魔法戦記リリカルなのはIS 高町なのはのIS学園見聞録 作:ピロッチ
臨海学校が終わって程なく、朝練を終えた生徒達の間でこんな話が広まった。
「ねえねえ、例の話聞いた?」
「公欠してた生徒会長が帰って来たとかいうあれでしょ?」
「そうそう、学園史上初めて
在学中に国家代表操縦者に任命された天才なんだって!」
「確か、ロシアの代表操縦者なんだって?」
「…暴走核弾頭さんとどっちが強いのかな?」
「そ、それは…」
どう考えても国家代表+6を単機で〆たなのはだが、相手だって国家代表。
実際に戦わなければ分かるまい。と、そんな話をしていると…
「ねえ、そこの1年生に聞きたいんだけど?」
「「「…えっ?」」」
背後から何者かの声が。
振り返ると右手に扇子を持ったライトブルーの髪に赤い瞳の生徒がいた。
胸元につけた黄色のリボンは、2年生である事の証だった。
「えーと、どちら様ですか?」
「どちら様って、今皆が噂話をしていた生徒会長って、私の事だけど…?」
何を隠そう、彼女こそこの度帰国して学園に到着した生徒会長、
更識楯無その人であった。
「「「ええ~っ!!」」」
「これがホントの『噂をすれば影が差す』。…なんちゃって。
それで聞きたいんだけど、皆は高町なのはって生徒、知ってるかしら?」
「えーと、高町なのはって…暴走核弾頭の高町さんの事ですか?」
「そうよ。彼女に会いたいんだけど、皆はその人がどこにいるか知ってる?」
「はい。あの人は織斑先生の命令で、
いつも第3アリーナで専用機持ちの人達と朝練をしているんです。」
「第3アリーナね。分かったわ、有難う。」
そう言うと、楯無は去って行った。
一方その頃第3アリーナでは…
「高町、今日の朝練は終わった様だな。」
「いかにも!」
「うむ、篠ノ之の事で話がある。
着替え終わったら2人共警備主任室まで来てくれ。」
「「はい。」」
そして、千冬に言われるがまま警備主任室へ来たなのはと箒。
「織斑先生、先程の話はどう言う件で?」
「うむ。お前に日本政府から、
『今月末に行われる代表候補生認定試験を受験して欲しい』
との通達があってな。」
「代表候補生認定試験…ですか?」
「そうだ。今のお前は高町の鍛錬により、
訓練機でも専用機と十分戦えるレベルに到達している。
一般生徒の中では間違いなく最強の部類に入るだろう。
更に言えば、束によるとお前のIS操縦適正を再測定した所、
最高位のSランクに向上していた事が解った。
つまり、私や高町と同ランクと言う事だな。
この度学園が書類を送った結果、受験させる資格ありと判断されてな。」
「本当ですか?!」
「それはめでたいの!」
「近日中に願書が届く。試験までは予習復習でもして備える事だ。」
「ありがとうございます!!」
「篠ノ之に関しては用件は以上だ。下がってくれ。」
「では失礼します。(退室」
「さて、高町…実は貴様の処遇で世界中が揺れていてだな…。」
「?」
「いくら束の専属とは言え、
貴様が公的な資格無しに専用機を持っていると言うのが問題になっていてだな、
それだけではない。貴様が暴走核弾頭である事実を幾許かの国が掴んだ様でな。
特に米仏露3国の諜報機関からの接触が激増している。」
「これも有名税の一つの形なの!…む!(視線を横へ)」
「どうした?」
ふと視線を逸らしたなのは。千冬が何事か尋ねる。
「確かに、諜報機関が活発に動いている様なの!」
「むむ、確かにな。出来れば穏便に済ませたいが、奴の性格上無理だろうな。」
「知っている人なの?」
「ああ。私が去年担任を務めた生徒の一人だからな。
奴に会ったらこう言っておけ、『少しは私の胃を労わる努力をしろ』とな。」
「覚えておくの!!」
「で、話の続きだが…貴様にはこれ以上ごたごたを増やして欲しく無いと言う
学園たっての願いで篠ノ之と共に代表候補生の試験を受けて貰いたい。」
「極めて不純な動機なの!でも合法的に専用機を持てる身分になれば、
IICも文句は言えないだろうし、
何よりヤマトの情報を日本政府に渡す事になるから、
諜報機関をそっちへ誘導して学園への接触を減らせる…そういう事なの?」
「そうだ。」
「では物は試しに受けて立つの!!」
「ああ…用件は以上だ、下がってくれ。授業には遅れるなよ?」
「失礼するの!」
警備主任室を出たなのは。教室に戻る帰り道、なのはは急に立ち止まった。
「そこの人、気付いてないとでも思ったの?」
「おやおや…もうバレたんだ。」
その声と共に楯無が姿を現した。
その手に持った扇子には「初顔合わせ」の文字が。
「家業の都合でストーキングは結構鍛えたのに…良く解ったわね。」
「普通の人なら誤魔化せても、私には通じないの!…で、どちら様?」
「IS学園2年生、現生徒会長にしてロシア代表IS操縦者、更織楯無よ。
その自分を模したぬいぐるみの待機形態…
貴女が『暴走核弾頭』高町なのはで良かったかしら?」
「いかにも、私が高町なのはなの!」
「ずどらーずどう゛ぃちぇ。やまとだよ。」
「!! ISが喋った?!」
「だー。これぞせかいはつのだいごせだいきー。」
「(呆然)…………。ハッ!」
(いけないいけない…あっちのペースに乗せられる所だった。)
流石の楯無も、まさかISが喋るなどとは予想もつかなかった様だが、
そこは日頃の鍛錬の賜物か、即座に平静を取り戻す。
「ど、どうも。生徒会長の更識楯無よ。」
「で、生徒会長がなんでストーキングなんて真似をしてるの?」
「一言で言うなら、
貴女に関して生徒の代表者として確認しておきたい事が有るの。
高町なのは24歳。前職は篠ノ之束博士のアシスタントで、専用機はヤマト。
表向きは『第3世代』ISだけど、実態は『第5世代機』。
先月の学年別トーナメント後、VTシステム使用の容疑で逮捕状が出た同級生、
ドイツ連邦軍ラウラ・ボーデヴィッヒ少佐捕縛任務のため派遣された
ICDのIS隊及び、ドイツ代表操縦者セルベリア・ブレス大佐を単機で撃退、
全員に全治1か月以上の重傷を負わせ、
彼女のとその部下達の無罪を力づくで認めさせた。
現在、担任の織斑先生の命で
同じ組の専用機持ちの朝練の教導役を受け持っている…
これが私が今まで集めた情報だけど、間違いないわね?」
「正解なの!流石
でも、どうしてそんなに私の詳細を知りたいの?まさか弱みを握りたいの?!」
「(ギクッ!)まさか。私、そこまでセコイ女じゃないのよ、高町さん。」
「なら良いの!他には?」
楯無は扇子を裏返し、「警告」の文字を見せた。
「では生徒会長として一つ警告を。貴女と織斑君、部活に入ってないわよね?」
「そういえば、自主練漬けで部活動なんて入る暇がなかったの。何か問題が?」
「あるわよ。1年生の中では間違いなく最強の実力者と言っても良い貴女が
どこの部活動にも所属していないというのは、
生徒の代表者として、本当に困るのよ。理事会にも急っつかれてるし、
今週中は見逃すけど、来週には所属する部活を決めて欲しいのよ。
私からも通告しておくけど、貴女からも織斑君にもそう伝えておいてほしいな。
何なら、生徒会入りという選択肢もあるけど…。」
「そうだったの?まあ、それ位なら承るの。
ああ、それと、千冬先生から言伝なの。『私の胃を労わる努力をしろ』なの!」
「気を付けておくわ。部活動の件、よく考えておいてね。
それじゃあ私はこれで。」
それだけ言い残し、楯無は去って行った。
「怪しいの…」
どうやらロシアはなのはに興味津々のようだ。自陣営に引き込みたいのか、
あるいは危険人物として消し去りたいのか。
今は結論を出すには早い、もう少し待とう。
そう決心しつつ、なのはは朝食を取りに食堂へ向かうのであった。
そして朝食時、○HKのニュース番組からこの様な報道が入った。
「次のニュースです。経営危機が取り沙汰されている欧州最大手ISメーカー、
デュノア社から待望の第3世代機、『タイフーン』が発表されました。
最大の特徴は、第3世代機では史上初となる量産機であり、
現在日本が開発中の第3世代機『打鉄弐式』に先んじての完成となります。
先日行われた報道機関へのお披露目に際し、
同社CEO、ロベルト・デュノア氏は
『世界最初の量産可能な第3世代機というアドバンテージを売りに、
まずはR・リヴァイヴの運用国を中心に売り込みを掛ける。
売上次第では、本機をベースとした宇宙開発特化型の機体を開発し、
専門部署を立ち上げることも予定している。』
として、量産への意欲と新たな展望を明らかにしました。
これを受け、IIC本部の報道官は次のようにコメントしました。
『フランスが第3世代機を完成させたことは大変喜ばしい。
IIC理事会は現在、
本機を含めた形でのやり直しをEUに提案するか協議中である。』
では次のニュースです…」
「父様…」
ニュースを見たシャルロットは感慨も一入だ。
第3世代機が完成したのなら、本妻の実家も文句は言えないだろう。
これで彼女は名実共に晴れて自由の身となれた。
「シャル、良かったな!」
「これで、デュノア社も立ち直りますわね。」
「良かったじゃん!」
「皆、有難う。きっと会社の皆も喜んでると思うよ。」
「そうだな…、夏休みには帰省して顔を見せてやると良い。」「そうだね。」
「お前達、SHR開始10分前だ。遅れないように早く完食しろ。」
「「「「「はーい!」」」」」
この時、あの様な事になるなどと誰が予想しただろう。
欧州がとんでもない災いに見舞われるあの悲劇は、まだ兆しすら見せていない。