魔法戦記リリカルなのはIS 高町なのはのIS学園見聞録 作:ピロッチ
フランス製第3世代機「タイフーン」のお披露目会。
午前の部を終え、昼食会で一息ついていた来場者の前に
突如現れる兎の大群と謎の怪人。
それは昨今パリを騒がせている連続通り魔「妖怪ハサミ兎」であった。
「げぇっ、妖怪ハサミ兎!!噂は本当だったのか?!」
「まさか実在していたとは!!逃げろ、ハサミで色々とちょん切られるぞ!!」
たちまち大混乱となる昼食会場。だが何か忘れていないだろうか?
この会場にはカナダ以外のG8諸国と
中韓の9人の国家代表操縦者が招待されているのだ。と言う事は…
「ケッ、何が妖怪ハサミ兎だよ!
丁度いいや、挨拶代わりにブチのめしてやるぜ!!」
案の定、逆に食って掛かる者がいた。
先陣を切ったのは韓国代表の
「おいウサ公、手前、人の飯時に何邪魔してくれてんだ?!
蹴っ飛ばされてェのか、あぁ?!」
「な、何だお前は?!このシゾー様をウサ公だと?!!」
「あぁ~ん?手前以外に誰がいるんだよウサ公!!
鏡で自分の顔見てみろよ
「い、言ったなぁ~!!」
どうやら、妖怪ハサミ兎の本名はシゾーと言うらしい。
シゾーとは仏語でハサミ。名は体を表すの好例である。
「ちょ、ちょっと待ちなさいジュリ!!」
と、ここでジュリを止めに入る者が。
中国代表操縦者でジュリのライバル、
「あぁ?あんだよチュンリー、邪魔すんじゃねーよ!!」
このチュンリーなる操縦者、本業は警察官である。
彼女は昨年までICPO-ICDのIS隊隊長を務めていた。
当然、この手の輩への対処法はよく知っている。
「1対1は危険よ!こう言うのは複数でかかるのが基本よ!!
どうしてもやるなら、私も加勢するわよ!!」
「チッ…好きにしろよ。」
「こ、小癪なぁ~、二人纏めて、切り刻んでやるピョーン!!」
「おっと、そうはいかないよ。」
「「!!」」「だ、誰だ!!」
シゾー達が声のする方を向くと、
そこには完全武装した兵士に周囲を固められた1人の中年女が。
兵達の戦闘服には白い落下傘のエンブレム。
フランスの対テロ特殊部隊、
「残念だったねぇ、妖怪ハサミ兎。
アンタがこんな『祭り』を見過ごす筈が無いと思って、
陸軍、国家憲兵、DGSEとついでにパリ市警の加勢も得て、
このパリ支社に罠を張っておいたのさ。
今ここは完全にウチ等の手勢と伏兵で取り囲んである。
今日が年貢の納め時だよ、観念おし!」
見ると、確かにそこら中で兵士やら警官やらが銃火器でこちらを狙っている。
中韓コンビも警官達が間に割って入り、その場から連れ出された。
更に、あちこちから無線で謎の中年女に報告が。
『こちら第1歩兵連隊、連隊長ギーズ大佐。パリ支社の包囲完了しました!!』
『こちらDGSEムスカ大佐。
パリ支社に散らばった兎は全て捕獲しました!!』
『こちらパリ市警、エビヤン警部。ロベルトCEO以下のデュノア社社員、
及び来賓の方々の身柄を保護致しました!
脱出次第、正面玄関を閉鎖致します!!』
「ご苦労!ゲストは無事かい?」
『ハッ!来賓の方々は全員無事です!!』
「やれやれ…まずは一安心。さて、これで準備は整った!お前達、出番だよ!」
「「「「Oui,Madame!!!」」」」
中年女の号令に合わせ、4機のR・リヴァイヴが会場に突入して来た。
このISにも、GIGNのエンブレムが。
「
彼女達こそ本作戦の切り札にしてフランス唯一のIS専門チーム、
国家憲兵隊治安介入部隊第5介入隊、略してGIGN-FI5だ。
「遂に追い詰めたぞ、妖怪ハサミ兎!!」
「今までの悪行の数々、ツケを支払う用意は出来たか?!」
「うぎぎぎぎ…」
更にフランス代表操縦者アンジェラ・バルザックもGIGN-FI5に合流。
彼女もまた隊員の一人で、今回の作戦の従事者であった。
「
「ええ、御蔭様でね、
…それにしても流石は国防相、手際の良い事ですわ。」
「御世辞は後だよ、アンタも早く専用機を展開しな。」
「Oui!」
どうやら、謎の中年女はフランスの国防相らしい。
彼女の命でアンジェラも専用のR・リヴァイヴを展開。
これでISは5機に増えた。
「ぐぐ、まさか完全に囲まれるとは…お前、何者ピョン?!」
「おっと、自己紹介してなかったかい?アタシゃイザベル・ライラック。
フランス国防大臣を務めてる者さ。人はアタシの事をグラン・マとも呼ぶよ。」
国防大臣自ら陣頭指揮を執る辺り、フランスの本気度が良く解る一コマだ。
「それで?ここまで追い詰められたんだ、もう逃げ場はないよ、妖怪ハサミ兎!
これだけの包囲を敷かれては、どう考えても逃げられっこない。
これを抜けられるのはなのはと束、そして千冬位だろう。
だが、シゾーの回答は…
「ウーッサッサッサッサッサッサッサ!!この程度で勝った気に成るとは、
人間共は実に馬鹿揃いだピョン!!これを見ろー!!」
シゾーが声を張り上げると、会場のそこかしこから謎の光が。
「な、何だ、何だ、何だぁ?!」
「くっ、コイツ! 隠し玉を持っていたのか!!」
GIGN-FI5の隊員達は一瞬目が眩む。
勿論、シゾーがその隙に包囲を抜けたのは言うまでもない。
「あっ!待て、逃げるな…!!」
隊員の一人が気付いて後を追おうとした瞬間、会場の光は収まった。
そして、そこに現れたのは、甲冑を模した人型のロボットだった。
「な、何?この…IS?」
「くっ、これがコイツの切り札って訳?!」
「それだけじゃないぞ!こいつ等の立ち位置…」
武装ごとに色分けされた人型ロボットは総勢二十数機。
機体の後背から定期的に蒸気を吐き出し、GIGN-FI5を囲んでいた。
「やれやれ、まさかこんな奥の手があったとはね…」
「囲んだと見せかけて、囲まれていたのは私達の方だったのか…」
「ウーッサッサッサッサッサッサッサ!!さあ行け、『蒸気獣ポーン』!!
人間共を血祭りに上げてやれぇーっ!!」
シゾーの号令一下、人型ロボットもとい蒸気獣ポーンが
一斉にGIGN-FI5へ向かっていった。
同時刻、パリ支社正門前…
「け、警部殿ーっ!!」
「何だ?!」
「招待を受けた国家代表操縦者ですが、1名足りません!!」
「何?!本当なのか?!もう一度よく数え…いや、私が直接やる!!」
緊急事態に焦ったエビヤンは、堪らず自ら人数を確認する。
「1、2、3、4、5、6、7、…
おい、他国から招待された代表操縦者は何人だった?」
「8名であります!」
「ゲェェーッ!!も、もう一度…1、2、3、4、5、6、7…
ど、どう数えても7人しかおらーん!!」
「ま、まさか一人連れ出し損ねたとか…?!」
たちまち青ざめる警官隊。
これで怪我でもさせたら国際問題どころの騒ぎではない。
「一体、誰が居ないんだ?!」
「確認します!!」
警官達が代表操縦者の顔とデータを照合する。その結果…
「報告します!!この場にいないのは…
日本代表、マドモアゼル・ナノハ・タカマチです!!」
「ナノハ・タカマチ?!昨日私が職質をかけた…」
「ヒッ!!」
「ま、まさか…」
「!!」
エビヤンの言葉を聞いた瞬間、シャルと楯無、
そしてドイツ代表のミーナは顔が強張った。
「おい!何か知っているのか?!」
「あ、あの人…多分自分で妖怪ハサミ兎を倒しに行ったんじゃないかと…」
「な、何だと?!余計な事を…兎に角すぐに連れ戻さなければ!!」
「いや、あの…やめた方がいいと思いますよ?」
「何故だ?!いくら国家代表とはいえ、勝手に行動されては…」
「止めたら、今度はこっちを攻撃するからです!!」
「えっ、ちょ…!」
ここでシャルに替わり、楯無が言葉を続けた。
「刑事さん…『暴走核弾頭』という言葉に聞き覚えは?」
「暴走核弾頭?確か、この間の3都市同時爆破テロ事件の
実行犯の通称だった様な…ハッ、まさか?!!」
「そうよ。ナノハ・タカマチこそ暴走核弾頭の正体。
これは本人も公言してるわ。」
「あ、あ、あ…」
漸く警官隊も事の重大さに気が付いた。
このパリに、しかも自分達のすぐ近くに妖怪ハサミ兎以上の超危険人物が居る。
こうなった彼等が取るべき行動は一つ、一つしかなかった。
「ぜ、全員退避ーッ!!!!!暴走核弾頭が、暴走核弾頭が出たぞーっ!!」
「アイエエエ!暴走核弾頭?!!暴走核弾頭ナンデ?!」
「暴走核弾頭警報ーッ!!!暴走核弾頭警報発令ーッ!!!!」
「逃げろー!!パリに暴走核弾頭が出たぞー!!!」
「ヒイイイイイイイ!!パリの終わりだー!!」
エビヤンを先頭に、警官隊は一斉に逃げ出した。
さて、話を戦場と化した昼食会場に戻す。
「デイヤーッ!!」
戦斧と楯という中世さながらの武装の青い機体
「黒猫1」が掛け声一閃、ポーンの1機を真っ二つにしている。
「そーら!!」
更に別の所では、鉤爪と大鎌に火炎放射器を装備した緑の機体
「黒猫3」がポーンを鉤爪で串刺しにした。
「ハッハー!!燃えろ燃えろー!!」
そのまま火炎放射器に点火。ポーンは火だるまになった挙句、爆発四散。
「どうした凡骨共、掛かって来い!まさかロボットの癖に我等が怖いのか?!」
挑発する余裕がある所から、どうやらこのポーン、
彼女達にとって大分手応えの無い敵らしい。
そして青と緑の近接型2機の後方では、
3機の射撃型が弾幕でポーンを狩り捲っていた。
「変なロボットの皆さん、早く投降しないと蜂の巣ですよ!!」
赤の機体「黒猫2」は3砲身の20mmガトリング砲をぶっ放し…
「いい加減に狼藉をやめないと、串刺しにします!!」
黒の機体「黒猫4」は、放つ事でプラズマの鏃を持つ矢が分裂して飛んでいく
異色の兵装「量子ロングボウ」を射掛け…
「進もうが、逃げようが、アタシに立ちはだかった時点で終わりなのよ!!!」
そして白の機体は「黒猫0」ことGIGN-FI5の隊長、
フランス国家代表のアンジェラ・バルザック。
彼女は片手に1挺ずつレーザー重機関銃を構えていた。
「ぐぬぬぬぬ…ええい、何でたった5機相手に手こずるんだピョーン?!!」
突如現れた蒸気獣ポーンなるロボットの一団に囲まれたGIGN-FI5だが、
いざ戦闘となると、5倍近い数の敵を相手に驚く程の健闘ぶりを見せていた。
何しろ世界最高峰の呼び声高い対テロ特殊部隊である。
これに対抗できるのはドイツのGSG-9くらいの物だろう。
「一時はどうなるかと思ったけど、何の事は無かったわね。
数を揃えれば勝てると思った?」
「我等GIGNは世界一の特殊部隊、そしてFI5こそGIGNの最高戦力!
これしきの数の差に屈しはしない!!」
「おのれ~っ!!だったらお前等以外の奴を襲うピョンね!!行けーっ!!」
ポーンの何機かが戦線を離れ、別の標的に狙いを定めた。
その標的とは、GIGNの他の介入隊員に囲まれた「総大将」、
つまりイザベル国防相である。だが、これだけの罠を用意する人間が
この程度の穴を見過ごすと思ったのだろうか?
「馬鹿な奴、そんな事態に何の対策もしていないと思っていたのか?
…そら、やっちまいな!!」
「国防相を護れ!!総員、斉射!!」
「FI5だけがGIGNじゃないんだぜ、くたばれロボ公!!」
「陸軍を忘れるなよ!!対戦車ミサイルも食らえ!」
案の定、イザベルの壁となったGIGNの他の介入隊員と、
陸軍の兵士の猛反撃を食らう事に。向かっていったポーンは
対物ライフルから対戦車ミサイルまであらゆる重火器の弾幕を食らい、
たちまち蜂の巣どころか爆発四散、木端微塵となってしまった。
「ゲゲーッ!!他の奴でこれだと?!
ええい、残りはあと6機しかないじゃないか!!役立たずのポーン共め!!」
「今頃気が付いたの?間抜けなウサギさん。まさか、まだやる気なのかしら?」
「小癪な~っ!こうなったら、
このシゾー様が直々にその首ちょん切ってやるピョンねー!!
出でよ、『プレリュード』!!」
「
ズドォォォォォォォォォォォォォォォオオオオオオオオオオオオオオオン!!
「うわ!」
シゾーの声で上から降ってきた何者かが、
ポーンの1機を思い切り踏み潰して着地した。
それは高さ4mもある兎型のロボット。耳は巨大なハサミと化し、
2基の4連装機銃と棘付き鉄球のハンマーを備えた武装ロボットだ。
どうやら、これが「プレリュード」らしい。
「な、何だこいつは?!兎型の…ISなのか?」
「どうやら、それがお前の本当の切り札らしいな!妖怪ハサミ兎!!」
「誰が妖怪ハサミ兎だ!!シゾー様と呼べ!!
それと、この蒸気獣『プレリュード』をお前等のISとかいう
ロボットの出来損ないと一緒にするとはいい度胸だピョン!!」
「出来損ないだと?!
貴様、我がフランスの誇る傑作機をよくもそんな風に言えたな!」
「あ~ん?それがどうかしたピョン?これからお前等はこのプレリュードで
ギロチンより酷い死に方をする事になるんだピョンね!!
ウーッサッサッサッサッサ!!」
いよいよ佳境に入るシゾーとGIGN-FI5の戦闘。
だが、そんな戦場に、悪魔の到来を知らせる声が響き渡った。
『暴走核弾頭だーッ!!暴走核弾頭警報ーッ!!暴走核弾頭警報発令ーッ!!』
「え?!今何が…暴走、核弾頭?!」
「ば、馬鹿な?!この状況下で、これ以上の危険物が…」
「おいおいおい…警部、エビヤン警部!!今、暴走核弾頭と言ったのかい?!」
『国防相、お逃げ下さい!!暴走核弾頭が、暴走核弾頭がそっちに…!!』
「えっ…?」
「なのおおおおおおおおおおおおおおおっ!!!」
ズドォォォォォォォォォォォォオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!!
「「「「「うわあああああああああああああああああああ!!!!!」」」」」
またも何者かが上空から落下。そこにいたのはもう言うまでもないだろう。
「ウゲゲーッ!!何だこの武器だらけの…何かは?!」
「ま、まさか…こいつが、『暴走核弾頭』?!」
「この状況下で、な、何をしに来たんだ…?!」
直接会った事こそないが、GIGNにとってなのははかつて
自分達の本拠地を吹っ飛ばした因縁の相手。
本人のいきなりの襲来に、思わず腰が引ける一同。
なのははそんな隊員達を尻目に、シゾーの真正面に陣取った。
「な、何だお前は?!いきなり空から降ってきて!!」
「ねえ、そこの兎さん…」「誰が兎だ!!シゾー様と…」
「What?!」
「ヒィ!!」
「よくも食事時に乗り込んでくれたの…
御蔭で楽しみにしていた
この穏当な口調は、なのはが完全に怒り心頭に達した印だ。
「ウーッサッサッサッサッサッサ!!ざまぁ見ろピョン!!
人間共の悲しむ姿は見てて飽きな…」
ゴッ!!
「ぶぎゃ!!」
なのははアームの多重量子変換を全解除して、
思い切りプレリュードをぶん殴った。
「ねえ知ってる?日本人って、世界一食への冒涜に厳しい民族なの。
で、実は私は日本人なの。だからね、今日の夕食は…」
お前の兎鍋だ
「ウサッ?!」
なのは、怒りの死刑宣告。この場で完全にシゾーを狩る気だ。
「うおおおおおおおおおお!!!ヤマト二次移行なのぉぉぉぉおおおお!!!」
「まかせろー!!やまと、せかんどしふとー!!」
ヤマトは直ちに第2形態まほろばに形態移行。
三面八臂の鬼神がパリの地に堂々の降臨だ。
「さあ掛かって来るの、妖怪ハサミ兎!!
その首は柱に掛けられるのがお似合いなの!!!
It’s monster hunter tiiiiiiiiime!!!」
なのはは雄叫びと共にプレリュードに吶喊。
本来の狩人であるGIGN-FI5を差し置いて、
兎狩りは第二ラウンドに突入した。