風紀委員の仕事を終えた士道は、昇降口に向かっていた。
『お兄ちゃん!』
『士道さん』
士道が昇降口に着くと、もえかと明乃、ほのかと雫が士道の名前を呼び、士道の近く歩みってきた。
「お兄ちゃん、お疲れ様。今日の活躍は、会長から聞いたよ」
「うんうん!お兄ちゃんが一人で不許可の部活動を摘発したんでしょ?しかも魔法攻撃を受けながら、たった一人で制圧するなんて、さすがお兄ちゃんだよ!」
もえかと明乃は士道の腕に抱き着きながら、士道を絶賛する。
「あはは、士道さん。モテモテだね」
「そうだね」
ほのかの発言に同意する雫だった。
「もえかも明乃も人が見ているんだから、離れろって」
士道は、二人に離れろと言うが二人は聞く耳持たず、士道の腕から離れない。
そんな二人に士道は諦めたのか、ほのかと雫に話しかける。
「ほのかと雫は先に帰らなかったのか?」
「はい。折角なので士道さん達と一緒に帰ろうと思いまして」
「うん。私もほのかと同じ理由だよ」
「そっか、分かった。一緒に帰ろうか。ほのか、雫」
「はい!」
「うん」
士道は、もえか、明乃、ほのか、雫の四人で一緒に帰ることになった。
そして、士道達は喫茶店に寄って、そこで軽い食事をとっていた。
「士道さん、聞きたい事があるんですが良いですか?」
「ああ、いいぞ」
士道はほのかに質問の許可を出した。
「士道さんは、もえかと明乃の兄ですよね?」
「ああ、そうだけど?」
「それならどうして、苗字が『五河』なんですか?」
ほのかの鋭い発言に士道は「うぐ」と小さく言い、しばらく沈黙していた。
「簡単な話さ、俺にはもう家族はいないんだ。いないと言うよりもう会えないと言った方がいいのかな…そんな時、もえかや明乃に出会って、そのまま五月家の養子に引き取られたんだ。書類上は五月家の養子だが、五河は俺が俺でいる証でもあるから、明乃同様、もえかの父親の勇次さんに無理を言って五河を名乗っている」
「あ…ごめんなさい……」
ほのかは聞いたらいけない事だと思い士道に謝る。
「気にしなくていいよ。もう過ぎた事だから。それに今はこうして新しい家族が出来たんだから、今の環境には満足している」
士道はほのかの頭を撫でながら、気にするなと言う。
「はぅ、し、士道さん。何を…//////」
ほのかは顔を赤くしながら士道に頭を撫でている理由を聞く。
「あ、す、スマン。つい撫でてしまった…」
士道は慌てて手を引っ込めるとほのかに謝った。
「い、いえ。大丈夫です。少し驚いただけなので‥‥//////」
「「むぅ~」」
ほのか士道に気にしないでと言う。そんな二人をみていたもえかと明乃は、「ぷくー」と頬を膨らませていた。
「ほのか、もしかして士道さんに惚れた?」
雫はほのかの耳元で囁いた。
「なっ!!し、雫!何言っているの!そ、そんな筈がないでしょう!?//////」
突然大きな声を出したほのかは、喫茶店の中にいるお客や士道達の視線を集めていた。
「あ、ごめんなさい!//////」
ほのかはその場に立って、店員やお客や士道達に謝った。
「ほのか、大声出し過ぎ」
「もう、雫が変な事言うからいけないんだからね」
「それはごめん。でも、ほのかを見ていたら士道さんに気があるのかなぁって思って」
「確かに、士道さんは良い人だけど、好きとかそんなんじゃないよ。そう言う雫こそ士道さんに気があるの?」
「今は、少し気になる程度かな。これからどうなるかは分からないけど。もしかしたら好きになるかも」
「そうなんだ…」
ほのかは雫から士道を好きになるかもと言うセリフに、胸にすこしズキッと胸が痛み、少し苦しかったがすぐに元に戻り、ジュースを口に運ぶほのかだった。
「そういえば、士道さんは得意な系統って何?私は振動系だよ」
雫は士道の得意な系統を聞くと、まずは自分からだと思い、雫は自分の得意の系統を言う。
「そうだなぁ、俺の得意な系統は…雫と同じ振動系だな」
「士道さんも私と同じなんだ」
「そうだな。確かに同じだ」
士道が雫と同じ振動系が得意だと言うと、雫は少し笑みを浮かべ喜んでいた。
その後、しばらく雑談をしていた士道達は、そろそろ帰ろうと思い喫茶店を出る。
そして、喫茶店を出た後しばらく歩いた後、ほのかと雫と別れた。
ほのかと雫と別れ、もえかと明乃の三人で家路に向かっていると、
「あれ?」
「どうしたの?お兄ちゃん」
士道は急に立ち止まり、目を細めて前の方をジッと見る。
そんな士道の様子が気になったのか、もえかが士道に声をかける。
「あれ、ウチの学校の生徒じゃないか?」
「えっ?」
「どこ?」
「あれ」
士道が指さした先には確かに第一高校の制服の生徒が居た。
しかし、その生徒の動きはどうも挙動不審で、きょろきょろと辺りを見回しながらまるで警戒するかのように裏路地へと入って行った。
(気になるな‥‥)
「ちょっと行ってくる。二人は此処で待っていろ」
「えっ?」
「ちょっ、お兄ちゃん!?」
士道はその挙動不審な生徒が気になり、明乃ともえかをその場に残して後を追った。
裏路地は表道とは反対に人気が無く、静かで、しかも薄暗くて不気味だ。
士道は気配に注意しながら、先程の生徒の後を追う。
すると、路地の奥の方から声が聞こえて来た。
「なぁ、もういいだろう!!今まで十分に払ったじゃないか!!データが入ったSDとやらを渡してくれよ!!」
声を上げていたのは士道が先程見た挙動不審な動きをしていた生徒だった。
士道はビルとビルの間に身体を隠し、影からそっと顔を少し出して様子を窺う。
「何を言っている?これでもまだまだ足りないぐらいだぞ」
すると、生徒以外のもう一人の人物の声が聞こえた。
しかもその声は変声機を使用しているような変な声だった。
士道が相手の姿を確認すると、相手は黒いフード付きのパーカーを纏い、顔には無地の白い仮面をつけた妙な奴だった。
恐らくあの仮面の内側に変声機が仕込まれているのだろう。
そしてその手には万札の入った封筒が握られていた。
先程の生徒と仮面野郎の会話から恐らくこの生徒は何らかの弱みをあの仮面野郎に握られて、金銭を揺すられているのだろう。
「何だと!?」
生徒の要求が却下された事にその生徒は逆上して魔法を起動させようとすると、
「いいのか?そんな事をして?」
「何!?」
「この取引で万が一、俺の身に何かあったら、お前が万引きをした証拠画像がインターネット上と学校側に送られる手筈になっている」
「っ!?」
仮面野郎からの言葉を聞き、生徒は魔法を引っ込める。
どうらやあの生徒は過去にどこかの店で万引きを行い、目の前に居るあの仮面野郎にその証拠を握られて、こうして金銭を要求されている様だ。
しかも、さっきの口ぶりからあの仮面野郎には他に仲間がいる様だ。
「懸命な判断だ。そもそもこうなったのはお前が自分で蒔いた種が原因だろう?一科生のエリートさん?」
「くっ‥‥」
生徒はまるで苦虫を噛み潰したように顔を歪める。
金銭の強請り現場を見た士道は、
(どうする?今この場に出てあの仮面野郎を取り押さえるか?それとも明日、あの生徒に接触して事情を聴くか?)
士道が今この場で突入をかけるか、それとも後日、事情を聴くか、迷っていると突如、
ピリリリリ、ピリリリリ‥‥
士道の携帯が鳴り出した。
着信は士道の事を心配したもえかからだった。
「っ!?」
「誰だ!?」
(やべっ!?)
士道はこの場は、撤退するしかなかった。
その場から立ち去った士道は、もえかと明乃と合流した。
『お兄ちゃん!』
2人は士道が無事に帰ってくると、士道の腕に抱き着いた。
「それで、どうだったの?」
もえかは士道に現場での出来事を問う。
「ああ、挙動不審だった奴は、どうやら脅されているらしい。脅されている理由が万引きをした所を目撃されたみたいだ」
「脅している人は分かる?」
「いや、分からない。黒いフード付きのコートと白い仮面被ってたからな。おまけに変声機まで使ってた。よっぽど正体を知られたくないんだな。まぁ、捕まえようとは思ったんだけどな…」
士道は犯人らしき特徴を言う。
「捕まえなかったの?」
明乃は士道にそう尋ねるが、
「あはは、捕まえようと思った矢先に電話が掛かって来てたから、その場からすぐに立ち去ったんだよ」
「あ…ごめんなさい…」
士道のセリフにもえかは、自分が電話を掛けてしまったせいで士道が危うくなったと思い士道に謝る。
「気にするな。もえかは俺の事を心配して電話を掛けてくれたんだろう?なら別にいいさ」
士道はもえかの頭を撫でながらそう答える。
そして、士道達は一通り話し終えると家に帰り一日を終えたのであった。