魔法戦記リリカルなのはIS 高町なのはのIS学園見聞録 作:ピロッチ
果たして、なのは抜きで学園の脅威に立ち向かえるのか?
通算第83話、始まります。
「よし、全員揃ったな?」
今、地下の司令室には千冬と真耶、
そして一夏となのはを除く1組の専用機持ちと更識姉妹が集結していた。
「では、現状を説明しよう。
現在、この学園のシステムが何者かにハッキングを受けている。
残念な事に、誰が何の為にやったのかは未だ不明だ。
だが、はっきりしている事は一つある。
現在の学園は外部との通信手段を完全に喪失してしまった。
当然、コア・ネットワークもだ。
学園内部までは通じるが、外部との通信は不可能だった。
ISを飛ばして伝令を出そうとしたが、出口は塞がれていて脱出不可能だった。
つまり、高町や束に助けを求める手段が無いと言う事だ。」
「更に言うと、織斑君は今日白式の製造元である倉持技研からの依頼で、
公欠を取ってそっちへ向かっていますので、彼との連絡も不可能です。」
「そこでだ。これからお前達にはシステムを戻す為、
アクセスルームに入りISコア経由で電脳ダイブをして貰う。」
「電脳…ダイブ…。」
「確か、個人の意識をISと同調させ電脳世界に入るって言う…。」
「そうだ。志願する者はいるか?」
専用機持ち達は暫く顔を見合わせると、全員が電脳ダイブに応じた。
「よし、ではさ…楯無は私と外の見張りを頼む。簪、オペレーターは任せた。」
「「はい!」」
「では、皆さんはアクセスルームに移動して下さい。」
専用機持ち達はアクセスルームに移動。
「では皆さん、このベッドの上に横になって下さい。」
専用機持ちは簪の指示で一斉にベッドに横になる。
「では電脳ダイブを開始します。
尚、電脳ダイブ中は睡眠状態に入ります。暫くお休みなさい。」
彼女達は睡眠状態に入り、電脳世界に突入していった。
一方その頃一夏は…
「ここが倉持技研かぁ…」
まだまだ暑さの残る10月上旬、一夏は額の汗を拭いながら
目の前の施設「倉持技研第二研究所」の入り口に立っていた。
勿論、IS学園に再び何かが起こっている事など全く知らない。
そんなドアの前で立ち尽くす一夏に魔の手が迫っていた。
「やあやあ、いらっしゃい!!」
「!!」
突然背後から肩を叩かれて振り向くと、
サングラスにISスーツを着た女性がにやにやして一夏を見ていた。
「ようこそ倉持技研へ、アタシがここの責任者の篝火ヒカルノだよ。」
ヒカルノは何故か水浸しになっており、手にモリと魚を持っている。
「ど、どうも。織斑一夏です。」
「ふふふ、君、初対面の女に顔を赤らめてどうしたのかな?
何なら、お姉さんと良い事でもしようか?」
とこんな発言をするヒカルノを見て一夏はため息をつくのであった。
「これが電脳ダイブか…」
「まるで宇宙空間みたいだな、だが、呼吸は出来るみたいだが。」
学園システム復旧の為電脳世界にダイブした専用機持ち。
専用機持ちの周囲はまるで宇宙空間のような星空が広がっていた。
と、彼女達の前に5つの扉が出現し、どこからともなく簪の声が聞こえてきた。
『聞こえますか?今皆さんの前に扉が5つ有る筈です。』
「ああ、確かに5つあるぞ。」
『扉には皆さんの名前が書かれている筈です。』
「あ!確かに名前が…」
『では、皆さんは名前の書かれた扉に入って下さい。』
「分かったわ。」
5人はそれぞれの扉に入って行った。
セシリアの場合
ここはロンドン郊外の大豪邸、その中の執務室にて
金髪の女がテレビ電話の相手に向かって難しい顔をして話していた。
「ですから、もう少し詳細な報告を…」
そこにいたのは、実家オルコット家を継承し、
傘下の企業を纏め上げる財閥の長として働くセシリアの姿だった。
「とにかく、今度の報告では何とも…はい。では…」
テレビ電話の画面が切れ、セシリアは椅子にもたれてため息を吐く。
そして、机に置いてあるベルを鳴らすと、正面のドアが開かれる。
入って来たのは盆に乗ったティーセットを持って正装した一夏だった。
「お呼びですか、セシリア様。」
「もう、今は二人きりなんですよ。セシリアと呼んでくださいまし。」
「あ…ごめん。」
机にティーセットを置くと、早速セシリアが紅茶を口にした。
実はこの日は週に一度の「ある日課」がある為、彼女はそれを待ち詫びていた。
「一夏さん、今日は『あの日』ですから、よろしくお願いしますね。」
「あ、ああ。」
暫くして、セシリアが紅茶を飲み干すと、二人は別の部屋へ移動する。
鈴音の場合
「ここは…?ああ!これって…まさか?!」
気が付いたら、教室のような場所に一人で座っていた鈴音。
席から立ち上がると、いつの間にかISスーツでは無く中学時代の
黒いセーラー服に衣装が変わっていた。
「そうだ、甲龍は…あ!無い?!」
手首に装着していた待機状態の甲龍は、何時の間にか消えてしまっていた。
「(ヤバい、もし敵か何かが出てきたら…)」
鈴音が状況確認の為に教室から出ようとすると教室のドアが開く。
入って来たのは…ここにいるはずのない一夏だった。
「何だ鈴、ここにいたのか?」
「あれ…一夏?! 何で?」
「何でって、さっきまで先生の仕事手伝ってたからだよ。」
「いやそうじゃなくて、いつの間に…
あれ、アタシ何を言おうとしてたんだっけ?」
倉持技研から帰って来たのか聞こうとした鈴音だったが、
突然言いたい事が頭から消えてしまった。
思い出そうとすると、一夏に手を引かれる。
「早く帰ろうぜ、今朝TVで『今日は夕方から雨』って言ってたしな。」
「う、うん…」
鈴と一夏が誰もいない廊下に出ると、外では雨が降り始めていた。
シャルロットの場合
「♪♪♪♪♪♪」
シャルロットはメイド姿で鼻歌を歌いながら脚立に登り窓を磨いていた。
彼女は織斑家で働くメイドであった。と、その後ろから一人の男が近づき、
シャルロットのスカートをたくし上げる。
「きゃ?!」
「ははっ、随分可愛い声出すんだな、シャル。」
バスローブを着た一夏が意地の悪い笑みを浮かべていた。
「も、もーう。御主人様…」
シャルは涙目になってスカートを押さえていると、
一夏はシャルを抱きかかえて別室に連れて行く。
「あ、な、何を…?」
「おいおい、メイドは主人を喜ばせてこそだろう?」
別室に連れて来られたシャルを前に、一夏はある物を取り出して見せつけた。
ラウラの場合
「うむ、分かった。詳細は後程に…」
軍を退役し、部下共々傭兵に転職したラウラはため息をついていると、
彼女の嫁、いや彼女の夫が台所から出て来た。
「どうしたラウラ?可愛い顔が台無しだぞ?」
「うむ、仕事が入ってな。今度の仕事場所はソマリアだそうだ。」
エプロンを着たいかにも主夫と言った感じの一夏がコーヒーを手渡す。
ラウラは照れ隠ししながらコーヒーを飲んでいると
一夏がポケットから何かを取り出す。
「そうか、アフリカに行くとなると暫く会えなくなるな。
それじゃ、その前にこの間貰ったこれ、使ってみようかな?」
「あああっ、そ、それは?!」
そこには「肩叩き券」ならぬ「何でもおねだり券」と手書きで書かれており、
二人はそれぞれ何枚か持っていた。この2人はこれまでこの券を使用して
コスプレしたり、マッサージされたりと色々と。
「こ、今度は何をする気なんだ?」
「何って?それはな…。」
一夏が発表した内容に、ラウラは震えるのであった…。
箒の場合
「イヤーッ!!」「デヤーッ!!」
実家の剣道場にて箒と一夏が稽古をしていた。
暫らく双方の竹刀が交差する。暫く打ち合いが続いていたが…
「イヤーッ!!」
箒が一瞬の隙を突いて、一夏から一本を取った。
息を上げながら、二人は互に礼をし防具を外した。
「あー、また負けた!腕上げたな箒。」
「あ、ああ…一夏のおかげだからな。ふう…しかし、すっかり汗だくだな。」
「だな。稽古は一時中止して、風呂でも入ろうか?」
「そ…そうしよう。では…先に入ってるからな。」
箒は顔を赤くして道場を後にした。
その頃、コントロールルームでは…
「拙い…連絡が取れない!でも、何で、どうして?!」
5人との連絡が途絶してしまった簪が、
連絡の手段を探してキーボードを操作していた。
しかし、変化がなく時間だけが過ぎていく。
「なのはさんも織斑君もいない今、私達で学園を護らないと…。」
そして、いよいよその時が来た。
「さて、鬼が出るか、蛇が出るか…」
司令室の前で敵の襲来を警戒する千冬と楯無。すると…
「むっ、何だ?!」
「私が見て来ます!」
遠方から爆発らしき音が響く。さては誰かが壁を爆破して忍び込んだのか?
早速、楯無が様子を探る為に向かっていった。
そして…
「うーむ、道に迷ってしまったぞ。」
一方、別の地下道ではもう一人の男が窮していた。
警視庁から学園の調査を命じられ、用務員に扮して潜入した両津勘吉である。
「確か、あの地図じゃこっちだと言っていた気がするが…うーむ。」
と、道に迷って途方に暮れている両津。そして、それはやって来た。
「うおっ!何だ、何だ、何だぁ?!!」
突如突き当りの壁が爆発。
崩れた壁の向こうから黒一色の戦闘服を着込んだ兵達が雪崩込んできた。
「げえっ、新手の…強盗か?!」
突然の襲来につい声を上げる両津。
一斉に銃口を向けられたのは言うまでもない。
「何だ、用務員か?!」
「どうする?誰かに知らせる前に捕まえないと…」
「な、何だお前等は?!何をしに来た?!!」
「おーおーおー、ここがあのボーイの通ってる学園かぁ…
ステーツの代表操縦者になって、やる事がこれかよ…泣けてくるぜ。」
「それは言わない約束よ。彼に会えないのは残念だけど、
暴走核弾頭の居ない今だから、こういう事が出来るのよ。」
更に、壁の向こうから女の声。入って来たのは2機のISだった。
片方は米国製第3世代機、ファング・クエイク(以下、F・クェイク)。
そしてもう1機はどこかで見たシルバーの機体、ハワイ沖から飛んで来て、
ヤマトに殴られて砂浜に突き刺さった試作機、銀の福音。
動かしているのは言うまでもないだろう。
米国代表操縦者イーリス・コーリングと、その相方ナターシャ・ファイルスだ。
何とまあ、国家代表と代表級の実力者がわざわざ乗り込んで来るとは…
しかし、恐怖の襲撃者はこれで全員では無かった。
次回「第32話 鬼神の居ぬ間に…その4」
果たして、襲撃者の真の目的は?
そして、一夏となのはは学園の危機に気付くのか?