魔法戦記リリカルなのはIS 高町なのはのIS学園見聞録   作:ピロッチ

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やっと登場した箒の専用機「紅椿」。
2か月遅かった分、束が改良を加えたその真価、遂に披露される時が来ました。


第2話  紅の 椿で祝う 新学期 後編

 臨海学校の際、箒の誕生日プレゼントとして披露された専用機「紅椿」。

しかし、箒は己の力不足を理由に受け取りを拒否。

千冬が「箒が代表候補生に成ったら、その合格祝いに渡す」

という条件を出した事で束を納得させ、

その時に備え更なる改良が加えられる事となる。

そして、約束通り箒は日本代表候補生の座に就き、遂に紅椿は引き渡された。

 

「よーし、後はこうすれば、…よし、最適化完了!」

 

 流石は最新型+ISの母直々の最適化(フィッティング)だ、

所要時間僅か数分で一次以降が終了した。

 

「よし、準備は良い?それじゃ試運転してみよー!」

 

「はい、では…行きます!」

 

 一夏達が避難すると、箒は意識を集中させ、一気に飛び上がる。

 

「おおっ?!」「これは!」「速いな……!」

 

 一瞬で音速を突破し、

飛行音を置き去りにして1秒で上空1,000mに到達した。

 

『どう、凄いでしょ?これぞ第5世代機2号機、

今の上昇速度はマッハ3+だよっ!』

 

「は、はい……!」

 

 紅椿初披露の日、暴走状態で接近してきた

銀の福音の最高速度がマッハ2+だった。

しかもそれは水平移動。重力に逆らう垂直移動だと、もっと速度が落ちる筈だ。

だが、紅椿は垂直移動でマッハ3を達成した。

軍用ISをも遥かに凌ぐ驚異の速力と上昇力に、

なのは以外の他の専用機持ちはただ呆然とするばかり。

 

「凄ぇ…!」「な、何て速さですの…。」「驚いたぁ…。」

 

 何たってトップスピードで他の機体の2倍以上。

このメンツで最も遅いヤマトとの差は何と7倍以上に達するのだ。

操縦者の名前が箒と言う事も考えれば、

正にIS界の赤い彗星となり得る驚異の機体となろう。

だが、約1名は全く違う反応をしていた…

 

「……(ヤマト、気が付いた?)」

 

「(うん、もっぴーはほうきにあわせててかげんをしているの。

ほんきをだせば、さらににばいはいくの。)」

 

 なのはは管制AIモッピーが専用機を初めて動かす箒の為に

手加減をしていると見破ったのだ。

もしもその必要がなくなれば、紅椿の速力は今の2倍にも達するであろう。

つまり本当の最高速度はマッハ6+。ヤマトの14倍速超と言う事に成る。

(但し、ヤマトワープを使うヤマトに速度勝負は無意味でしかない。)

 

『よし、次は武装を試してみるよ!刀を抜いてみて!』

 

「はい!(抜刀)」

 

『右手の刀は雨月(あまづき)、左のは空裂(からわれ)という名前があるよ。

それぞれ特性が違うから確かめてね。』

 

 流石は全国大会優勝者。難易度の高い二刀流も瞬時に対応した。

あるいは、紅椿を制御するモッピーが凄いのか。

 

『まず右手の雨月!

これは突きの動作に合わせてレーザーが発射されて敵を蜂の巣にしちゃうの!

射程距離は…対物重機関銃くらいかな。実際に的を用意するから狙ってみて!』

 

「突きに合わせてレーザー発射…ですか。では行きます。」

 

 的として用意したヤマトの近接グレネードが視界に映ると、

箒が雨月を構え、突きの構えをとる。

 

「イヤーッ!!」

 

 掛け声と共に突きの素振りを放つと、紅椿の周囲に赤い光球が現れ、

レーザービームとなって突きの方向に飛んで行った。

そして、箒からはレーザービームが

標的のグレネードを全て撃ち抜くのがはっきり見えた。

 

「おおぉー…。」

 

『次は左手の空裂!こっちは斬撃に合わせてエネルギー刃が飛んでいくよ!

振った範囲に自動で展開するから超便利。

今度の標的はヤマトのミサイルを使うよ。上手く落としてみてね!!

それじゃなーちゃん…ミサイル発射っ!』

 

 束の声に合わせて、

ヤマトが地上に16発のミサイルを遠隔部分展開してブースターに点火。

一斉に上空の箒へと飛んでいく。

 

「やれるか?いや、やって見せる…この紅椿ならば!デヤーッ!!」

 

 箒は空裂で眼前を薙ぎ払った。すると光の刃が赤い帯状に広がり、

16発のミサイルは一瞬で巻き込まれ大爆発した。

 

「うお、一振りで全滅?!」「むっ…!」「凄い…。」

 

「こりゃ凄ぇな…」「たーまやー。」

 

 と、ここで千冬がこう持ちかけた。

 

「成程…中々やるな。さて…お前達に問う。

この中で紅椿と戦ってみたい奴はいるか?」

 

「紅椿と…ですか?」

 

「ああ。実際に一戦してみるのも経験の内だ。

誰か戦って見たい者いるか?た…なのは以外で。」

 

「「「「「(うん、やっぱりなのはさんは省くんだ…)」」」」」

 

 まあ国家代表、しかもその中でも別格の強さなので仕方がない。

 

「じゃあ、俺はいくぜ。」「では、ワタクシも…」

 

「そうか、お…一夏とオル…セシリアの他にはいるか?」

 

 生徒を下の名で呼ぶ千冬。1学期からはまず想像もつかない光景だろう。

あの一件で千冬は変わった。

親無しというだけで周囲から碌な人間ではないと決めつけられ

それを見返すためにどんな非常識な教えも言われるがままにしていたが、

なのはがその元凶を吹っ飛ばした事で吹っ切れたのか、

1学期とは別人の様に変わっていた。

 

 スーツでの出勤を止め、真耶や他の教員達と同じ私服姿で出勤し、

事有るごとに出席簿でシバく癖を改めるべく、出席簿を持つ事もしなくなった。

そして、生徒を苗字で呼ぶのも改めようと、こうして努力している。

千冬は、少しずつだが丸くなっていたのだった。

 

「他にはなしか…では、一夏とセシリアは準備に入れ。」

 

「解ったぜ、…って、2対1でやるのか?」

 

「そうなるな。

近接特化のお前は前衛、射撃特化のセシリアは後衛とバランスも良い。

なのはがあいつをどこまで鍛えたのか、お前達の全力で見せて貰おう。」

 

「解った、じゃ、行ってくる。」「では、ワタクシも。」

 

「よし…束、篠…箒に伝えてくれ、『総合的な性能が見たいので、

これから一夏及びセシリアと2対1でIS戦をやってみてくれ』と。」

 

「解ったよ。箒ちゃん聞こえる、これからね…?」

 

 

 

 そして、双方共に準備完了。

 

 一夏が白式、セシリアがB・ティアーズ展開して紅椿と対峙する。

 

『3人共、準備は良いな。では、模擬戦を始める。3、2、1…始め!!』

 

「先手必勝!!!」「イヤーーーッ!!!」

 

 千冬の合図と共に一夏が瞬時加速で箒に吶喊し、

背後からセシリアがビットとスターライトmkⅢからレーザービームを放つ。

 

「何のぉッ!!」

 

 負けじと箒も雨月の連続突きでレーザーを撃ち返しつつ、

合間に空裂を振るい一夏を牽制。飛んで来たレーザービームは

展開装甲をエネルギーシールドに変形させて弾き飛ばす。

 

「成程ね、遠近両用武装ってのは見る分には良いけど…、」

 

「実際に対峙すると、これ程厄介な武装も早々有りませんわ!!」

 

 しかし、なのはの弾幕で鍛えられた一夏はこれくらいでは落とせない。

空裂のエネルギー刃を躱し、たちまち間合いに飛び込む。

対して箒は展開装甲をスラスターに変形させて後ろ向きに瞬時加速して離脱。

更に別の展開装甲をスラスターにして上方向に瞬時加速。

疑似的な「瞬時加速しながらの方向転換」を行い、一気に頭を押さえる気だ。

 

「こ、これは?!」

 

「くっ、速えぇなおい!!」「こ、こんなに速いなんて?!」

 

 やられた側もびっくりだが、やった側の箒もびっくりだ。

燃費の悪い白式は瞬時加速を多用出来ないが、

こんな事をされては通常移動で追いつける訳が無く、

慌てて瞬時加速で後を追う。セシリアもストライク・ガンナーを起動し、

全ビットをスラスターにして追い縋る。地上で見ているなのはは…

 

「おー、速い速い。遠隔部分展開で掴めるかな?」

 

「ん?何だた…なのは、お前でもあの速度には反応しきれないのか?」

 

「まさか。こっちはワープで攪乱すればいいから、

対応できないと思ってはいけないの!!」

 

 

 一方上空では、箒が雨月と空裂でセシリアと射撃戦をしていたかと思えば、

不意を突いて切りかかってきた一夏と展開装甲のエネルギーソードで斬り合う。

それならと一夏と切り結んで動きが止まるタイミングを衝いて

セシリアが横から撃ってきても、別の展開装甲がシールドを展開して弾き返す。

 

 正に完璧な機体だった。ヤマトに続き8つのコアを搭載した事で、

唯でさえ基本性能で途方もない差がついているのに加え、

ソード、シールド、スラスターに変形できる展開装甲で

攻守と機動の底上げがされ、これに遠近両用の雨月と空裂の火力が加わり、

専用機持ち2人掛かりを寄せ付けなかった。

今の箒はIS学園1年生の専用機持ちでは

なのはに次ぐ実力を得たと言えるだろう。

 

 

「何…あれ…新型?」

 

「あれ、乗ってるの篠ノ之さんじゃない?」

 

「ああ、本当だ!」

 

 紅椿のテスト戦闘の光景は別の生徒達からも見えていた。

生徒達は全員その光景に魅入られていたが、やがてある疑問に行き当った。

 

「でも篠ノ之さんって、ISに乗ってたった5か月だよね?

何で代表候補生になれたんだろう?」

 

「あれだよあれ、篠ノ之さんのお姉さんって篠ノ之博士でしょ?

妹の為に口利きしたとか?」

 

「ええっ!妹ってだけで代表候補生になれたって…。」

 

「噂じゃ篠ノ之さん、

学園への入試も全部パスだったって言われてるし…なんか、ずるくない?」

 

「でもそれを言ったら、

あれだけやらかしてる暴走核弾頭さんが国家代表になれたのって…。」

 

「「あっ…。」」

 

「うん、この話は終了。私達は私達で地道に練習しよ。」

 

「行こ行こ。下手に首突っ込んだら後が怖いし。」

 

「「賛成ー。」」

 

 こんな所でも、なのはの存在が黒い噂の広まりを止めていた。

生徒達がいかになのはを恐れていたかが良く解る一コマだ。

 

 

 

 

「うーむ、なのはさんの弾幕に慣れているから、

こちらのエネルギー弾攻撃は当たらんな…。」

 

 その頃、箒は攻めあぐねていた。皆なのはの超弾幕に鍛えられている為、

互いに射撃兵装は躱されて当たらないのだ。

剣の腕にしても、ブランクのある一夏には簡単に勝てるだろうが、

セシリアの援護射撃が的確なので隙を突こうに突けない。

 

 かつて遥かに格上の真耶相手に鈴音とセシリアが互角に戦った通り、

専用機持ち同士はなのはの相手をしている内に連携が大分洗練され、

お互いに容易く各個撃破出来る相手では無くなっていた。

 

「何か、何か無いか…?刀以外に使える兵装は…これだ!!」

 

 どうやら、何か見つけたようだ。一方、一夏達も…

 

「そろそろ決めないと…」「そうですわね!」

 

 こちらも最後の攻勢に出る。

 

「あの展開装甲のシールドを抜けるのは、やっぱこれしか無えよな!!」

 

 一夏は零落白夜を発動し、瞬時加速で吶喊。更にセシリアも前に出る。

 

「BT兵器、全盛りですわ!!」

 

 光線型に加え、実弾型のミサイルも発射。

更には近接兵器のインターセプターも抜いて

一気に間合いを詰める。恐らく飽和攻撃狙いだろう。

 

「あっちも焦っているな…ならば見せてやる!!」

 

 紅椿の背部パーツが腕に装着され、弓型に展開された。

 

「両腕に弓…あいつ、まだ武器を隠してたのか!」

 

「そうだ、これが紅椿の隠し玉、ブラスター・ライフル穿千(うがち)だ!!」

 

 クロスボウ型出力可変型ブラスターライフル、穿千。

箒の戦闘経験が一定値に達した事で紅椿に備わった機能、無段階移行により、

使用可能と判断されて発現した飛び道具だ。

早速エネルギーの弦が張られ、穿千の発射準備が整う。

 

「貰ったぞ!!穿千の最大出力、受けてみろ!!」

 

「い、いけない!!」「やっべ、間に合えええーッ!!」

 

 一夏とセシリアは方向転換して回避しようとするが、少し遅かったようだ。

 

「当たれェーッ!!」

 

 穿千からビームが発射された。

オクタコア化されている為、その出力は7月の披露当時とは比較に成らない。

特大のビームは回避中の2人をギリギリの所で捉えた。

 

「「グワーッ!!」」

 

 両機ともSE切れ、これにて勝負ありだ。

 

「やはり箒の勝ちだな。3人ともご苦労だった。どうだ、紅椿は?」

 

「はい、今日初めて乗ったのでまだまだ使いこなしきれませんが、

これから頑張ってやっていきます。」

 

「そうだな。…お前達はどうだ?実際に戦ってみて。」

 

「やっぱり、あの展開装甲が曲者だな。」

 

「同感ですわ。箒さんがアレを使いこなせるようになれば、

とんでもない事に成りますわね。」

 

「確かにな。」

 

 かくして、紅椿のデビュー戦は終了した。

最強の1年生代表候補生、堂々の誕生だ。




穿千が原作より早く使用可能となった理由は…察しの通りです。
なのはの鍛錬とモッピーの補正で、初めから使用可能と言う事にしました。
この後どこまで進化するか…見当もつきませんね。
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