わかりやすいフラグ……つまりヒロインは……!という回
あ、玉野さんは違います、念の為(大幅なアンチ対象でもないですけど)
「……戦線変更なし、余裕はないんだとさ」
代表に聞きに向かって数分……明久を向かわせたいのはやまやまだが活躍については情報を何故かすぐに仕入れており、明久を外すわけには行かないとの判断だ。
あとで島田に締められる様子を楽しむためではなく、純粋に適材適所を動かせないだけなのだ。
「氷室が向かうとなれば、敵がもしかしたらこっちに来るんじゃないかっていう警戒だそうだ」
「随分と買われてるなあ……いざとなったら攻め込むしかないかもね」
この人数で攻め込むしかないだろう、と明久が半ばやけになりながら考える……一応、念の為に戦線を本陣の方へと下げて別戦線が抜かれたときのことに備える。
ある種の独自の判断だが、これだけならまだ許容の範囲であるハズ、と明久は考える。
「そういえば氷室よ……Dクラスから覗いているあの子は知り合いか?複雑な表情で見ているみたいだが」
「……まあ、一応ね……」
オレンジの髪の毛をロール状のツインテールでまとめた小柄な少女が明久一人を憎いやら違うやらの表情で睨みつけていた。
殺気半分、別の感情半分という微妙な状態のようであり、なんとも奇っ怪な表情である。
少女として間違っている表情なのだが、それを見てあえてオブラードに包んで複雑な表情だと評しているのだ。
「……去年、ちょっと罰ゲームで”女装して”話しかける状況になって……まあ、色々とあったんだ」
そう言って遠い目をする明久、目に光がなくあはははと乾いた笑いをするさまは恐ろしい。
何があったかは知らない……少女に持てているなら異端尋問を実行する気だったFクラス男子はそのただならぬ気配に引いた。
『ああ、豚野郎……美波お姉様と親し……万死に値……でもアキお姉様が……ブツブツ』
小声で話しているはずなのにこちらにまで聞こえている怨みの声がブツブツとしかしはっきりと聞こえて来る。
時期がいろいろと悪かったというだけであり、ある種少女の初恋が破れさり、弱っていたところに自分の心を捉える存在が現れ歓喜していたところに嫌いな“男子”である事が発覚していろいろとあったらしい。
予測可能かもしれないが、少女―――清水美春は島田美波に恋している同性愛者である。
それが新たに現れた自身にとって許されざる(男子を毛嫌いしている)恋と板挟みになって色々と複雑なのである。
「カツラを被って女子の制服を着たら変なフィルターが働いて普通に話してくれるんだけどね」
そう言ってポケットに入れていたカツラを頭にかぶる明久……その瞬間に清水が赤い顔をしながら教室に逃げ込み、どこからともなく別の人物からの撮影をうける。
あまりにも早かったため明久には誰が撮影したのかはわからないが、Dクラスの方向からだとは理解できていた。
「「「……まさか幻の美少女アキちゃんの正体が氷室だったなんて……」」」
「ちょっと待ってどういう事なの!!!!?」
周囲の男子が落ち込む様子に明久はうろたえる。
というか幻の美少女扱いされている事に対しても驚きがプラスされているのだ。
「氷室、卿は校内の女子人気ランキングを見ていないのか?」
「いや、そもそも成績ぐらいしか見てないけど……」
氷室先生の言葉に明久はそう返す。
試験召喚戦争に気を集中させており、同時に自分の成績を把握しようと成績は見ているのだが、時折新聞部が発行している校内の様々なジャンルのランキングは見ていないのである。
「そこで名称不明で”あき”という名称まではわかっている”女子生徒”が第三位にランクインしているのだよ……その時の新聞もあるがみるかね?」
「…………なん……だと」
明久が受け取った新聞……それには女装した自分が笑顔を振りまいている姿が映っていた。
霧島、姫路という女子生徒にに続いて……名称不明、幻の美少女アキちゃんとして。
ショックを受けながらも明久はDクラスの動く気配だけを無意識ながらも感じ取ったのかかつらを撮る余裕もなく虚ろな表情で見据える。
『……やはりここは攻めて行く方向じゃないと、明久が原作より強すぎ―――アキちゃんだと……!!?』
『何!!?アキちゃんがいる……何てことだ男装姿も麗しい!!』
『ああ、アキちゃんアキちゃん素敵可愛いアキちゃんアキちゃん……』
「氷室先生!氷室明久が総合科目で今出てきたDクラスを全員相手します!!!」
「―――承認しよう」
……明久の現実逃避という名の八つ当たりがDクラス生徒をおそう……試験召喚戦争という形で。
先程よりは鈍い動きではあるが、それでも7名の生徒の召喚獣の急所を的確に木刀で打ち抜いて第二戦を終わらせていた。
―――終わったあとで明久はカツラを取り……そういえばなんで入れていたんだっけ……?と自覚がなかった事が発覚した。
本人の名誉の為に言及するが、明久に女装趣味はない――何らかの目的の為に女装する意思があるだけだ。
* * * * *
「氷室がこれないってどういう事よ!!」
「落ち着け島田……明久に任せなきゃいけない戦闘区域があるって代表からも指示があったはずだぞ」
島田と須川……その両名が部隊を率い、劣勢の状態ながらもしっかりと食い止め続けていた。
これには島田の言うことを第一に聞くとあるドエムな生徒が奮闘している事が割と関係しているのだが、感謝の言葉が無い。
――もっともその本人も素っ気なく扱われているのがご褒美だったりするので気にすることではないかも知れない。
「15名最初に居たけど……後続が結構来てくれて補充したのに戦死数が多すぎる……!」
島田が戦場を見ながらそう呟いていた。
既に合計で30名以上がこの場所で戦闘をしていたのだが、大半が戦死しており、教室の方もこれ以上戦力が割けないとの事で戦略の練りなおしを坂本と吉井が行っている状態だ。
二人が共に焦りを見せず、しっかりと再調整をしているので数分後には新たな作戦が伝達されるとは思うのだが。
「あのバカを盾にすれば楽に抜けるっていうのに……!」
「島田!安心しろ!!お前への攻撃は俺が全て防ぐから!!」
「うっさい!!この変態!!」
「ありがとうございます!!!」
ちなみにまだ壊滅せずに時間稼ぎができている最大の理由が島田と木戸の物理的100%のコントに若干引いているためだ。
最初は怯んでいるからチャンスだと攻勢に移っていたのだが、なんか……木戸が無駄にパワーアップしているのか、逆に返り討ちしているのである。
その度に島田に褒めてもらおうと行動する⇒島田が物理込みで邪険に扱う⇒今度こそチャンス⇒島田に手を上げるな⇒返り討ち……のループが続いていたのである。
もう、お前ら二人だけで実はいいんじゃないのか?とも思ったが、そうするとこの場所を抜かれてしまうので結局は須川が統率しながら防いでいるのである。
「どうしてうちにはまともな奴が寄ってきてくれないのよ……!美春はどうにか大人しくなったけどこいつとあいつだけは……うぅ」
「……なんか苦労してるんだな……」
なにか複雑な事情を抱えているようだった。
まあ、今はこの場所を死守するのが第一ではあるので特に触れることなく作戦の変更待ちと相手の出かたを伺うに留めるように行動を開始しだした。
といっても現在の状況とそんなに変わらないことなので、あまり意味はない。
心構えが変わっただけである。
更新速度がこれからググッと落ちると思います
連休も終わりか……(遠い目)