魔法戦記リリカルなのはIS 高町なのはのIS学園見聞録   作:ピロッチ

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学園にやって来た警視庁IS小隊の前で、事の顛末を説明した束。
だが、自分の父柳韻(りゅういん)の同級生にして最大のライバルである真宮寺一馬を
「ISを汚した屑の中の屑」とまで断言する束の言動は
彼女達にとって受け入れ難く、またもや一触即発の事態に。

しかし、そこに日本国防衛大臣の米田一基から通信が入る。
二度も戦いを邪魔されてブチ切れ寸前のなのはに対し、
米田防衛相は倉林を防衛相権限で軍部のIS教官から解任すると宣言し、
更に「なのはを奈緒に替わる日本国代表操縦者へ指名し、
併せて箒も代表候補生指名が決まった」と通告したのだった。

納得いかない倉林は生き埋めから脱出してなのはに襲い掛かる。
だが、今まで沈黙を貫いていた千冬が突如倉林を峰打ちで殴ったのであった。


第40話  過去からの解放

「ち、ちーちゃん…」「お、織斑先生…?」

 

「織斑、貴様!!恩師様に何をするんじゃ!!」

 

「黙れ、この下種が!!」

 

 千冬は更に峰打ちでぶん殴った。

 

「ぶぎゃ!!」

 

「黙って聞いていれば、言いたい放題言いおって…!!

貴様には失望したぞ…倉林!!!

 

「んなっ…」

 

 何と、千冬は代表監督を堂々と呼び捨てにした。

規律にうるさい今までの千冬からは考えられない行為である。

 

「千冬!!お前、監督を呼び捨てとは何事だ!!」

 

「黙れ飯田!!この行き遅れの屑の走狗が!!」

 

「な、私まで呼び捨てだと!!」

 

「今までは上下関係も有って黙っていたが、

こうなった以上、もう黙ってはいられるか!!」

 

「ムキーッ!!貴様、余りの屑さに親から捨てられた分際で、

今まで大佐に鍛えて頂いた恩を忘れたか!!」

 

「忘れた!!いや、そもそもあんな奴に恩など無い!!」

 

「な!!!」

 

 とうとう、一馬すらあんな奴呼ばわりである。

 

「私と一夏が親に捨てられた事を知った時、奴は何と言った?!

『いずれ再会できる、その時は許せ。

仮にも生を受けた相手からの恩を踏み躙るのは外道の行為』だぞ!!

誰が許すか!!私はあんな屑共なんぞ記憶から消し去りたいんだ!!

事情も知らん他人風情の善意なぞ、ゴミにも劣るわ!!」

 

 勘違いしてはいけない。

生前の一馬は断じて悪人ではない、ごく真っ当な人物だった。

間違っても、ここまでの罵倒を受ける謂れなどない善良な人間だった。

だからこそ織斑姉弟の受けた理不尽な仕打ちを理解できなかった。

 

「私がどれだけ傷ついたか等、貴様等には永久に解るまい!!

それを拒絶して真実を語ったら、

貴様に『性根の捻じ曲がった不良娘』と看做されて

叩きのめされた事は今でも覚えているわ!!

だから、今まで何も言わずに従う振りをしていたが、それをいい事に、

貴様等は私達が親に捨てられたのも、全部私達のせいだと決めつけてきたな!!

ある日突然見捨てられた事の、どこに私達の非があるんだ?!」

 

「ちーちゃん…」「千冬姉…」「………………」

 

 束達は言葉が出なかった。

まさか、あの千冬が心にそんな傷を抱えていたなんて想像もしていなかった。

 

「………………………………………………。」

 

 なのはは思った。その様な経験のない自分に

千冬の気持ちを理解し切ることは出来ない。

だが、千冬は何の非も無いのに今まで責め続けられていた。

それだけははっきりと理解できた。

 

「黙れ黙れ!!貴様が何を言った所で、

大佐に鍛えて頂いた御蔭で優勝できた事実は変わらんのじゃ!!」

 

「…否定はしない。私は剣一本でモンド・グロッソを優勝したのだからな。

だが、努力を認めるどころかまさかそれをダシにここまで増長するとはな…

頑張ればいつかは見返せる、認めて貰えると信じて黙っていたのは

全くの間違いだった様だ。」

 

 千冬は今まで口出ししなかった事を後悔する様にそう告げた。

 

「今日、束と意見の一致を見ると言う事をこれ程嬉しく思った事は無かったぞ!

奴自身に非がない事は認めるが、奴が私にした行いは人間の屑のそれだった!」

 

「貴っ様ァァァァ!!

己が育ち方を間違えておいてそれを棚に上げるんかボケェ!!」

 

「育ち方だ?そんな物この世にあるか!!」

 

「「「「「!!!」」」」」

 

「育ち方などと言う言葉は自分の育て方を完全無欠絶対無謬だと思い上がった

馬鹿親、屑親共が矛盾を突かれて咄嗟に思いついた苦し紛れの妄想だ!!

この際だ、ついでに奴に精一杯の復讐をした時の事を言ってやる!!

私はあの屑が死ぬ前日に面会する機会があってだな。

その時今までの思いの丈をぶつけてやったよ。

 

『親に捨てられたのはお前が屑だからと

皆に決めつけられる環境を用意してくれて有難う。

貴様の善意など全く感謝していない。

命を懸けた努力とやらが実を結ぶところを見られないまま死んで行け!!!』

 

と、はっきり言い渡してやったよ。奴が死んだのはその次の日だったな。

まさかこんな風にしか思われていなかったと知って、さぞ絶望しただろうな!!

実に清々したよ、ハーッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハ!!!」

 

 遂に笑い出す千冬。その光景に律子達警視庁のIS隊員は戦慄した。

 

「………何て事を、まさか、千冬さんが大佐をそこまで恨んでいたなんて…。」

 

「千冬ぅぅぅ!!貴様それ以上喋るな!!人間性を疑うぞ!!!」

 

「ああそうだ、飯田、お前にも失望したぞ。

最早お前を先輩として見る気が無くなる程にな。

お前も私がどんなに苦悩しているか打ち明けても、

私を『何でも人のせいにするな!』と取り会おうともしなかったな。

代表の座を賭けてお前と戦い、

正面切って叩き伏せた時は本当にいい気分だったよ。」

 

「黙れ…黙れ黙れ黙れぇっ!!!」

 

「お前らのやって来た事と言ったら何だ!出自を偽る卑怯者の肩を持ち、

私の言葉を餓鬼の戯言と取り合おうともせず、

ISを汚した屑ばかりを信用し、奴が死ねば死んだで

『先人の努力と犠牲』を題目に実力ある射撃型操縦者をIS業界から追い出し、

私の後任最有力候補の真耶を代表候補生から除名し、

その同期の秋月を軍から摘み出した!!

そして今日に至っては私怨むき出しで私のたった一人の家族である

一夏を含む生徒達から夏休みを奪おうとした!!

お前等がやってきたことは、どれもこれも全て最低の屑の所業でしかない!!」

 

「あ、あああ…」

 

 倉林は頭を抱え、その場で膝をついてガタガタと震え始める。

今まで言いなりだと思っていた千冬が正面切って逆らい、

自分を罵倒しているという現実が受け入れられ無い様だ、

そんな倉林を冷たく見下ろす千冬は、遂にダメ押しの一撃を言い放った。

 

「私は今まで貴様等を信じて、

生徒が貴様等のお眼鏡にかなう様にスパルタでやって来た。

『全て私のやった通りにしろ!!

ミス無く動く奴を育てろ!!出来なければお前はアホ!!』

と高圧的に言われたが、黙ってその通りにやって来た!!

時には貴様が私にした様に、出席簿でシバいたりもしてきた!!

だがもう沢山だ!!貴様の言われた通りにやって

暴力教師に墜ちるのは真っ平御免だ!!私は今、この瞬間から貴様に逆らう!!

二度と言う事は聞かん!!自由にやらせて貰う!!」

 

「あああああああああああああ…」

 

「貴様等などもう上下関係も何も無い赤の他人、嫌、明白な敵だ!!

消え失せろ!二度と私達の前にその面を見せるな!この…虫けらが!!」

 

「ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!!!」

 

 倉林は学園中に響き渡る声で絶叫した。だが、千冬は更に言葉を続ける。

 

「こんな風にしか思われていなかったと思っても見なかったか?

精々絶望するがいい!!」

 

 千冬に続き、一夏や篠ノ之姉妹、果てはセシリアになのはも責め立てた。

 

「まさか千冬姉が必要以上のスパルタの理由が

手前等の仕打ちのせいだとは思わなかったぜ、

まあ、積もる話は精々警察でしろよ、ブスババァ!!」

 

「本当に救えない奴等共め!

反面教師という言葉は、まさに貴様等の為にある言葉だ!!」

 

「二度と学園に来ないで下さいまし、この人でなし!!

今度来たら実弾射撃の的にしてさしあげますわ!!!」

 

「母国ごと焼き払われないだけ有り難く思うの!!

このゴキブリ共め!!」

 

「ダマレダマレダマレダマレダマレダマレダマレエエエエェェェェェェ!!!」

 

「いやー、この束さんが言いたい事をちーちゃんが見事に言ってくれたね。

あーすっきりした。それじゃエビフライ、後はよろしくねー。」

 

「誰がエビフライですか!まあ何にせよ、連行はしますけどね。」

 

 そんな倉林達を尻目に、一夏達は学園の方へと歩き始める。

 

「さて、これで馬鹿共の相手は終わった。じゃあ、改めて夏休みに入ろうぜ!」

 

「ああ、そうだな!」

 

「はぁ、馬鹿の相手も楽じゃないの。さて、夏休みのプランを考えないと…」

 

「…けるな」

 

「ん?」

 

 なのはが微かに聞こえた倉林の声に反応し、後ろを振り向く。

 

「フザけるナ…フザけるナ…フザけるナ!!!

オンシラズ…オヤフコウ…私利私欲の狗が…八徳を叩き込んでくれるわああ!!!」

 

 なのはが見たのは、倉林が完全にキレて、千冬に向かっていく姿だった。

 

「この糞餓鬼がああああああああああああああああああああああああああ!!!

二度と逆らう気も起きん様に叩きのめしてくれるわあああああああああ!!!」

 

仁!!!義!!!礼!!!智!!!忠!!!信!!!孝!!!悌!!!  

 

仁!!!義!!!礼!!!智!!!忠!!!信!!!孝!!!悌!!!  

 

仁!!!義!!!礼!!!智!!!忠!!!信!!!孝!!!悌!!!  

 

仁!!!義!!!礼!!!智!!!忠!!!信!!!孝!!!悌!!!  

 

 八徳を叫びながら千冬に向かっていく倉林。箒はその技を知っていた。

 

「あれは父さんの得意技、篠ノ之流奥義『八徳刃』!!

あの女、篠ノ之流で千冬さんを…」

 

 まずい、今の千冬はISを持っていない。このままでは命に係わる。

 

「千冬姉ーっ、逃げろおおおおおおおおおーッ!!!」

 

 一夏の声が響き渡る、しかし千冬は動こうとしない。果たして千冬の運命は…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

スパッ…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ナーアアアアアアアアアアッ!!」

 

「「「「「!!!」」」」」

 

「それだけか?」

 

 何と、突如合金鞭がバラバラになってしまった。

千冬が手にした日本刀で鞭を切り裂いてしまったのだ。

 

「馬鹿な奴…貴様の前にいるのは初代ブリュンヒルデだぞ?

ISを降りはしたが、鍛錬を怠った日は一度もない!!

今の私の前では貴様など路傍の石にも劣るわ!!」

 

 まさか生身でISに勝つとは、これにはなのはも苦笑い。

 

「ア、ア、ア…アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア

ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!!」

 

「なーちゃん、今だよ、やっちゃって!」

 

「勿論!!」

 

 ゴスッ!!

 

「ふおぉぉっ?!」

 

 倉林はヤマトのラリアットで本土のとある山の岩盤に叩きつけられた。

衝突の衝撃で、岩盤には真円のクレーターが。

 

「もう、終わり?」

 

 倉林にアイアンクローを掛けたまま岩盤に押し付けるなのは。

 

「ぷ、プピィィィィィィィィィ…」

 

 動けない倉林、なのはが手を放すと墜落して行った。

それを見たなのははこう一言。

 

「終わったな…所詮、屑は屑なの。」

 

 

 そして…

 

「それじゃあ、この馬鹿達は連れて行きます。」

 

「ほら、さっさと歩け!!」「お、覚えてろよ~~!!」

 

 こうして回し者一味は律子たちにしょっ引かれ、学園から去って行った。

 

「はぁ~。今度こそ終わったね~ちーちゃん。…ちーちゃん?」

 

 束の声に全く反応しない千冬、直後…

 

「アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!」

 

 突然泣き崩れる千冬。緊張の糸が切れてしまった様だ。

 

「ち、千冬姉?!!」

 

「いちかぁぁぁぁぁぁぁぁあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!」

 

 泣きながら一夏に抱き着く千冬。

 

「どうしたんだよ千冬姉!!急に泣き出して…!!」

 

「今まで無意味に厳しくしてごめんなさい!

事あるごとに出席簿でシバく暴力教師になってごめんなさい!

姉弟なのに織斑と呼んでしまう他人行儀な姉でごめんなさい…!!」

 

 突然謝り出す千冬。今まで怖くて逆らえなかった倉林一味が一掃され、

漸く辛い過去から解放された事で、本心を明かす事が出来たのだ。

 

「そっか…なあ、千冬姉。」「一夏…?」

 

「千冬姉は、何か勘違いしてないか?」「…ふぇ?」

 

「千冬姉は、今まで俺達に謝る必要のある事なんか何一つしてないよ!

寧ろ、俺こそ今まで千冬姉に心配かけっ放しだったし。

でも、俺はもう大丈夫だ。

だからさ、これからは、ありのままの千冬姉でいればいいんだぜ!」

 

「一夏…一夏ぁ~っ!」

 

「良かったねちーちゃん!もうちーちゃんは、

あんな馬鹿共の言う事を聞かなくても良いんだよ!!」

 

「そうですよ!!これで、いつもの織斑先生らしく振る舞えるんです!!

前を向いて、歩いていきましょう!!」

 

「束…真耶…」

 

「千冬さん、今は休みましょう!!

2学期から、新しく生まれ変わった千冬さんを皆に見せてあげられる様に!!」

 

「その通りなの!!これはめでたい事なの!!」

 

「箒、高町…なのは…」

 

「ああ、千冬先生!今私を下の名で呼んだ?呼んだよね?」

 

「う、うるさい!呼んで悪いか?!」

 

「まさか!いつもそうしてほしい位なの!!」

 

 かくして、夏休み初日の騒動はようやく終結したのであった。




今回の回し者一味、困った事にまた出番が回ってきます。
勿論、なのはさんがじっくり血祭り…ではなく頭を冷やして下さるでしょう。

次回からやっと夏休み編。
なのはが海外へ挨拶回りに出かけます。乞う御期待!

追伸

重要な発表が有ります。詳細は活動報告にて。
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