魔法戦記リリカルなのはIS 高町なのはのIS学園見聞録 作:ピロッチ
そして、その日の放課後…
アリーナのピット内に1機のISがあった。
どうやら未完成らしく、長い間置きっぱなしの様だ。
その機体と向き合い、端末を操作する少女の姿があった。
その名は
そして生徒会長楯無の妹でもある。簪はこの機体を完成させる為、
アリーナで放課後の鍛錬をしている一夏達のデータを収集して、
反映させようとしていたのだ。
「……………。」
そんな彼女の背後から、怪しく近づく影があった。
「じ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~っ…。」
「っ…誰?!」
突然背後から聞こえたじ~っの声に驚き振り返ると、
そこには3頭身のぬいぐるみが浮いていた。
「ぬいぐるみ…?」
「やあ。」
「?!喋った?!!」
「わたしがやまとだよー。」
「ヤマト?! じゃあ…」
あの事件以来、ヤマトの名は操縦者のなのはと
その異名「暴走核弾頭」と共に学園中に広まっている。
そして、ヤマトがいると言う事は…
「そう、私もいるの!!」
「ヒッ?!」
「私が高町なのはなの!!」
「ど、どうも…1年4組の更識簪…です。」
「更識…つまり、貴女は生徒会長の…」
「はい、楯無は私の姉です。」
「やっぱり!生徒会長とは今日の昼休みに一戦交えて勝ったばかりなの!!」
「そ、そうなんだ…」
「で、ここで何をしてたの?」
「この機体を…打鉄弐式を完成させる為のデータの採集をしてたの。」
「成程。」
話を聞くと、この機体は日本が世界初の量産型第3世代機の
プロトタイプとして開発中だったが、一夏の登場により開発元の倉持技研が
彼の専用機白式の方に掛かりっきりになってしまった為、
未完成のままで放置されていた。
それを簪が専用機として使う事を条件に譲り受け、
自力で完成させようとしていた。
簪は周囲から天才と言われている姉に対してコンプレックスを抱いており、
身内からも出来損ないと蔑まれる日々を送っていた。
姉は在学中に一国の代表に伸し上がり、専用機も自分で造ってしまった。
だが自分はそんな姉にいつも勝てない、
天才の姉と比べられて、誰も自分を認めてくれない。
だから現在開発中の量産型第3世代機、
「打鉄弐式」のプロトタイプ1号機を引き取り、
自分の手で完成させようとした。完成させれば、周囲だって認めてくれる。
更織の出来損ないと身内から蔑まれた過去から決別できる。
「でも、打鉄弐式は…」
「まだ完成していないのかな?」
「うん。やっぱり、私じゃ無理なのかなって何度も思った。
所詮、私じゃお姉ちゃんの真似事をしても上手くいかないんだって思った。
だけど、諦められなくて…それで…。」
「皆の鍛錬のデータを採集して、その機体に反映させようとしたのかな?」
「そう…でも、一番の本命は…」
「やっぱり、やまとなの?」
「(無言で頷く)」
ISの本家本元が造った第5世代機。そのデータを反映させれば、
もしかしたら姉の専用機以上のISを造る事が出来るかもしれない。
そう思ってデータを取っていた。
「そう言う事だったの?それは失礼な事をしてしまったの!」
「…良い、専用機のデータを勝手に取っていたのは私だから…」
「でも、今のを聞いて確信した事が有るの!………同じなの!!」
「同じ?」
「実はこう見えても、私も二女で落ちこぼれなの!!」
「え?え??」
「私の家は喫茶店だけど、先祖代々ある剣道の流派を継承しているの!!
そして、一人ずついる私の兄と姉は後継者として剣の腕に恵まれているの!!
でも私は剣の腕何てからっきしなの!!
つまり落ちこぼれなの!!貴女と同じなの!!!」
「エエエエエエェェェェェェ(´Д`)ェェェェェェエエエエエエ」
なのはの言葉が全く信じられない簪。当たり前だ。
あれだけの事をしておいて自ら落ちこぼれを名乗った所で誰が信じるのか?
「落ちこぼれって…落ちこぼれって…。」
「でも、そんな私でもIS操縦者としての腕は知っての通りなの!!
こればかりは親兄弟の誰も真似できないし、真似させないの!!
『競うな、持ち味を活かせ』。
人間として必要な事を全て教えてくれた父の友人から授かった言葉なの!!」
「そ、そうなんだ…。」
「そう言う事だから、お姉さんと同じ事をして敵わないと思うのなら、
自分の持ち味を見つけ出して、それを伸ばす事を心掛けるの!!」
「自分の持ち味…?私に、それが出来るの?」
「この学園に入学できた時点で、その資格と素質はあるの!!」
「………………。」
「何にせよ、まずはこの機体をちゃんと完成させない事には何も始まらないの!!
と言う訳で、貴女が望めば協力をするの!!」
「協力…?貴女が手伝ってくれるの?」
「そうだよ。やまともかいはつならきょうりょくするよー。」
ISの本家本元、束直々の作であるヤマトのAIなら、
IS開発のノウハウも充分持っている。
更に、仕上がった機体のチェックをなのはが行えば言う事は無い。
「…じゃあお願い!この機体の開発を手伝って!」
「おーけーなの!さっそくげんじょうをみてみるの!!」
ヤマトは簪から端末を受け取ると、
自身と端末をケーブルで繋ぎ、打鉄弐式の状況を確認する。
簪はキーボードに触れずに端末を操作する
ヤマトの姿を食い入るように見つめていた。
「………」
「どう、ヤマト?」
「…………これじゃだめなの。」
「駄目…?」
「ひとことでいうと、ちゅうとはんぱなの。
ありとあらゆるめんでておちがあるの。
しゅつりょくがほんらいひつようなぶんにぜんぜんたりてないの。」
「クスン…」
呆気無く一蹴され、半べその簪。
「でも、だれのたすけもかりずにここまでできたこと。
それはじゅうぶんすごいことなの。
なのはでもぶらこんせんせーでもできないことをやった。
それはむねをはっていいことなの!」
「…ほ、ホント?」
「ほんと!あとはやまとがてなおしをするの!!
じゅんちょうにいけば、せっけいだけならこんがっきちゅうにおわるの!!」
「……!」
今学期は今週で終わりである。
つまりヤマトは設計は最短で一週間で終わると言い切ったのだ。
「あ、ありがとう…」
「それじゃあ、せっけいがおわったらあとはまかせるの!」
「え?」
「とちゅうまではひとりでできていたんだから、
さいごのけじめはじぶんでつけるの。そのほうがじしんがついておとくなの!」
「……!!うん、高町さん、ヤマト、ありがとう!
…そうだ。もう一つ聞きたい事が有るの。」
「なんなの?」
「お姉ちゃんと勝負したって言っていたけど、どうして戦う事になったの?」
「それはね、どうやら彼女は私の事をもっと調べたいみたいなの!!
大方、弱みを握って
束さんや千冬先生曰く、
実家や日本政府、FSBまで私を調べたいみたいなの!!」
「そう、お姉ちゃん、そんな事をしてたんだ…」
だがなのはは知らないが
楯無とてザンギエフ露大統領から直々に命令されてやっているのだ。
止めたかったら大統領本人に話を付けねばなるまい。
しかし日露両国、いや世界のどの国も束の専属操縦者と第5世代機という
超一級のパワーバランスブレイカーの情報や技術は欲しいに決まってる。
口約束で止めさせるなどできっこない。
「それなら…。」
「? どうするの?」
「私、この機体が完成したら…お姉ちゃんにIS戦を挑もうと思います。
お姉ちゃんに、そんな汚い事をして欲しくないから。」
「良いの?仮にも国家代表が相手だけど。」
「それでも、だよ。私、家族とはあまりうまく行かなかったけど、
お姉ちゃんだけは別だから。
私の言葉なら、お姉ちゃんだって聞いてくれる筈。」
確かに、理に敵ってはいる。
「そう、それなら全力を尽くせる様にヤマトには頑張って貰わないとね。」
「あいえすのせっけいならまかせろー!」
「はい!」
「待っててね。もうすぐ完成させるから。
そうしたら、お姉ちゃんと正面切って向き合うんだ。」
誓いを新たにする簪。しかし、なのはから非情な宣告が下された。
「そうだ、その機体が無事に完成したら、
貴女も2学期からは他の専用機持ちと一緒に鍛錬に参加するの!!」
「………………えっ?」
頑張れ簪、君の受難はこれからだ!