魔法戦記リリカルなのはIS 高町なのはのIS学園見聞録 作:ピロッチ
そして試験の翌日、IS学園は創立8回目の夏休みに入った。
夏休みに入ると、生徒達は基本的にそれぞれの実家へ帰郷する。
そして外国人生徒、特に専用機持ちは運用記録報告の為、
一時帰国する事が義務付けられている。
当然、1組も外国人の専用機持ちは夏休みが始まるや否や帰国するだろう。
そして残留組はと言うと、なのはは箒の専用機である紅椿の受領に備えて
自主練の為に暫く学園に残り、一夏は千冬と共に自宅に帰る事になるだろう。
しかし、あのブラコンが弟同伴で自宅に帰ると何をやらかすか予想もつかない。
そんな時、なのはは束から連絡を受けてある所に来ていた。そこは…
「これはまた…人里離れたなんてレベルじゃないの。」
そこは雪と氷の大地、南極大陸。
かつて使われた某国探検隊の基地の廃墟の地下に、
束の隠れ家の一つが隠されていたのだ。
確かにここなら早々見つかる事はあるまい。
なのはも座標を教えて貰い、ヤマトワープを使う事でようやく到着した。
「束さーん、私ですよー!」「やまとだよー。あけてー!」
地下に通じるハッチをノックすると、中から白髪の少女が顔を出した。
「お帰りなさいませなのは様。束様もお待ちです。」
「やあクロエ、変わりない様で何よりなの!!」
「なのは様も御無事で何よりです。」
彼女の正体は、かつて束が引き取って養子として巣立てている少女、
クロエ・クロニクル。どうやらフェイトと同じクローン人間なのだが、
詳細を知っているのは本人と束だけだ。
「やあなーちゃん、急に呼び出してごめんね。さあ入って。」
「ではお邪魔するの!!…と、その前に、頼まれていた物を渡すの!!」
ここに来る前、なのははある物を束に頼まれていた。
なのはが持って来た箱に入ったその正体は…
「おおっ!こ、これはこの束さんの大好物、『辛さ1000倍カレー』!!
ヒャッハー!!持つべきものは友なのー!!」
毒々しい真っ赤なパッケージが特徴のレトルトカレーだった。
束は余程嬉しいのか箱を手に大はしゃぎだ。そんな束を見てなのはは思った。
「(これを昼食に出されたらどうしよう…。)」
数分後…
「それで、代表候補生試験はどうなったの?」
「それが、飯田奈緒とか言う千冬先生の後任の代表操縦者と
代表監督を称する倉林美也子とか言う不届き者がいて…」
なのはは事の顛末を説明した。
「うわー、くっだらなー!!
この束さんがISを造ったのを剣道の手助けかなんかと勘違いしてる訳?!
でもなーちゃんが徹底的に〆てくれたなら、少しは大人しくなるよね?!」
「だと良いの、今度何かやってきたら日本にいられなくしてやるの!!」
「うんうん、やっちゃえ、やっちゃえ!!」
「では次なの!束さんがこの前デュノア社に渡した
第3世代機の…タイフーンでしたね?
昨日1号機を引き渡したみたいだけど…どうなったの?」
「にゅふふふ~!流石はこの束さんの作品!!
第3世代機なのに量産可能って言うのが決め手になったみたいでね、
IICもEUも『
って方針で意見が一致したみたい!
まあ、このアドバンテージが有る限りそのまま制式化は待ったなしだね。」
「それはめでたい事なの!!デュノア社とは
『経営再建なり次第宇宙開発の専用機開発の為、宇宙開発の専門部署を創る。』
という約束をした手前、きっちり売り上げを出して貰わないといけないの!!」
「だよね~。という訳で
デュノア社から契約通りお礼として3000万ユーロを受け取ったから、
ここから例のICDの専用機の修理代を現金一括で払ってきたよ!
(領収書をピラピラ)
今頃ICPOの連中、札束をヒイコラ言って数えてるんじゃないかな?」
「それだけじゃないの!
『自分が保有するISの修理代を篠ノ之束に請求したら、
事務総長の娘の嫁ぎ先から金を受け取って払ってきた』
と知ってどんな顔をしてるかも目に浮かぶの!!」
「アッハハハハ!!そうだよね!!
これで奴等もEUの次期制式最有力候補のISがこの束さん謹製だと気付いて、
怒りと屈辱で悶絶必至だよね!」
本当に根性の悪い大人達である。こんな大人になってはいけない(戒め)
「でもさ、本当に良いの?国家代表候補生なんて肩書を貰ったら、
身動きがとりにくくなるよ。」
「どうと言う事はないの!!
『無資格で専用機を保有する危険人物』扱いよりはマシなの!!
代表候補生になって、追手がかかるリスクを減らしておかないと。」
「う~ん、やっぱりそうなるのか。」
「束様、なのは様、そろそろ日本時間で正午になります。昼食にしませんか?」
「ああ、もうそんな時間か。それじゃあ今日はこの束さんが作るよ。」
「いいですね。是非お願いします。」
そして、数十分後…
「どうかな?この束さんも人並みに料理ができると自負してるんだけど…」
「大丈夫なの!お土産のカレーを出すかと思ったけど、和食系で安心したの!」
「だってこの束さんは日本人、それも実家は神社だもん。…無神論者だけど。」
神社生まれの無神論者。
成程、破天荒な行動の理由はここにあったのかと納得したなのはであった。
「ねぇ、なーちゃんは料理って出来るの?」
「私?そりゃもう。だって私は子持ちなの!!」
「え!子供がいたの?!」
「…養子なの。それに、実家は喫茶店なんで、自然と覚えたの!!」
「そうだったんだー。」
もし魔導に目覚めていなければ、そのまま実家の2代目になっていただろう。
「そうそう。束さん、紅椿の改良はどうなったの?」
「あー、紅椿ねぇ…
やっぱり、シングルコアだと燃費の悪さがどうにもならなくてさ…
結局、オクタコア化する事に決めたよ。」
「やっぱりそうなるのか…連続稼働時間が白式以下だったから、致し方ないの。
でも、そうなると統制用のAIが必要なの!AIはどうなっているの?」
「ああ、『モッピー』の事?それならもうじき完成するよ。」
「もっぴー?」
「うん、AIの名前だよ。完成したら、
この『箒ちゃん人形』を待機状態にするんだ。」
そう言って見せたのは、箒を模した2頭身半のにやけ面のぬいぐるみだった。
「…………(これ、貰った本人はどんな顔するのかな?)」
「そうだ、せっかくだからテレビでニュースでも見るか。」
と、ここで束が唐突にテレビのスイッチを入れ、
チャンネルをN○Kに合わせた。
『次のニュースです。
EU、ヨーロッパ連合は現在進めている
選定を一旦中止した上、この度完成したフランス製第3世代機
タイフーンも含めた形でもう一度やり直す事を正式に決定しました。
今回新たに候補に挙げられたタイフーンですが、
この機体はデュノア社が開発した第3世代機で、専門家の話では、
「世界初の量産型第3世代機である事が今回の決定の要因なのは明白だ。
その汎用性と量産性が認められれば、
滑り込みで制式化を勝ち取る可能性もある」との事です。』
上手く行った。これでタイフーンがEUの制式ISとなれば、
デュノア社はEUから大量の発注を受け、一挙に業績を立て直すだろう。
「やったぜ。」
「採用が決まれば、デュノア社から契約通り1000万ユーロが届くの!」
尚、束がIS関連の発明で稼いだ金はセシリアの総資産を遥かに上回る。
『これを受け、IIC、国際IS委員会の
リーバーマン常任理事は次の様にコメントしました。
「ISの発祥国である日本に先んじ、
欧州から世界初の第3世代量産機が誕生したとなれば、
これはIS史における新時代の始まりを意味する。
我々人類はISの母タバネ・シノノノに頼らずとも、
自らの知恵と技術に依りISを発展させるだけの…」』
「!!!」
テレビの画面に映るリーバーマン常任理事の顔を見たなのはは目を見開き、
驚いたような表情を浮かべた。
「なーちゃん?」「どうしました?」
「ま、まさかこんな所に…」
「どういう事ですか?」
「プレシア・テスタロッサ…間違いないの!!!
このリーバーマンとかいう常任理事こそ、
間違いなくプレシア・テスタロッサなの!!!」
「「ええええええっ?!!」」
見間違う筈がない。画面に映った人物は、
見紛う事無くプレシア・テスタロッサその人であった。
しかし、なのはが直に見たあの時よりもその風貌は年老いて見える。
無理もない。この画面の女がプレシア本人なら、
その年齢は50代半ばに達しているだろうから。
「なのは様、それは本当ですか?!」
「見間違う筈がないの!!まさか、こんな所にいたなんて…
束さん、プレシア…いや、サンドラ・リーバーマンの詳細は解るの?」
「ちょっと待って、今詳細を出すよ…出た!!
サンドラ・リーバーマン、55歳。イタリア出身のIIC常任理事で、
翌年の現理事長・副理事長の引退に伴い、
次期理事長就任が内定している大物中の大物だよ。
コイツの娘、ラケーレはイタリアの代表候補生の一人だよ!」
「ラケーレ…まさか、アリシア・テスタロッサ?!
まさか、どうやって蘇らせたの?!」
「アリシア…?ああ、そう言えば、コイツはなーちゃんのいた地球で
娘を蘇らせる為に色々悪さをしてたって言ってたね。
でもまさか、こんな因縁が有ったなんてね。
コイツはIICの中でもこの束さんを捕まえようとしている急進派の大ボスで、
正直、顔も見たくないけど、
余りにもしつこかった御蔭でこの束さんが顔を覚えちゃった程だよ。
それだけ人探しの能力が有るって事なんだろうけどね。」
「そうだったの…となると…」
「うん。これではっきりしたよ。
あの無人機は間違いなくこの老いぼれの手駒だね。
性能テストで串刺しにされた爆乳大明神には堪った物じゃないね。
そして確実に言えるのは、
コイツは15年前の事件からまだ懲りてないと言う事だよ。」
「その通りなの!!そして、今後IICは計画の完全な邪魔者…
敵と認識して事に当たるべきなの!!」
「そうだね…はぁ~、気が重いよ…だってそうでしょ?
事と次第によっては、箒ちゃん達が自分の手で人を殺す事になる。
そんな惨い事はこの束さんとなーちゃん達大人だけで沢山だよ。」
「もう手遅れなの!!箒ちゃん達は自分の意志でこっち側に来てしまったの!!
それに、殺されるよりは殺した方がマシなの!!
あっちの地球にいた盆暗な誰かさんみたく、
『おちゃけくみかわちてはなちあえば、みんななかよくなれるんでちゅ!』
なんてのは、戦って雌雄を決した後でやれば良いの!!」
「ええ?なーちゃんの地球には、そんな馬鹿がいるの?」
「確かにいたの!!私にも駅前で絡んできたから、
『友達が苛められても全力で見捨てるなんて言う奴は、
頭蓋骨を毟り取ってコップにしてやるの!!』って言い返したの!」
「うええ…そんな大人も御免被るわ。」「同感です。」
「今は只、為すべき事を為すだけなの!!」
「そうだね。」
「私も、最後までお供します。」
「うん、二人とも…有難う。」
「ああ、そうだ。なーちゃんは夏休みは何をする予定なのかな?」
「私?私は…鍛錬かな。今も昔も、
『勝負事はより鍛えた者が勝つ』の原則を考えれば、
鍛えるに越した事は無いの!!」
「なーちゃん、そればっかだね…
1日35時間活動するこの束さんが言うのも何だけど、
たまには休む事も考えたら?例えば、ちーちゃんの家に居候したりとか。」
「千冬先生の家に?…………
うーん、面白そうなの!!機会が有ったら、考えておくの!!」
「うんうん、それが良いよ。」
こうして、なのはは束との情報交換を終え、ワープで学園に帰還した。
そして翌朝…束の携帯の着信音が鳴り響いた。
「ん~、こんな朝っぱらからこの束さんを呼ぶのは誰かな~?」
携帯を出すと、サブディスプレイに表示されていたのは千冬の名だった。
次回、またもや始まるオリジナル展開。
学園にやって来た懲りない奴等を前に、またもや暴走核弾頭が起爆…するのか?!