魔法戦記リリカルなのはIS 高町なのはのIS学園見聞録   作:ピロッチ

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第27話  真実 後編

「では次は私がここにやって来た理由の説明をするの!!

結論から言うと、私がこの世界に来たのは管理局の任務だからとかではなく

全くの偶然なの!!一言で表すなら事故なの!!」

 

「事故?それはまた運の悪い事だな。」

 

「半年前、私は演習場に使っているある無人惑星で教導任務中だったの!!

でも休憩中にその惑星の遺物が誤作動して、

異世界へ物体を転送する術に引っかかったの!!

演習場からこの世界に放り出された時は驚いたの!!

空戦魔導師じゃなかったら死んでたの!!」

 

「うんうん。それで墜ちた場所がたまたまこの束さんの隠れ家の近くで、

危ないと思って咄嗟に侵入者撃退用ネットを動かしたら、

空中で突然静止しちゃって、もうびっくり!

それで腰を抜かして驚いたら、その声でばれちゃったんだ。

それが、私となーちゃんの馴れ初めなんだ。」

 

「恋人同士みたいに言うな、気持ち悪い。」

 

「あ~ん?(威圧」

 

「わ、悪かった…。」

 

 

 

「それで、次に話すべきなのは…

この束さんとなーちゃんがヤマトを建造した理由かな。」

 

「いまあかされる、やまとたんじょうのひみつー!(両手パタパター」

 

「ヤマトの誕生秘話?!」

 

「あ、それ聞きたい!」

 

「確かに、あの滅茶苦茶な強さの根源は是非知っておくべきですわ。」

 

「そうそう、アタシ達いっつも扱かれてばかりだから、

情報開示してくれるなら大儲けよねー。」

 

「うーん、皆が期待している話とは違うと思うよ?」

 

「え?そうなんですか?」

 

「まあね。さて、皆はこの束さんがISを生み出した目的を覚えてるかな?」

 

「ええと…授業で習った限りでは、

『宇宙空間で限りなく生身に近い状態での行動を可能とする

次世代パワードスーツ』が設計のコンセプトでしたよね。」

 

「そうだよ。でも、今の世界でISはどう扱われている?」

 

「あっ…、そう言えば…」

 

「そう。ISは今じゃスポーツ競技として勝負に使われてるよね?

しかも、軍事利用を禁止したアラスカ条約と言う物が有りながら、

加盟国がみんなそれを無視して兵器として使ってる。この日本も含めてね。」

 

「「「「「…………………………………………………………………。」」」」」

 

「まあ、原因ははっきりしてるんだけどね。」

 

「白騎士事件…ですね。」

 

 10年前、束はISを世に発表したが、世界は取り合おうとしなかった。

憤慨した彼女は世界にその性能を認めさせる為に

主要国のコンピュータをハッキングし、

合計2341発のミサイルを日本に向けて発射させ、

それをIS1機で全て撃墜させたのだ。

 

 そればかりか、各国が差し向けた

戦闘機207機、巡洋艦7隻、空母5隻、監視衛星8基を

1人の死者も出す事無く破壊して見せた。これが白騎士事件の全貌である。

 

「あの時、この束さんは世界にISを認めさせる事しか考えていなかった。

他の方法を取るべきだったと後悔しきりだよ。

宇宙へ行って地球の写真を撮ってくるとか。」

 

「確かにあんな方法を採ってしまっては、

皆ISを凄い兵器として見るのは仕方ありませんわ。」

 

「そうだね。今となっては、ISを兵器として使うのは致し方無いのかもね。

…その上で聞くけど、皆はこんな世の中をどう思う?」

 

「どう?と言われましても…」

 

「良い世界…とは言えないよね。特に…(ラウラを見る)」

 

「危うく冤罪で捕えられる所だったからな。

お師様への恩、生きている間に返しきれるか予想も付かん…」

 

「そうだね。でも皆も良く考えてみて。

確かに白騎士事件の御蔭で世界はIS=超兵器と見ている。

でもその後できたアラスカ条約制定にこの束さんは何一つ関わってないんだよ。

つまり、『この束さんと無関係にISの平和利用を訴える条約が出来たけど、

世界中が無視している』事になる…おかしいと思わない?」

 

「確かに…それを言われるとその通りだな…。」

 

「この束さんはそれを調べる為、3年前に要人保護プログラムから逃げ出した。

そのせいで、箒ちゃんや両親には迷惑を掛けちゃったけどね。

…それでも、やらなきゃいけなかった。

この束さんなら出来る、いや、この束さんしかできない。

そう思ってたんだ。そして、この束さんは遂にその答えを見つけた。

それは…秘密結社『亡国機業(ファントム・タスク)』。」

 

「ふぁんとむ・たすく…?」

 

「第二次世界大戦中に生まれ、

半世紀以上前の冷戦終結と前後して活動している武器密売組織。

そして2年前にいっ君をドイツで誘拐した連中の正体。それが亡国機業だよ。」

 

「!!!」

 

「こいつらの目的は世界を戦場にする事。

そして、戦場となった世界で武器を売り捌く事。

こいつらをこのまま放っておいたら、世界はIS同士の戦争で大変な事になる。

だから、この束さんはこいつらを成敗しなきゃいけない。

…それが、ISを生み出した張本人としての責任だから。」

 

「せ、責任…あの姉さんが、『責任』?!」

 

 突然驚いた様な声を上げる箒。直後、目頭を押さえて啜り泣きを始めた。

 

「おい、どうした箒、急に泣き出して…。」

 

「グスッ…だって、姉さんが、グスッ…あの姉さんに、他人どころか、

家族の迷惑も省みない姉さんに責任感があったなんて信じられなくて…。」

 

「むー、今まで箒ちゃんには束さんがどう見えていたのかが良く解る一言だね。

でも…ホントに御免ね。この束さんのせいで…」

 

 束がISを発明して以降、篠ノ之家は一家離散の状態にあった。

箒自身、小学4年生の時から政府により日本各地を転々とさせられ、

3年前に束が失踪してから、箒は執拗な監視と聴取に晒され、

心身共に負担を受け続けてきた。

 

 IS学園にも束の妹という理由で政府に命じられ渋々入った訳で、

この事から、箒は姉にかなりの不信感を感じていた。

だが、それもようやく氷解しようとしているようだ。

箒は束を抱きしめると、一言こう答えた。

 

「もう良いんです。その一言だけで良いんです。一言謝って欲しかった。

周りを顧みないばかりで、いつも迷惑を掛けられてきたから、

せめて、その事だけでも一言謝って欲しかった…。」

 

「箒ちゃん…う、うううっ…。」

 

「姉さん、父さんと母さんに遭えたら、

今までの事、ちゃんと謝ってあげましょう。」

 

「うん…そうするよ。」

 

 篠ノ之姉妹は抱き締めながら泣いた。

それが、数年来のわだかまりから解放された瞬間だった。

 

「フッ…束の奴、少しは成長したか。」

 

 良く見ると、千冬の目にも涙。貰い泣きしているのだ。

 

「お、おにのめにもなみだ…」

 

「黙れ喋るな。」

 

「あ~ん?(威圧」

 

「…済まん、悪かった。」

 

 本当になのはに頭が上がらなくなった千冬。大丈夫なのか?

 

「それでね。この束さんはどうやってこの憎き亡国機業を成敗するかを考えた。

相手は世界規模の組織で、国家すら味方につけている強大無比な敵。

簡単には破れない。結局この束さんが考え付いたのは、

ISの母として世界のどのISも敵わない

『わたしのかんがえたせかいさいきょうのあいえす』を世に送り出して、

『ISで世界戦争を起こし、

武器を売って儲けたいのなら、この束さんが相手だ!』

って真正面から叩き伏せる事くらいだった。」

 

「「「「「(おいおい、普通無理だろ。)」」」」」

 

 世界規模の秘密結社に正面切って喧嘩を売ろうとする束も十分凄いが、

相手はその束の手に余る程強大だった。

 

「でも、いくらISの本家本元のこの束さんでもそんなISは造れなかった。

今日見せた紅椿もその目的で造られたISだけど、

あれでも要求を満たす機体とは言い難い。

結局こんな計画は無理なのかなと諦めかけてたんだ。

 

そんな時、出会ったのがなーちゃんなんだ。

なーちゃんと出会った日、この束さんはついポロリとその計画を語ってね。

そうしたら、なーちゃんはこう言ってくれたの。

『初対面の人にそう言う踏み入った話をするのは、

まだ心の底では諦めていないから。』

だって。それで、なーちゃんはこの束さんに協力してくれたんだ。」

 

「「「「「「「「「………………………………………………。」」」」」」」」

 

「皆もさっき見たよね?

ヤマト、つまり第5世代機のコンセプト『コアとCPUの分離』。

今までのISはコア=CPUだったけど、

ヤマトはコアと別にCPUとなるAIを搭載した。当然、これを実現するには

ISコアに頼らずに同等以上の知能を持つAIが必要になる。

これが難しいのなんの。この束さんでもできなかった位なんだ。

でも、なーちゃんが持って来たある物がそれを解決してくれたんだ。」

 

 そう言うとなのはは首から下げていたレイジングハートを手に乗せて掲げた。

 

「それが、このレイジングハートなの!!さあ、皆に挨拶するの!!」

 

『How do you do?

My name is Raising heart.』

 

「な、何ィーッ!!ペンダントが喋った?!!」

 

「こ、これは…」

 

「このレイジングハートとはかれこれ15年の付き合いがあるの!!

もう解ったと思うけど、束さんはレイジングハートのAIを解析した事で、

ISコアに頼らずにISを制御できるAIを完成させ、

ヤマトを建造することに成功したの!!」

 

「…成程、そう言う事か!」

 

「その結果出来たのが、遠隔部分展開やワープといった第5世代技能だよ。

あれは、なーちゃんが教えてくれた魔法が基本になっているんだ。

なーちゃん自身はこの手の魔法は苦手だったみたいだけど、

そこは人工知能の得意技、ヤマトのAIで補えば…。」

 

「まさに、まほうとかがくのあわせわざなの!!」

 

「…やけに急激に進化したと思ったら、そういうカラクリがあったんだな。」

 

「それで聞きたいんだけど、皆はどう思う?」

 

「どう思う…とは?」

 

「この束さんは今後もなーちゃんと協力して、

亡国機業を成敗する為に活動を続けるつもりだよ。

その上で、国家代表候補生として専用機を託された君等と、

そして箒ちゃんに聞きたい。皆はこの束さんの考えをどう思う?」

 

「「「「「「「「…………………………………………………。」」」」」」」」

 

 皆口を閉ざす。亡国機業は世界規模の秘密結社、

もし裏で自分の国と繋がっていれば、

下手な賛同は祖国への叛意の表明とも取られかねない。

 

「やっぱり…こんなのはおかしいよ。」

 

最初に答えたのはシャルだった。

 

「おかしい…やっぱりそう思うんだ。」

 

 ノーを突きつけられた。

予想通り、現役のIS操縦者には共感されなかったようだ。

落胆する束だが、シャルの回答には続きがあった。

 

「おかしいのは束さんじゃない。世界の方だよ!

折角条約まで作って禁止したのに…その条約を造った国が皆で無視するなんて、

こんなの絶対おかしいよ!」

 

 シャルがノーを突きつけたのは束ではなく、世界。

それは、束に理解を示すという意思の表明だった。

更に、他の専用機持ちも束の問いに答える。

 

「アタシも同感だわ。

その亡国機業とか言う奴等には誰かがきっちり落とし前を付けなきゃ!」

 

「ワタクシも、ISの道を選んだのは先祖代々の家名と、

我が家に仕える人々、そして遺産を護る為。

戦争の為では断じて在りませんわ。」

 

「全くだ。私とて連邦軍人の端くれ。軍人は戦争には反対する物だ。」

 

「私も皆と同じだ。姉さんをここまで悩ませる問題…さぞ根は深いだろう。

が、妹として、せめて手助けくらいはしなければ。」

 

 専用機持ち5人衆の意見は皆同じ、束への合意だった。

それが意味するところはたった一つ。

 

「皆…。それは、この束さんに手を貸してくれるって事で…いいの?」

 

「勿論です!ISを戦争に利用するって事は、

最悪ここにいる皆がそいつらの金儲けの為に

戦争に駆り出されるって事でしょう?私はそんなのは御免だ!!」

 

「勿論、アタシもよ。」「ワタクシも!」

 

「私もだ!」「僕も!」

 

「そう…そうなんだ…。皆…ありがと…。」

 

「めでたい事なの!!テロリスト呼ばわりされている束さんにも、

解ってくれる人はまだこんなにいたの!!

これなら、きっと束さんの夢も叶うの!!」

 

「な~ちゃぁぁぁん…!」

 

 泣きながらなのはに抱き付く束。だが、忘れられている者がもう二人。

 

「おいおい束、ここにも協力者がいるぞ。」

 

「ちーちゃん…。」

 

「私も加勢させて貰うぞ。弟や生徒を戦わせるのは嫌だが、

奴等の金儲けの為に戦わさせられるのはもっと嫌だからな。

…一夏、お前はどうなんだ?」

 

「俺だって戦うさ!!世の中戦わなきゃ生き残れない場面がある!!

理不尽な暴力が沢山ある!!

俺は仲間をそんな理不尽から護ってやりたいんだ。この世界で戦う仲間を!!」

 

「フッ…そうか。なら決まりだな。」

 

「ちーちゃん…いっ君…。皆、有難う!!」

 

 未来の者は口を揃えて語る。IS革命と呼ばれる一連の騒乱。

その萌芽はこの時から始まったと。

 

「それじゃ、なのはさんの正体も解った事だし、

今日はお風呂に入って、ゆっくり休もう!!」

 

「そうですわ!初日はバラバラでしたから、

皆さんと一緒の露天風呂は楽しみですの!」

 

「ほら、織斑先生も一緒に!」

 

「お、おい押すな押すな。」

 

「ハハハ…。」

 

「それじゃ、束さんも一緒に入りましょうか。」

 

「………………うん!」

 

 なのはの誘いに応じつつ、束は一人涙を零したのであった。

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