――少年、卿は何を泣いているのかね
――放っておいてよ、キラキラおじさん
――キラキラおじさん、か……面白い呼び名だな……一応悪魔のようなものなのだがね
――悪魔?……悪い子を食べに来る人……おじさんが嘘をついてるように見えないから悪魔なんだろうけど……
――子供は素直なものだな、普通は怪しむものだろう?
――だって人間っぽくないもん……神様は僕を嫌いなんだろうし……あってくれるのなんて悪魔しかいないよ
――とはいえ、悪魔にしても秩序というものがある……食す前に契約を交わすものだ
――契約?
――願い事を叶えるというものだよ……願いを対価にその者の魂を奪うのだ
――じゃあ、お父さんになってくれる?
――なるほど、息子にして欲しい、か……別に構わぬよ
――……僕を見捨てない?出来損ないの馬鹿だって……いらない子扱いしない?
――勿論だとも、私は――――すべてを愛している……この世界に僅かながらの存命を許されたのだ、一番初めに見つけた卿と契約をかわそう
――……うん……契約
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穏やかな気候で桜舞い散る道の中を一人の茶髪の少年がゆったりと歩いていた。
周りには少年と同じ制服を着ている生徒が多数おり、遅刻というものでもなくのんびりと周りの風景を楽しんでいるものと思われる。
「春といえば出会いの季節とも言うけど……特に際立った出会いは無いかな~」
本当に呑気にそのような事を考えながら少年は歩き続けていた、自らの通っている学園へと。
そうして歩いていると、校門の前に多量の生徒の列と数人の教師の姿が見て取れた。
「……新学期だから凄い並んでるんだろうけど……並びすぎじゃないかな~」
しかもあからさまに一つの列にのみに並んでおり、他にも数人の教師がいるのだが――その内の1名を除き、本当にチョコチョコとしか並んでいなかった。
並んでる意味ないのでは?という疑問の表情とこれは仕方がないのだろうな、と諦めに満ちた表情の教師がほとんどである。
とはいえ、それでも職務を全うする為にしっかりと待ち構えている姿は流石教師といったところだろう。
「義父さんの列に並びたいけど、家で顔を合わせてるし……ここは―――」
列に並ぶことなく、誰がいいかな?と眺めてから親交のある教師に狙いを定めてそちらの方へと歩き出した。
「おはようございます鉄人!」
「氷室、流石に公共の場でその呼び名はやめろ」
「あ、そうでしたね!おはようございます西村先生」
若干ずっこけかけた鉄j―――西村先生と呼ばれた男、体格はガッチリとしており、浅黒い肌と高い身長が特徴的な教師である。
かつてトライアスロンに出場し、様々な記録を打ち立てたという逸話を持っていた為、鉄人というあだ名が定着している。
とはいえ、西村先生も否定的ではなく、公共の場以外―――例えばプライベートなどではその名で呼ぶ事を許していたりするのである。
流石に公共の場では将来のことも踏まえさせる為にあだ名を禁止しているのだが。
「それはそうと、父親の列に並ぶと思ったのだが―――?」
「色々と長くなりそうですから……それに学園で余り親子親しくしすぎると色々と拙いですよ」
「……まあ、この学園自体が色々と注目を集めているからな……1生徒ばかりを構い特別扱いする先生は」
外聞が悪いと言おうとしたのだが、それ以上に外聞が悪い事例が学園にはゴロゴロとありふれているのでそれ以上の言葉を告ようもなかった。
それ以上にこの学園におけるとあるシステムが功を成しているのかほとんど突っかかってこない現状……とはいえそのような異常を余り多くしないに越した事はない。
「というか、相変わらずあの先生の人気は凄まじいですよね」
「……そうだな、俺からすれば非常にキナ臭いが……お前の父親の人気の方が納得できる要素が大きいのに、だ」
失礼だと思いつつも、2人は長蛇の列を形成させている外見上は冴えない青年を見ていた。
どこにでもいるような顔立ち、黒髪黒目の青年で、笑みを絶やしていない……特徴的なのは目の下にある黒子だろう。
男女問わずかなりの生徒を魅了している……全高生徒のほぼ過半数以上に慕われているという点からして異常なのだ……しかも異性限定という点が。
が、それ以上に―――
「あいも変わらずあの者は大変そうだな、そうは思わないか?西村先生」
「氷室先生の人気の方がぶっ飛んでいるではないですか、男女問わず、ですよ?」
「とう……氷室先生ならまだ外見で判断できるし優秀な成績も持ってますから判断できるんですよね」
自分のところにきた生徒は捌ききったのか、他の先生と話をしにでも来たのか少年と同じ姓を持つ先生が、ゆっくりと歩いてきた……歩き方一つをとっても魅了するような華やかさと色気が出ており、十分に説得力を持つような印象がある。
……おまけに外見も黄金の髪、黄金の瞳、という点とおよそ人間とは思えないほどに整った黄金比の肉体を持ち合わせており、それだけでも他者を魅了するには満ち足りすぎているのだ。
「まあいいのだが……少々、卿に嫉妬するよ西村先生……できるならば私が息子に渡したかったのだがな」
「氷室先生に手渡されたい生徒を差し置きたくなかったのでしょうな……まあ、来年があるのですからそれまで我慢すればいいだろう」
氷室先生の嫉妬が混じった発言に西村先生は苦笑で応える……どうにも親子に見えない外見の2人なのだが、2人に血など繋がっておらず、また、周知の事実でもある……それをネタにされる事も多々あったのだが、本来の家族以上に家族として結び付きが強いのか、まったくダメージを受けることなどなかったのである。
「えーっと……それじゃあ、そろそろ僕のクラスを……と」
「まあ、見るまでも無いがな……結局試験期間中も
「明久らしくていいではないか、真っ直ぐに突き進む様は好ましいぞ?」
―――氷室明久 Fクラス
そうして、何処か狂っている世界でかつて
氷室先生、一体何者なんだ……(棒