なんで同じ学校を選んだ?という疑問があるけど、それは後々~
「ぼちぼちと人が集まってきてるな」
「そうだね……あからさまにホッとしてる人が多いのは噂より酷くなくて良かったって思ってるからかな?」
時間にして10分経過した時点で、ようやく人の数が増えてきた。
入ってくる人間、全員が全員教室を見渡してホッとしている者が多く、明久と同じように噂を信じて最悪の環境を想像していた者が多かったってことなのだろう。
「いやー……俺の知り合いは見事に全員ほかのクラスっぽいな~」
「まだ全員来てないんだしわからないよ?それにさ……話が合う人だっているよ、類は友を呼ぶって言うし」
「それもそうだな、初めてのクラスメイトだらけでも楽しもうと努力すればいいんだし」
これから1年間、余程の事がない限りは一緒に学んでいく仲間なのだ。
であるならば仲が良いにこしたことは無い……仲が最悪であればいざという時に連携が取れないであろうからだ。
「女子が入ってくれると華やかさがあるんだけど……どうだろう?」
「……1人だけ、心当たりはあるな」
「え?」
明久が男子ばかり入ってくるのに気が滅入っており女子はまだかなー、とむさくるしいのは勘弁して欲しいと切実に思っていると、亮が顎に手をやり、指を立てて心当たりがあると言い出した。
「実は、振り分け試験中に女子生徒が1人、倒れたんだよ。理由まではわからないんだが」
「ああ……途中退出したからなんだね……確か0点扱いになるんだったっけ」
「まあ、知り合いに聞いただけだし、誰なのかもわからないけどな」
「いや~……でも女子がいるだけでも華があるよ……この学校の僕のような男子はまだしも女子は美少女揃いだし」
「そうだな、俺みたいな男子はまだしも女子はレベルが高いからな」
「「はっはっは……はあ……」」
双方共に自虐しつつため息をつく……ダメージを受けるくらいなら自虐しなければいいのに、という状況だろう。
集まった男子はその会話を聞いており、女子が来るという事でどんな女子がくるのかを楽しみにしていた。
と、ここで明久がよく知る――一方的に、だが――人物が入ってきた。
赤毛で180cmはある身長のやや細身のボクサーのような機能美の肉体を持ち赤いたてがみのように感じ取れるつんつん頭の少年だ。
明久が話をする数少ない人物の1人がその人物の事をよく話していたので印象に残っているのだ。
意外な事に遠目でしかエンカウントした事はなく、これだけ近くで見たのは初めてである……とはいえ多少離れているが。
「あれ?坂本?……成績は悪くないはず……」
「なんで知ってるんだ?」
「いや、知り合いから話を聞いてたりするし……んん?」
一瞬だけ、視線が絡み合う……敵意に見えなくもないが、それとは別の意思を感じ取れる視線。
……羨ましいという感じの意味合いの方が強く見受けられていた……すぐさま教卓の前に立ちクラスを見渡し始めていたが。
「……戦力の把握をしているっぽいね……という事はクラス代表かな?義父さんの寸評が正しいなら……期待できそうなんだけどね」
「マジか……ならEクラスの設備は狙えるって事だな……」
人を扱うに関して、生徒の中でも抜きん出ていると高評価を得られている生徒に明久は期待していた……この時は。
『む、雄二……お主が代表なのか?』
『秀吉か……いや、俺じゃないな、貰った紙に代表と書かれるそうなんだが、書かれてなかった』
「…………キタイワヘシオラレタ」
聞こえてきた会話で明久は項垂れた……今度の生徒は明久は知らない人物のようである。
一瞬何故女子が男子の制服を着ているのか気になったのだが、もし本当に男子だったらどうしようという思いと、男装趣味の女子という点も捨てきれないのでとりあえずは放置の方向で落ち着いた。
「待て明久、サブとして動いてくれる可能性が捨てきれない」
「は!そうか……よっぽど最悪で相性が悪そうな代表じゃない限りは大丈夫な筈……!」
よほど自分に自信満々で他者の事を顧みないような最低な代表でない限りは坂本雄二の有用性を理解できるはずだ、と明久は思い直し、まだ見ぬ代表に思いを馳せていた。
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そうしてだいぶ時間が経ち、50人中、48人が揃っていたのだが―――
「……なあ、明久」
「どうしたの亮」
言いたい事はわかっていると言わんばかりに明久が亮の言葉を受け止める。
「気のせいか――こっちに近づけない島田がお前を睨んでないか?」
「なぜか知らないけど、殺されかけてるんだよね、度々……特に他の女子と話をしていると……それはそうともっと別の部分があると思うんだけど?」
言われる事が若干違ったのか、若干震えつつも返事を返す明久。
話をする女子のうちの1人ではあるのだが、同時に明久自身苦手な女子生徒でもある島田美波――
最初の頃はそうでも無かったのだが、何がきっかけか分からないが―――
関節技や殴打、蹴りなどの暴行を加えてくるようになっており、非常に苦手な人物の1人である。
明久の義父の”真に愛するなら壊せ”という言葉を常々聞かされていても、どう解釈しても殺意全開としか思えないのだ。
「何人か……明らかにAクラス、もしくはBクラスの成績の生徒なんだけど……」
「……そうだな、成績上位者に名を連ねている面々が多すぎだ」
成績上位者は何らかの褒賞付きとともに掲示板に張り出されるのだが……それに名を何度も連ねている生徒がなぜか、見た限り、5人も居たのである……そのうちの1人は島田にかまっていて暴行を受けている事によろこ――気にしていない人物だが。
「しかもイケメン……イケメン爆発しろ」
「それにモテてるしね……リア充死すべし……!」
実を言えば明久も人の事は言えないのだが、余談に過ぎず、そもそも認識していないので亮もカウントしていないのである。
「まあ、それはともかくとして、他にどんな人が―――」
そこまで言って明久は嫌な予感を感じ取った……同時にありえないという感覚も。
汗は吹き出る、体が多少震え、青ざめる……クラス中を見渡しても特に問題あるような人物は島田以外には存在しないというのに、だ。
「ど、どうした明久……顔が悪いぞ?」
「は、ははは……それを言うなら顔色が悪い、だよ……顔が悪いのはもともともだから……」
明らかに普通ではない……そして明久は急に開かれた扉を見て、何故悪寒を感じ取ったのかを理解した。
『すいませ~ん!まだですけどちょっと遅れちゃいました♪』
『早く座れ!この蛆虫野郎!』
明久に良く似た顔立ちの明久が一番会いたくなかった人物が……入り込んできていたからだ。