魔法戦記リリカルなのはIS 高町なのはのIS学園見聞録 作:ピロッチ
そして翌朝、SHRにて…
「諸君、これより再来週行われるクラス対抗戦に出る代表者を決める。
クラス代表とは対抗戦だけでなく、生徒会の会議等に出席する役目を担う、
所謂級長だと思って貰おう。但し一旦なった以上1年間交代は出来んぞ。
志願者、もしくは推薦する者はいるか?」
頭に包帯を巻いて出勤してきた千冬の言葉に静まり返る教室。
クラス代表者同士が競う対抗戦は実戦経験を積む好機だが、
生徒会の会議や委員会の出席という難事もついてくる。
だが、次第に教室中のあちこちから声が。
「はい!織斑君を推薦します!」
「私も織斑君に一票!」
「私も!!」
とまあ、こんな調子で生徒の票は一夏に集中する。
だが一夏はISの操縦経験が殆ど無く、クラス代表を務める自信は全くない。
と、ここで思わぬ助け舟が。
「お待ちを!」
「(た、助かった?)」
声を上げたのは英国貴族の令嬢で同国代表候補生を務める
セシリア・オルコットだった。
「それならワタクシも志願致しますわ!
クラス代表は実力者がなってこそ。
男の操縦者と言う物珍しさだけで推薦するのは不合理ですわ。」
「…それは、尤もな事だな。」
確かに世界初の男の操縦者と言う物珍しさだけで一夏を推薦するのは問題だ。
それは間違っていない。しかし、
クラスで最も実力ある者がなればいいと言う理屈に従うなら…
スゥッ…
「「「「「!!!!!」」」」」
「た、高町…さん…?」
なのはが手を挙げて、こう一言。
「私も志願するのっ!!!」
「「「「「え゛?!!!!!」」」」」
その一言に教室の全員が青ざめた。
「その主張が通るなら、初代ブリュンヒルデに勝った私が最も相応なの!」
「あっ…(察し」
その通り、1組には初代ブリュンヒルデの千冬に勝ったなのはがいるのだ。
「ヒィイ!わ、ワタクシやっぱり取り下げを…」
「お、俺も!!碌にIS乗ったことないし、やっぱ高町さんがやった方が…」
先日の戦いを見て怖気づいた一夏とセシリアは辞退を申し出るが…
「却下だ。一度志願した、あるいは推薦された以上
規則により辞退は認められん。」
「「そ、そんなぁぁぁぁぁぁあああああああああああ~~~~~~~~!」」
「「「「「(ご愁傷様。)」」」」」
千冬に一蹴され、涙ながらにその場にへたり込むセシリアと一夏。
これには一同も同情した。
「他に意見のある者はいないな?では織斑一夏、
セシリア・オルコット、および高町なのはの3名から選ぶこととする。
選出方法は言うまでもないだろう。ISの腕で競ってもらうぞ。
決定戦は1週間後に…」
「What?!」
「ヒィ!!」
今度は千冬に噛みつくなのは。完全に狂犬である。
「来週などと言わず、放課後に早速戦うのっ!
何なら今すぐでもいいの!2対1でも戦うの!!」
「ドンだけ戦いたいんだアンタはーっ?!」
「イーーーーーーーーヤーーーーーーー!」
恐怖に怯える一夏とセシリア。
昨日の事を考えれば、なのはと戦えばまず只では済まないだろう。
「ま、待て!待ってくれ!」
「織斑千冬…戦いを止めるとはどういう了見なのっ?!!」
そして担任を呼び捨てである。
尚、なのはと千冬は同じ年なのでオフの時はタメ口でも問題無い。
「来週まで、来週まで待ってくれ!そうすれば一夏に支給される専用機が届く!
その方が貴様も少しは満足出来る戦いになるかもしれん!!
頼む!!それまで待ってくれ!!」
もう泣き出さんばかりの勢いで頼み込む千冬。
弟の命が懸っているのでそれは必死だ。果たして、なのはの回答は…
サムズアップ。なのはは延期する理由に足ると判断したのだ。
「ゆ、許されたぁ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~。」
その場にへたり込む千冬。一夏とセシリアも寿命が延びたのでほっと一息。
「で、では決定戦は1週間後に総当たり形式で行う。3名は準備を怠るな。
それと高町、その、何だ…せめてハンデをくれてやれ。
まともに戦うと死人が出かねん。」
「………ハンデに全力を尽くすの!」
「では、朝のHRはここまでだ。授業に移るとしよう…。」
そして一週間後、放課後のアリーナ上空では…
「よし、ではクラス代表決定戦1回戦を始める。」
「いや、始めると言われましても全然意味が分かりませんわよ!!」
専用機ブルー・ティアーズ(以下、B・ティアーズ)を纏うセシリアは
自分の置かれた状況を把握出来ていなかった。
クラス代表決定戦だと言う事は分かる。
対峙しているのがなのはと言う事も分かる。
だが、どうしても一つだけ理解できない事が有った。
「何でこの人はIS無しで宙に浮いているんですのぉぉぉおおおお?!」
そう、なのははISを身に着けていないにも拘らず宙に浮いているのだ。
「お前はハンデ戦と言う事を忘れたのか?
高町はハンデとして専用機を完全展開せずに戦おうというのだ。」
「いえいえいえ!生身で宙に浮ける理由になってませんわよ!!」
「やれやれ…2年のウェルキンに鍛え直して貰ってこの様か。
精進の足りん奴だ。」
千冬の言う通り、セシリアはこの日に備え、
同じ英国代表候補生の2年生サラ・ウェルキンに頼んで
1週間特訓を付けて貰っていた。
「「「「「(いや、そういう問題じゃないだろう…)」」」」」
誰もがそうツッコんだが、声に出す勇気のある者はいなかった。
「さぁ時間が惜しい、代表決定戦1回戦…始め!」
「ええい、先手必しょ「どーん!」
セシリアがB・ティアーズの主武装、
光線銃「スターライトmkⅢ」をなのはに向けた瞬間、
どーん!の声と共にどこからともなく極大の光線が放たれセシリアを直撃。
セシリアは遥か彼方へ吹っ飛ばされた。
「(あ、お母様が呼んでますわ、行かなくては。)」
セシリアは現実逃避しながら意識を喪失した。
30分後…
「あはははははははははははははははははははははははははははははははは!」
保健室で目を覚ますなり笑い出すセシリア。
如何なる奇跡を起こしたのか、あの強烈な一撃が直撃したにも関わらず、
彼女は無傷で生還した。だが、精神的には無傷では済まなかったようだ。
「せ、セシリア?」
「可哀想に…おかしくなっちゃったんだ。」
「こんなのって、ないよ!」
どう見ても様子の変なセシリアを心配し、クラスメイト達が声をかけると…。
「あら皆さん。皆さんもお亡くなりになったんですの?」
意味不明な問いを返してきた。その瞳にハイライトは無い。
「え?ちょ、えっ…?」
「セシリア…まさか…」
「死んでない!私達死んでないから!」
どうやら、セシリアは自分が死んだと思っているようだ。
「きっとここは天国なのですね。そうと決まればお母様に会いにいかねば…」
そしてベッドから降りようとすると、丁度良いタイミングで千冬が来た。
「何だ、もう目が覚めていたか。」
「あ、織斑先生!」
「先生、セシリアさんがなんか変です!」
「ど、どうしましょう?」
「見れば解る。心配するな、後は私に任せろ。お前達はアリーナへ戻れ。」
「「「はーい。」」」
クラスメイト達は保健室から立ち去った。
「まあ!織斑先生までこっちにいらしていたなんて。」
「何だ、私がここにいる事がそんなに不思議か?」
「それは勿論ですわ!いつの間にお亡くなりになったので?」
「…………………………………………………………………………………。(怒」
セシリアは本気で自分が死んだと思い込んでいるようだ。
こんな時、千冬のする事は一つ。
「イヤーッ!」
SPANK!
「ンアーッ!!」
千冬はセシリアを出席簿でシバいた。
「落ち着けオルコット、勝手に私を殺すな。」
「い、痛いです~~~~~~~~。」
「当然だ、お前は生きているのだからな。」
「え?…ハッ!」
確かにセシリアの瞳にハイライトが戻っている。
シバかれた衝撃で正気を取り戻したようだ。
「どうだ、目は覚めたか?お前はまだ生きている。
親に会いに行くのは後にしろ。」
「あ、あ、あ………………。た、助かったぁ~!ふえぁああああああああん!」
生きて帰れたのが余程嬉しかったのか、とうとう泣き出してしまった。
「お、おい、何も泣く事は…」
「ミス・オルコット!」
と、もう一人生徒が保健室に駆け込んで来た。
彼女がセシリアの特訓相手を務めた2年のサラ・ウェルキンである。
「良かった…無事に生きて帰ってこれたのね!!本当に良かった!!」
「ミス・ウェルキン!あなたとの特訓のおかげで、
ワタクシ、生きて帰ってこられましたわ!」
セシリアが生還したのが余程嬉しかったのか、二人抱き合って泣いている。
「(むむ、声を掛けられん。仕方ない、ここは退散しよう…
それより私の愛する一夏が絶望しきりなのだ、励ましてやらねば。)」
ブラコン全開でこっそり保健室を立ち去り、アリーナへと戻る千冬。
と、そこにひょっこりとやってきたのは…
「……………ミス・ウェルキン?それと、ミス・オルコット?」
千冬の先輩であるカナダ生まれの数学担当教員エドワース・フランシィだ。
英国先輩後輩コンビは抱き合う姿をばっちりフランシィに見られてしまった。
「えーと、貴方達、ひょっとして…」
「ごごごごご誤解ですミス・フランシィ!!
ああ、ミス・オリムラからも何か…って、いない!」
「………………大丈夫よ、ミス・ウェルキン。
環境が環境だから仕方ないもの、先生、陰ながら応援してるから。(そそくさ」
「ミ、ミス・フランシィィィィィィィィッ!!」
慌てて保健室から退散するサラ。
その日の晩、サラは日記にこの日を厄日と書き残した事は言うまでもない。
同じ頃、○HKのニュース番組からこのような報道が入った。
「次のニュースです。先程入った情報に依りますと、
韓国の大統領官邸『青瓦台』で、突如本館に大穴があき、
一部分が崩落したそうです。
幸い、死傷者は出なかったとの事ですが、原因は解っておりません。
この件に関して韓国政府は日本に対し謝罪と賠償を求める声明を…
あ、今速報が入りました。
日本政府は韓国政府に対し『遺憾の意を表明する』との声明を発表しました。
繰り返します。
日本政府は韓国政府に対し『遺憾の意を表明する』との声明を発表しました。」
まさに残当。しかし彼女は何も悪くない。ただ、運を除いて。