魔法戦記リリカルなのはIS 高町なのはのIS学園見聞録 作:ピロッチ
本来は専用機持ちとエキシビジョンレースの2試合を
一気に投稿する予定でしたが、長くなりすぎてしまった為、
やむを得ずサブタイトルを「高町流、レースの勝利法」から
「フーリッシュ・デッドヒート」に変更し、
2話に分割してお送りする事に成りました。
まずは、専用機持ち9名のデッドヒート(?)からお楽しみください。
「「「「「「「「「おおおおおおおおおおおおおおっ!!!」」」」」」」」」
遂に始まったキャノンボール・ファスト専用機持ちのレース。
先頭に出たのはシャルロットのタイフーンCCだった。
背中のコネターブルはデュノア社から届いたレース用の特注品。
ブースターと全方位型ビームシールドのみに機能を絞り、
大出力化と単純化を達成した代物だったのだ。
「うおっ!!バックブラストが!!」
その特徴は、物凄い勢いの噴射炎。絶対防御の御蔭で火傷の心配はないが、
他の機体が追いかけると後ろへ押し戻され、中々差が縮まらない。
『まずトップに出たのは、フランス代表候補生、シャルロット・デュノア選手!
実家が開発したフランス悲願の第3世代IS、タイフーンに
追加ブースターとビームシールドを装備し、
軽量化の為一切の武装を降ろしたレース特化型装備です!!
続く篠ノ之さん、全身のあちこちからスラスターを展開し追いかけています!!
他の選手達も横一線になって追いかける!!果たして飛び出すのは誰だ?!』
と、直線の半ばに来た所で3位集団に動きが。
「隙あり!!」
「なっ…鈴さん?!」
鈴音が風を装着した事で側面に移転した龍咆を発射、
真横にいたセシリアが直撃を受け、大きく速度を落としてしまう。
「へっへーん!お先~!」
「では、私も先に行かせて貰おう。」
「あああっ?!ちょっとぉぉおお!!」
その隙に先行しようとした鈴音にラウラがハーケンセイバーを絡ませ、
体勢の崩れた鈴音は危うく壁にぶつかる所を切り抜けた。
「うお!危ねぇ!!」
また、後ろにいた一夏は何とか回避。と、そこへ…
「おーっと、よそ見は禁物だぜ!」
3年生唯一の専用機持ち、ダリル・ケイシーが
専用機ヘル・ハウンドの犬頭型肩部パーツから火炎放射を仕掛けてきた。
「こっちだって居るッスよ!」
続けてダリルの相方の2年生、フォルテ・サファイアも
専用機コールド・ブラッド(以下、C・ブラッド)で冷気を吹きかける。
「2対1かよ!!でもこの程度、いつもの弾幕と比べりゃ!!」
しかし、なのはの弾幕回避訓練で慣れた一夏にはそうそう当たらない。
「チッ、ちょこまかと避けやがって…」
「妨害するくらいなら真面目に飛べって事なんじゃないスか?」
「正直、これあんま速くないから嫌なんだけどなぁ…」
「まあまあ、今年で最後なんだから…」
「解ってるって。」
と、こんな感じで互いに妨害しながら何とか飛んでいる。
「うわぁ…後ろは混戦かぁ…真っ先に飛び出して良かった。
こうしちゃいられない、今の内に距離を稼がなきゃ!!」
現在トップのシャルロットは少しでも距離を稼ぐ為、
増速して距離を取ろうとする。箒は何とか追いつこうとしているが、
まだ紅椿に慣れていないせいもあり、離されないのがやっとだ。
だが、ここで紅椿の切り札が発動する。
『ねえねえ、箒叔母さん。』
「だ、誰がおば…って何だ、モッピーか。どうした?」
紅椿の管制AI、モッピーが箒に話しかける。
『モッピー知ってるよ。箒叔母さんは妾…じゃなくてあの娘に勝ちたいって事。
モッピーに操縦の制御を回せば、勝たせてあげられるかも知れないよ。』
「ほ、本当か?」
『ホントだよ。モッピー知ってるよ。
箒叔母さんはまだ紅椿を充分に使いこなせてないって事。
でもモッピーなら本来の力をフルに活用出来るよ。』
「………良いだろう。操縦はお前に任せる。」
『解ったよ、…覚悟してね。』
箒は紅椿の制御をモッピーに回した。これで紅椿は全力を出せる。
全スラスターが一気に出力最大になり、急激に速度が上がる。
「おおおおっ、これは…!!」
この加速に、何より箒が最も驚いた。
「そうだった、コイツはオクタコア機だったのを忘れていた…。
よし、気を取り直して…覚悟しろよ、シャルロット!」
「!!」
箒が空裂を振ると、レーザーが発生し先頭のシャルに襲い掛かる。
「うわ!箒が本気で追ってきた!!」
「おおおおおお!!待てぇぇええええ!!」
「2学期初日に貰ったばかりの機体だから、
操作も慣れてないと思ってたんだけどな…速く逃げなきゃ!!」
「させるか!!」
「ひえええ!!」
猛攻をしかける箒。ビームシールドで何とか防いでいるが、
被弾が続くとリタイアにもなりかねない。
「こんな事なら反撃手段を持っておくべきだった…」
と、集団から抜き出たセシリアとラウラも猛追。
「お待ちなさぁぁぁぁーい!!!」
「待てぇぇえええ!!」
ロングライフルとレールカノンを撃ちながら箒に襲い掛かる。
しかし、機体制御をモッピーに切り替えた事で的確に展開装甲を駆使し、
ビームシールドで悉く防いでしまう。
「くっ、まるで効いていない!」
「展開装甲…敵に回すとこれ程厄介な装備もありませんわ!!」
続いて、他の機体も後方から迫りくる。
「うおおおお!!俺だってぇ!!」
「よくも足を引っ張ったわね!!」
だが、その後ろでは…
「今なら行ける…逃がさない!」
簪が64発に増設された山嵐の発射準備を整えていた。
そして、ターゲットロックが完了。山嵐64発全てが発射された。
「ちょ、後ろからミサイル?!!」
「もう!ちょっとは周囲の迷惑を考えてよぉぉおお!!」
各々後ろから飛んでくるミサイルを回避する。
だが、これはそう言う競技なので、今更文句を言っても何にもならない。
そして、ミサイルがあちこちに着弾し、周囲は地獄絵図となる。
「うお!危なっ!!」
「やばっ、1発当たった!!」
「ひぃ!こっち来たッス!」
「ちょ、フォルテ…待て、ぶつかる、こっち来んな!!」
他の機体が回避に追われて混乱する隙に順位を上げる簪。
物凄くはた迷惑だが、これがキャノンボール・ファストだ。
「後ろが混乱している?なら、ここで抜いてやる!!」
残ったミサイルが追いかけてくるのを尻目に、
箒はここでシャルロットを追い抜く。
「あ、しまった!!」
「軽量化の為に非武装化したのが仇になったな!!
次いでだ、これでも食らえ!!」
背中の展開装甲を切り離し、機動砲台に変形させて射ちまくる。
「ひゃあ!!…って、後ろからもミサイルの残りが!!」
「ええい、しつこい!!纏めて落してやる!!」
空裂の一振りでミサイルを撃ち落とす。しかしミサイルはまだ残っている。
そして、その後方からは簪が迫って来ていた。
「ここで追い抜く…!!」
「また1機来たのか!!こうなったら…」
紅椿の背部パーツが腕に装着され、弓型に展開された。
「両腕が弓型に…まさか、穿千《うがち》が!!」
「もう遅い、回避不可能だ!!」
2学期初日のお披露目で一夏とセシリアを纏めて吹っ飛ばした
紅椿の切り札、穿千。箒はここでその切り札を切ったのだ。
「食らえぇぇぇぇ!!」
穿千からビームを発射。
「ひええええ!!」「!! 躱さないと…!!」
簪とシャルはすんでの所で回避した。だが、飛んで行ったビームの先には…
「くっ、ミサイルを躱してたら遅れちまった…」
「ちっ、今年の1年は凶暴なのが多いぜ!!」
「早く追いつかないと…ん?」
ミサイル回避で後れを取っていた後方集団が。この後どうなるかと言えば…
KABOOOOOOOOOOOOOOOOOOOM!!!
「「「「「「グワーッ?!」」」」」」
当然、ビームが着弾して大爆発。爆風でてんでんばらばらに吹っ飛ばされた。
その凄惨な光景に箒、シャル、簪は震え上がり、思わず脚を止めていた。
「ぎょわぁぁぁぁあああああ!!」
一夏も例外ではなく爆風に巻き込まれる。
だが、彼は吹き飛んだ方向がまずかった。
何故なら、彼が飛んでいく先は先頭集団そして、ゴールがあったからだ。
「い、一夏?!」
咄嗟に回避する箒、だが、ここで一夏を避けると…
ガッシャン!!
一夏はコースに墜落し爆風の勢いのまま転がっていく。その先にはゴールが。
「ああ!!」「い、いかん!!」「!!」
先頭集団の3機とも慌てて急加速したが、現実は非情である。
「おー、痛ててて…って、あ、あれ、このラインは…?」
一夏が起き上がる為にコースに手を付くと、
機体の指先が一部ゴールラインを越えてしまった。と言う事は…
『ゴォォォォォォォォォォォォォオオオオオオオオオオオオオオオオル!!!』
アナウンスの大音声がアリーナに木霊した。
「え?え?ええええええ?!」
『たった今、ゴールです!!1位は織斑一夏君!!
世界初の男性操縦者、最下位からまさかの逆転優勝!!奇跡の勝利です!!』
「何…だと…?」
「そ、そんな…。」
「あ、アハハハハ…途中まで1位だったのに…。」
一夏、まさかの逆転優勝。穿千の爆風で吹っ飛ばされたせいでゴールという
前代未聞の間抜けな勝ち方に、本人が最も驚いたのは言うまでもない。
かくして、今年のキャノンボール・ファスト専用機レースは、
史上稀に見る間抜けなレースとしてIS史に名を刻む事となる。
だが、このレースは然程その後の話題とはならなかった。
何故なら、次の国家代表&教員達のエキシビジョンレースが
これ以上に酷い結末を迎える事となるからだ。
と言う訳で、いよいよ国家代表&IS教員によるエキシビジョンレースである。
「………全く、誰かさんのせいでとんだとばっちりね。」
そう愚痴っているのは、国家代表の地位に有ったばっかりに、
エキシビジョンレースのみの出番となった楯無である。実を言うと、
「今回のエキシビジョンレースは、国家代表は攻撃禁止のハンデ戦である」
と観客にアナウンスされている為、
楯無も強制的にハンデを背負わされて今回のレースに参加する事となったのだ。
「とても嘆かわしい事なの!!
こういう時だからこそ、全力を尽くさなければならないの!!」
「(………何でこの人、この状況でモチベーションが維持できるんだろう…)」
「高町さん、やる気満々ですねぇ…(苦笑)」
このレースの優勝候補である真耶も、
ワープと攻撃厳禁と言う状況下なのに全く平静のままのなのはには
苦笑いするしかない。
「でも彼女の専用機って、ワープ抜きだと滅茶苦茶足が遅いって話でしょ?
よくあの条件OKしたわよね。」
久々に登場した1年の学年主任、日高舞は未だに
なのはが真面目にこのハンデ戦を受けた事が信じられない様だ。
「そうですねぇ…ひょっとして、学園生活で丸くなったとか?」
「ああ、それ有るかも知れませんね!」
こんな事を話しているのは楯無のクラスの担任である音無小鳥と
鈴音のいる1年2組の担任、千川ちひろだ。彼女達は2人共舞の1期後輩で、
IS教員としてエキシビジョンレースに参加する出場者だ。
「で、結局千冬ちゃんは出ないんだ。」
「ええ、織斑先生の新しい専用機の完成は、早くても再来月になるとか…
お披露目は…多分3学期の始業式になると篠ノ之博士に言われたそうです。」
「そう。まあ、篠ノ之博士の事だし、
1番の親友に手抜きの機体は渡せないから
念を入れてると考えるのが妥当でしょうね。」
「それもそうね。それじゃ、時間も来たから行くわよ。」
「ええ。今日こそ高町さんに勝てる…と良いですね。」
その後ろでなのはが例によって⌒*(◎谷◎)*⌒になっていた事は
気付く由も無かった。
困った…外伝と同じミスをしてしまうとは…
次回、遂になのはがレースの舞台に降り立ちます。
「第13話 史上最低の決着」