魔法戦記リリカルなのはIS 高町なのはのIS学園見聞録 作:ピロッチ
今回の授業は真耶の言う通り合同授業の為、
1組の他に2組の生徒が集まって整列している。
生徒達の前に立つ千冬が本日の実習内容を述べた。
「うむ、全員時間通りに来た様だな。
今日からはお前達にも実際にISに乗る事になる!
が、その前にISの模範演武を披露して貰う。」
「あ、あの、その前に質問していいですか?!」
2組の生徒、鈴音のルームメイトでもあるティナ・ハミルトンから質問が。
「何だハミルトン。まさか高町の事か?
あれは最新型のISスーツだ。気にするな。」
「いえ、違います!」「む、では何だ?」
「さっきからあの灰色のスーツの子が、なんか様子がおかしいんですけど…」
「灰色…ああ、ボーデヴィッヒか。」
そのラウラはと言うと…
「キョーカンドノー、オユルシヲー、オジヒヲー。」
などと呟きながらハイライトの無い虚ろな瞳でつっ立っていた。
「放っておけ、時間が経てば正気に戻る…多分。」
「は、はあ…なら良いです。」
「織斑先生!模範演武を披露するのは…ひょっとして…?」
今度は1組の相川清香がなのはの方をチラ見しながら問いかける。
「いや違う、模範演武を披露するのは高町ではない。披露するのは…」
そこまで言った所で空からISの駆動音が聞こえてきた。
同時に、女性と思しき悲鳴も。
「きゃあああああ、どいて下さーい!!」
見てみれば簡単、ISに乗った真耶が回転しながら落下して来たのだ。
それも生徒達が密集している中に向って。
「「「「「きゃああああああああああああああああああああああ!!」」」」」
「はぁ~…。」
シャルルを見た時とは別の悲鳴を上げて他の生徒達が逃げ出す中、
なのはは動かずため息をつくと…
「どーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーん!!!」
専用機がアッパーで真耶を思い切り上方へ殴り飛ばした。
「あーーーーーーーーーーーーーーーーれーーーーーーーーーーーーー!!!」
数秒後、真耶は無事墜落した。
「ひ、酷いです~~~~~。」
「全く…IS教員ともあろう者が何たる体たらくだ、精進が足りんぞ!」
「す、すいません~~~~~~。(涙目」
「はぁ…見ての通り、模範演武を披露するのは山田先生だ。
そうだな…よし、鳳とオルコットよ。」
「「ハ、ハイ!」」
「模範演武の相手をしてやってくれ。」
「わ、ワタクシ達二人でですの!?」
「いやぁ、いくらなんでも2対1は…」
「そうかな?専用機持ちだからと言って教員に容易く勝てると思うなよ?」
千冬の見下した言葉が2人のプライドに火を点けた。
セシリアも鈴音もそれぞれのISを起動させると戦闘態勢に入った。
「ムッカー!絶対勝って、千冬さ…織斑先生の鼻を明かしてやるんだからね!」
「ワタクシも全力で参ります!!
これでも国家代表候補生の端くれ、遅れは取りません!!」
「おお、2人共やる気満々ですね。お手柔らかにお願いしますよ?」
「フッ…では始めろ!!」
千冬の合図と共に空へ飛び上がった3人。だが鈴音とセシリアは知らない。
実は山田真耶は元日本代表候補生の上位ランカーで、
IS教員勢の中でIS戦の腕は千冬に次ぐ実力者だと言う事を…。
「おい、デュノアよ。」
「ハイ!」
「山田先生が使っているISは、確かお前の家の会社の製品だったな。
ここで説明してみろ。」
「ハイ!えーと、名はラファール・リヴァイヴ(以下、R・リヴァイヴ)。
第2世代機の最後発機にあたり、そのスペックは初期の第3世代機と互角で、
現在配備されてる量産機の中では世界第3位のシェアを持ち、
12カ国で制式採用されています。最大の特徴は
装備によって格闘、射撃、防御といった全タイプに変更可能な汎用性です。」
「うむ、宜しい。」
流石はデュノア社の御曹司、親の会社の製品はよく知っている様だ。
そして数分後、模範演武に決着が付いた。
一際大きな煙の中からB・ティアーズと甲龍、
更にR・リヴァイヴが纏めて落下してきたのだ。
「あ、アンタねぇ!攻撃しながらビットを使えるなら言いなさいよ!!」
「鈴さんこそ!無駄にワタクシの射線に立たないで下さいまし!!」
「くっ…チームワークがバラバラだから勝てると思ったのに、
まさか相討ちに持ち込まれるなんて…」
何と模範演武は千冬の予想を裏切ってダブルKOに終わってしまった。
一夏と並んで最も長期間なのはから鍛錬を受けたセシリアが予想以上に成長し、
平常時でもある程度ビットと本体の同時攻撃ができる様になった為である。
「中々やるではないか。オルコットと凰よ、ご苦労だった。」
「ふふん、ざっとこんな物よ。」
「だ、代表候補生たる者この位は当然ですわ、オホホホ…。」
「浮かれるな、2人がかりでやっと互角に持ち込んだ程度ではまだまだ甘い。
…諸君、今見た通り山田先生はあんななりでも量産機で専用機持ち2人相手に
互角に戦える技量がある事が分かっただろう。
今後は相応の礼節を以て接する様に。但し高町は免除だ。」
「「「「「ハイ!」」」」」
「ちょっ、一番礼節を弁えて欲しい人が免除ですか?!」
「ああ、そうだ…(急にどすを利かせる)山田。」「ヒィ?!」
「貴様…朝のSHRで事もあろうに私に向かって役立たずと言わなかったか?」
「(ヒイイイバレてる~!!)な、ななな何の冗談でしょうか~?
『役立たず!!』ギクッ!!」
今の声はなのはが掲げた専用機の音声記録。
ばっちり動かぬ証拠を掴んでいたのだ。さあ、真耶の地獄の始まりである。
「山田真耶…」「はい…何でしょうか?」
「貴様には高町の模範演武の相手を勤めて貰おう。」
「えええええええええええええええええええ!!何ですかその公開処刑は?!」
「早速始めるの!!」
「イーーーーーーーーーーーーーーヤーーーーーーーーーーーーー!!(逃亡」
まやは にげだした!
「知らなかったの?私からは逃げられないの!!」
しかし まわりこまれてしまった!
「誰か助けてぇーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!」
引きずられて連行される真耶。で、その後どうなったかと言うと…
「どーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーん!!!」
以上。
「よし、終わったな。えー諸君、模範演武はこれにて終了だ。
今見た様に一方的にとは言わんが、
この実習の授業にはこれからの3年間弱の間に、
全員が『IS教員の誰かにせめて1勝する』位の気概で当たる様に!
ではグループになって実習に入ろう。リーダーは専用機持ちがやる事、
では分かれろ!…とその前に…(出席簿を取り出す)」
千冬は未だに正気を失ったままのラウラに近づくと…
「オユルシヲー。オユルシヲー。オユルシヲー。オユルシヲー。オユルシヲー。
オユルシヲー。オユルシヲー。オユルシヲー。オユルシヲー。オユルシヲー。
オユルシヲー。オユルシヲー。オユルシヲー。オユルシヲー。オユルシヲー。
オユルシヲー。オユルシヲー。オユルシヲー。オユルシヲー。オユルシヲー。」
「やれやれ…もういいだろ、目を覚ませ!」
SPANK!!
「はうあっ!!」
「よし。どうだ、目が覚めたかボーデヴィッヒ。」
叩かれた瞬間、ラウラの瞳にハイライトが戻った。
「はっ…織斑教官!!私は一体何を…?」
「さあな、白昼夢でも見たのだろう。ほら、さっさと行け。
専用機持ちをリーダーに実習をするからお前もリーダー役を務めろ。」
「
かくして、一夏、セシリア、鈴音、シャルル、ラウラ、
そしてなのはの6人が揃った。だが、まるで人数がてんでんばらばら。
やはり一夏とシャルルが一番人気で、
一夏には箒を含めた女子十数人、シャルルにも同じ位で、
セシリアと鈴音が数人程度、ラウラとなのはのグループには誰も来なかった。
「何をやっているか馬鹿者…
それぞれのグループから何人かボーデヴィッヒと高町のグループに移動しろ。」
渋々だが女子の何人かがラウラとなのはのグループに移動して、
それぞれのグループに学園の量産機が宛がわれる。
一夏、鈴音、ラウラの班は日本製の打鉄、
なのは、セシリア、シャルルの班にはフランス製R・リヴァイヴだ。
「さあ、まずは手本を見せるからよく見るの!!」
この後授業は特に問題なく進み、誰も千冬から怒られる事なく終わった。
「こ、怖かったぁ…。」
「高町さんって怒鳴り散らす口調だし、
いつキレるか分からないから凄い緊張した~。」
「でも、意外と丁寧に教えてくれたよね…。」
実習終了後、なのはの班の女子が口々に感想を語っていた。
皆普段のなのはの様子から、終始緊張しきりだったが、
独りだけ全く動じなかった剛の者がいた。
「そうだよ~、ほら、なのさんっておりむーとかの稽古も付けてるけど~、
先生や先輩が『皆上達が凄く早い』って驚いてたんだ~。」
なのはの班に回された生徒の一人、のほほんさんこと布仏本音である。
彼女はなのはを怖がらない点を買われ、
なのはのルームメイトに指名されていた。
「あ、そうだ、のほほんさんって高町さんのルームメイトなんでしょ?
怖くないの?」
「ん~?特に怖くはないよ。
あの人ね~、部屋の中だと篠ノ之博士のモノマネを練習してたり、
専用機とおしゃべりしてるんだ~。」
「篠ノ之博士の?
あ、そう言えば、あの人特技が篠ノ之博士のモノマネとか言ってたね…。」
「うんうん、あのぬいぐるみも篠ノ之博士から貰った専用機で、
世界初の喋るISなんだっけ。」
「ホント凄いよね~。」
「「「(のほほんさん、一番凄いのはアンタだよ。)」」」
「?」
その日の放課後。ラウラが千冬に何事かを請うていた。
「お願いです教官。ドイツへ戻ってきて下さい!
こんな所にいては教官の力は半分も生かされません!!」
「何…?」
「大体、この学園の生徒に教官が教えるに足る者等おりません!」
「ほほう、その根拠は?」
「意識が甘く、危機感に疎く、ISをファッションか何かと勘違いしている。
そのような低レベルな輩に教官が時間を割かれるなど…」
「馬鹿者めが…」
千冬はぼそりと呟いたが、それでもラウラを沈黙させるには十分だった。
「!!」
「15かそこらでもう選ばれた人間気取りとは恐れ入る。
お前は何も見ていないのか?」
「わ、私は、そのような……」
ラウラの声が震えている。
「だが、そんなに私に戻ってきて欲しいのなら、
その願いを聞いてやっても良い。
私が言う課題を卒業までに達成できたならばな。」
「その…課題とは…?」
「1組に高町なのはという奴がいる。
お前に数の子5号というおかしな渾名を付けたぬいぐるみの持ち主だ。
奴に一回でも勝って見せろ。課題はそれだけだ。
もし勝てたならお前が卒業して帰国する暁には付いて行ってやろう。」
「ほ、本当ですか?!」
「無論だ。…但し!」
「?!」
「奴は強い。本当に強い。私は奴と一戦交えたが一撃で負けた。これが証拠だ。」
千冬はラウラに自分の額を見せた。
そこには確かにあの時に付けられた傷跡が残っている。
「……………!!……………!!」
尊敬する千冬に土どころか傷をつけた存在。
その信じがたい事実にラウラは声が出なかった。
「果たして…お前は達成できるかな?」
そう言うと、千冬は立ち去って行った。
「…………ナノハ…ナノハ・タカマチ……一体何者なんだ……?!」
取り残されたラウラは偉大な恩師を傷つけた怪物の存在にへたり込み、
ただ震え上がるばかりであった。
そして去って行く千冬は思いだしたかのようにラウラに一言告げた。
「あ、そうだ。一夏にはちゃんと謝っておけよ。」
のほほんさん、メンタル面最強疑惑浮上。
この人、あずささんと互角の胸囲なんですってね。
千冬…女の身で額に傷が残るって…。