魔法戦記リリカルなのはIS 高町なのはのIS学園見聞録 作:ピロッチ
初戦の相手は、英国で一騒動起こしたあのコンビ。
果たしてなのはは、死人を出さずに片づけられるのか?
「何?亡国機業の構成員らしき女が接触して来ただと?!」
『そうなの!写真を転送するの!!』
「むむ、こいつか…」
織斑姉弟にとって亡国機業は因縁浅からぬ存在だ。
なぜなら第2回モンド・グロッソベルリン大会の際、
一夏を誘拐した組織こそ亡国機業である。
恐らくはドイツ連邦軍、
ひいてはドイツ政府ばかりか世界主要国の政府と繋がっているであろう
国際的武器密売組織の人間が学園内にいる。この事実に千冬も緊張する。
『「みつるぎ」の社員、巻紙礼子を名乗っているけど、間違いなく偽名なの!!
どう考えても日本人の顔じゃないし、
そもそもあの会社にそんな名前の社員はいないの!!
この時期に偽名を使って学園に接触してくるのなら間違いなくクロなの!!』
「…だろうな。私は理事会と職員達に連絡する。お前はその女を…」
BEEP!BEEP!BEEP!BEEP!BEEP!BEEP!BEEP!
「な、何だ?!」
千冬が居る学園の警備管制室に警報音が響き、モニターに学園見取り図が。
その中の更衣室で、赤い点が点滅している。その光点の下には白式の文字が。
「白式…と言う事は、一夏は今更衣室にいるのか?」
『そうらしいの!!この赤点滅は異常事態発生のサインなの!!
私が早速見てくるから、先生は上に報告するの!!』
「解った!!」
報告を終えたなのははヤマトワープで一瞬で更衣室へ移動。そこにいたのは…
「な、何?!!」「なのはさん!!」
ISを装備していない一夏と
八本脚の蜘蛛型ISを展開した女…巻紙礼子がいた。
「やあ、5分振りなの。トイレットペーパー=サン。」
「チィッ、テメェが噂の暴走核弾頭かよ、
いくら巻紙なんて名乗ってるからって舐めた渾名付けやがって…!!」
先程とは打って変わった粗暴な口調の巻紙礼子。これが彼女の素の様だ。
学園最重要危険物であるなのはの登場に舌打ちをする。
と、ここでなのはは彼女が持つISコアに目を付けた。
「そのコア…ひょっとして、白式のかな?」
「ああそうさ!ついでにテメェのご自慢のヤマトも分捕る積もりだったが、
つくづく勘の鋭い野郎だな!」
「なのはさん、気を付けろ!!
そいつは変な機械でISを強制的に待機状態に戻して来るぞ!!」
「ISを待機状態に…さては
そう言えば束さんが言ってたの!!でもヤマトには効かないの!!
既に1度使ってるの!!!」
「ケッ、用意の良い奴だぜ!!
でもなぁ…テメェを殺せば済むって事だろうが!!」
8本の装甲脚が展開され、先端の銃口がなのはを狙い、実弾を放った。
しかし、なのははラウンドシールドで全ての弾丸を弾き飛ばす。
「んなっ…IS無しで弾を弾いただと?!テメェ、何しやがった?!」
「当たってないだけじゃないの?どうせ旧式だし、
そんな型落ち品で私にタイマンを挑むなんて、舐められた物なの。
その蜘蛛の様なデザイン、米国製の第2世代機アラクネで間違いないの!!
それで?まさか実体弾しかない型落ち品如きで、
この私に戦いを挑んだりしないよね?」
「言ってろ!!なら、こいつはどうだ!!」
ガッ!!
両手のカタールで持って切り掛かってきたが、
やはりなのはのラウンドシールドで弾かれる。
「何ッ?!こいつも止められた…!!」「無駄な事を…今楽にしてやるの!!」
「どーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーん!!!」
毎度おなじみのどーん!の声と共に
遠隔部分展開されたアームが飛び出してアッパーをぶちかまし、
両腕と装甲脚を一瞬で粉砕した。
「ぐあ!!」
「今なの!!一夏君、白式を呼ぶの!!」
「白式を…? っ!!来い!白式!!」
一夏が白式の名を呼ぶと、
礼子が持っていた筈の白式のコアが消え、一夏の右手に現れた。
「な、何ィーッ!!コアがワープしやがっただと!!」
「まさか知らないの?
『剥離剤を一度使われたISは、遠隔呼び出しが可能になる』という事を…
こっちはISの本家本元、そんなことはとっくに知ってるの!!」
一夏はそのまま白式を展開し、リベンジとばかりに礼子に吶喊した。
「さっきのお返しだ!食らえ!!」
一夏は零落白夜を発動し、無力化されたアラクネのバリアーをすり抜けて
本体の絶対防御に直接切りかかり、追い打ちに蹴り飛ばした。
「ぎゃあ!!」
壁に激突したアラクネは大破している。そのまま拘束しようと一夏が
礼子に近づいたその時だった。
「織斑君!!」
千冬の命令を受けたのか、M・レイディを展開した楯無を先頭に
R・リヴァイヴを展開した真耶を始めIS教員達が更衣室に突入して来た。
「……………どうやら、もう勝負は付いたみたいね。
とりあえず、そいつが侵入者でいいのね?」
「いかにも!!早速連れて…!!」
そこまで言いかけた所で、何かに気が付いたなのはは上空にバリアを展開。
「!!」
直後、天井を突き破って複数の光線が降って来た。
勿論、光線はヤマトのバリアで弾いたので天井以外に被害は出なかった。
「?!」
そして、天井に空いた穴の向こう側にいたのは黒い蝶の姿をしたIS。
英国製B・ティアーズ2号機、S・ゼフィルスだ。
操縦者は仮面型バイザーで顔が見えない。
だが、その体付きから中学生程度の少女と思われる。
「迎えに来たぞ、オータム。」
「え、M!テメェ、私を呼び捨てにするんじゃねぇ!!」
Mは礼子を嘲笑する様に一言告げた。
オータムと呼ばれた礼子は文句を言うがMは意に介さない。
もう解っただろうが、巻紙礼子の正体は
2月前にMと共に英国BAEシステムズの格納庫から
S・ゼフィルスを強奪した国際武器密輸組織
「亡国機業」のIS操縦者オータムだ。
「S・ゼフィルス…!!」
Mはなのは達にS・ゼフィルスの主兵装、
エネルギーマルチライフル「スターブレイカー」を乱射する。
しかし、ヤマトはその程度ではビクともしない。
「ケッ、ふざけた耐久力だぜ、まるで戦艦だな!」
オータムは戦闘不能になったアラクネからコアを抜き取り、
機体を自爆させて一目散に逃走。
真耶達が爆風に怯んで動けない隙にMと合流した。
全員が態勢を整えると既にオータムの姿はなく、
Mも学園上空から遠ざかっている。
「くっ、逃げられたか…!!」「そうですね……」
機体の性能を考えると、真耶達教員勢はまず追いつけないだろう。
専用機持ちも、今から出撃して果たして間に合うかどうか。
しかし、ここに諦める気のない者がいた。
逃゛け゛ん゛し゛ゃ゛ね゛ぇ゛の゛っ゛!!
「この場の収拾は山田先生と千冬先生に任せるの!!
私はアレを〆てやるのぉーっ!!」
「え、ちょっ、待っ…」
なのはは追う気満々だった。
早速ヤマトワープでS・ゼフィルスの至近に移動する。
「待ちやがるのぉぉぉおおおーっ!!」
「!! 追いついただと…そうだ、奴はテレポート使いだったな!!」
Mはまさかの追撃に一瞬怯むが、すぐに反撃に移行。
スターブレイカーと全ビットを以てなのはを迎え撃つ。
「何の!!目には目を、ビットにはビットなの!!」
ヤマトの大腿部からナイフが出現。なのははそれを頭上に放り投げた。
「出でよ、コスモファルコン!!」
ナイフが量子変換を解かれると、現れたのは32機のミニチュアの戦闘機。
それは、いわば篠ノ之流BT兵器ともいえる戦闘機型の分離式機動兵器
「コスモファルコン」だ。
「チッ、奴もビットを使うのか!!」
32機のコスモファルコンは全方位からS・ゼフィルスに群がり、
一斉に荷電粒子ビームガンを撃ちまくる。
更に機体下方の扉からは超小型ミサイルを投下、多重量子変換を解かれ、
本来のサイズの対ISミサイルとなって襲い掛かる。
「こっ、このぉぉおおおっ!!」
Mは全ビットをシールド形態に展開して防ぐが、数が多すぎて防ぎきれない。
何発かが本体に命中し、SEを削っていく。
「まだまだ終わらないの!!」「のいじーくりけっとぱぅわぁーっ!!」
ヤマト本体も4連装機銃を斉射。
コスモファルコンを避けながら60の光線が迫る。
「偏向射撃だと?!どこまでも常識外れな奴め!!」
Mもスターブレイカーとビットで反撃。
こちらも
光線は逃げるコスモファルコンを追尾、何機かが被弾して炎上し、黒煙を曳く。
「しぶとい奴なの!!被弾機は撤収!!残った機体は攻撃続行!!そして…」
主砲と副砲を遠隔部分展開して加勢させ、ミサイルも総動員、
砲撃とミサイルが暴風雨の如く飛び掛かる。だが、Mは巧みに弾幕を躱す。
「くっ、化け物め…!!
(ただ逃げて送り狼の真似事をされればただでは済まない…
どうしてもこいつを撒かなければ…!!)」
防戦一方でジリ貧のM。
だが、1対1で機体に2世代差があるという条件を考えると、
1分近く攻撃を凌いでいる彼女も充分凄い。ICPO-ICD、KSKでさえ、
ここまでは保たせられなかった。
「………これは、余程の手練れなの!!こうなったら、あの新技を使うの!!」
なのはの前に多数の魔法陣が出現。それは、なのはが苦手とする転移魔法だ。
だが、今のなのはにはヤマトがいる為、この手の魔法も問題なく使用可能だ。
しかし、ヤマトワープが使えるのになぜ転移魔法を使うのか?
「照準良し…これを避けられるかな?!」
一方、なのはが魔方陣を展開したのを見たMは…
「(何だ、あの光の円は?!まさか…)」
それをとんでもない大規模攻撃の予兆と判断。
ここは全速力で軸線から離れ、ランダム回避で距離を取るべきと判断した。
「(奴は波動砲という凶悪な大口径ビーム兵器を搭載していた筈…
さては痺れを切らしてそれを使う積もりか?だが、当たる物か!!)」
だが、Mの判断は不正確だった。
大規模攻撃までは当たっていたのだが、その内容は予想とは違っていた。
「…それで逃げた積もり?」
なのはは魔方陣の集合体に波動砲では無く、他の全火砲を向けた。
そして、一斉に全火砲を斉射した。
「どーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーん!!!」
本日2度目のどーん!で全砲撃が魔方陣の集合体を直撃。
しかし、転移魔法なので砲撃は全てどこかに転送されてしまう。
では、その転送先は…?
「(何もしてこないなら、このまま逃げ切る!!)」
Mはなのはが何もしてこない内に、距離を稼ぐ為最大速度で直線飛行。
だが、既になのはの一撃はMを捉えていた。
突如、Mの眼前に魔方陣が現れると…
ドォォオオオオオオン!!
「グワーッ!!」
Mは自分から砲撃に突っ込む形で直撃を浴び、大爆発して墜落。
しかし、なのはが落下中にアームの遠隔部分展開で掴み、捕縛された。
一方、オータムは…
「くっそ、何もできねぇまま撤収とはな…!」
どさくさに紛れ、何とか学園敷地外に逃げ出したオータム。
そのまま二輪車で本土との連絡手段であるモノレールの発着場へ逃亡を図る。
「ここまで来れば、後はモノレールで逃げるだけだ…
あいつに連絡して早いとこ合流しねぇと…」
しかし、そうはいかないのがIS学園だった。
ガシィッ!!
「な、何ィーッ!!!」
突如現れた巨大な手がオータムを二輪車ごと鷲掴みに。正体は勿論…
「知らなかったのかな?私からは逃げられないの!!」
「ゲェッ、暴走核弾頭!!テメェ、何でアタシの居場所が…」
「コアを持ったままで逃げられると思ったの?!
ハイパーセンサーには丸見えだったの!!
勿論、観念してくれるよね?原型が解らなくなるまで握り潰されて、
バイクとごっちゃにされて送り返されるなんて死に方は嫌だよね?」
なのはのやる気満々の顔を見たオータムはたちまち真っ青に。
「よ、止せ!ギブアップするから、握り潰すのだけは…」
オータムに出来る事は最早それだけだった。
かくして、学園祭の闖入者は呆気無く鎮圧された。