魔法戦記リリカルなのはIS 高町なのはのIS学園見聞録 作:ピロッチ
なぜ真耶を代表候補生から解任したのか、説明して貰いましょう。
夏休み初日、突如日本人の1年生生徒全員に夏休み中の補習を命じてきた
近接戦至上主義の回し者達。それは先日の代表候補生試験において、
射撃重点の真耶へ、ひいては自分への嫌味を言った
代表監督の倉林美也子の言動に激怒したなのはが集中砲撃で
千冬の後任代表、飯田奈緒を吹っ飛ばした報復であった。
だがその行為はISの母、束の逆鱗に触れた。束は学園に乗り込むと、
回し者達のドン、倉林美也子と綿貫三樹夫はNOT日本人とカミングアウト。
なのはに力づくでの排除を命じる。
IS学園を舞台に、国家代表対なのはの戦い(?)が再び始まろうとしていた。
「な、何て事を…」
「IICの役員を海に放り投げるなんて…」
「噂通りの暴走ぶりね…」
ICPO-ICDの飛行隊とドイツ代表操縦者を
真正面から叩き伏せた凄腕の操縦者、暴走核弾頭の噂は
防衛軍の間でも既に広まっていたが、
本人を前にして改めてその傍若無人さに震え上がる一同。
「き、貴様…」
「た、たたたたた高町さん?!それ以上はもう勘弁して下さい!
悪いのは近接戦で成績を上げられなかった私であって…。」
真耶が泣きの制止に入るが、なのははその程度で止まる筈がない。
「だからこそなの!!第2、第3の山田真耶を出してはならないの!!!
文句言うとこの前の続きなの!!!」
「でも!こんな事したら折角の代表候補生試験は…!」
「どうでも良いの!!こんな奴が代表監督に居座っていたんじゃ、
そんな肩書は取るだけ損なの!!!」
「あーん、やっぱりこうなるのね…」
「大体、千冬先生はどうして何もしないの?!
いつもみたいに、こんな奴出席簿でぶん殴れば片付くのに!!」
「そ、そうですけど…織斑先生はどうもあの人達に頭が上がらないみたいで…」
「だとしたら、真相を知らなければいけないの!!
とりあえず、こいつらを〆て吐かせるの!!」
言うなり、なのははヤマトを完全展開した。
「さあ掛かって来るのバ監督!!
まさか、自分はISを操縦できないなんて言わせないの!!!
山田先生に銃央矛塵…
『「銃」を戦法の中「央」に置き、「矛」を「塵」程にしか見ない無能者』
なんてふざけた烙印を押して摘み出した馬鹿の宿痾はここで断ち切ってやるの!
と言うか、メンドクサイから希望者は纏めてかかって来るのぉぉおおお!!!」
怒りに任せて奈緒と部下達に突っ込むなのは。
掛かって来いと言いながら先制攻撃するスタイルである。
「ええい怯むな!!止めろ!!止めるんだぁっ!!」
奈緒の部下達がISを展開しようとするが…
「うおおおおおおおお!!!雑魚は引っ込むのおおおおおおおおおおお!!!」
ドギュルルルゥウン!!ドギュルルルゥウン!!ドギュルルルゥウン!!
KABOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOM!!!!!
「「「「「ぎょわああああああらあああああしゃがあああ!!!!!」」」」」
たちまち主砲と副砲の斉射で纏めて吹き飛ばされる。
勿論、活殺自在の効果で命は無事だ。
「おのれ卑怯者!!日本人なら黙って剣を使わんか!!!」
ビダァァァン!!
「ぷぎゃ!!」
なのはは主砲塔をフライパンの様に振り下ろして奈緒をぶっ叩いた。
「な、なにをする、きさまー!」
「御生憎様なの!!!ヤマトにそんな装備は無いの!!
接近すればワープで逃げるから、必要ないの!!
この前の事と言い、千冬先生の先輩で後任だから期待したけど、
とんだ期待外れなの!!
期待外れと言う言葉に対して無礼なくらいの期待外れなの!!!
大体、何でそんなに剣にこだわって、
飛び道具重点の山田先生を執拗に馬鹿にするの?!!」
それが一番の疑問だった。この考えを何とかしない限り、
今後も真耶の様な目に遭う人間は尽きないだろう。
「貴様には解らんのか?!!外国に居ついて日本人の魂を忘れた非国民が!!
生っっ粋の日本人として、本当に恥ずかしいわ!!」
「馬鹿馬鹿しいの!!そう言う人間が本当にそうだった試しはないの!!!
そもそも私は霊魂だの何だのと目に見えない物には惑わされないの!!!
勿体付けてないで、早く話すの!!!」
「貴様!『真宮寺一馬』の名を知らんのか?!おい、遺影持ってこんかい!!」
「「ハッ!!」」
倉林の口から出て来たのは、ある一人の軍人の名前だった。
真宮寺一馬。苗字で気づいたかもしれないが、
彼はICPO-ICD飛行隊員の一人、なのはが「皆の鬼嫁」と呼んだ
真宮寺さくらの亡父である。
用意の良い事に、一馬の遺影を持って来る始末。
何故そんな物を持ち込むのだろうか?
「このお方はその腕前を見込まれ、
ISを用いた剣技を確立する為に自らデータサンプルとなり、
寝る間も惜しんで剣を振り続けた!!その苦労が実って、
織斑の奴はモンド・グロッソで優勝する事が出来たんじゃ!!
だがその代償にこのお方は剣技の完成後程なく体を壊し、
第1回大会が開かれる直前に…」
「……………………………………………」
これで、真耶が代表候補生を追われた真相がなのはにも呑み込めた。
つまり、近接戦至上主義が罷り通っていたのはこの回し者共が
「織斑千冬がモンド・グロッソで優勝出来たのは、
真宮寺一馬が苦労の末、命と引き換えに確立したIS剣技を学んだ結果である。
今日の織斑千冬の栄光は彼の苦労の上に成り立っており、
日本のIS操縦者は成功者である彼等の様に苦労しなければならない。」
と主張しているからで、これに対する異論には悉く
「自分は剣道なんか全く出来ないしISを動かした事も無いけど、
織斑千冬がモンド・グロッソで優勝した何て大した事じゃない。
適当に飛び道具使えば自分でも今すぐできる位簡単な事だと思ってるし、
その真宮寺一馬とか言う奴は意味も無く生まれて、
意味の無い事をして、意味も無く死んだ馬鹿の中の馬鹿だと思ってます。」
位の大言壮語をしたと拡大解釈し、故人の努力を踏み躙って憚らない
極悪非道のDQNだとレッテルを貼る。これがこの連中のやり方なのだ。
真耶もそうやって剣技重視のやり方に抗議した結果、
倉林にこの様な拡大解釈をされて上層部に睨まれて解任されたのだ。
「これで馬鹿で馬鹿で馬鹿で馬鹿で馬鹿で馬鹿で仕方ない貴様にも解ったか?!
貴様なんぞ剣も振れんまぐれ勝ちだけのロクデナシじゃああ!
周りにいる貴様の先輩様はそうやって扱かれてここまで来たんじゃ!!
だから貴様も同じくらい扱かれんかい!!
目上にされた事はの目下にやる、それが当然!!常識!!社会正義!!
だから全員やるのが人倫の道ィィィィィィーーーーーーーーーーーーーッ!!!
何が暴走核弾頭じゃ!!テメエは低劣!低レベル!低能!
やれないテメエがアホで無能で滓なだけなんじゃ!!
目上のやり方を変えるなんてのは最低最大最悪の罪悪じゃ!!
睨まれてクビにされて当然なんじゃボケェ!!!
すぐさま土下座して詫び入れろやぁあああ!」
なのはが何も言わない事を良い事に言いたい放題言っているが、
倉林は一つ致命的な見落としをしていた。それは簡単な事である。
「もし目の前の奴が上記の大言壮語通りの事が出来る本物の天才だとしたら?」
倉林はその答えを身を以て思い知る事になる。
「成程、千冬先生が優勝できたのはその真宮寺一馬という人の御蔭なんだ…。」
とでも言うと思ったの?!
なのははいきなり一馬の遺影を遠隔部分展開で奪い取ると、
何の躊躇いも無く枠ごと引き裂き、破り捨て、足元に捨てて踏み躙った。
「「「「「ナーアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア?!」」」」」
当然である。かつてなのはが後輩達の危険行為に激怒して
吹っ飛ばしたのは、自分が経験した苦難を後世に繰り返させない為である。
もしもなのはが倉林の主張を正しいと思っていれば、スバル達後輩には
「自分はかつて任務中の僅かな反応の遅れから瀕死の重傷を負ったが、
リハビリの末復帰してSランクを取得した。だから、強くなりたくば
同じ様に傷ついてでもそこから這い上がれ。」と訓示しただろう。
第一なのはの本来の職場であるミッドチルダには
魔導師と非魔導師と言う個人の努力では絶対に超えられない壁がある。
そんな社会では「自分が出来る事は他人も出来る」は通用する筈が無い。
故に、倉林のやり方はなのはにとって
過去の経験、職場の環境、そして自身の信条から
「言語道断」の一言で事足りる暴論でしかない。
「そんなまやかしは効かないの!!
織斑千冬優勝の最大の功労者は織斑千冬本人であって、
ISも動かせない輩を一番手柄に祭り上げるなど言語道断なの!!
私は剣なんて扱えないし、ISの操縦だって瞬時加速すら全くできないけど、
そんな私でも日、独、露の国家代表に勝ち、織斑千冬すら私には敵わなかったの!!
つまりそんな苦労なんかしなくても、既に私は世界最強なの!!」
まさか遺影を破って踏み躙るという暴挙に出るとは。
束ですら予測不能の行為に場は一瞬で凍りついた。
これ以上シンプルかつストレートな故人への冒涜はそうそうないだろう。
一体誰ならばここまで挑発されて喧嘩を買わずにはいられるだろうか?
「これ以上語る事は無いの!!さあ掛かって来るがいいの!!
そんなに補習させたいのなら、私に勝って見せるがいいのぉぉぉおおおお!!」
「き…き、さ、ま…。」
「悪魔め…」
「あんな奴を放っておいたら、大佐の命を賭した苦労が踏み躙られてしまう!」
「絶対にここで倒さなければ!」
いつの間にか、操縦者達も恐怖から立ち直りISを展開していた。
良く見ると、なのはは完全に囲まれてしまっている。
「プピーッピッピッピッピ!!
残念じゃったな、ここにいる奴等は全員貴様の敵じゃ!」
「知ってる!それで自分だけ戦わずに逃げるの?!
まさかISを動かせないの?!弱いの?!ヘタレなの?!!」
「ムキーッ!そんなに叩きのめされたいのか貴様!!!」
「声の大きさだけで私が怯むはずがないの!!
口先だけじゃなくて、たまには自分で動くの!!
専用機を持ってるなら早く展開して見せるの!!
さもないと相手してやらないの!!!」
「やまと、ようしゃしねーのっ!」
「ムキーッ!!昨日の事と言い、どこまでも付け上がりおって!!!
生意気じゃ!生意気じゃ!生意気じゃ!生意気じゃ!生意気じゃ!生意気じゃ!
生 意 気 じ ゃ っ !
地団太を踏んで生意気じゃ!と繰り返す倉林。
だが、それを聞いた軍人達は一斉に震え上がった。
「で、出た…『倉林怒りの七点唱』…。」
「唱えれば誰か一人が必ず再起不能となる、倉林美也子の本気の合図…」
「あの生徒…完全に終わったな。」「だが相手はあの『暴走核弾頭』だぞ?!」
「ドイツの青い魔女とICPO-ICDの飛行隊を全滅させたという噂だが…
もし事実なら、一体、どれ程の力を持っているんだ?!」
「この正義丸で打ちのめして、二度とISに乗れない体にしてくれるわ!!」
やっと倉林も戦う気になった様で、専用機「正義丸」を展開した。
その両手には合金製の鞭が。どうやら、こいつは鞭使いの様だ。
「やっと戦う気になった様だが、その程度の機体で私を倒せると思っているの?
…改めて言うけど、私は剣の腕が悪かったら他が良くても
代表候補生失格なんて馬鹿な一元論は断じて認めないの!!!
『競うな、持ち味を活かせ』の教えを力づくで認めさせてやるの!!!」
「ほざくな!!貴様は今日ここで二度とISに乗れない体に成るんじゃ!!!
人生最後のISの前に一言言わせてやるわ、
内容次第では手加減してやらん事もないぞ?ん~?」
「いいの?それじゃあ…」
なのはが告げた一言。それは…
とびっきりの絶望の宣告だった。
注意!
遺影を破いたり、踏み躙ったりするのは故人への重大な冒涜です。
良い子も極悪人も、絶対に真似しないようにしましょう。