魔法戦記リリカルなのはIS 高町なのはのIS学園見聞録 作:ピロッチ
さて、簪の専用機打鉄弐式の披露は終わった。
次はデュノア社から届いたシャルロットの新専用機、タイフーンCCの披露だ。
「では早速展開するの!!」
「はい!タイフーン、出て!!」
展開されたタイフーンCCは夏休み中のお披露目デモで見た通り、
今までのR・リヴァイヴを更に単純化した様な外観だった。
だが油断してはいけない。この機体はISの母、篠ノ之束本人が設計した
世界初の量産型第3世代機だ。
「あれが姉さんの作った、史上初の…」
「量産型第3世代機『タイフーン』。
R・リヴァイヴの装備は全て無改造で搭載できるという上位互換機能から、
早くもR・リヴァイヴ保有国から注文が殺到しているという話ですわ。」
タイフーンの前級、R・リヴァイヴは12か国で制式化された名機だった。
具体的に言うと、EU加盟国では仏、独、伊、西、ギリシャ。
非EU圏ではウクライナ、ブラジル、トルコ、英国、インド、豪州。
そしてもう1国、欧州にEU未加盟の保有国があるが、
その国は現実世界には存在しない国であり、今は説明する時ではない。
ここに上位互換機能を持つタイフーンが発表された事で、
この12国は装備更新の為一斉にメーカーのデュノア社にタイフーンを発注。
現在、デュノア社の生産部門は空前の大忙しだと言う。
「しかし、量産前提の設計のおかげで大分シンプルな見た目だな。
知らない人間が見れば、まず第3世代機とは思うまい。」
「だが、中身は紛れもなく第3世代機だ。
校外実習で試験していたガーデン・カーテンの完全版が初期装備らしい。
防御面は間違いなく進歩しているだろう。それにな…」
「え?まだ何かあるの?」
「夏休みにお師様が国家代表として我々の基地を訪問したが、
そこで親善試合が有ってだな。その時、お師様はタイフーンの専用装備1つで
国家代表と先代代表含む我が方のIS5機を圧倒してのけたんだ。」
「…この前散々な目に遭わされたのに、何でまた試合しようと思ったのよ…。」
「命令だったから致し方ないのだ…その時の兵器はHR兵器とか言ったな。
まあISサイズの八徳ナイフ?…みたいな物だったが…。」
「八徳ナイフ…?」
「それでは、実際に武器のテストなの!!
まずは主力の多目的ツール、HR兵器からなの!!」
「はい!」
シャルがHR兵器を展開。
以前ドイツのKSK基地で披露した物からシャル向けに装備が置き換えられ、
量子ロングボウは40mm自動グレネードランチャー、
ワイヤーブレードは37mmパイルバンカーに変更されていた。
シャルはHR兵器に装備された武装の1つ1つを確認するため、
展開しては素振りし、或いは的を的確に射抜いて行く。
「うわ、
『これさえあれば誰でも高速切替が出来る』って、こんなに便利なんだ…」
「そう言う事なの!!これは第3世代機向けの展開装甲なの!!
拡張領域をR・リヴァイヴの数倍に広げた事で、
第3世代機だけど展開装甲を搭載可能になったの!!!
ただし、これを装備している場合他に追加装備を搭載できないの!!」
「やっぱり展開装甲って、それだけ拡張領域を食うんだ…
でも、これなら充分元は取れますよ!!」
「それは何よりなの!!そしてそのHR兵器だけど、
『HR兵器』に替わる通称が出来たの!!名付けて『
「
「……正にその通りなの。」
かつてのフランス大統領シャルル・ド・ゴール。
彼は若い頃、そう言う渾名で呼ばれていた事が有る。
なのははシャルロットがシャルル名義で入学してきた事に因んで、
HR兵器にこの銘を付ける事を提言し、採用に至ったと言う。
「それじゃ、次はテスト飛行なの!!
ウォーミングアップも兼ねて島を一周してみるの!!」
「はい!!」
早速タイフーンCCを急上昇させ、指示通り島を一周する事に。
流石に世代が上の紅椿には及ばないが、束直々の作品の名は伊達ではない。
同じ第3世代機の中で最速のB・ティアーズ+ストライクガンナーを
追加装備無しで凌駕するその高速性で、あっという間に島を一周してしまった。
「こりゃ速ぇ!ホントに量産機ベースなのか?!」
「ハイパーセンサーで確認しましたわ…
最高速度マッハ2.5…ストライクガンナーでも追いつけませんわよ…。」
この結果はなのはにとっても意外な様だ。
「これは驚いたの!!デュノア社は大分手を加えた様なの!」
『はい、最初は僕も驚きましたけど、慣れると凄く機敏に動きますよ!!』
「では戻って来るの!!ウォーミングアップはそこまでなの!!
降りてきたら、改めて本日の朝練に入るの!!」
『はい!』
そして、シャルがアリーナに帰還し、本日の朝練内容が告げられる。
「今日は2人1組で組手をやって貰うの!
でもここにいるのは11人だから、私以外でペアを作るの!!」
と言う事で、なのはを除く残る10人でペアを作る。
というか、なのはとタイマンでの組み手=拷問なのでこうするしかない。
その結果、まず一夏と箒、鈴音とセシリア、ラウラと楯無でペアが組まれた。
新顔のイージスコンビ、ダリルとフォルテはそのまま。
そして、シャルと簪は専用機を新調した者同士で組み手を行う事に。
「東西の量産型第3世代機対決かぁ…どっちが勝つのかな?」
「機体性能はタイフーンが上だろうな。何せ姉さん直々の設計だ、
あの人の事だ、まだ何か隠しているかもしれん。」
「後は、あの簪とかいう娘の腕次第か…じゃ、俺達は俺達でやるか。」
「ああ、そうしよう。」
「そ、それじゃ、組手…しよっか?」
「うん…良いよ。」
かくして対峙したシャルと簪。互いに初顔合わせ故か、
何となく挨拶がぎこちない。双方は改めて専用機を展開し、武器を構える。
「じゃあ…始めるよ!」「(頷く)」
「では、準備の出来た組は早速始めるの!!」
なのはの合図と共に簪とシャルも組手を開始。
史上初の量産型第3世代機対決は射撃戦から始まった。
コネターブルと春雷から放たれる紅白の荷電粒子ビームが
晴天の学園上空を派手に飾り立てる。
「(っ!やっぱり速い!)」
タイフーンCCの高機動性に驚く簪。
ただでさえクアッド・ファランクスを装備したまま飛行できる
大出力を発揮した機体である。そこにシャル向けの更なる改装で
スラスターが増設されたことも有り、巧みな機動性で春雷を回避する。
だが、速いのはタイフーンCC本体だけではない。
以前から機銃を好んで使うシャルに合わせ、コネターブルは光線銃形態の際に
威力と引き換えに発射速度を最大16発/秒まで上げる機能が新設されていた。
「でも…それならこっちだって!」
簪も負けずに春雷を機銃モードに移行。
本来の設計元、倉持技研では付ける予定の無かった追加機能だが、
遠距離戦での手数を補う為、ヤマトの手直しで急遽追加された。
偶然だが、こちらも威力を絞る代わりに最大16発/秒まで連射を加速できる。
その結果、シャル対簪は次第にドッグファイトの様相を呈してきた。
『これは見事なドッグファイトなの!!
でも、それで千日手になるのなら…解るね?』
「「!」」
地上のなのはから、暗に火器ばかりに頼らず他の武器も使えと指示が飛ぶ。
「確かに…光線銃だけがコネターブルじゃない!」
コネターブルを傘型ビームシールドに切り替えて簪に突っ込み、
間合いを見て槍に切り替える。簪も超振動薙刀「夢現」で応戦。
「イヤーッ!!」「デヤーッ!!」
掛け声と共に双方の刃がぶつかり合い、火花が飛び散る。
ポールウェポンの扱いは簪が上らしく、何度かシャルの隙を衝くが、
タイフーンCCはR・リヴァイヴでは追加防御パッケージだった
ガーデン・カーテンを標準装備しているので、有効打を与えるには至らない。
「やっぱり近接戦は不利か…仕方ない!」
シャルは高速機動で間合いを取る。
簪も後を追うが、タイフーンCCが速度で有利の為、間合いを詰められない。
「何て速さ…!でも!」
簪は打鉄弐式の切り札、山嵐を全弾発射。
64発の対ISミサイルが一斉にタイフーンに襲い掛かる。
「やっぱり使って来たね…これを凌げば、だいぶ楽になるんだけどな!」
傘型ビームシールドとガーデン・カーテンで防ごうにも、
数が多すぎて途中でSE切れになるのは明白。ここは射ち落とす他無い。
「こっちだって、ミサイル位持ってるんだから!!」
シャルは逃げながらコネターブルをミサイルランチャーに切り替え、
後方へ向けて迎撃。但し、数は6発しかないので全て落すには足りない。
幾らかは誘爆で射ち落とせたが、まだまだミサイルはやって来る。
「今度はこれだよ!」
コネターブルをグレネードランチャーに切り替えて迎え撃つ。とここで…
「!」
今度は簪がミサイルの合間を縫って春雷で攻撃。ビームシールドで受け流す。
さっきまでグレネードランチャーでミサイルの迎撃をしていたかと思ったら、
簪からの不意射ちをビームシールドで弾き飛ばしたシャル。
専用機を新調した事で、異なる距離の相手にも
同時に対応可能なまでに
タイフーンが試作機の枠を出ない従来の第3世代機を
大きく上回る性能を秘めている事が良く解る光景だ。
箒が専用機に慣れていない現状、今のシャルはIS学園1年生の中で、
なのはに次ぐ強者と言っても過言ではないだろう。
「そろそろ決着を付けないと…こちらからも打って出る!」
シャルはガーデン・カーテンと傘型ビームシールドを展開して、
残ったミサイルを防御すると、
コネターブルを切り札の155mmプラズマ砲に切り替える。
「これで決めてやる!!」
プラズマ砲を発射。
放たれた熱線は打鉄弐式を正確に捉え、着弾した。だが…
「全方位型ビームシールド『
それくらいで、この防御は破れないんだから…。」
打鉄弐式は光のカーテンに覆われて無事だった。
この防御装備、元々は「不動岩山」という名の追加装備だったが、
ヤマトが各種調整を行った結果拡張領域に余裕が出来たので、
更に重防御のビームシールドとして、
天岩戸という新たな名で搭載された経緯が有る。
「プラズマ砲を止められた…?!」
「遅い…!」
簪が春雷を連射。1発の荷電粒子ビームがコネターブルの砲口に飛び込み、
直後、爆発四散した。
「うわ!」
爆発の衝撃で姿勢を崩すシャル。
簪は夢現を手に決着を付ける為一気に間合いを詰める。
「これで…終わり!!」
しかし、決着を付ける筈の一撃は途中で止まった。何故か?
「引っかかったね!コネターブルは…もう一つあるんだよ!」
何とシャルが持っていたのは2基目のコネターブルだった。
これこそがタイフーンCCの原型機からの最大の改装ポイント。
万一に備え、コネターブルを2基搭載できたのだ。
「くっ…!折角のチャンスだったのに…!」
勝負を決められずに悔しがる簪。だが、ここで時間切れ。
『そこまでなの、今回はドローなの!!』
「終わった…んだよね?」
「そうだね…。じゃあ、降りるか…。」
「うん…。」
納得いかない様子だが、時間切れになった物は仕方ない。
量産型第3世代機対決の決着は次回以降に持越しとなった。
「それで2人共、専用機の調子はどうだったかな?」
「正直…予想以上だった。これなら、大手を振ってお姉ちゃんとも…。」
「
2基同時に操作できる様になったら、きっと化けますよ!!」
専用機を格納状態に戻した2人は専用機での組手の感想をこう答えた。
「矢張り、専用機慣れしている分操作の手際が良かったな。
私も頑張ればいつかは…。」
「ああ、箒もいつかああなるんだろうな…でもさ…」
「何だ?」
「箒が紅椿に慣れたら、あのレベルじゃ済まないと思うぞ…。
紅椿って確か…オクタコアなんだろ?」
「……………。」
この時、自分達の成長がとんでもない方向へ進む事など
一夏も箒も、なのはですら全く予想していなかった。
実を言うと、学園は今後暫くは平穏が守られるので、
なのはが学園内部で暴走核弾頭になる場面はほぼないです。
でも、10月の合同合宿や修学旅行以降のオリジナルストーリーでは…
核より酷い暴走ぶりを披露して下さる事でしょう。