魔法戦記リリカルなのはIS 高町なのはのIS学園見聞録   作:ピロッチ

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さて、今年最後の投稿となる通算第62話。
今話で更識姉妹の問題が当面の解決を見ます。


第10話  姉妹対決 急

 9月某日の放課後、急遽行われた更識楯無と更識簪の姉妹対決。

結局引き分けに終わったこの対決後、楯無は今までの行動の理由と

姉妹対決に至った経緯を千冬と虚も同席の上で説明する事になった。

 

「で…結局、先輩は何をしようとしたのよ?」

 

「それはね…」

 

 楯無は専用機持ち達に今までの行動の理由を説明した。

国家代表として専用機のメンテナンスの為帰国していた際、

ロシア大統領ビクトル・D・ザンギエフからなのはの存在を知らされた事。

 

 大統領はもしも翌年のモンド・グロッソモスクワ大会になのはが出場したら、

モスクワ大会が八百長同然の出来レースと化し、

ロシアが世界に大恥を晒してしまう事となるのではないかと危惧している事。

 

 そこで、なのはの引き込み、もしくは暗殺も含めた出場阻止工作の為、

楯無に情報収集を命じたと言う事を…。

 

「という訳で、帰国してすぐ生徒会長の座を賭けてタイマンを仕掛けたのよ。

私が負ければ生徒会長の座を彼女に押し付けて行動を制限できる上に

私は行動の自由度が増すという事に成るからね。

万一勝ったなら、『私なら暴走核弾頭相手でも勝てる、心配無用』

とモスクワに報告すればそれで全て終わる…とそういう魂胆だったの。」

 

「………まあ、大統領の気持ちは解らんでもないな。」

 

「確かにね…。なのはさんがモンド・グロッソに出たら…ちょっとね…。」

 

 現役の国家代表を4人もKOし、初代ブリュンヒルデをも一撃で破った悪魔、

暴走核弾頭にタイマンで敵う操縦者など、この世にいる筈が無い。

開催国として、ロシアの対応はある意味仕方ないと言うのが一同の総意だった。

 

「でも、IICに巣食った似非日本人と近接戦至上主義者の盆暗が

彼女の逆鱗に触れたせいで、彼女の力を恐れた日本政府がご機嫌取りの為、

日本代表操縦者に指名してしまった。御蔭でロシアは大分追い詰められたわ。」

 

「まあ、あいつらはねぇ…」

 

「正直、二度と思い出したくもないな。」

 

「それと前後して、私の妹の簪ちゃんが彼女と接触したみたい。

これに関しては…本人が説明するべきだわ。そうでしょう簪ちゃん?」

 

「うん…解った。私ね、小さい頃から出来が良かったお姉ちゃんと比較されて、

身内から不肖の妹とか出来損ないとかずっと蔑まれてたの。助けて貰おうにも、

家には『他人に能動的な行動を取るのは甘え』って家訓があって、

誰にも泣き言を言えず、悩みを打ち明けられなかったの。

でもある日、一度だけ精一杯の勇気を出してお姉ちゃんに悩みを打ち明けたの。

でも、返ってきた答えは…」

 

 

 

 

 

『貴女は何もしなくていいの。私が全部してあげるから。

だから貴女は無能なままでいなさいな。』

 

 

 

 

 

「それが、お姉ちゃんの答えだった…。」

 

 簪の説明で、千冬と専用機持ち達が一斉に楯無に白い眼を向けた。

 

「うん、予想通りの反応ね…。」

 

「それでお姉ちゃん、さっき約束した通り、

どうしてあの時あんな事を言ったのか、話して貰うからね…。」

 

「…解ったわよ。一言で言えば、『更識を忘れて欲しかった』の。

簪ちゃん、知ってるでしょ?家が先祖代々どういう事をやって来たか。」

 

「どういう事だ?我々に解るように教えてくれ。」

 

「はい、私達更識家は暗部狩り専門の暗部です。

言ってみれば、この国を先祖代々他国のスパイから護って来た、

国家お抱えの忍者一族とでも思って下さい。」

 

「暗部か…と、言う事は…。」

 

「はい。その特性上、汚れ仕事もこなす必要が有ります。

具体的には、他国から入り込んだスパイの暗殺とか…。」

 

「ええ?!じゃあ、先輩も…。」

 

「…そうよ。かくいう私も中3の時、初めて…

私が当主の称号、楯無を得たのはその年の事だったわ。で、続きに戻るけど…

そんな家だから、簪ちゃんの様な普通の人間に近い感性を持った人にとって、

我が家は決して居心地の良い所ではなかったわ。

身内も皆、才能で勝る私をちやほやするばかりで、

簪ちゃんに見向きもしない事は知っていた。

 

でも、さっき言った様な家訓が有るから、

如何に次期当主最有力候補といえども、庇うに庇えなかったの。

下手すれば、『軟弱者に情けを掛ける未熟者』と思われて

自分も簪ちゃん共々身内からの軽蔑を受けるかも知れない。

だから、悩んだ末私が出した精一杯の答えが…」

 

「敢えて、突き放す事だったと言いたいのか。」

 

「はい。あの家に簪ちゃんの居場所が無い以上、

簪ちゃんには、自分を蔑むばかりの家の事は忘れて欲しい。

でも、私が甘い事を言えば、未練が残って家を捨てられない。」

 

「だから、あんな事を言ったの?」

 

「そうよ。貴女にはいつまでも自分を蔑んでばかりの家なんか捨てて、

更識と関係の無い1人の人間として生きて行ける様になって欲しかった。

その手助けなら、いくらでもしてあげられた。だから、あの娘を側に付けた。」

 

「あの娘…本音の事?」

 

「はい。ここで、知らない方の為に御説明致します。

私達布仏家は先祖代々更識家に仕え、その補佐を生業としてきた一族なのです。

具体的に言えば、私はお嬢様、イコール楯無様の、

そして妹の本音は簪様の専属メイドを務めています。」

 

「じゃあ、本音は私を監視する為じゃなくて、

何かあったらお姉ちゃんが私を助ける為に…。」

 

「そう言う事よ。『他人に能動的な行動を取るのは甘え』なんて、

どうせ家の中でしか通用しないんだから、

家訓の事なんか忘れて、自分を正しく評価してくれる人に助けて貰えばいい。

本当は気付いてるんでしょう?貴女は自分が無能なんかじゃないって事に。」

 

「………。」

 

『実はこう見えても、私も二女で落ちこぼれなの!!』

 

『私は剣の腕何てからっきしなの!!

つまり落ちこぼれなの!!貴女と同じなの!!!』

 

『自分の持ち味を見つけ出して、それを伸ばす事を心掛けるの!!

この学園に入学できた時点で、その資格と素質はあるの!!』

 

 簪は臨海学校が終わって程なくなのはに言われた言葉を思い出した。

よくよく考えれば考える程、その言葉の通りだと言う事を思い知らされる。

倍率1万倍とも言われる世界一のエリート高校に自力で入学した。

専用機も持ち、国家代表候補生にもなった。

そして、ついさっき現役のロシア代表操縦者の姉を相手に引き分けた。

それは、常人では不可能な事だ。

 

「あそこまでやれる人間が無能の筈がないじゃない。

もう悩むのは止めて、貴女の好きにすればいいのよ。」

 

「お姉ちゃん…」

 

「私も、先輩の言う通りだと思うぞ。」

 

 今度は箒が簪に言葉を掛けた。

 

「簪と言ったな。私は篠ノ之箒、ISの母、篠ノ之束の妹だ。」

 

「篠ノ之博士の…妹…じゃあ、貴女も…。」

 

「そうだ。私もまた、天才と呼ばれる姉を持つ妹として生まれた身だ。

そして、ここにいる織斑一夏も…。」

 

「………………。」

 

 沈黙する一夏に替わり、箒の言葉を千冬が続けた。

 

「そう言う事だ、更…簪よ。少し前に篠…箒にも言った事が有るが、

お前は1人ではない、この学園にはお前と同じような境遇の人間が複数いる。

お前がこの先、実家に戻るにしろ、離れるにしろ、他人に頼る事は恥ではない。

他人に頼った結果、今までの努力が実ってやっと姉に追いつけたのだろう?

だから自信を持て。」

 

「あ、ああ…」

 

 いつしか、簪の眼に涙が浮かんでいた。

 

「お姉ちゃぁぁぁぁぁぁん…!!(つД`)」

 

「簪ちゃん…。」

 

「お嬢様…簪様…。」

 

 気が付いたら、簪は姉に抱き着いて鳴いていた。

かくして、姉妹の和解は成ったのであった。

 

 

 

「さて、更識姉妹の事は片付いたけど、片づけなきゃいけない問題が有るの!」

 

「ロシアの事だな…連中が楯無を差し向けたのは

自国開催のモンド・グロッソが出来レースと化すのを恐れての事である以上、

それを防ぐ手段さえ講じれば、ロシアの工作を止める事が出来るかもしれん。」

 

「それなら、モンド・グロッソ本大会に匹敵する『何か』を開けば良いの!!」

 

「何か、とは…?」

 

「それを皆で考えるの!!

考案したら早速クレムリンに飛んで、大統領に直談判するの!!」

 

「じ、直談判って…」

 

「あの…ここからモスクワまで、何kmあるか「Что?!」「ヒィ!!」

 

 そしてこの「What?!」の一喝である。

日系1世の楯無相手に敢えてロシア語版を使うのがなのは流。

 

「ねえ、一夏君。この人…隣の部屋に行く感覚で

外国の大統領官邸に行こうとしていないかしら?」

 

「先輩…慣れて下さい。なのはさんはこういう人なんです。」

 

「うん、流石は暴走核弾頭だわ。」

 

 何かもう、色々とどうでも良くなってしまった楯無であった。

 

 

 

 

 

 そして、1時間後…

 

 ロシア連邦 モスクワ クレムリン宮殿

 

「補佐官、サラシキ君からの連絡はまだなのか?」

 

「はっ、未だそれらしき物は…もしや、我々の工作が学園にばれたのでは…?」

 

「うーむ、だとしたら一大事だ…念の為、長老にも連絡を入れなくては。」

 

 ロシア大統領ビクトル・D・ザンギエフは

楯無からの報告が来ない事を不審がっていた。

 

「まずい…まずいぞ…もしも本当にばれていたとしたら、

長老に何と申し上げれば良いのやら…。」

 

「我が祖国の威信が懸かる世界大会、来年の開催地にモスクワが選ばれたのは

長老の働きかけあっての事。もしも奴の出場を阻止できなければ…」

 

 焦りを隠せないザンギエフと補佐官達。その時である!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なのおおおおおおおおおおおおおおおっ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ズドォォォォォォォォォォォォオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!!

 

「な、何事だぁ?!!」

 

 突如天井から降ってきたのは3人の人影だった。

そして、その内の1人は…。

 

「ど、どうも~…定時報告が遅れて申し訳ありません~。」

 

「な、サラシキ君、これは何事か?!」

 

 楯無である。そして、残る2人は…。

 

「ぶ、ブリュンヒルデ…?!何故だ、何故ブリュンヒルデがクレムリンに?!」

 

 その後ろには、仏頂面の千冬が居た。そして、残る1人は言うまでも無く…

 

「おおおおおおおおおおお!!!私が暴走核弾頭ナノハ・タカマチなの!!」

 

「げぇっ、暴走核弾頭!!」

 

「な、何をしに来た?!」

 

「大統領とO☆HA☆NA☆SHIに来たの!!」

 

「お、オハナシ…だと?」

 

「私が怖くてこそこそと裏工作を仕掛ける灰色熊共!!

本当ならツングースカより酷い目に遭わす予定だったけど、

今日は機嫌が良いから、その悩みの種を解消する話を持って来たの!!」

 

「悩みの種…それは、モンド・グロッソの事か?!」

 

「そうなの!!私が出たら出来レースに成るとか怯えているみたいだけど、

本大会より盛り上がる事必至の催しを提案しに来たの!!」

 

「何だと?!」

 

「馬鹿な!そんな旨い話があろう筈がない!!」

 

「…だが、物は試しだ、聞くだけは聞いてやろう。」

 

「私の専用機はタバネ・シノノノ直々に建造した世界初の第5世代機なの!!

そして、彼女はここにいる初代ブリュンヒルデの新たな専用機として

第5世代機を建造中なの!!

モスクワ大会が私の優勝の決まり切った出来レースと化すと言うのなら、

『優勝者は第5世代機を駆るブリュンヒルデとのエキシビジョンマッチを行う』

という特別ルールを設ければいいの!!

真の世界最強決定戦をモスクワで開こうと言うの!!在り難く思うの!!!」

 

「何ッ?!ブリュンヒルデVS暴走核弾頭の、第5世代機対決…だと…?!」

 

 悪い話ではない。初代ブリュンヒルデとしての千冬の知名度は絶大だ。

モスクワで奇跡の復活となれば大きな集客効果が期待できる。

 

「そう言う事です。モスクワ大会の成功を気に掛けているのであれば、

是非この案を容れて頂きたい。タバネ・シノノノも宜しくと申しております。」

 

「た、タバネ・シノノノまで関わっているのか…。」

 

 国家代表、暴走核弾頭、初代ブリュンヒルデ、そしてその裏のISの母、

この4人からの直接の提言に対して、ザンギエフの回答は…

 

「…よかろう。ISの母にまでバレたとあっては、最早工作は出来ん。

その案を国会に提案しておく。」

 

「ほ、本当ですか?!」

 

「うむ。ただし…最終的には長老の返答次第だ。」

 

「長老…ああ、『おそロシア』を体現するあのお方ですか?」

 

「如何にも。長老が何と言うかは解らん。それだけは忘れるな。」

 

「ですよねー…。」

 

「それだけ解れば十分なの!!では退散するの!!ダスビダーニャなの!!

因みにこの会話は録音してあるからちゃぶ台返ししたらツングースカなの!!」

 

 そう言うと、なのは達はワープでクレムリンから脱出したのであった。

 

「な、何だったんだ一体…」

 

「助かった、と言えば宜しいのでしょうか?」

 

「そう言う事に成るだろう…しかし、この状況、長老にどう説明したものか?」

 

「「はぁ…」」

 

 

 

 

 

 IS学園

 

「これで当面の問題は解決したの!!姉妹も和解できて何よりなの!!」

 

「やれやれ…私と束の名で何とか成った様な物だな。」

 

「…………(もう一杯一杯、今日は早く帰って寝よう。)

高町さん、そ、その…今日は有難う。おかげで、あの娘と仲直りが出来たわ。」

 

「それは何よりなの!!でも、もう一つ言っておきたい事が有るの!!」

 

「えーと、何かしら?」

 

「書類。」

 

「書類?」

 

「未決書類が山の様に溜まってたの!!おかげでまだ終わらないの!!

前生徒会長の怠慢が生んだ事態なの!!責任を取って貰うの!!」

 

「…えっ?」

 

 楯無が気が付いた時には時すでにお寿司。

なのはに担がれて地下室に連行されていた。

 

「イーーーーーーーーーーーーーーーーヤーーーーーーーーーーーーーーー!」

 

 この後、滅茶苦茶18歳未満閲覧お断りのお仕置きをした。




2か月以上感想が無いのは、
なのはの暴走を期待されてるのに暴走していないからだと信じたい…

次回「第11話 キャノンボール・ファスト」。

競技参加に際し、ワープと攻撃厳禁を言い渡されたなのは。
ヤマトの最も苦手なスピード競技に、
果たして、なのははどう立ち向かうのか?

それでは、よいお年を!
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