魔法戦記リリカルなのはIS 高町なのはのIS学園見聞録   作:ピロッチ

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お待たせしました。
エイプリルフールに嘘を憎む者達との対決を投稿する
皮肉な第67話です。


第15話  ISの本分 破

 そして、警視庁本庁の会議室では、

合同合宿の説明会に先んじ、今後のIS運用についての

意見陳述会が開かれていた。

 

「今こそ、『IS道構想』を確立すべし!!」

 

 こう切り出したのは、どう見ても極道の大親分にしか見えない

厳めしい人相の和装の男。彼こそ全日本剣道連盟の長にして

その規格外の技量故、かつて廃止された十段の段位を特例で授けられた武道の名門、

磯鷲一家の当主にして「嘘つき絶対懲らしめるマン」磯鷲剣之介(イソワシケンノスケ)その人であった。

 

 で、なぜ武道家の一族がこんな所に居るのかというと、

この一族は「篠ノ之束の如き大悪党が創造した破壊の為の道具を、

如何にして世の為、人の為に役立てるか」

という触れ込みで世界中の武道家とその連盟とのコネを用い、

ISを用いてのスポーツ競技大会、即ちモンド・グロッソの創立に

多大な貢献があったと言う事でIICからの覚えが目出度く、

家長の剣之介はその功績から海外では近代五輪の祖に準え

「東洋のクーベルタン」とまで称されている。

 

「綿貫三樹夫、倉林美也子の様な不届き者が巣食っていたのは、

日本IS界にとって大いなる不幸であった!この様な事を二度と起こさせぬ為、

今後我が国で国家代表とその候補者となれるのは武道を通じて心技体を鍛え、

その証として段位を持つ者のみと定め置くべきと提言する!!」

 

 気勢を上げる剣之介。同じく武道家として大成し、

今回の会議に出席している妻子達も無言で首肯する。

 

「故に、武芸の心得無き者をこれ以上これらの地位に留めるべきではない!

現に一名ほど女尊男卑に憑りつかれ、恩師隣人の注意温情はおろか

一人の警官として取り為さんとしたワシの娘の善意まで踏みにじり、

果ては二枚舌まで使って訴訟沙汰などと騒ぎ立てた卑怯者が蔓延っておる!

 

見るに耐えぬ所業故ワシ自ら折檻したが、これでもまだ足りぬ故、

本日の会議で代表候補生と操縦資格の放棄を念書を出させる所存である!!

そして…もう一人、代表の座から降ろすべきは…高町なのは!!」

 

 剣之介はなのはの写真を指し、なのはの代表解任を主張する。

確かに今のなのはは日本武道における段位など一つも持っていない。

それは、IS道構想から見ればISに携わる資格なき存在と言う事に成る。

 

「この輩は篠ノ之束などという大悪党に盲従し、

碌な武道の心得も無しに暴力で一国の代表の座を掠め取り、

暴走核弾頭などという渾名を悪びれもせずに吹聴しておる!!

 

そればかりか、奴は欧州でのテロ騒ぎを起こした張本人と言うではないか!!

更に言えば、この重要な会議にすら遅刻するとは真に怪しからん!!

この様な輩をおいそれと国家代表に仕立て上げる等言語道断である!!」

 

 なのはのみならず、政府にすら苦言を呈す剣之介。

ここで軍部の代表者として出席していた防衛大臣の米田一基が返答した。

 

「あー、磯鷲先生よ。その高町なのはだが、

彼女は山口総理から呼び出しを受け、首相官邸に出向いてからこちらに向かうと

連絡が有ってだな…今現在は首相官邸からこちらへ向かっているとの事だ。」

 

「…フン!ならば遅刻も致し方なし。許してやろう。」

 

 続いて、代表監督代行の秋月律子が剣之介に質問を投げかける。

 

「あー、先生、一つお尋ねします。先生は暴走…

いえ、高町なのはを解任したとして、後任にアテはあるのでしょうか?」

 

「如何にも。一国の代表に推すからには本構想の旗手として知名度が肝要と考え、

並びに我が一族が発起人としての責務を全うする旨を世間に示すにあたり、

我が一族より後任者を出すが妥当であると断じた。よって…」

 

 剣之介は一人の婦人警官を指示して答えた。

 

「ここは一つ、ワシは我が長女早矢(ハヤ)を奴の後任として推薦する!

この早矢こそ、我が一族が本構想の旗手に推薦しうる最良の人材である。

聞けばその方、我が娘とは同級生の間柄でもあったな。

なれば、互いに技を磨き合うに良き相手となろう。」

 

 彼女の名は磯鷲早矢。剣之介の長女にして、

女子大学弓道で全国制覇を成し遂げ、剣道等の武道にも通じており、

その性格は大和撫子その物と周囲や上からの評判も良く、

代表操縦者としては一見申し分ない逸材に見える。だが…

 

「は、はぁ…ご意見有難うございます。」

(冗談でしょう!!確かに暴走核弾頭よりは遥かに人間性は真っ当だけど、

肝心のIS操縦適正が追い付いてないじゃない!!

警視庁IS小隊の私の穴埋めの最終選出で

萩原雪歩に負けた程度の腕前しかないんじゃ、

代表なんて務まる訳無いじゃない!!)

 

 この通り、為人に技量が追いついていないのである。

律子に言わせれば、彼女を代表にする位なら

真耶の方が良いというレベルらしい。

但し彼女は弱くない。雪歩が警察官じゃなかったら

彼女が即座に律子の穴埋めを務めていた。それ位の力量はあった。

 

「(それにしても、今度の会議への磯鷲一家の力の入れようは凄いわね。

先生本人のみならず、夫人で陰陽道の名家錦織部家出身、

磯鷲流弓道七段の穂之華(ホノカ)師範、

 

日本武道全般の統合振興組織、『日本武道会』の会長で、

各流派にて免許皆伝の称号を帯びた物だけが入れる集い、

『格闘奥義道』の総帥も務める長男蘆嵐(セイラン)

 

磯鷲流古武道の免許皆伝にして、独自考案した新興武術『撃破拳』の

最高師範「王位」の称号を持つ次男蘿虎(カゲトラ)

 

磯鷲流合気道免許皆伝にして、剣道界の昇段試験年齢下限撤廃により

それまで満46歳以上しか受けられなかった最高位の八段昇段試験を

史上最年少で合格した俊英、三男飛竜(ヒリュウ)

 

そして末子で、女子大学弓道全国覇者で現在警察官の長女、早矢…

京都の、いや日本武道界で一番の名家全員が出席すると知ったら、

流石の暴走核弾頭もどんな顔をするのやら…

まさか、このメンツに喧嘩を売ったりはしないわよね…)」

 

「よし…早矢よ。皆に意気込みの一つでも申してみよ。」

 

「はい。お集まりの皆様、私が只今紹介を受けました、磯鷲早矢と申します。

国家代表たる者確かに実力も大事ですが、これからのISを武道と為すのならば

唯強ければ良いと言う物ではなく、心技体の鍛錬こそが

ISの本分であると確信しております。ですので皆様、

何卒、国家代表操縦者の任はこの私に宜しくお願い致します。」

 

 挨拶が終わると、会場からは拍手が鳴り響いた。

 

「いやー、素晴らしい!!心技体、良い響きですな!!

流石は磯鷲家の御嬢さんだ、上司としても鼻が高いですぞ!!」

 

 この様に相槌を打っているのは、今年の合同合宿の警視庁側の担当者で、

早矢の勤め先である葛飾警察署の署長も務める屯田五目須(ゴメス)警視正だ。

 

「(全く、屯田署長は調子の良い事を…

ところで、肝心の暴走核弾頭はいつ来るのかしら?)」

 

 と、ここで会議室に伝令役が報告に来た。

 

「失礼します!!代表操縦者の高町さんが入室します!!」

 

「やれやれ、やっと来たか…」

 

 

 

 

 そして…

 

「ドーモ、ハジメマシテ。この度代表操縦者に指名された高町なのはです。

遅刻の件に関しては事前に連絡した通り

山口総理から呼び出しがあっての事ですので、改めてご連絡させて頂きます。」

 

 いつもとは違い、穏当な口調のなのは。

かつてなのはに酷い目に遭わされた律子達は少し安心するが、

この後、笑い事では済まなくなる事には気づいていない。

 

「あー、その、何だ…今会議でお前ぇさんの事が議題に上っててよ…」

 

「と、仰いますと?」

 

「実を言うとだな。今、ここにおられる京都の大武道家の名家の御当主、

磯鷲剣之介先生とその御家族を中心に『IS道構想』って物が練られててだな。

こいつぁ『ISの運用そのものを新興の武道とし、

以て心技体の練成と人間性の向上を図る』という構想なんだが…。」

 

「その心は?」

 

「『世界的テロリストの創造物を、如何にして世の為人の為に役立てるか』だ。

そもそも、モンド・グロッソ自体がその構想の一環でな。

ISを用いた人間性の育成、心身の鍛錬の為、

ここにいる磯鷲先生を始め御一族の多大な貢献が有って

今日のモンド・グロッソが有ると言っても過言じゃねぇんだよ。」

 

「そうですか。で、肝心の創造者である篠ノ之博士には、

何の相談もしていないと言うのですか?彼女の協力を仰げば、

とっくに完成する構想なのに…。」

 

「そんな物は要らぬ!」

 

 なのはの指摘に対し、束の協力は不要と切り捨てる剣之介。

 

「何故ですか?」

 

「あの様な大悪党に、社会貢献に携わる資格など無い!

これからの代表操縦者とその候補者は、五徳の心を学び、その証として

武道の然るべき技量を備えた者のみが就くべきである!!」

 

「成程。(大悪党…?よし、このヤクザ顔は分からせる。)」

 

 剣之介の言葉に続き、穂之華夫人も言葉を続ける。

 

「その上でお聞きします。貴方、武道の心得は?」

 

「武道…?親兄弟は小太刀の心得がありますが、

私は剣才皆無なので、全く無い…と言っておきます。」

 

「つまり、貴女は代表に不相応な身で

代表の座に就いているという事になりますね。」

 

「IS道構想に則れば、確かにその通り。」

 

「ならば、代表操縦者と学園を辞めるのか、

或いは、この合宿の間になにかしらの武道を習得して段位を得るか、

どちらか一つを選ぶべきです。」

 

「…………その二択に答える前に、一つ忘れていませんか?」

 

「ほう?」

 

「そこのヤクザ…失礼、先生とやら、この前とある代表候補生が

警察相手に二枚舌を使ったとか何とかで折檻を食らわせて、

本日の会議で代表候補生と操縦資格放棄の念書を出させようとしたとか…

今日、持ってきましたよ、ここに。」

 

 なのはは封筒を見せた。

 

「プロジェクターは在りますか?皆に見える様にしたいのですが。」

 

「あ、ああ…おーい、プロジェクター持ってこい!!」

 

「はい!!」

 

 暫くしてプロジェクターが用意されると、なのはがそこに文書を置いた。

 

「では、お目通しお願いします。」

 

 そこに書いてあったのは…

 

 

 

 

 

 念書などでは無く、名もなき代表候補生が今まで親にされた事の羅列だった。

 

 

 

 

 

「こ、これは!!」「どういう事だこれは!!」

 

「これは念書じゃなくて、告発文ではないか!!」

 

 会議室がたちまち騒然となる。そして、なのはが告発文の末尾を読み上げた。

 

「私は親を自称するこの人でなし共に今までこんな目に遭わされて来ました。

こいつらはこれは愛の鞭だから、子供は黙ってこれを許さなければならない。

仲良くしなければならないと、こいつらの肩を持つばかりでした。

 

許す気が無いので裁判を起こそうとしたら、

警察に二枚舌を使う卑怯者への折檻として暴力を振るわれました。

会議室にいらしてる皆様、私はこのような環境で生きてきました。

 

ですから、国家代表操縦者である高町なのはさんを通じて

山口首相本人にこいつ等が今まで私にした事を洗いざらい実名入りで告発して、

その足で東京地裁に保護命令の申し立てを起こしました。

 

誰が何を言おうと、裁判を起こしますのでよろしくお願いします。

私にはもう両親はいません。護るべきものは自分自身だけです。

それでもこいつらが正しいと仰るなら全員纏めて裁判で相手になります。

東京地裁でお会いしましょう。」

 

 告発文はこのような徹底抗戦の宣言で締めくくられていた。

 

「最後に私から一言。私は彼女に味方します。国家代表操縦者として、

ISも碌に動かせない、そもそもIS開発の目的も知っていそうにない、

男とも呼べない、言うなれば『女ならざるだけの者』が、

ISに関与する事を許す気は毛頭ありません。

これは我が師、篠ノ之束の意見でもありますので、異論がある人は、

まずこの場で自慢の武道で私の首を取って、どうぞ。以上。」

 

 なのはがそこまで言い切った直後…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ズドォォォォオオオン!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 会議室に轟音が。剣之介がテーブルを叩き、凹ませていた。

 

「あの二枚舌め!!またも我等を謀りおったな!!」

 

 二度も騙されたらこうなるのは当然の事であった。

 

「ま、まあまあ落ち着いて!!」

 

 屯田署長が宥めるが手が付けられない。

 

「黙っておれ!!」

 

「しかしですね…」

 

「大体この者の物言いも怪しからん!公僕を謀る両舌の輩を庇うとは何事か!

彼奴めは己の都合のみ追い続け、二枚舌にまで成り腐り、

度重なる恩師隣人からの注意温情をも踏み躙り、チンピラ街道驀地ではないか!

私利私欲の数々、犬畜生外道にも劣る!その様な振る舞い断じて許し難い!

斯様な輩を庇うなど人非人以下だ!」

 

剣之介がそこまで言い切った瞬間…

 

「おい、磯鷲。」

 

 銃剣神父を髣髴とさせる特徴的な声の呼びかけ。

だが、声のした所にいたのはなのは本人。それだけではない。

なのははいつの間に移動したのか、剣之介の眼前にいた。

そして、窓を指差して短くこう言い渡した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

⌒*(◎谷◎)*⌒

 

戯言はやめろ。私を馬鹿にする気か?

 

出口はあそこだ。




なのはのセリフですが、最後の太字の部分は、

「CV:アナゴさん」

です。


「CV:アナゴさん」

です。

大事な事なので、二度繰り返しました。

次回、第16話「ISの本分 急」
さあ、いよいよなのはのターン。
果たして、なのはは磯鷲一族の言い分を如何に論破するのか?
果たして、警視庁は残っていられるのか?
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