魔法戦記リリカルなのはIS 高町なのはのIS学園見聞録 作:ピロッチ
ヤマトの二次移行「まほろば」で叩きのめしたなのは。
トドメの一撃を放とうとしたその時、警視庁のIS小隊が到着。
横槍を入れられたなのははひとしきりIS小隊を〆ると
O☆HA☆NA☆SHIに持ち込み、
事の顛末を束の口から彼女達に説明して貰うのであった。
「以上が事の顛末だよ。それで?これからどうする?」
「……………………。」
「全く、『自分が苦労したからお前らも苦労しろ』なんて馬鹿のする事だよ。
そうしない奴は自分どころか先人の苦労を踏み躙る人間の屑と決め付けるとか!
ホント馬鹿だよねぇ!!(笑」
「……………………篠ノ之博士……。」
律子が束の名を呟く。その声にはあからさまに怒りが滲んでいた。
「んん?どうかしたのエビフライ?」
「貴女…本気でそう思ってるんですか?」
その手は怒りで小刻みに震えていた。
「あったり前じゃん!だから、ここで明言したんだよ。」
「いい加減にして下さいっっ!!!」
突然怒りを露わにする律子。
「あ~ん?どうしたの、急にキレて?なんかおかしなこと言った?」
「篠ノ之博士、いくらISの母と称される貴女でも、
言って良い事と悪い事が有ります!!」
「はぁ?何が?」
「真宮寺大佐は貴女のお父さんの同級生にして、
最大のライバルだったじゃないですか!!
貴女だって、面識が有る筈です!!!何でそんな人の努力を、
それももう亡くなった人の努力を平気で中傷出来るんですか?!!」
律子の言う通り、真宮寺一馬にはライバルがいた。
その名は篠ノ之
彼と一馬は中高の同級生で同じ剣道部に属し、
一馬が防衛大、柳韻が実家の継承と言う形で
別の道を歩んで以降も剣道全国大会で競い合う事は数知れず。
互いに勝ったり負けたりを繰り返し、遂に雌雄がつくことはなかった。
「私は真耶と同じ理由で軍を追われ、色々な伝手で警視庁に入り、
辛うじて代表の座にしがみついている身です。
ですから、倉林監督のやり方は明らかにおかしい、非常識だと思っています。
ですが、大佐の命を賭した努力と苦労は本物です!!
現に初代ブリュンヒルデ、織斑千冬という結果が出ているじゃないですか!!
これだけの功績ある人が、そこまでの誹謗中傷を受ける謂れはありません!!」
確かにその主張は正しかった。
一馬の努力の否定は、それ即ち千冬の功績を否定する事だ。
だが、律子は二つ大きな見落としをしていた。
一つは、束こそISを創造した当人であり、
ISに関して彼女以上の権威は存在しないと言う事。
もう一つは、束は身内でない人間に対しては
どこまでも無慈悲に振る舞える女だと言う事を。
「だから何?!!この束さんが何でISを作ったのかを忘れて、
ISを剣道の補助ツールみたいに扱う馬鹿共の苦労と犠牲?
そんな物、有り難くも何ともないよ!ましてや全員に強制なんて…
そんなのやりたい連中だけがやればいいんだよ!!
『我々がやっているからお前等もやれ』
なんてふざけた同調圧力は真っ平御免だよ!!
IS関連の権威なら、この束さんがこの世で一番上なんだよ!
この束さんを世界ぐるみでISの母、ISの本家本元って持て囃してるなら、
それらしくきっちり断言してやるよ。
その父さんの同級生は、ISを汚した屑の中の屑だよ!!」
いつもの無邪気な姿からは想像もつかない剣幕で怒鳴り散らす束。
当然だろう、宇宙開発ツールとして生み出した筈の自分の発明品を
そんな風に扱っていた奴の扱いなど、束にとってはこれで十分なのだ。
「な、何て事を…」「ちょっ、姉さん?!!」
流石にこの言葉には真耶と箒も絶句した。
「チェッ、見損なったよ!!何がISの母だよ、
これならやっぱり、国際手配されて当然の人でなしじゃないか?!」
「それは尤もな事だよ。でもISに乗ってる限り、説得力は微塵も無いよね?」
「…………っ!!」
「ちょ、ちょっと!…そこの貴女!」
「ええ、私ですか?」
このままでは収拾が付かないので、千早が箒に説得して貰うべく声を掛けた。
「貴女は篠ノ之博士の妹さんでしょう?このままじゃ収拾がつかないから、
貴女からもお姉さんに何とか言ってやって下さい!!」
だが、箒はにべもなく撥ね付けた。
「そんなの出来る訳が有りません!!例え姉さんを説得できても、
暴走核弾頭…なのはさんが絶対に聞く耳を持ちません。
そうでなかったら、一馬さんの遺影を破って踏み躙ったりはしません!!
仮にこの場に千冬さんがやってきて説得しても、まず聞く耳を持ちません!!
逆になのはさんは攻撃して来る筈です…そういう人なんです、あの人は!!」
「くっ…」
「ハァ…所でエビフライ、まさかとは思うけど、君、
ISを正義の力だとか人を守るものだと信じているのかな?」
「それが…真宮寺大佐の教えですから…『力ある物は私欲を捨てよ』。
あの人の口癖は、貴女も…もう忘れてるんでしょうね、どうせ。」
その言葉に、今度はなのはが答えた。
「そう、貴女がそう思うのならそうなんだと思うよ、貴女の心の中ではね…
但し、私はそれに賛同しないの!!」
「なっ…!」
「正義は武器を取りはしないし、人を強くもしないの!!
ただ人に担がれる事しかできない神輿でしかないの!!
武器を取るのはあくまで人間なの!!人間の力量こそが雌雄を決するの!!
担ぐ人が力量不足ならその重みに足を取られ、却って人を弱らせるの!!
故に私は、正義よりも日頃からの鍛錬で培った己の力を信用するの!!!」
「「「「!!!」」」」
それがなのはの本心だった。なのはにはそう言わしめる過去があった。
なのはが魔導師となった元凶プレシア・テスタロッサを狂気に貶めた黒幕、
伝説のマッドサイエンティスト、ジェイル・スカリエッティ。
彼は5年前に超大規模テロ、JS事件を起こして捕えられ収監されたが、
何を隠そう彼のスポンサーは管理局の最高機関「最高評議会」であった。
その真実がなのはの内面を大きく変えてしまっていた。
と言うのも、それまで彼女にとって管理局とは自分が得た力を
何処よりも活かせる一番の居場所であった。
彼女自身、法の番人としてこの危険な力を社会に有効活用できる
管理局員としての生き方に、何一つ疑問を抱いてはいなかった。
「社会の正しい姿とは、目に見える健全さと、目に見える不健全さが
ちゃんとここにあることだ。不健全さのない社会は、健全さも目立たない。」
名も知らぬ父の知人がかつて語った言葉の通り、
自分達管理局員と、魔導を悪用する犯罪者。
はっきり区別された正と邪が目に見える形で存在していた社会が、
当時のなのはにとって世界の全てだった。
だからこそこの事実を知った時なのはは戦慄した。
もしそれが本当ならば、自分は一体どうあるべきなのか?
あの事件の後、解決に功があったと言う事で昇進の話もあったが、
なのははあくまで最前線に在りたいという理由で断った。
だが、真相は違う。当時のなのはは己の在り方に苦悩し、
とても昇進を受け入れる気になれなかったのだ。
だが、あれから5年。苦心の末答えを見出したなのはに迷いは無い。
「それは…この世の正義もルールも信じず、
自分の好き嫌いを優先すると言う事?!」
「大体そう言う事なの!!」
「な、何て無道な…」「やっぱり、貴女こそ真っ先に捕えるべきだわ!!」
「何が暴走核弾頭だよ!!僕等の日本には、核弾頭なんかいらないんだ!!」
「ならば決着をつけてやるの!!警視庁出オチ隊!!」
またもや一触即発の状態に。
この場の誰も妥協しないのなら、こうなるのは必然だった。
だが、傍から見ればたまったものではない。
「やっぱり、こうなるのか…」
「ひーん、もう勘弁して下さいー!!と言うか、4人共早く逃げてー!!!」
慌てて逃げ出す箒と真耶。だが、そこに新たな声が。
「「「な!?」」」「だ、誰?!」
突如学園に響く一喝。現れたホログラムモニターの向こうでは、
苛ついた様子の眼鏡の老人がこちらを睨んでいた。
「あ、貴方は…」
「すいません、どちら様でしょう?」
またしても横槍を入れられた事に、
イライラが高まるなのはは吐き捨てるように問うた。
『ああ?俺が誰だか知らねぇのか?日本国防衛大臣の米田、
どっかの喫茶店みてぇだなとか言うなよ!コメダと書いてヨネダだからな!!』
「!!」
なんと、現職の防衛大臣が自ら通信に出向いてきたというのだ。
「そうですか、防衛大臣ですか。何の御用件でしょう?
ひょっとして仲裁ですか?仲裁なんですか?」
『その前に聞きてえ事が有る!(なのはを指して)そこのお前ぇさん…
暴走核弾頭、高町なのはとはお前ぇさんの事で良いんだな?!』
「そうなの!!私はこれからこの出オチ隊を〆るんで、後にするの!!」
『待て!その前に2分だけでも良いから俺の話を聞け!!!!』
「…と言うと?」
『何、簡単な事だ。日本政府の意向により、高町なのはに対し…』
『日本国の国家代表操縦者の座、くれてやる!』
「「「「「な、ナンダッテーーーーーーーーーーーーーーーーー?!」」」」」
まさかの決定である。一体日本政府に何があったのか?
「…あー、米田防衛相でしたっけ?
それは一体どういう意味なの?唐突過ぎて理解し難いの!!」
流石のなのはもいきなりそのような事を言われ、返答に困ってしまった。
『ああ?言葉の通りだ!お前ぇをそこの行き遅れの飯田奈緒に替わる
日本国の代表操縦者に任命する。それだけだ!!』
と、ここで我に返った奈緒が米田を問い詰めた。
「ぼ、防衛相?!いきなり何を言い出すのですか!!こいつは…」
『ダマラッシェー!!』
いきなりニンジャスラングで奈緒を怒鳴りつける米田。コワイ!
「!」
『手前ぇという奴は、千冬の跡目を任されておきながら
仮にも学生に一撃も返せずに負けといてその役目を果たせるかーっ!!
どう考えても実力的にコイツの方が国家代表に相応しいだろうが!!』
「んなっ…!」
『倉林、手前ぇも手前ぇだぁ!!先人の労苦だのと言い掛かりを付けて、
そこの、ええと…誰だっけ?ああ、山田真耶と言い、そこにいる律子といい、
ロシアに逃げ出した更識の嬢ちゃんと言い、
一体ぇどれだけの腕っこきを首にしやがった?!
俺がこいつらの再就職を斡旋するのにどれだけ苦労したと思ってるんだ?!!
もう沢山だ!!2人掛かりで学生1人にぶちのめされて
篠ノ之束に睨まれる様な奴にこの国のISを任せられるか!!
手前ぇなんか防衛相権限で軍のIS教官から解任してやる!!
ついでに今回の件は山口総理経由でIICの花小路理事長に報告するからな!!
このエセ日本人共が!!手前ぇ等全員、日本から消えちまえーっ!!』
「ぷ、プピィイイイイーッ!!」
米田の剣幕に、流石の倉林も悲鳴を上げてへたり込むしかできなかった。
と、ここで律子が米田の一方的な通告に噛みつく。
「ちょ、ちょっと待って下さい防衛相!!この人達が解任されるのは良いとして、
どうして暴走核弾頭が後任の国家代表なんですか?!
防衛相は自衛官時代、真宮寺大佐の上官だったのでしょう?!
その防衛相が、大佐の功績が踏み躙られるのを良しとするんですか?!!」
当然の主張だろう。この決定が通れば一馬の労苦と犠牲が台無しだ。
だが、米田の反応は…
『俺だって納得はしてねえよ!!一馬との昔のよしみだ、
他の誰かが同じ事を言いやがったら、この馬鹿共の側に立っていた!!
だが、だがな!!お前ぇ等、コイツの実力と実績を否定できるのか?!!
コイツだけは、ああ言う事を堂々と宣っても許される…と言うより
許すしかないんだよ!!日本政府は、コイツがそれを罷り通せるだけの
実力と実績が有るって所を見せられちまったんだからな!!』
「「「「「!!!!」」」」」
『とにかくだ、高町なのは!そもそも日本政府としては
無資格で専用機を乗り回すお前ぇをどうにかしねえとと困ってた所だった!
それを踏まえてだ!
代表がこの様では最早代表候補生では役不足と言う話になった!
そういう訳で、そこの行き遅れを解任するから、
お前ぇにはその後釜に就いて貰う!!
ついでにそこにいる…篠ノ之…箒…ホウキで良いのか?
そいつも併せて代表候補生として指名する事が決まったから
ここで通告する!!俺が言いてぇのは以上だ!!
後日正式に文書が届くから、その積りでいろ!!』
そう言うと米田は通信を切った。しかし箒はあまり嬉しくなさそうだ。
代表候補生に指名されたのは嬉しいが、それまでの経緯を考えれば当然だろう。
「ば、馬鹿な…真面に剣も振れない奴が、のうのうと代表の座に就くなんて…」
代表解任を通告され、がっくりと膝を付く奈緒。
そんな奈緒に対し、律子は笑顔で容赦なく追い打ちを掛けた。
「まあ負けたんだから当然ですよね。貴女達の天下が終わって清々しましたよ。
大佐の件は納得できませんが『自分が苦労したから、お前等も苦労しろ』なんて
馬鹿の精神論が一掃されて、これでやっとまともな代表選びができますね!!
ま、相手が悪かったと思って、さっさと身を引いてくださいね。
いっそそこのバ監督諸共、日本からも出て行ってくれませんか?」
「秋月貴様!!」
律子もまた、真耶同様に倉林に睨まれて軍を追われ、
米田の計らいで警視庁に就職した口である。当然、倉林やその取り巻き、
そして倉林を居座らせる綿貫支局長に対しては積もる恨みがあった。
この程度の恨み言を言った所で、誰が咎められようか?
「おお、怖い怖い。
どっちにしろ、『当人の合意なき干渉は禁止』が原則のIS学園に踏み込んで
箒ちゃんやいっ君達に補習を強要したんだもん、当然だよねぇ~バーカ!!!」
更に束も援護射撃。完全に笑い者にしていた。だが、そんな事をすると…
「お、お、お、オオオオオオオオオオおおのれぇぇーーーーーーーーっ!!!」
ほらやっぱり、倉林がなのはに向かって行ったのだ。その途中には束が。
「この犬畜生めがあああ!!貴様如きが代表など言語道断じゃああああ!!!」
「「!?」」
「姉さん、危ない!!」
突然の事に慌てる一同。
「どけェェェェェェェェェェェェェェェ、犬餓鬼がァァァァァァァァァァ!!」
倉林は束に鞭を振るう。だが…
ボゴォ!!
「ぴゅぶ!!」
「「「「「!!!」」」」」
何と、何者かが倉林を峰打ちでぶん殴った、その正体は…
「………………………………………………………………………………………。」
「ち、千冬…さん?」「ちーちゃん?!」
そこにいたのは、今まで沈黙を貫いていた千冬だった。