魔法戦記リリカルなのはIS 高町なのはのIS学園見聞録   作:ピロッチ

23 / 93
一夏達の前に登場したISの母にしてなのはの雇い主、篠ノ之束。
妹の誕生日プレゼントと称して持ってきたのは第4世代機「紅椿」。
各国の努力を無に帰すがごとき最新鋭機の登場に驚嘆する専用機持ち達だが、
箒は予想に反し、まさかの受け取り拒否を宣言したのだった。


第23話  七夕に椿は咲かなかった

「な……篠ノ之さん?!」

 

「ほ、箒?!」

 

「アイエエエエ!!受け取り拒否?!受け取り拒否ナンデェェェ?!」

 

 箒、まさかの受け取り拒否。予想外の言葉に砂場を転がって悶絶する束。

 

「姉さん…いつ私が『専用機が欲しい』なんて頼みましたか?」

 

「そ…そうだけど、

紅椿はこの束さんが箒ちゃんが欲しい物を予想して用意した最新作の…」

 

「確かに、力なんか欲しくないと言えば、それは嘘になります。」

 

 箒は束の言葉を遮り、心中を語り始めた。

 

「この学園に入れられて以来、私は力が欲しかった。

そうすれば一夏と共に有れる、一夏と共に戦える、そう思っていました。

だから、あの日にあんな事が無ければ、

私も専用機が欲しいと強請っていたと思います。」

 

「「「「「「「「…………………………………………………。」」」」」」」」

 

 あんな事が何を意味するかは言うまでもないだろう。

 

「でも、あの戦いを見て気が付いてしまったんです。

『私がとても恐ろしい事を願っていた』と。

あの戦いでは誰も死ななかったと後で知りました。

そしてこう思いました。『何で誰も死なずに済んだのか?』と。

私が出した答えは、『ヤマトを動かしていたのがなのはさんだから』でした。

姉さんに専属操縦者として雇われ、千冬さんですら一蹴できる技量が有るから、

あんな芸当が出きた。

これが私だったら、きっと大勢の人を死なせてしまっていたと思います。」

 

「………………。」

 

「姉さんなら知ってる筈です。私は小さい頃からすぐに手が出る性格で、

力に溺れて自分や周りを見失う人間だった事を。

去年の剣道全国大会だって、確かに優勝はしました。

でも、試合後に泣いている相手を見て、

『自分のした事は単なる憂さ晴らしでしかなかった、

ただ相手を叩きのめしていただけだった』

と気付いて、今じゃ剣を振るうのも億劫になりました。」

 

「(成程、剣道部に身を置きながら、幽霊部員となっているのはその為か。)」

 

「今の私が専用機を持っても、

浮かれて取り返しのつかない事をしてしまうかもしれない。

そう思うと、ISに乗る事すら恐ろしく思えてきたんです。

だから…今の私はこれを受け取れません。」

 

「「「「「「「「…………………………………………………。」」」」」」」」

 

 最後は感極まって涙声になっていた箒。

その独白に一夏達は何も言えなかった。だが、1人だけ声を上げた者がいた。

 

「それでいい。」

 

 いつの間にか復活していた千冬だった。

 

「千冬さん…。」

 

「お前も成長したな、お前は今自分の過去を省みる事が出来た。

それだけでも立派な事だ。」

 

「…………。」

 

「後はそこから前に進むだけだ。心配するな。

お前は1人ではない、多くの仲間がいる。事が起こった時に頼れる仲間がな。

だから自信を持て。ISに乗る事が怖くても、

この事実と自身を省みるその心構えの両方を忘れなければ、

お前も専用機を持つに値する操縦者になれる。私が保証しよう。」

 

「…………………………………………………………………………………はい!」

 

「そう言う事だ束、その最新作は…そうだな。

箒が代表候補生になれた時、その合格祝いに渡すと言う事でどうだ?

それなら箒が専用機を持っても誰も文句は言うまい。」

 

「……分かったよ、そう言う事ならこの束さんも文句は無いよ。

紅椿は代表候補生になってからのお楽しみと言う事にしておくよ。

その間、もっと改良しておくから期待して待っててね!」

 

「はい!」

 

「やれやれ、私が言いたい事を千冬先生が全部言ってしまったの!

でもこれで方針が決まったの!

これからの箒ちゃんには専用機を持つ事に備えての鍛錬を課すから、

その積もりでいるの!」

 

「はい!」

 

 箒は少し嬉し涙を浮かべながら礼を言った。

 

「よし、篠ノ之の専用機(予定)の披露はこんな物だろう。

お前達も後付装備(イコライザ)をインストールして、実習に移れ!」

 

「「「「「はい!」」」」」

 

 千冬の命令に従い、

他の専用機持ちもそれぞれの後付装備をインストールして、試験を始める。

 

 

 B・ティアーズの後付装備は高機動パッケージ「ストライク・ガンナー」。

 

 6基のBT兵器の砲口を封印し、

腰部にスカート状に連結して推進力に回す事で高速・高機動化。

更に、超高感度ハイパーセンサーと大型レーザーライフルを搭載した。

 

 

 甲龍の後付装備は攻撃特化パッケージ「崩山」。

 

 主に龍咆を強化するもので、元有った2門にもう2門増設し計4門とし、

龍咆自体も「視えない衝撃弾」から「火炎を纏った衝撃波」を放つ

拡散衝撃砲に換装する事で、破壊力を格段に増強した。

 

 

 R・R・カスタムⅡの後付装備は防御パッケージ「ガーデン・カーテン」。

 

 各2枚の実体シールドとエネルギーシールドで防御機能を強化する。

高速切替と併せれば、防御の間も攻撃が可能となる。

 

 

 S・レーゲンの後付装備は砲戦パッケージ「パンツァー・カノニーア」。

 

 レールカノン「ブリッツ」を両肩に2門装備し、遠距離砲撃・狙撃対策に

計4枚の物理シールドを左右、正面に展開する。

 

 

 

 そして…

 

「……あ、あれ?俺の白式、後付装備が無いんですけど?」

 

「ああ、ゴメンねいっ君…白式に付けられる後付装備は存在しないんだ。」

 

「えええっ!何でですか?」

 

「そりゃ、雪片弐型に拡張領域(バススロット)を全部食われちゃったからね。

その剣はね、第4世代の装備である展開装甲の技術を使って作られた、

言わば展開装甲の試作品なんだ。」

 

「展開装甲?」

 

「うん、第4世代機最大の特徴だよ。

例えばさっき見せた紅椿だと両腕、肩、脚部と背中に付いてるよ。

一つ一つが自動支援プログラムに基づいて状況次第で

エネルギーソード、エネルギーシールド、スラスターに切り替わりながら

独立稼動ができるんだ。

それに、背中の2基は切り離してビットとしても使えるよ。

だから、紅椿には拡張領域(バススロット)なんて必要ないんだ。」

 

「へえ、じゃあ白式は機体は第3世代、武器は第4世代なんだ。」

 

「そうだよ。でも、1世代先の武器を持たせるのは無理があるみたいで、

拡張領域(バススロット)を丸々全部食う上に、燃費が悪すぎて使い物にならなくてさ、

設計元の倉持技研も持て余して欠陥機として放置してたみたい。

で、それをこの束さんが頂いて動くようにいじって今に至るんだ。

でも悪い事ばかりじゃないよ。追加装備不可能で燃費が悪い代わりに

第一形態からワンオフ・アビリティが使えるようになったからね。」

 

「そ、そうなんですか。」

 

「そーしーてー!」

 

 束はなのはとヤマトに向き合い…

 

「束さん、ひょっとして…」

 

「どきどきわくわく。」

 

「その通り。遂に完成したよ。出でよー!!」

 

 ドガッシャアアアアアアアン!!

 

 束の声に合わせ上空から2基目の人参型ロケットが落下、眼前に着地した。

ロケットが開き、そこから山積みになった大量の何かのパーツが現れた。

 

「な、何だこの量の後付装備は!」

 

「ひゃっはー、やまとはもっとつよくなるー!!」

 

 その量、何と他の専用機の3倍。

 

「さあ!レッツインストール!」

 

「ええ、やりましょうか。」

 

「わーい!」

 

 と、同じ声のトリオが盛り上がっていると…

 

 

 

 

 

 

「お、織斑先生!!たたた大変です!!」

 

 何やら慌てふためいた様子で真耶が千冬に声を掛けた。

 

「特命任務レベルA、現時刻より対策を始められたし……か。

聞こえるか?試験は中止だ!専用機持ちは全員整列しろ!」

 

「「「「「「…? はい!」」」」」」

 

 千冬の命令で後付装備の稼働試験中だった一行は降下、整列。

 

「先程、理事会よりレベルAの特命任務が下った。

一旦旅館に戻るぞ、全員付いて来い。」

 

「「「「「はい!」」」」」

 

「束さん、インストールは任せるの!そのまま続けて置いてほしいの!!」

 

「任せて~。」

 

 特命任務の件は別の所で稼働試験中の一般生徒達の所にも伝えられ、

早速、稼働試験の指揮を執る学年主任、日高舞が全員に号令した。

 

「全員、テスト稼働を中止して集合なさい!!」

 

 舞の号令一下、飛行中の生徒達も降下、何事かと訝しながら整列した。

集合を確認すると、舞が全員に告げた。

 

「ただ今理事会より命令がありました。

現時刻を以て、先生方は特命任務へと移ります!

今日のテスト稼働はこれにて終了!

生徒は全員、各班ごとに機材を片付けて旅館に戻り、

連絡があるまで各自室内待機する事!」

 

「え?えっ?」「中止?ナンデ?」

 

「ってか、特命任務って何?!」「わけがわからないよ。」

 

「静かにっ!!」

 

 不測の事態に、周囲がにわかに騒がしくなるが、舞が大喝して鎮めた。

 

「早く片づけに入りなさい!!

無断で室外に出たら命令違反のカドで身柄を拘束するから、

絶対に出ない事!!良いわね!!」

 

「「「「「は、はいっ!!」」」」」

 

 舞の命令に生徒達は大急ぎで片付けを始めた。程なく全員が花月荘に帰還。

一般生徒は室内にて待機に入る。

そして、旅館の大広間には臨時の司令部が置かれ、

千冬と真耶、そして舞他多くの教員と専用機持ち+1が集められていた。

 

「2時間前の事だ。

ハワイ沖で試験稼動中のアメリカ・イスラエル共同開発の第3世代IS

銀の福音(シルバリオ・ゴスペル)』通称“福音”が制御下を離れて暴走し、

監視空域を離れたとの連絡があった。その後人工衛星で追跡した結果、

福音はこの先2kmの空域を50分後に通過すると判明した。

そこで学園理事会が在日米大使館経由で米国防総省から依頼を受け、

この事態にIS学園が対処する事になった。」

 

「えっと、つまり…?」

 

「暴走したISを我々が止めろ…という事ですね?」

 

「如何にも。」

 

「マジかよ?!」

 

「一々驚かないの!」

 

「作戦に当たり、

先生方には学園の訓練機で該当空域及び海域の封鎖を行って頂きます。

日高主任、封鎖の指揮はお任せします。」

 

「任っかしときなさい!」

 

「え?!先生方が止めるんじゃないんですか?!」

 

「馬鹿を言え、相手は暴走状態の第3世代機だぞ。

いくら教員勢でも型落ちの訓練機で勝てる訳が無かろう。」

 

 一夏が驚いて声を上げるが、千冬に冷静にツッコまれた。

 

「じゃ、じゃあ…」

 

「そうだ。実際に止めるのはお前達専用機持ちだ。」

 

 この任務で実習に同行するIS教員は皆封鎖に駆り出されるので、

本作戦の要となるのは専用機持ちである。

 

「何だよそれ…何でこんな事になるんだよ~。」

 

「文句を言うな。理事会の命令だ。」

 

「まあ、大方理由ははっきりしてるんですけどね~。」

 

 真耶の言葉に合わせ、司令部の全員が一斉になのはを見た。

 

「ん?…みんな、何で私を見るの?」

 

「高町、貴様今まで自分がやった事を自覚していないのか?」

 

「……………ああ、そういう事なのか。」

 

 恐らく理事会はヤマトの戦闘力をアテにして依頼を受諾したのだろう。

 

「文句を言っても始まらん。では作戦会議を始める!質問のある者はいるか?」

 

 早速手を挙げたのはセシリアだった。

 

「では、福音の詳細なスペックデータを要求します。」

 

「うむ。だがこれから公開する情報は決して口外するなよ。

万一情報が漏洩した場合、ここにいる全員がIICの査問委員会にかけられ、

最低でも2年の監視が付く事になる。」

 

「!!…了解しました。」

 

 モニターに福音の詳細なスペックデータが映し出された。

どうやら広域殲滅を目的とした特殊射撃型のISであるらしい。

 

「主兵装は銀の鐘(シルバー・ベル)

大型スラスターと広域射撃武器を兼ねる高出力マルチスラスターシステムか。

36の砲口から全方位へエネルギー弾を射出可能な上、

瞬時加速と同程度の急加速が行える…」

 

「最高速度は2450km/h超、つまりマッハ2以上で飛行可能か…

攻撃力と速力に特化した機体だな。」

 

「この銀の鐘(シルバー・ベル)って言う特殊武装は厄介だよね。

これを防ぐのは難しいと思うよ。」

 

「このデータでは格闘性能が解りませんね。…偵察は行えないのですか?」

 

「そうはいかん。こいつは現在も超音速で接近中だ。

アプローチできるのは1回きりだ。」

 

 つまり福音を止めるには超強力な一撃で

SEを0にして行動不能に追いやるしかない。

そしてそれが可能な機体は、零落白夜でバリアを無効化できる白式と

活殺自在でバリアを素通りできるヤマトの2機だけだ。

 

「相手が有人機である事を考えると、

操縦者を傷つけずにISだけ破壊できるヤマト…高町さんが最適任ですね。」

 

「だが、ヤマトは現在後付装備のインストール中だ…。こうなったら織斑、

お前が白式でアプローチし零落白夜の一撃で仕留める他あるまい。」

 

「え、俺が?!ちょっと待ってくれよ!ち…織斑先生!

お、俺が行かないとだめなのか!?」

 

「当然だ、白式を使えるのはお前だけだからな。」

 

「そ、そんなぁ!!」

 

 いきなりの指名に戸惑う一夏。心配なのか千冬がこう付け加えた。

 

「これは訓練ではなく実戦だ。

もし自信が無いのなら、無理に出る必要はないが…」

 

 しかし、そう言われるとやる気を出してしまうのが一夏の性分である。

 

「いや、俺がやります!」

 

 流石は実姉、弟の性格を知り尽くし、

どう言えばやる気を出すかを良く分かっている。

あるいは単純に心配で言っているのかもしれないが、真偽の程は定かではない。

だが一つ問題がある。

 

「でも白式って、燃費が物凄く悪いんですよね。

目的地までエネルギーが持つんでしょうか?」

 

 その通り。白式が自力で飛んで行ったなら、

間合いに入る頃には零落白夜が使えなくなるだろう。

なぜなら零落白夜は発動に大量のSEを使うからだ。

 

「誰かが牽引しなければならんな。

現在の専用機持ちの中で、最高速度が出せる機体は…

オルコットのB・ティアーズか。ならば…」

 

 

 

 

 

 

 

ズドォォォォォォォォォォォォォォォオオオオオオオオオオオオオオオオン!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「「「「な、何だぁーーーーーーーーーーーーーーっ?!!!」」」」」」

 

 突如旅館の外から聞こえてくる轟音。旅館中から生徒達の悲鳴が響き渡る。

 

「馬鹿な?!まさか福音がこっちを攻撃してきたのか?!」

 

「そんな?!速過ぎる!!」

 

「兎に角生徒を落ち着かせないと!

千冬ちゃんは真耶と残って!残りは私と一緒に客室へ!」

 

「はい、そちらはお任せします!」

 

 教員の何名かが司令部を出て、生徒達が待機する客室へと向かおうとした。

 

「ちょっと待ったぁ!」

 

 と、そこに天井から声が…

 

「む、この声は?!」

 

「どーも、束さんでーす!!」

 

 何と司令室の天井から束が顔を出していた。

 

「し、篠ノ之博士?!」「姉さん!!何やっているんですか?!」「束さん!」

 

「イヤーッ!!」

 

 掛け声と共に空中で回転しながら飛び降りてきた束は

一瞬で千冬の前に移動する。同時に、千冬の表情がみるみる険しくなる。

 

「ちーちゃんちーちゃん!ヘイ!グッドニュースだよ~!」

 

「帰れ!」

 

「聞いて聞いて!

さっきこっちにやってきた変なISをヤマトがやっつけたんだよ~!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「「「…………………………………………………………………。」」」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ハ       ァ       (゚Д゚)        ?       ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 束の核爆弾発言により、司令室は凍結してしまった。




箒、まさかの慢心フラグ回避成功。
あの戦いで救われたのは、ラウラだけではなかった…。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。