魔法戦記リリカルなのはIS 高町なのはのIS学園見聞録 作:ピロッチ
代表候補生の試験を受けにきたなのはと箒、果たして、試験は無事に終わるのか?
そして、1学期最後の日曜日、
なのはと箒は引率の真耶共々代表候補生認定試験受験の為、
防衛軍のヘリで本土の空軍基地にやって来た。
「ここが試験会場…」
「懐かしいですね~。私もここで認定試験を受けたんですよ。」
「そうなんですか?」
「ええ、候補生を脱退した今となっては昔の話ですけどね。」
何かおかしな事に気が付いただろうか?
何故日本なのに自衛隊ではなく防衛軍なのだろう?答えは白騎士事件に遡る。
あの事件の結果、日本中で憲法改変と軍拡の声が上がり、
翌年の国民投票で憲法が書き換えられ、自衛隊は防衛軍に再編されたのだ。
その際、規模も大きく拡大する事が決まり、防衛予算は年30兆円に増額。
人員は陸軍25万、海・空軍は各13万まで増員し、
旧自衛隊の水陸機動旅団を基に総勢9万の海兵隊を創設した為、
防衛軍の人員は一気に60万人まで増やされた。
当然、念願の半島統一を5年前に達成した韓国と中国は反対したが、
当時ISの技術を独占していた日本は尖閣諸島及び竹島同時奪還と言う
力づくの手段で反撃。全面戦争の飛び火を恐れた米露が大慌てで間に入り、
北方四島の返還に加え、日米安保の解消と在日米軍の日本領からの完全撤退、
及び中韓両国へ割り当てるISコアの倍増を条件に日本と中韓を和解させた。
更に、ここにISが加わるのだ。日本はIS発祥国の特権で
米国と並び世界トップタイの50個のコアを保有している。
その内軍が保有するのは2個中隊分32個と研究用の4個で計36個。
更に警視庁と日本政府指定のISメーカー「倉持技研」が4個ずつに
残りは代表及び候補生の分である。(当然、ヤマト搭載の8個は含まれない)
この結果、こちらの日本は中国を抜いてアジア一の軍事大国にのし上がり、
極東アジアは往年の日本一強体制が復活した。
そんな訳で、ISと白騎士事件により立場が良くなった防衛軍上層部の中には、
束に好意的な者が少なくなかったりする。
「では最後のおさらいをします。試験はISに関する知識を計る筆記試験と、
ISをどの程度動かし、戦えるのかを見る実技試験の2種類が行われます。」
「そうでしたね。」
実技に関しては2人共問題ない。
なのはは国家代表、それも最上位勢を難なく叩き潰した実力者だし、
入学当時は他の生徒と変わらなかった箒も一夏達の鍛錬に付き合わされた結果、
一般生徒の中では最強の一角に入る程度の練度まで鍛え上げられていた。
だが、問題は筆記試験だ。
何たってIS学園は倍率1万倍とも言われる世界一のエリート高校。
国家代表候補生でもない限り入れるのは本物のエリートばかり。
しかし箒は束の妹と言うだけで日本政府に強制的に放り込まれた身。
学力に関しては人並みしかない。
「期末試験も散々でしたからね…
一般科目は60点以上が1つも有りませんでしたし。」
「だ、大丈夫ですよ篠ノ之さん!
赤点(50点未満)が無かっただけまだマシですから!
それに、筆記は4択のマークシート方式だから大丈夫ですって!
経験者が言うんだから間違いはありません。」
「なら良いんですが。」
ちなみになのはは理、数とIS理論は満点で学年トップ。
英語も酷似したミッドチルダ語を使いこなしている為90点台後半。
国、社は50点代のギリギリ及第点。総合的な評価は平均80点強だが、
これでもまだ中の上と上の下の境界付近との事だ。
IS学園がいかに高レベルのエリート揃いかが伺える。
「さあ、それじゃあ中に入りましょうか。」
「ええ。」「いざ行くの!」
「ねえ、あれ…」「あの眼鏡の人って…」
3人が会場となる建物に入っていくと、軍のIS操縦者らしき者達がいた。
真耶を見つけるなり、何やら噂し合っている。
「あの人、
「そうそう、射撃重視の異端の操縦者だった…。」
「惜しい人だったよね…近接戦さえ出来てれば次期代表に成れたのに…」
そのひそひそ話が耳に入ったのか、
真耶の表情がどんどん険しくなり、顔色も見る間に悪化していく。
「(射撃重視は『異端』…?)山田先生、どうされました?」
「……………。」「山田先生?」
「…ハッ!いけないいけない。
あまり触れて欲しくない事についての話だったから…」
「そうですか…。っと、ここが筆記試験の会場ですね。」
「では、ヤマトの御守りくれぐれもよろしく頼むの!」
「はい。2人共試験頑張って下さい。」「がんばれー。」
「はぁ…大丈夫かなぁ…。」
なのははいつも通りの態で、箒は不安げに会場となる講堂へ入って行った。
そして試験開始から幾らか経ち…
真耶は喉が渇いた為コーヒーを買いに基地の自販機へと向かう。
「懐かしいな、合宿で来て以来、ここは何も変わってない…」
真耶が基地の窓から外を眺めていると…
「ま、真耶?…お前、真耶か?」
突然何者かが真耶を呼ぶ、真耶が振り返るとそこには…
「い、飯田さん…。」
そこにいたのは、少佐の階級章を付けたポニーテールの女軍人だった。
その名は
千冬の後任の日本代表操縦者の一人でもあった。
一人と在るのは、日本は国家代表操縦者の席を2つ持っているからである。
どういう事かと言うと、現在ISを保有している21か国の内
G8及び印、中、
国家代表操縦者を2人まで持って良いとされており、
こうする事で国家代表操縦者が合計21+11=32人となり、
2の5乗というトーナメントにおいて切りの良い数字となるのだ。
「IS学園の教師に就職したそうだな。
ここぞの時にドジを踏んでばかりだったが、大丈夫なのか?」
「ええ、おかげ様で。今は織斑先生が担任をやっている組の副担任で、
例の織斑先生の弟さんも私の組なんですよ。」
「へえ、姉が弟の担任か?学園も妙な人事をするようになったな。」
「ええ、織斑先生も首をかしげてましたよ。
『何で私が担任なんだ、姉として接せなくなるではないか』
ってよく愚痴ってましたし。」
「そうか…で、そのぬいぐるみは何だ?」
「これですか?これは今日代表候補生の試験を受けにきた生徒の専用機です。
名前はヤマト、篠ノ之博士が直々に作った世界初の喋るISなんですよ。」
「どーもはじめまして、やまとです。」
「あ、ああ…。ちゃんと挨拶するのか、束が作った割には随分常識的だな。」
「そうでもないですよ。篠ノ之博士を悪く言うと、
織斑先生相手でも容赦なくお仕置きしますし、
それに、持ち主はもっと恐ろしい人ですから…。」
「いえーす。」
「……前言撤回、やっぱり危険物だな。」
「ふへへへ、それにしてもばくにゅうだいみょうじんさまはふかふかだなー。」
「ひゃあ!やめて、よして、触らないで!!」
「爆乳大明神…真耶、お前昔から色々おかしな渾名を付けられていたが、
とうとう回り回って神呼ばわりされるようになったのか?」
「そのとーり!たばねはかせじきじきのめいめいなのー。」
「酷い!」
「…………………何してるの?」
と、そこに回答を終えたなのはがやって来た。
「ああ、高町さん!丁度良かった、
ヤマトが私の胸で遊ぶんで何とかして下さいー!」
「しょうがない、ほーら、定位置だよー。」
(ヤマトの襟首をつまんで、自分の頭に乗せる)
「はーい。」
「それで、こちらの方は?」
「私か?私は航空防衛軍少佐で、現日本代表操縦者の飯田奈緒だ。
お前の担任の千冬と束の先輩にあたるな。」
「私が高町なのはなの!所で、ここに来る途中で妙な話を聞いたの!!」
「何だ?」
「他のIS操縦者の人が山田先生を見て、
『射撃重視の異端の操縦者』と呼んでいたの!!
射撃を異端扱いするなんて長距離特化型の私への挑戦なの!!
どんな教え方をしてるの?!!」
いきなり喧嘩腰のなのは。
初対面の、しかも他国とは言え1階級上の人間によくそんな態度採れるな。
「な、何だと!日本人なら正々堂々、剣を使うのが正しい在り方…
「What?!」
「!!」
「私は外国暮らしが長いから、そんな下らない事は考えた事も無いの!!
『競うな、持ち味を活かせ』の教えに基づいて長所を磨くのが私の道なの!!」
「く、下らない事だとぉ?!」
「はわわ、2人共止めて下さ~い!!」
一触即発の事態に陥るロビー、
と、そこに頭を使い過ぎてフラフラの箒が合流した。
「や、やっと終わった…。」
「おや、篠ノ之さんも意外と早く終わりましたね。」
「はい、何とか…あ、あの、其方の方は?」
「この方は飯田奈緒少佐。織斑先生の後任の国家代表操縦者です。」
「あ、はい。えーと、篠ノ之箒です。」
「そうか…。私は急ぎの身だ、この続きは午後の稼働試験にとって置く!」
奈緒はそう言うと去って行った。
「な、何か有ったんですか?」
「それが…」
「射撃重視の戦い方を異端と呼んでいたのは、
日本人は黙って刀を使うのが正しい在り方とか言う
ふざけた押し付けの結果だったの!!これは何とかしないといけないの!!」
「は、はぁ…そうだったんですか…」
物凄く嫌な予感しかしない箒。
何せ目の前にいるのは暴走核弾頭である。間違いなく大騒動になるだろう。
ふと外を見ると、ISの訓練をやっている。
昼食までまだ間が有るので、2人は訓練の様子を密かに見学する事に。
「やっぱり、近接戦の訓練に偏っている節があるなー。」
なのはの言葉通り、訓練のメニューがどれもこれも全部接近戦ばかりで、
射撃武装対策を教えようとしていない。そう思いながら訓練を見学していると…
「2番組!一時訓練中断!」
「やれやれ…」
「あら高町さん、こんな所にいたんですか?」
「ええ、ちょっと訓練の様子を見てみようかと。」
「ああ、そうだったんですか~。」
なのはと真耶がそんな話をしていると…
「6番組やる気あんのか!?」
さっきの教官らしき女が他の操縦者に怒鳴っていた。
「誰ですか、あの教官は?随分と高圧的な人ですね。」
「
私や織斑先生の教官も務めた実績ある人なんだけど、
少し性格に難があって他の代表候補生からも賛否両論なんですよ。」
「はあ…そうなんですか。」
「ええ…」
「おっと、そろそろ昼食の時間ですね。続きはこの後で。」
そして昼食後…、
「次はいよいよ稼働試験ですね…その…頑張って下さいね…。」
何故か塞ぎ込むように告げる真耶。これは本当に過去に何か有ったのだろう。
「これは…事によると、一波乱あるんじゃないかな?」
そして、いよいよ稼働試験である。
実際にISに乗り込み、どれだけ動かせるのか、戦えるのかを計る。
「稼働試験は30分後に開始します。2人は準備に移って下さい。」
「「はい!」」