姫さんはなぜここに?』

 

 我々としてはもう少し深海棲艦どうしの掛け合いを見ていたかったが、取材の時間が押していたので質問を投げかけざるをえなかった。

 

 「あぁ、大谷石の資料館に興味があってね。あそこって第二次大戦中に戦闘機の工場にもなっていたという話を聞いて、いってみたのよ」

 

 『ほう、どうでした?』

 

 「なかなかだったわよ。なんていうのかしらね、地下で冒険ができるような感じだったわね。ま、それを十分に堪能して、帰り際に餃子でも食べようと店に立ち寄ったら、レ級と貴方達が呑み喰いしてた、ってわけ」

 

 飛行場姫はそう言いながら方をすくめていた。我々とレ級がここにいることは、完全に知らなかったようである。それにしても陸に上がった深海棲艦は謎が多い。一時は我々の敵であったはずなのに、味方になり、終戦後はカメラをもってみたり、酒を呑んでみたりと、多種多様に生きる彼らは、まるで我々と変わらないように見える。

 

 「というか私に取材しないで、レ級に取材しなさいよ。私は大人しく餃子食べてるから」

 

 飛行場姫はそう言うと、運ばれてきた出来たて熱々の餃子を、酢だけをつけて頬張っていた。

 

 「ソンナ冷タクスンナヨー飛行場姫様ァ。イイジャンカ。ドウセ一人寂シク食ベタクナインダロー?」

 

 「ごふっ!ごふっ!・・・そんなこと、ないわよ?」

 

 咽ながらそう言う飛行場姫であったが、耳まで真っ赤になっているあたり、図星のようだ。

 

 「アハハ、飛行場姫ェ!耳マデ赤クナッテルゾ!ナンダヨー、一緒ニノミタイナラ最初カラソウイエッテー!ソレトモ一人デクイテーノ?」

 

 ヨッパはにやりと、口角だけを吊り上げて飛行場姫へと口を開いていた。対して飛行場姫は、視線を落とし、すこしだけ言い淀むものの、小さな声で語り始めていた。

 

 「・・・まぁ、そりゃあね?一人で食べるよりは、大人数で呑み喰いする方が楽しいじゃない?」

 

 「ジャアイイジャネーカ!マッタクヨー。姫級ッテノハドーモ素直ジャネーナー」

 

 「煩いわね。ええ、そうよ、楽しげだったのよ。あなた達の宴会に混ざりたかったのよ。いいじゃない!一緒に食べたって!」

 

 クールで余裕がある、それが世間一般の飛行場姫のイメージだ。だが、目の前の彼女は、耳まで真っ赤にし、大声で自分の気持ちを叫んでいた。我々は普段の彼女とのギャップに、思わず口元が緩んでしまっていた。

 

 『ははは・・・!』

 

 「そこ!笑わないの!ああもう!」

 

 我々に指を向け、真っ赤な顔で怒鳴る姿だけをみると、彼女達は本当に、我々人間と何も変わらない。

 そして何より、今回の取材では、飛行場姫の素の姿を表に引っ張り出した戦艦レ級、ヨッパの影響力の強さを再認識することが出来た。

 




よっぱさんはどこまで行ってもよっぱさん。酒とツマミに命をかけて、日本全国、世界各国どこまでも。
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